アルフィンの軌跡〜トールズ士官学院編〜   作:龍造寺

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第2章麗しき翡翠の都編12話です。


第2章ー麗しき翡翠の都編ー51ー12話ーそれぞれのこれから。

 

エレボニア帝国・トリスタ・トールズ士官学院・ギムナジウム・プール

 

七耀暦1204年5月22日・夕方・帝国・トリスタ・トールズ士官学院・プール。

 

わたくしはクレイン部長とマイン副部長に遅れた事情をお話しして、すぐに準備運動を済ませ、プールに入りましたわ。

 

すでにラウラさんやパスカルさん、モニカさんが泳いでいらっしゃいました。ラウラさんから「悩み事があるなら、無心で泳ぎ続けることで忘れられる」と助言をいただきましたの。

 

嫌なことを忘れたいわけではなく、考え事が多すぎて頭がいっぱいになってしまう……そんな感じですわね。わたくしは背泳ぎをしながら天井を見つめ、5月の特別実習先はどこになるのかを考えてみました。

 

4月はケルディックとパルムでしたから、もしかすると5月はバリアハートかセントアークの可能性が高いかもしれませんわ。

 

セントアークはともかく、バリアハートを訪れる班は大変そうですわね。それにしても、アンゼリカさんのあの導力バイク……試作品とは思えないほどの出来栄えですわ。

 

わたくしもあのような導力バイクに乗りたいですわね。

 

もし量産体制に入ったとしたら、多少の資金援助くらいはして差し上げたいと思っておりますの。アンゼリカさんもシェルファニールさんも、いずれ依頼を出されるとおっしゃっていましたけれど、生徒会の依頼ということですよね。

 

どんな依頼が来るかしら……導力バイクの試乗とかだったら、嬉しいんですけど。

 

大賢者【告、マスター、それは完全に私情が入っていますよ】

 

アルフィン【私情が入っているのは分かっていますわ】

 

大賢者【解、タナトスの件ですが、どうやら共和国から運ばれた例のブツは双龍橋に到着している模様です。双龍橋の秘密保管庫で管理されているようです】

 

アルフィン【双龍橋の秘密保管庫……ですか】

 

双龍橋の秘密保管庫……長年、黒い噂が絶えない場所ですわ。

 

領邦軍の廃棄された試作機、試作品止まりで放置された兵器など、さまざまなものがしまわれていると言われていますの。

 

大賢者【解、マスター、どうされますか?】

 

アルフィン【本来ならすぐにでもどうにかしたいのは山々ですけれど、近頃、アルバレア公爵が双龍橋に出入りしているらしいのですわ】

 

大賢者【解、アルバレア公爵が自領の双龍橋に出入りするのは、何も不思議ではないのでは?】

 

アルフィン【自領の視察、それ自体は何もおかしくありませんわ。ただ、公爵の視察にはおそらく裏で相当数の護衛とエージェントがついているはずですわ。もしかすると、雇われた猟兵団もいるかもしれません】

 

大賢者【解、なるほど。確かにその可能性は高いですね。単独で忍び込むにはリスクが高すぎるという結論になります】

 

アルフィン【アルバレア公爵の視察が終わってくれれば、行動を起こせますわ。視察は1日から2日くらいでしょうね。明日か、明後日には……】

 

大賢者【解、わかりました。マスターの代わりに、この私が双龍橋付近に探知を集中しておきましょう】

 

アルフィン【助かりますわ、大賢者】

 

わたくしは短い時間の中で、水泳部の練習をこなしましたわ。

まあ、色々と考えながら泳いでしまったのですが……。練習を終えて、水泳部のみなさんと一緒に帰りました。

 

第2学生寮前で、クライン部長たちとわたくしとラウラさんで別れ、それぞれの寮へ帰ることになりましたわ。

 

 

エレボニア帝国・トリスタ・トールズ士官学院・第3学生寮・リィンの部屋(201号室)

 

 

七耀暦1204年5月22日・帝国・トリスタ・トールズ士官学院・第3学生寮・リィンの部屋(201号室)

 

リィンは全ての用事を済ませると、帰宅時に郵便受けから受け取っていた実家からの封筒に目を向けた。

 

リィン「実家から届いてたんだよな。父さんからか、母さんからか……」封筒の裏を返すと、送り主の名前が書かれていた。

 

イツキ・シュバルツァー。

 

リィン「イツキ姉からか……」

 

イツキ姉――リィンにとって義理の姉でもある女性。

 

彼女のことを詳しく語るのはまだ時期尚早なので、ここでは触れないでおく。リィンは封筒を開け、中の手紙を取り出して読み始めた。

 

イツキ『リィン、あなたが実家を出てトールズ士官学院に入学してから、もう約2か月が過ぎようとしています。そちらの生活には慣れましたか? お友達はできましたか?』

 

リィン「アハハ……イツキ姉、心配症だな……」

 

イツキ『私たち、ユミルのみんなは元気にしてますよ。わ、私も元気にしてます。リィンがいない分、ご飯も2倍に食べちゃってるし』

 

リィン「相変わらずなイツキ姉だな……。そういえば、母さんのユミル料理を2ヶ月も食べてないのか……」

 

イツキ『それはそうと、エリゼに頼りは出したのかしら? エリゼから「リィン兄様からお手紙が届きませんの。イツキ姉様、ご存知ないですか?」ってお手紙をもらったのよ。色々思うところがあるかもしれないけど、ちゃんと伝えないと伝わらないわよ』

 

リィンは苦笑いを浮かべた。

 

リィン「イツキ姉には、何でもお見通しか……」

 

リィンが色々悩んだ末に導き出した答え――それはトールズ士官学院への入学であり、在学中に自分の答えを出して、シュバルツァー男爵家を出るということだった。

 

イツキはそのことを知っていた。

 

しかし、彼女自身も同じような立場にあり、何か気の利いた言葉をかけられる立場ではないのだ。

 

リィン「イツキ姉も……悩んでいたんだな」

 

イツキはアストライア女学院に入学し、数年間学んだ後、卒業してユミルに戻ってきた。

 

進路先は色々なところから引く手あまただったが、ユミルの実家を支えたいという思いから、全てを断って帰郷したのだ。

 

リィン「イツキ姉は戻ってきたのに……俺は実家を出ようとしてる……」

 

マキアスのことで既に悩んでいるリィンにとって、この手紙はさらに重くのしかかった。

 

実家を出るつもりでトールズに来たはずなのに、イツキの想いを思うと、自分だけが自由に飛び出して良いのかという思いが湧き上がる。

 

両親は「リィンやイツキの人生なのだから、自由にしていい」と言ってくれている。

 

ユミルに縛られる必要はない。

 

それでも、そこが一番大切な場所だからこそ、大いに悩むのだ。

 

リィンの答えは、まだ出そうにもない。

 

 

エレボニア帝国・トリスタ・トールズ士官学院・ギムナジウム・プール

 

七耀暦1204年5月22日・夜・帝国・トリスタ付近。

 

最終列車がトリスタを発車し、周囲は静寂と煌めく星空に包まれていた。そんな中、一台の黒塗りの導力車が静かに停車した。

 

後部ドアが開き、一人の男が降り立つ。

 

茶毛に緋色の髪が混ざったような髪型で、光井ほのかを男性らしくしたような端正な容姿。服装はきちんと整えられたスーツで、手にはスーツケースを持っている。

 

レオ「ステイル、ここでいいのか?」

 

ステイル「レオ、この辺りでいいだろ。トリスタに近づきすぎても目立つし、副長にも迷惑かけることになる」

 

レオ「お前がそう言うなら俺は何も言わねえ。エリカも何か言ったらどうだ?」

 

エリカ「別に……本当ならちゃんと相談して欲しかったんだけど、いきなり言われても認めるしかないっていうか……」

 

ステイル「すまない、エリカ。なんせ総長からの直々の命令だったからな。副長やハチマンからの報告があるまで、言えなかったんだ」

 

エリカ「……恋人なんだから、少しぐらい話してくれてもいいのに……」

 

レオ「話せないだろ、総長命令ならよ」

 

エリカは不満げに左手を握りしめ、レオの腹にパンチを入れた。

レオは涙目になりながら身をよじる。

 

レオ「な、何すんだよ、エリカ!」

 

エリカ「あんたが分かってること言うからよ」

 

レオ「俺が何したって言うんだよ……なぁ〜ユイ、お前は黙ってないで何とか言ってくれよ」

 

後部座席から、ピンク髪をお団子に結んだユイが顔を出し、レオに話を振られて少し困ったように答えた。

 

ユイ「さっきのはレオ先輩が悪いですよ……それとステイルさんも!」

 

ステイル「俺も悪かったのは分かってる。だから今度、クロスベルのミシュラムワンダーランドに行こう」

 

エリカ「ミシュラムワンダーランド!? それなら許す!」

 

不機嫌だったエリカの表情が一瞬で明るくなり、嬉しそうに笑った。

 

レオ「現金なやつ……」

 

エリカ「なんか言った?」

 

レオ「何にも……」

 

ユイ「ふふっ」

 

ステイル「エリカ、メルカパの方を頼むぞ」

 

エリカ「任せて。あなたがいない間はあたしが守りきってみせるわ。たまには連絡しなさいよ、絶対よ」

 

ステイル「わかってる」ステイルがそう言うと、黒塗りの導力車は帝都方面へ走り出した。

 

ステイルは車が見えなくなるまで手を振り続けた。

 

そして、ゆっくりとトリスタの方を向き、静かに呟いた。

 

ステイル「あれが俺の新しい仕事場か……ハチマンや副長、ロジーヌ、それに彼女もいることだ。楽しくなりそうだな」

 

コツコツと足音を響かせ、ステイルはトリスタの方へ歩き始めた。

 

 

エレボニア帝国・トリスタ付近→帝都ヘイムダルに向かう途中

 

七耀暦1204年5月22日・夜・帝国・西トリスタ街道。

 

ステイルと別れた黒塗りの導力車の中には、エリカ、レオ、ユイの三人が乗っていた。三人はステイルから別の指示を受け、帝都ヘイムダル空港ではなく、近くの草原地帯にメルカパを着陸させていた。正式な訪問なら空港を使うところだが、非公式の行動である以上、こうするしかない。

 

彼らにとってはいつものことだった。導力車が帝都ヘイムダルへ向かう道中、三人は軽い会話を交わしていた。

 

レオ「そういえばユイ、ステイルに伝言頼まなくてよかったのか?」

 

ユイ「伝言?」

 

レオ「士官学院には、副長やロジーヌの他にハチマンもいるみたいだぞ?」

 

エリカ「あのハチマンが士官学院に潜入するために入学したんでしょ?」

 

レオ「そうだな。総長、副長がハチマンを高く買ってるみたいだって、ステイルが言ってたし……強さもあのステイルや副長に引けを取らないらしいぞ」

 

エリカ「そうね。でもあの強さをハチマンは全然鼻にかけないしね」

 

ユイ「ヒッキーは修行をしている時からそんなことを言ってた……」

 

レオ「だからステイルに、ハチマンに何か伝えてほしいことを伝言すればよかったんじゃないか?」

 

ユイ「べ、別にヒッキーにそういう感情は抱いてないし! 同期だから、無理してないかなって思っただけだし! それにあたしの憧れはハヤト君だし!」

 

エリカ「総長の正騎士、ハヤト・ハヤマね」

 

レオ「俺たち男の中でもあいつの評判は高いぞ。イケメンなのに男にも優しいからな」

 

エリカ「女子に黄色い声援飛ばされてるからね」

 

ユイ「そうだよね……」

 

エリカ「難しい恋ほど燃え上がるって言うじゃない。ユイ、頑張って」ユイ「エリカ、人事だと思って……」

 

エリカ「それはそうと、ステイルからの依頼があるからね。行き先は、バリアレス海に浮かぶブリオニア島よ」

 

黒塗りの導力車に乗る三人の行き先は、ブリオニア島に決まったのだった。




エリカ、レオ、ユイのメンバーは次の章で出てくると思います。

ユウのヒロインは誰が良いでしょうか?

  • 1ーエマ
  • 2ーフィー
  • 3ートワ
  • 4ーサラ
  • 5ースミレ
  • 6ーそれ以外(アリサとラウラは除く)
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