アルフィンの軌跡〜トールズ士官学院編〜   作:龍造寺

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第2章麗しき翡翠の都編5話です。


第2章ー麗しき翡翠の都編ー44ー5話ー新たなる情報。

 

セントアーク郊外→サクラ庭園

 

七燿暦1204・5月4日・深夜・帝国・セントアーク郊外・サクラ庭園。

 

導力車の隠し場所に戻ってきたものの、シアゲさんの姿はまだありませんね。

 

ミラージュシステムで覆われた車体は、夜の闇に溶け込み、まるでそこに何もないかのように静かですわ。

 

わたくしは車の横に腰を下ろし、葉桜の枝を見上げました。

風がそよぐたび、葉ずれの音が優しく響きわたります。

 

遠く貴族街の方では、まだ赤い炎の残光が空を染め、煙がゆっくりと昇っているのが見えています。消化活動は続いているようだけど……あの火は、自然に消えるものではないわね。

 

アルフィン【……まだシアゲさんはセントアークにいらっしゃるのかしら?】

 

大賢者【解、サーチをかけましたが、現在は歓楽街の酒場『織姫』にいます。カウンターでノンアルコールを飲みながら、常連らしい中年男性と雑談中です】

 

アルフィン【お酒……誰かお偉い方々と話されているのかしら?】

 

大賢者【解、その可能性は低いかと。相手はただの酔客で、話題は最近の出来事や貴族街の火事の噂話のようです】

 

アルフィン【そうですか……】

 

シアゲさんは昔から酒場が好きだった。情報が自然と集まってくる場所だから、とよくおっしゃっていました。共和国のスパイとして、耳を澄ませば面白い話が転がっている──そんな風に笑っていた姿が目に浮かびます。

 

今もきっと、何か手がかりを探しているのでしょうね。わたくしは桜の木の根元に体を預け、ゆっくりと息を吐いた。

 

今日一日、あまりにも目まぐるしかった。死神エイトとの戦い、屋敷の放火、正規軍、領邦軍の接近……。

 

体力をかなり消費したせいか、急に疲れがどっと押し寄せてきましたわ。

 

大賢者【告、マスター、お休みになりたいならおやすみなられて結構ですよ】

 

アルフィン【……まだシアゲさんが戻っていらっしゃらないので、眠るわけには……】

 

大賢者【解、マスターがご就寝の間、この大賢者がマスターの身の回りをお守りします。今日消費した体力を回復させてください】

 

アルフィン【……大賢者、ありがとう。それじゃあお言葉に甘えさせてもらうわ】

 

わたくしは木の根元に体を預け、まぶたを閉じました。

 

夜風が頰を撫で、遠くで列車の汽笛が低く響きます。シアゲさんが戻るまで、少しだけ……休みましょう。意識がゆっくりと落ちていく中、今日一日の出来事が頭をよぎりました。死神エイトの暗躍、結社の影、双子の姉妹の気配……。

 

まだ色々と終わっていませんわ。

 

セントアークの夜は、静かに深まっていきます。

 

大賢者【解、マスター……おやすみなさい】

 

わたくしは、かすかな微笑みを浮かべて、眠りに落ちました。

 

 

セントアーク・庶民街・酒場織姫

 

七燿暦1204年5月4日・深夜・帝国・セントアーク・庶民街。

 

酒場『織姫』は、深夜になっても賑わっていた。

 

カウンターの隅で、シアゲ・ハマズラはノンアルコールのグラスを傾けながら、常連らしい中年男性と雑談を続けている。そこへ、金髪ロングの女性が近づいてきた。

誰かに似ていると言えば、とある世界のオリアナ・トムソンに瓜二つ。

 

名前はオリアナ・サンダーズ。

 

表向きは運び屋、裏はカルバード共和国CID所属の諜報員。

 

オリアナ「あら、シアゲ、あなたにしては早かったのね」

 

シアゲ「なんだよ、オリアナ! 俺がいつも遅刻ばっかりしてるみたいじゃねえか」

 

オリアナ「そうじゃなかったかしら? あなた、あの❝皇女様❞はどうしたのよ?」

 

シアゲ「あ、アルフィンのことか? 彼女には外で待ってもらってるが……」

 

オリアナ「そうなの? 彼女、あの貴族屋敷から脱出した人物と戦ってたわよ?」

 

シアゲ「な、なんだと!?」

 

シアゲは思わず声を上げたが、酒場は騒がしく、誰も気に留めなかった。

 

オリアナは淡々と続ける。

 

オリアナ「あれは、結社の執行者No.88、死神のエイトよ」

 

シアゲ「死神のエイトだと!」

 

執行者の中でも特に残忍で、潜入・なりすましを得意とする危険人物。

 

怪盗Bでさえ警戒する存在だ。シアゲは立ち上がろうとしたが、オリアナが静かに制す。

 

オリアナ「彼女なら大丈夫よ。あのエイトすら退けたみたい」

シアゲ「……さすがだな、アルフィン……」

 

シアゲは再び座り、グラスを握りしめた。

 

シアゲ「それで、アルフィンはその後どうしたんだ?」

 

オリアナ「あなたが導力車を停めているサクラ庭園の方へ戻っていくのを見たわね」

 

シアゲ「そうか……本当ならお前ともうちょっと話がしたかったわけだが」

 

オリアナ「そうね……私も運び屋の任務でセントアークまで来てるわけ。

セントアークの貴族派の連中、どうやら共和国のある企業から何かを受け取ったみたいね」

 

シアゲ「……とある企業、まさか《ロアアーム社》!?」

 

ロアアーム社──共和国で悪名高い大企業。

 

闇社会に違法薬物や武器を流していると噂されているが、証拠がないため手が出せない。

 

オリアナ「私は運び屋としてロアアーム社から、貴族派のホテルの一室に届けるように言われたけど、いざ行ってみたら誰もいなくて、その部屋に置いてくるように指示のメモがあったわ」

 

シアゲ「指示に従って荷物は置いてきたのか?」

 

オリアナ「ええ、そうね。私の勘だけど、あれは改造武器だと思う」

 

シアゲ「あんたの勘、今までも当たってきたからな。

貴族派の連中が武器を揃え始めてるのは前々からわかっていたが、まさか共和国からも仕入れているとはな」

 

オリアナ「ケルディック、パルムで目的が失敗したから、今度は別ルートでやり始めたってとこかしら」

 

シアゲ「日本人移民街から逃げてセントアークに来たヤツを追っていて、貴族屋敷に追い詰めだと思ったが、突入した時と同時に本人は殺され、屋敷に放たれて火で屋敷は燃やされるわで、今度は共和国から武器購入とか……戦いのにおいしかしてこねえつうの」

 

オリアナ「下手すれば、貴族派と革新派の内戦になるわね……」

 

シアゲ「それは、共和国も同じく内戦の可能性を孕んでいるわけだがな」

 

帝国の貴族派と革新派、共和国の移民推進派と反対派──

 

両国とも、火種がくすぶり続けている。

 

オリアナ「私は、私自身が運んできた荷物の行方を探るわ。

まだあのホテルには人物は来ていないだろうから」

 

シアゲ「そうか、俺は一旦自分の導力車に戻るわ。

アルフィンをこれ以上待たせるのは悪いしな」

 

オリアナ「彼女を大事にしてやらないと。なんたって皇女様なんだからね」

 

シアゲ「……はぁ、わかってるよ」

 

シアゲはカウンターでミラをオリアナの分まで支払い、酒場『織姫』を後にした。

 

夜は更け、急いでサクラ庭園へ向かう。

 

セントアーク→サクラ庭園

 

七燿暦1204年5月4日・深夜・帝国・セントアーク郊外・サクラ庭園。

 

サクラ庭園まで息を切らしながら走ってきたシアゲ。

ようやく導力車の停まっている場所に到着する。

 

シアゲ「やっと戻ってこれた。で、あいつはどこに……?」

 

周囲を見回すと、桜の木の根元に女の子座りで眠るアルフィンの姿があった。

 

スカートが少しめくれ、太ももが覗いている。

 

シアゲ「ぶっ!! あいつ、あんなとこで寝てたのかよっ!」

 

慌てて近づき、アルフィンを抱き上げて導力車へ運び込む。

後部座席に寝かせ、ブランケットをかける。

 

シアゲ「……こうしてみると、まだ子供なんだがな」

 

起きている時は妙に大人びて、戦闘では大人顔負けの力を見せる。

 

でも今は、ただの眠る少女だ。

 

シアゲ「俺が帝国で自由にできているのも、アルフィンのおかげと言ってもいい」

 

シアゲは運転席に座り、報告書を書き始める。

 

ロビンフッドの後始末報告──アルフィンとは書かず「協力者」とだけ記す。

 

CIDの上層部の一部は知っているが、問題ない。

 

シアゲ「ロビンフッドの件の報告書は書いた。俺は寝るとするかな」

 

フロントガラスにくっついていたメモ用紙に気づく。

 

シアゲ「このメモ用紙、オリアナか?」

 

フロントガラスから剥がすと魔法の紙(マジックペーパー)から文字が浮かぶ。

 

『ホテルのあの部屋から2名。1人は共和国行きの列車に乗り込み、共和国へ向かうみたい。もう1人はセントアークのビジネス街へ向かうみたい。私は引き続き、こちら側を探ることに。それと、さっきはありがとう。この借りは後できっちり返すわ』

 

シアゲ「……最後の部分は別にして……来たやつらは2名、そのうちの1人がカルバードへ?」

 

頭を掻き、ため息。

 

シアゲ「お前がセントアークの探索を選んだのなら、1つしかねえだろ」

 

共和国行きが事実上決まった。

 

シアゲ「さてとどうやって行ったものか」

 

その時、後部座席から声がする。

 

アルフィン【それでしたらわたくしの座標移動で簡単に行けますわ】

 

シアゲ「うわっ、びっくりした!? てかお前起きてたのか!?」

 

アルフィン【ええ、起きてましたわ。シアゲさんが、フロントガラスにくっついていたメモ用紙を取りに行かれた時にですけど】

 

シアゲ「その時か……」

 

アルフィンが身を乗り出す。

 

アルフィン【これから普通に国境を超えるにしても時間がかかりますわよ?クロスベル経由ならなおさらですが】

 

シアゲ「確かにそうだな。かと言って帝国の方のノルドから超えるわけにいかんしな……」

 

アルフィン【あちらの方から抜けるのは厳しいと思いますわ。だからわたくしが座標移動で向かいましょうと言ってるんですわ】

 

シアゲ「……座標移動(ムーブポイント)かあ〜そんな能力があったらパスポートとかそんなものがいらなくなるよな〜」

 

アルフィン【一応、身分証明して持ってた方がいいかもしれませんよ……密入国したみたいになっちゃいますし】

 

シアゲ「お前な……」

 

アルフィン【私、一応カルバードの身分証明書持ってますわ】

 

鞄から取り出した身分証明書。

 

『アルフィン・レンハイム』として正式に登録されている。もちろんサナダが急遽作ってくれたものだ。

 

シアゲ「偽物じゃなくて本物かよ……」

 

アルフィン【サナダさんに作ってもらいましたわ】

 

シアゲは導力腕時計の時刻を見て、決断する。

 

シアゲ「なら遠慮なくお前の能力を使わせてもらうぞ?」

 

アルフィン【ええ、そうしてくださいな。それじゃあ行きますよ】

 

シアゲ「ああ」

 

アルフィン【イーディスの近くでいいですね?】

 

シアゲ「ああ、構わない」

 

アルフィンはカルバードの首都イーディス近郊の座標を思い浮かべ、座標移動(ムーブポイント)を発動。

 

ミラージュシステムが作動したまま、導力車は闇の中へ消えた。

ユウのヒロインは誰が良いでしょうか?

  • 1ーエマ
  • 2ーフィー
  • 3ートワ
  • 4ーサラ
  • 5ースミレ
  • 6ーそれ以外(アリサとラウラは除く)
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