アルフィンの軌跡〜トールズ士官学院編〜   作:龍造寺

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第1章初めての特別実習編23話です。


第1章ー初めての特別実習編ー30ー23話ーアルフィンたちの知らないところで。

 

七燿暦1204・4月24日・夜・帝国・ケルディック・ケルディック内のどこか。

 

アルフィンたちが風見亭の灯りに吸い込まれるように中へ入った直後、近くの建物の陰から、緑の制服に赤いポニーテールを揺らす少女が姿を現した。トールズ士官学院2年Ⅳ組所属、スミレ・ヨシザワである。彼女がケルディックにいるのは偶然ではない。

 

誰かに呼ばれたのだ。授業が終わると同時に列車を乗り継ぎ、サラに気取られないよう慎重に距離を取って行動していた。スミレは左手の人差し指に嵌めた銀の指輪を眺め、小さく息を吐く。

 

スミレ【……サラ教官もアルフィンさんも、感覚が鋭すぎるんだもん。これがなかったら、絶対バレてたよね】

 

カズヤからもらった『気配封じの指輪』。どんな仕組みかスミレにもわからないが、効果は抜群だった。と、そこへ──

 

テイトク【よう、スミレ。半年ぶりか?】

 

ラフなジャケットに腰で巻いた上着、どこか見覚えのある顔立ちの青年。

 

そして、隣には共和国で人気急上昇中の女優兼グラビアアイドル風の美女。テイトク・ブライトとイチカ・ナカノだった。

 

イチカ【正確には5ヶ月と12日ぶりだけど〜。スミレちゃん、元気だった?】

 

イチカがにこりと笑いながら首を傾げる。スミレは驚きつつも、すぐに表情を引き締めた。

 

スミレ【……テイトクさん、イチカさん。 匿名で私を呼んだの、お2人ですか?】

 

テイトクは肩をすくめ、いつもの乱暴な口調で答える。

 

テイトク【まあな。マユミのやつが『スミレが無茶すんじゃねえか』ってうるせえからよ】

 

イチカ【そんなこと言って、本当は自分こそ心配してたくせに〜】

 

テイトク【はぁ!? 誰が心配なんかしてんだよ!俺はただレンの行方を探してる途中で──】

 

イチカ【はいはい、レンちゃんのことね〜】

 

イチカがくすくす笑いながら手を振る。テイトクは顔を赤くしてそっぽを向いた。

 

やがて二人は真顔に戻り、スミレに向き直った。

 

イチカ【──本題に入るね。猟兵崩れの連中と、妙な一味が帝国に入国してるって、サナダさんからの情報】

 

スミレ【真田明彦さん……?】

 

共和国CID所属、現在は裏稼業の監視も担う男だ。

 

テイトク【元々別々の猟兵団にいた生き残りが寄せ集めになって、また旗揚げしようとしてる。場所はこのクロイツェン州だ】

 

スミレの瞳が鋭く細まる。

 

スミレ【……まさか、アルバレア公爵家が後ろ盾?】

 

イチカ【ビンゴ。領邦軍の兵士たちの会話を盗み聞きしたら、はっきり『雇った』って言ってた】

 

テイトク【戦力補強じゃねえ。使い捨ての駒だろ。 領邦軍を表立って汚すわけにゃいかねえからな】

 

スミレは唇を噛んだ。そしてテイトクが、ふとルナリア自然公園の方角へ視線を投げる。

 

テイトク【……あっちから、妙な力を感じる。リベールの異変の時と同じ……結社の匂いがする】

 

イチカ【まさか……!】

 

その時、イチカのENIGMA(エニグマ)が震えた。

 

イチカ【はい、ナカノです〜……え? ミカさん? ……ええっ!?了解しました、こちらで対処します!】

 

通話を切り、イチカは深刻な顔で告げた。

 

イチカ【ミカさんたちが追ってた猟兵崩れの一団が、リベール国境を越えて帝国領内へ侵入したって】

 

テイトク【なにぃ!? エステルとヨシュアは──ちっ、今は学園都市に講師で行ってやがるんだったな……!】

 

スミレ【合同トレーニングの特別講師で呼ばれてますから】

 

テイトクは舌打ちし、苛立たしげに髪を掻きむしる。そんな三人の前に、茶色のジャンパーにサングラス姿の男が現れた。

 

???【ナカノさん、ブライト。君たちはパルムへ行かなくていいのかい?】

 

ロビンフッド──かつての明智吾郎だった男だ。

 

イチカ【ロビンフッドさん! てっきりクロスベルにいると思ってました】

 

ロビンフッド【とある筋から、ケルディックのトールズ士官生を陰から見守って欲しいと頼まれただけさ】

 

テイトク【とある筋って、ミカ・シバだろ?】

 

ロビンフッド【依頼主の名前を軽々しく出すのは感心しないね、テイトク・ブライト君】

 

イチカが苦笑いで間に入る。

 

イチカ【まあまあ〜。私たちは最終列車に乗らないと】

 

テイトク【スミレ、お前そいつと二人で大丈夫か?】

 

スミレ【……大丈夫です】

 

テイトク【そうか。なら俺は何も言わねえ】

 

イチカ【私のことは心配してくれないの〜?】

 

テイトク【なんで俺がてめえを心配しなきゃなんねえんだよ!】

 

軽口を叩き合いながら、テイトクとイチカは駅へと消えていった。残されたスミレとロビンフッド。しばしの沈黙の後、ロビンフッドが静かに口を開く。

 

ロビンフッド【……こうして二人だけで話すのも、いつ以来だろうね】

 

スミレ【あなたが正体を明かした時……でしたっけ】

 

ロビンフッド【色々ありすぎて、記憶も曖昧になってしまったよ】

 

スミレは少しだけ目を伏せた。

 

スミレ【……もう一人の明智吾郎さんの行方は?】

 

ロビンフッド【前に言った通り、明智吾郎という名前は捨てた。今はロビンフッドとして、過去の罪を背負って生きていくつもりだ】

 

スミレは小さく頷く。

 

スミレ【雨宮先輩たちが結社にいるのは……確かですか?】

 

ロビンフッド【ああ。結社の一員だと言った本人たちと剣を交えた。昔より、ずっと強くなっていた】

 

スミレの肩がわずかに震えた。ロビンフッドは遠くを見るような目で呟いた。

 

ロビンフッド【芳澤さん。君も学院に戻った方がいい。アレイスター教官が探していたよ】

 

スミレ【マユミ先生が!?】

 

ロビンフッド【Ⅶ組のことは俺に任せてくれ。危なくなれば手を貸す。それまでは……見守るだけだ】

 

スミレは一瞬迷った後、深く頷いた。

 

スミレ【……お願いします】

 

そして帝都行きの最終列車に駆け込み、闇の中へ消えていく。残されたロビンフッドは、静かに呟いた。

 

ロビンフッド【かつては俺が世界を壊す側だったのに……今では立場が完全に逆転してしまったな、雨宮、緋里さん】

 

サングラスの奥の瞳に、複雑な光を宿しながら、ロビンフッドもまた、夜の闇へと溶けていった。ケルディックの夜は、まだ静かに蠢き始めていた。




テイトク、イチカ、ロビンフッドがアルフィンたちの知らぬところで出てきました。3人は陰ながらⅦ組を見守りピンチになれば、Ⅶ組を手助けしたりしていきます。もちろんスミレもですが。

彼ら3人の紹介は後でやりますのでよろしくお願いします。

ユウのヒロインは誰が良いでしょうか?

  • 1ーエマ
  • 2ーフィー
  • 3ートワ
  • 4ーサラ
  • 5ースミレ
  • 6ーそれ以外(アリサとラウラは除く)
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