アルフィンの軌跡〜トールズ士官学院編〜   作:龍造寺

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麗しき翡翠の都編10話です。


第2章ー麗しき翡翠の都編ー49ー10話ー夕暮れの中で。

 

それにしても、マキアスさんはまだリィンさんのことで怒っていらっしゃいますね。

 

前回の特別実習後にリィンさんが、平民ではなく貴族であり、シュバルツァー男爵の実の息子ではなく養子であることを皆の前で告白なさったからです。

 

最初は皆驚いていましたが、すぐに受け入れました。ただ、マキアスさんは『貴族でありながら平民を装っていた』ことに怒りを抱いているようで、それ以来リィンさんとは口をきいていないようです。アリサさんの誤解が解けた後の、マキアスさんとの確執……。なんとかしてあげたいのですが、わたくし自身も正体を隠している身ですし……。あ、それはそうと、着信が来ていたので、人気のないところで連絡しないと。

 

 

エレボニア帝国・トリスタ・トールズ士官学院・1年Ⅶ組→旧校舎付近

 

七耀暦1204年5月22日・夕方・帝国・トリスタ・トールズ士官学院・旧校舎付近

 

誰もいないところと言ったら、ここしかありませんわ。

 

木々に覆われ、新校舎とは一線を画す場所――旧校舎です。

 

夕方の旧校舎はいつ訪れても不気味さが増しますわ。4月よりは明るいのですが、それでも変わりません。わたくしはENIGMA(エニグマ)を取り出し、着信をくれた方に連絡しました。

 

アリス「アルフィンさん、お疲れ様です。アリスですわ」

 

アルフィン【アリスさん、先ほど着信をいただいていましたが、ホームルーム中でしたの】

 

アリス「あ、ごめんなさい。そうとも知らずに」

 

アルフィン【いえいえ。お気になさらずに。わたくしにご連絡をいただけたということは、何か分かったということですの?】

 

アリス「はい、以前アルフィンさんが探していらっしゃったタナトスという人物のことですが、共和国内で居場所を点々としていたみたいですわ」

 

アルフィン【居場所を点々と……ですか】

 

アリスさんから、サナダさんたちCIDが収集したタナトスの追跡情報を聞かせていただきました。

 

どうやらタナトスはCIDや遊撃士の追跡を巧みにかわし、難を逃れているようです。さすがD∴G教団の生き残りだけあって、逃げ方が巧妙ですわね。

 

アリス「ただ、私たちも何も見つけられなかったわけではありませんわ。タナトスは逃走中でも取引をしていたみたいですの」

 

アルフィン【取引ですって!?】

 

アリス「私たちとCIDのサナダさんの部下の方々が、タナトスに接触した相手を拘束して情報を吐き出させたのよ」

 

その相手は共和国と帝国の間を取り持つバイヤーで、タナトスが帝国のとあるお偉いさんから発注を受け、『ある貨物」をクロイツェン州の『双龍橋』まで届けてほしいと依頼されたそうです。

貨物はすでに帝国側へ発送済みで、おそらく今頃双龍橋に届いているはずですわ。

 

アルフィン【厄介なところに運ばれてしまいましたわ】

 

アリス「厄介な場所?」

 

アルフィン【ええ、双龍橋はクロイツェン州の領邦軍管轄地……アルバレア公爵家が管轄している場所です。おいそれと調べに入れるようなところではありませんわ】

 

アリス「貴族派……アルバレア公爵、四大名門の一角の……」

 

アルフィン【ええ、ちょっと厄介になってきましたわ。でも、なんとかする方法は考えますわ。それとアリスさん、知らせてくださってありがとうございます】

 

アリス「うん、いいのよ。また何かあったら連絡するわ」

 

アルフィン【こちらも何か分かれば連絡しますわ】

 

アリス「それでは、ごきげんよう」

 

アルフィン【アリスさん、ごきげんよう】

 

通信を終え、ENIGMA(エニグマ)を懐にしまうと、北から冷たい風が吹いてきましたわ。

 

タナトスがクロイツェン州の領邦軍に何を売買したのか……。

シアゲさんとの話に出てきた『シャドウと魔獣の合成物』でしょうか? それとも別のもの?

 

いくら格式高い領邦軍とはいえ、共和国からそんなものを購入するとは思いたくありませんが、正規軍と張り合う領邦軍のことです。自分たちが有利になるなら、厭わないかもしれませんわね。

 

ただ、もしシャドウと魔獣の合成物を兵器として使われたら……最悪の事態になりかねません。

 

アルフィン【大賢者、双龍橋付近を調べてください】

 

大賢者【解、クロイツェン州、双龍橋を調べればよろしいので?】

 

アルフィン【ええ、念入りに探知して頂戴。シャドウと魔獣の合成物の兵器なんて……もう普通の兵器ではありませんわ……】

 

大賢者【解、学園都市の人工魔獣とは似て非なるものですからね】

 

アルフィン【学園都市の人工魔獣は人が管理していますが、シャドウと魔獣の合成物は生み出されたらそのまま……理性もなく人を襲うものが、さらに凶暴になるそうですわ】

 

大賢者【解、マスター、もしそれを発見した場合、どうするおつもりですか?】

 

アルフィン【……わたくしの手で潰すしかありませんわ。クロイツェン州の……アルバレア公爵家が相手……帝国政府や情報局、鉄道憲兵隊には頼れませんし】

 

大賢者【解、わかりました。そうなった時には、全力でサポートいたします】

 

随分と冷えてきましたわ。そろそろ学生寮に帰りましょう……。

 

大賢者【告、マスター、この旧校舎付近に猫とフィーさんらしき生命反応を確認】

 

アルフィン【……エマさんの猫ちゃんとフィーちゃんですか……別に敵ではありませんし、気にしなくていいですわ】

 

大賢者【了】

 

なるほど、猫ちゃんはあの木の枝の部分に、フィーちゃんは旧校舎付近のベンチ裏の木の陰に潜んでいるようですわね。

 

わたくしは気づかないふりをして、旧校舎付近から校門の方へ歩いていきました。

 

ーー

 

アルフィンが去った後、旧校舎の生い茂った木々の間を、一匹の猫が静かに歩いていた。

 

尻尾に大きなリボンを付け、気配を完全に消しながら、新校舎の方へと向かっている。

 

エマの使い魔、セリーヌだ。セリーヌはフィーが近くにいることにも気づいていた。だからこそ、念入りに気配を殺している。

 

セリーヌ「……アルフィン・レンハイム……あの女から、微かにカズヤと同じような力を感じるのだけど……どういうことかしらね?」

 

立ち止まり、ふと考える。

 

カズヤが以前、ぽつりと漏らした言葉を思い出したのだ。

 

カズヤ「自分と同じような力を持った人間を、数名見つけた……姿も形も、歳も性別も違うけど、なんというか……説明しづらいんだ。中身というか、心というか、そういうものが一緒なんじゃないかと思った」

 

本人に直接確かめたわけではない。ただ、カズヤはそう感じていると言っていた。

 

そして彼は、ゼムリアとは違う世界から転生したのか、あるいは自分やマユミのように別の世界からこの世界へ飛ばされた存在ではないか、と推測していた。セリーヌは当初、その話がよくわからなかった。

 

だから村の長に直接尋ねたところ、この世界とは異なる『異世界』が存在することを教えてもらったのだ。

 

半信半疑で聞いていたセリーヌだったが、アルフィンを見ていると、カズヤ・アレイスターとは別の世界から来た❝もう一人のカズヤ・アレイスター❞の生まれ変わりではないか……と考えるようになっていた。しかし、このことはまだエマには話していない。

 

確証があるわけでもなく、情報を伝えるほどの確かなものではない。

 

もう少し様子を見てから報告しよう――セリーヌはそう判断した。

 

 

ーー

 

一方、セリーヌとは別の場所からアルフィンを見ていたのはフィーだった。

 

彼女もまた、アルフィンを不思議そうに眺めていた。5月のある日……アルフィンが共和国へ旅立った頃のことだ。

 

偽物が彼女のふりをして学園生活を送っていた時期。

 

周りの皆は普通に偽物と接していたが、フィーだけは違和感を拭えなかった。

 

スハルトやハチマンにもそのことを話したことがある。

 

二人とも「何かおかしい」とは感じていたが、そこまで深く追求することはなかった。

 

フィー「あの二人、何かを隠してる。委員長やアリサ、ラウラとも違う。私やサラとも違う……でも、私の本能が何かを恐れてる……」

 

今のフィーには、それが何なのかわからない。

 

わからないが、自分を脅かすようなものではない。

 

むしろ、何か温かいものを感じている。

 

ただ、今の彼女にはそれを理解する術がない。

 

フィー「……あ、委員長に勉強を教えてもらう約束してた……」

 

フィーはそう呟くと、エマの元へ走って向かった。

 

 

そしてもう一人、エマやフィー以外にも、ここにいた人物がいた。

 

旧校舎の屋根の上から、密かにすべてを見下ろしていた者が。黒いマントを羽織り、アラミスの制服を身に着けた銀髪ロングの少女。白のニーハイソックスに魔法使いの帽子、魔導杖を携えている。

 

簡単に言ってしまえば、容姿はとある世界の女体化したアレイスター・クロウリーそのものだった。

 

アレイスター「ふふ……学園都市の諜報部員から聞いていた旧校舎を訪ねてみれば、私と同じ《魂》を持つ者を、カズヤたち以外に見ることになるとはね。アルフィン・レンハイム……いえ、アルフィン・ライゼ・アルノール、でしたか」

 

彼女は穏やかな微笑みを浮かべながら、アルフィンたちが去った新校舎の方を見つめ、次に旧校舎の方へ視線を移した。

 

アレイスター「……あら? さっきと旧校舎の雰囲気が、少し変わったような気がいたしますわ。気のせいかしら?」

 

確かめるように、彼女は屋根から軽やかに降り、旧校舎の内部へ足を踏み入れた。

 

すると、先ほど確認した中身の様子が、さらに変わっている。地下の方に新たなエリアが広がっているようにさえ見える。

 

アレイスター「う〜む……魔女の長であるロゼなら、何かご存知かもしれませんわね。あの猫も、この旧校舎を嗅ぎ回っていたようですし」

 

アレイスターはもう一度、新校舎の方を優しく見つめ、次にクロスベル方面へ顔を向けた。

 

アレイスター「クロスベルのディーター・クロイス様との会食が控えておりましたわ。すっぽかしてしまえば、桐条(統括理事長)に叱られてしまいますもの」

 

彼女自身、アルフィンたちをもう少し眺めていたかった。

 

だが、学園都市のご意見番的存在として、ディーター・クロイスのご指名を受けた以上、欠席するわけにはいかない。

 

学園都市とクロスベルの絆を傷つけるような真似は、許されぬことだった。

 

アレイスター「不本意ではございますが……参らねばなりませんわね」

 

アレイスターが小さく呟いたかと思うと、彼女の姿は旧校舎の屋根から、音もなく消えていた。そして、誰もいなくなった旧校舎付近は、再び深い静寂に包まれたのだった。




アレイスター・クロウリーは、このゼムリア世界では女体化でなく、生まれた時から女性として生まれてきている。喋り方も聖女っぽくもある。

ユウのヒロインは誰が良いでしょうか?

  • 1ーエマ
  • 2ーフィー
  • 3ートワ
  • 4ーサラ
  • 5ースミレ
  • 6ーそれ以外(アリサとラウラは除く)
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