アルフィンの軌跡〜トールズ士官学院編〜   作:龍造寺

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第2章麗しき翡翠の都編7話です。


第2章ー麗しき翡翠の都編ー46ー7話ー宝塔。

 

カルバード共和国・イーディス旧市街・アダムアパート→旧市街・立ち食いうどん屋・松永

 

七燿暦1204年5月5日・朝・共和国・イーディス・旧市街・立ち食いうどん屋・松永。

 

わたくしとシアゲさんは、昨日は夜ご飯を食べなかったので、近くの立ち食いうどん屋『松永』で朝ごはんをいただくことにしました。

 

ここは朝早くから開いていて、旧市街で働く人たちの胃袋を支える大事なお店らしいです。

 

カウンターに立ち、熱々のつゆに浸かったうどんをすする……あの世界で食べていたあの味が、このゼムリア大陸でも味わえるなんて、なんだか不思議な気持ちになりますわ。

 

大賢者【告、このゼムリア大陸でもうどんを食べる習慣があるのは、日本人移民と一部の人間だけですが、カルバード共和国に移民してきた人物が広めた文化のようです】

 

アルフィン【なるほど……クレイユ村のそばも、その流れかもしれませんね】

 

熱すぎずぬるすぎず、ちょうどいい温かさ。つゆの出汁が体に染み渡ります。

 

シアゲさんは一気にすすって、丼を置いた。シアゲ「帝国人のアルフィンには、こういううどんは初めてだろ?」

 

アルフィン【初めてではありませんわ。クレイユ村ではそばを食べたり、サナダさんにはイーディス中心部の『葉隠』でラーメンをご馳走になりましたから】

 

シアゲ「葉隠かよっ!? あそこは超有名店だぞ!? 俺だって予約取ろうとしたけど、満杯で断られまくったんだ。さすがサナダ室長だな……」

 

シアゲさんは残ったつゆをググッと飲み干し、わたくしもつられて真似してしまいました。

 

丼を置くと、シアゲさんが苦笑い。

 

シアゲ「そんなとこまで真似しなくてもいいのだが」

 

アルフィン【真似というより、わたくしも昔からそうやって食べてましたから】

 

生まれ変わる前からずっと、そうやって食べていたのです。あの頃は、誰にも言えなかった秘密を抱えながら……。

 

お腹を満たしたわたくしたちは、導力車に戻り、ある場所へ向かうことにしました。

 

どうやらわたくしたちがうどんを食べている間に、サナダさんから連絡が入ったようです。

 

シアゲさんが食べ終わってすぐに返信していたのでしょう。行き先は、旧市街と新市街の境目あたりにある【宝塔】と呼ばれる場所。

 

不良たちの溜まり場で、猟兵崩れや半グレが集まる危険地帯らしいです。なぜそこへ向かうのかというと、サナダさんの部下から、タナトス・アグラリアの目撃情報が入ったから。

 

シアゲ「宝塔、あそこはいろんなところから集まる不良の溜まり場だ。猟兵崩れや半グレがうじゃうじゃいる」

 

アルフィン【黒芒街とは何が違うのでしょう?】

 

シアゲ「黒芒街には連中なんかは行かねえよ。あそこは本物しかいない世界だ。半端者が行くようなとこじゃねえ。だから連中は宝塔みたいな溜まり場を作ったんだ。黒芒街は一つの町を形成してるが、宝塔はただの無法地帯だ」

 

アルフィン【なるほど……】

 

導力車に揺られながら、わたくしは宝塔のことを考えました。

帝国のラクウェルとも違う、ただの無法地帯。でも、そこで暮らす人たちもいるはず。頭ごなしに「危険」と決めつけるのは、違うのかもしれません。

 

大賢者【告、マスター、宝塔とは、昔ここに宝の塔と呼ばれた塔があった場所です】

 

アルフィン【宝の塔から宝塔……】

 

大賢者【解、革命前の王政時代にあった関所の塔のようです。貧困街から見える兵士たちが裕福に見えたので、貧しい人々がそう呼んでいたとか】

 

アルフィン【……】

 

貧困街から見える関所の塔が、宝の塔のように見えた。兵士たちの姿が、遠くから輝いて見えたのでしょうね。

 

帝国でも、地方の貧困はまだ根深い問題です。帝都ではオズボーン宰相やレーグニッツ帝都知事の革新派が対策を進めていますが、地方ではまだ苦しんでいる方々がたくさんいらっしゃいます。わたくしにできることは限られていますが……何とかしたい気持ちは、強く持っていますわ。

 

シアゲ「一応言っておくが、警戒心だけは持っていてくれよ。黒芒街よりたちの悪い連中もいるからな」

 

アルフィン【分かってますわ】

 

導力車は、宝塔へと進んでいきました。

 

旧市街・立ち食いうどん屋・松永 → 旧市街・宝塔・旧関所跡

 

七燿暦1204年5月5日・朝・共和国・イーディス・旧市街・宝塔・旧関所跡。

 

導力車を新市街の駐車場に停め、徒歩で旧市街へ戻りました。宝塔の周りに車を停めると、窃盗のリスクが高いそうです。

 

旧関所跡は、想像以上に荒れ果てていました。

 

廃墟のようなコンクリートと鉄骨の残骸に、テントやダンボール小屋が点在。不良や猟兵崩れがたむろし、視線が刺さるようにこちらを向きます。

 

シアゲ「ちょっと教えて欲しいことがある。ここにタナトスって男はいないか?」

 

シアゲさんが尋ねると、周囲がざわつき、一人の男が近づいてきました。リーダー格の男の人で、この辺りの入り口を縄張りにしているそうです。

 

???「タナトスって、学者風のやつか?」

 

シアゲ「ああ、そうだが」

 

???「確かにここにしばらくいたな。何かでっかい花火をあげるとか言ってたぜ」

 

シアゲ「……でっかい花火だと? それでどこに行きやがった?」

 

???「知らん。出て行く時に何も持ってなかったからな」

 

アルフィン【その方、嘘を言っているようには思いませんわ。本当に知らないのでしょう。それでは話を変えまして、タナトスさんはここで何をなされていたか、ご存知ないでしょうか?】

 

???「ああ、やつはいつも本を読んでブツブツ言ってた。それ以外は特に何もしてなかったな。だから誰も近づかなかったんだ」

 

シアゲ「その本はまだあるのか?」

 

???「多分あると思うぜ。出て行く時に何も持ってなかったからな」

 

リーダー格の男の人が指差した方向に、ダンボールで作られたテントがありました。

 

入り口に「タナトス」と書かれた紙が貼ってあります。

 

シアゲ「そうか、一応調べさせてもらうぞ」

 

???「俺たちの縄張りなら調べさせてやるが、あそこは別の連中の縄張りだ。そこのリーダーの許可をもらってからじゃないと、難癖つけられるかもしれないぞ」

 

シアゲ「ご忠告、ありがとな。それにしても親切だな」

 

???「なーに、ただの気まぐれだ。ついでに名前も教えてやる。俺はアンサーだ」

 

シアゲ「アンサー、ありがとうな。俺はシアゲだ。こっちはアルフィン」

 

アルフィン【アンサーさん、よろしくお願いしますね】

 

アンサーさんは北側の要塞のようなエリアまで案内してくれました。木とブロック塀で囲まれ、門番が立っています。中は別のグループの縄張りらしいです。

 

アンサー「ここからはあんたらだけで行ってくれ」

 

シアゲ「分かった。ここまで協力してくれるって感謝するぜ」

 

アルフィン【アンサーさん、ありがとうございました】

 

アンサー「な〜に、ただの気まぐれだ」

 

アンサーさんは、そうおっしゃって自分の縄張りへ戻っていきました。わたくしたちは、門番に方に声をかけます。

 

シアゲ「ここのリーダーと話がしたいんだが?」

 

門番「なんだお前たちは?」

 

アルフィン【リーダーさんとあることでお話をしたいんですが、ここにいらっしゃるんですか?】

 

門番「あ〜話がしたいがと!?」

 

シアゲ「ああ。タナトスって男についてだ。お前たちのリーダーが呼んだそうじゃねえか?」

 

門番「……お前たち……なぜそのことを!?」

 

その反応から、タナトスがここに来ていたのは確実そうです。

中から声が響きました。

 

???「タナトスの話が聞きたいだって?」

 

門番「!? シズリーナの姉御!」

 

シズリーナ「その二人は私と話がしたいんだろう。さっさと通しな」

 

門番「わ、わかりました。どうぞ、お通りください」

 

わたくしたちは、シズリーナと呼ばれる女性に導かれ、中へ入りました。

 

旧市街・宝塔・旧関所跡内

 

七燿暦1204年5月5日・朝・共和国・イーディス・旧市街・宝塔・旧関所跡内・シズリーナの陣地。

 

塀の中は、想像以上にしっかり整備されていました。テントや小屋が整然と並び、生活感があります。アンサーさんの縄張りより統制が取れている印象です。シズリーナさんは、麦野沈利さんに瓜二つな雰囲気。鋭い目つきと、威圧感のある立ち姿。

 

シズリーナ「それで私と何の話をするつもりだ?」

 

シアゲ「タナトスの件だ。お前さんが呼んだらしいじゃないか?」

 

シズリーナ「まあね。ヤツには色々と因縁があってな。それで話していただけだ」

 

アルフィン【因縁……ですか】

 

シズリーナ「……タカヤの騒乱以来のな」

 

シアゲ「ヤツは、再び共和国で花火を打ち上げようとしているんだ。何か知ってることがあれば話してほしい」

 

シズリーナ「……花火……先のヨアヒム・ギュンターが起こしたクロスベルの花火のようにか?」

 

シアゲ「ああ、その可能性は高いと見る方がいいだろう」

 

シズリーナ「確かにそうかもしれない。ただ、その花火を❝共和国❞だけにあげるとも限らないだろうが」

 

アルフィン【まさか……帝国でも可能性はあるということかしら?】

 

シズリーナ「そっちの嬢ちゃんの言う通りかもしれないな。ヤツの目的は共和国よりも今は帝国の方に向いているようだったからな。私もそのことに関して誘われたよ。まあ断ったが」

 

やはり帝国の誰かに雇われた可能性が高いですわね。

 

大賢者【告、タナトスの行方をサーチしたところ、ここから去った後、クレイユ村に行き、その近くから飛行船に乗って帝国方面に向かった模様です】

 

アルフィン【大賢者、それは確かなの?】

 

大賢者【解、ここにいたタナトスの残留思念や残留物から足跡を追いました】

 

アルフィン【となると、再び帝国に戻らないといけませんね】

 

シアゲ「……タナトスは帝国に……」

 

シズリーナ「知りたいことはそれだけかい?」

 

シアゲ「タナトスの件だけだ」

 

アルフィン【それにしても、シズリーナさんは女性でリーダーだなんてすごいですわ】

 

シズリーナ「まあな。ここは強いものがリーダーになる。そういうところだからな。大統領のように選挙で選ばれるわけではないが。そういえば二人の名前を聞いていなかったな」

 

シアゲ「そういや名乗ってなかったな。俺はシアゲ・ハマズーラだ」

 

アルフィン【わたくしはアルフィン・レンハイムですわ】

 

シズリーナ「シアゲにアルフィンか、覚えておくことしよう」

 

シズリーナさんの縄張りは、ちゃんと生活感があり、統制が取れていました。アンサーさんの縄張りもそうですが、宝塔全体がただの無法地帯ではないようです。頭ごなしに『危険』と決めつけるのは、違うのかもしれません。

 

シズリーナ「また何か聞きたいことがあったらここに寄ってくれ。門の番人たちのリーダーのアンサーには話しておく」

 

アルフィン【ありがとうございます】

 

シアゲ「聞きたいことができたらな」

 

シズリーナ「そうか」

 

シアゲ「……1つ調べさせてもらいたいのだが、タナトスのいたテントを調べてもいいか?」

 

シズリーナ「ああ、別に構わない。ただ、ヤツのテントに本以外には残っていないと思うがな」

 

アルフィン【調べさせてもらえるだけでありがたいですわ】

 

わたくしたちは、タナトスさんがいらっしゃったテントを調べますが、彼が残して行った❝シャドウと魔獣の合体❞という彼の論文みたいなものの本でした。それ以外のものは何も見つかりませんでした。ここでしばらく生活していたという明石ぐらいでしょうか。

 

シアゲ「この方は持ってっても構わないか?」

 

シズリーナ「別に構わないさ、シャドウと魔獣の合体…そのような方読む奴はタナトス以外におらんからな」

 

まあ、このようなタイトルの本、興味ある人間の方がおかしいんでしょうね。

 

そしてわたくしたちは、シズリーナさんにお礼を言い、アンサーさんにも挨拶をして、宝塔を後にしました。

ユウのヒロインは誰が良いでしょうか?

  • 1ーエマ
  • 2ーフィー
  • 3ートワ
  • 4ーサラ
  • 5ースミレ
  • 6ーそれ以外(アリサとラウラは除く)
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