アルフィンの軌跡〜トールズ士官学院編〜   作:龍造寺

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第2章麗しき翡翠の都編15話です。


第2章ー麗しき翡翠の都編ー54ー15話ーハチマンとステイル。

 

トリスタ・ケインズ書房→第2学生寮

 

七耀暦1204年5月23日・昼前・帝国・トリスタ・第2学生寮。

 

わたくしとリィンさんは、次の依頼である『代理教師』を務めてほしいと頼まれたクレイン部長が待っていらっしゃる第2学生寮へ向かいました。

 

最初はギムナジウムの方へ行ったのですが、マイン副部長から『クレイン部長は第2学生寮で待っている』と伺ったので、こちらへ引き返してきた次第ですわ。第2学生寮……入学当初、第3学生寮にお風呂場ができるまでこちらでお世話になっていましたわね。

 

わたくしたちが玄関付近でクレイン部長を探していると、掲示板の前で待っていらっしゃいました。

 

アルフィン【クレイン部長、お待たせしましたわ】

 

クレイン「アルフィン、来てくれたんだな。それとリィン君も」

 

リィン「はい。それで家庭教師の仕事を代わってほしいと聞いたのですが?」

 

クレイン「ああ、普段俺がやっているアルバイトになるのだが、急用が入ってしまって行けなくなってしまってな。それで今回、生徒会を頼らせてもらったんだ」

 

アルフィン【そうだったんですね。それでクレイン部長、急用ってのは?】

 

話によれば、クレイン部長のご実家から導力通信が入ったそうです。

 

働きに出ていたお母様が突然倒れたと連絡が来たとのこと。詳しいことはまだわからないようですが、それでクレイン部長がご実家へ帰省されるそうですわ。

 

お母様の危機に息子さんが帰る……それはごく普通のことですわね。

 

リィン「そうだったんですか……」

 

クレイン「ちなみに仕事の場所はこの第2学生寮のすぐ南にある川沿いの邸宅だ」

 

アルフィン【あ、釣り場の近くにあるあの邸宅ですね】

 

クレイン「そういえばアルフィン、そこで釣りをしてたな。で、その邸宅のお子さんのエミール君、窓口になるお母さんの名前はメリッサさんという。あとはそうだな。実際にやるかどうかも含め、全て君たちに任せるよ。メリッサさんの方にも今回はできればという話で伝えてあるからな」

 

アルフィン【なるほど、わかりましたわ】

 

リィン「ちなみに、そもそもで申し訳ないんですが、家庭教師という仕事は経験なくても何とかなるものですかね?」

 

アルフィン【なんとかなるんじゃないでしょうか? わたくしだって、正式に家庭教師をやったことはないですけど、手伝いならやったことありますわ】

 

リィン「そうなのか?」

 

アルフィン【ええ、まあ】

 

クレイン「ちょっとでも経験してればやれると思う。それにうちの学生であれば学力の方に問題はないはずだがな」

 

アルフィン【リィンさんはご兄妹はいらっしゃらないんですか?】

 

エリゼのことも気になりますし、ちょっと聞いてみましょうか。

 

リィン「兄妹? 姉と妹がいるかな。まあ妹に日曜学校のわからないところを教えてたりはしてたけど……」

 

お姉さんもいらっしゃるの!?

 

リィンさんの口から妹がいるっておっしゃったから、エリゼはおそらくリィンさんの妹の可能性が高いですわ。

 

クレイン「そうか、ならそんなに心配いらないだろう。とりあえずエミールくんの所に参考書があるから、それを使って順番に教えてやってくればいい。ちなみに今日教えるテーマは、『導力学』でな。もしその方面で知識に不安があるなら、学院の図書館で下調べするのもいいかもな」

 

リィン「なるほど、わざわざありがとうございます」

 

クレイン「さてとまだ若干時間はあるが、荷物の準備もあるからな。アルフィン、水泳部の方は全部マインの方に任せている。あとは彼女の指示に従ってくれ」

 

アルフィン【わかりましたわ】

 

クレイン「それじゃあこれで失礼させてもらうが、他に聞いておきたいことはないか?」

 

リィン「いえ、多分大丈夫だと思います」

 

アルフィン【任せてくださいませ】

 

クレイン「そうか、よろしく頼んだぞ」

 

クエスト・『代理教師の要請』の依頼を始めますわ。

 

クレイン部長はそうおっしゃると、階段の方へ向かい、2階へ上がっていかれました。

 

リィン「クレイン先輩、大変だな。親御さんに大したことがなければいいんだが……」

 

アルフィン【そうですわね。今は無事であることを祈ることしかできませんわ】

 

リィン「そうだな。それはともかく教えるのは『導力学』だったか。アルフィンは導力学の方、教えられるか?」

 

アルフィン【『導力学』は得意な方ですので、何とか教えられるとは思いますわ】

 

リィン「そうか。学院の図書館でちょっと勉強していこうかと思ったが、アルフィンが得意ならなんとかなりそうかな」

 

アルフィン【リィンさん、不安があるならこれから図書館で軽く勉強しませんか? わたくしが教えて差し上げますわ】

 

リィン「アルフィン、いいのか?」

 

アルフィン【まだ家庭教師の時間まで時間はありますし、リィンさんのわからないところを教えて差し上げますわ】

 

こうしてわたくしとリィンさんは、家庭教師に向かう前にトールズ士官学院の図書館で『導力学』の勉強を軽く復習するのでした。

 

トリスタ・第2学生寮

 

七耀暦1204年5月23日・昼前・帝国・トリスタ・第2学生寮・用務員用部屋①。

 

アルフィンとリィンがクレインの代理で家庭教師に向かう準備として図書館で勉強している頃、第2学生寮の用務員用部屋では、ハチマンとステイルが荷物を解いていた。

 

ハチマン「……というかマジでアンタまで来るとは思わなかったぞ」

 

ステイル「まあ、これには色々とあってな」

 

ステイルはふてくされたハチマンの様子を見ながら、淡々と説明を始めた。

 

まず、ステイル自身がトールズ士官学院に来た理由は、オリヴァルトからの頼みと副長からの依頼が重なったからだ。オリヴァルトからは『士官学院の用務員の人数を増やすから来てみないか』と連絡があった。

 

前々からトールズ士官学院には興味があり、一度行ってみたいと思っていた。学生としてではなく、用務員としてならちょうどいいと考えたのだ。

 

ハチマンを学生として入学させた後、上空を飛んだ際に古びた旧校舎から何かを感じ取り、それ以来調べていたのだが、ほとんど何も掴めなかった。

 

リベールで知り合ったオリヴァルトに旧校舎のことを尋ねたところ『用務員募集の話がある。自分で調べるのが早いのではないか』と言われた。

 

ステイルはすぐに副長や総長に相談し、許可を得て用務員として潜入したのだ。

 

ハチマン「って……あの放蕩皇子からそんなことを言われたのか……確かにあの旧校舎は異常だと思うぞ。入学式のオリエンテーションの時より、先月にリィンたちと探索に入った時には、中の構造が全く変わっていたんだからな」

 

ステイル「中の構造が全く違うか……それって共和国に突如出てきたとされた『メメントス』や『タルタロス』みたいなものってことなのか……?」

 

ハチマン「……分からない。構造が変わったと言っても先月だけだからな」

 

ステイル「先月だけか。今月もお前たちⅦ組は探索をするんだろ?」

 

ハチマンはステイルの荷物を出しながら頷いた。

 

ハチマン「俺はただの1クラスメイトに過ぎないからな。決定権があるのはリィンとアルフィンだけだ」

 

ステイル「そうか、その2人が……なんとも不思議な縁だな」

 

ハチマン「そういや、アルフィンとはリベールの異変の時に会ってたんだよな」

 

ステイル「まあな。エステルたちと一緒にいたところにちらっと。結社の連中との戦いの最中だったから話すことはなかったんだが……せっかく士官学院に来たんだ、話してみるのもありかな」

 

ハチマン「そういうのってナンパって言うんだぜ。アンタにはエリカという恋人がいるのによ、別の女に話しかけるってか」

 

ステイルはため息を吐きながらハチマンを見た。

 

ステイル「別に話すだけでナンパってわけじゃねえだろ。色々と話しておきたいこともあるしな」

 

ハチマン「ま、まあ、さっきのは冗談だ、冗談。アンタがそんな器用なことができるわけないっていうのは俺もわかっているからな」

 

ステイル「それって褒められてるのか?」

 

ハチマン「アルフィンの件はわかったとして、リィンの方も知ってそうな感じだったよな?」

 

ステイル「まあな。帝都のアストライア女学院の臨時の音楽教師として、オリヴァルトに頼まれて行ったことがある。その中に請け負ったクラスの中に彼の妹がいたんだ。彼女から話しかけられてな。それで色々話してたら兄と姉がいることも分かったんだ」

 

ハチマン「血の繋がらないってやつか……」

 

ステイル「お前知ってたのか?」

 

ハチマン「いや、俺は別に知るつもりはなかったんだが、先月の特別実習が終わった後にリィンが自分たちを騙していたと言って、謝罪の後にそういう話をしてくれた。リィンがシュバルツァー男爵の本当の息子ではないことも……」

 

ステイル「そうか……」

 

ステイル・アレフガルド。これは養父から受け継いだ名前だ。先代ステイル・アレフガルドはこの世にはもういない。

 

彼がステイルを継承する前の最後の試練で力が暴走し、それを止めるために先代は命と引き換えに彼を守った。

 

彼の本当の名前は、カズヤ・ミツイ。東ゼムリアの国、日本の人間。彼もまた残酷な運命に翻弄された一人である。大切なクラスメイトや恩師を失い、大切な親友や最初の恋人も目の前で奪われ、怒りのまま力を目覚めさせた。

 

力のまま、襲ってきた大清の猟兵団、特殊部隊、司令塔まで、一瞬で消し去ってしまった。

 

それを見ていた結社のアリアンロードとレーヴェは、彼を力ずくで止め、無力化した。

 

結社の盟主はカズヤを仲間に引き入れようとしたが、アリアンロードが反対し、レーヴェもそれに同調した。

 

彼らはカズヤの何かを見て、そう思うことになったのだ。こうしてカズヤは、敵方でもある七耀教会の守護騎士の先代ステイル・アレフガルドに預けられた。

 

……と、まあカズヤの話は今は置いといて。ステイルは窓の外を眺めながら苦笑いを浮かべた。

 

ステイル「妹が言うには、兄の態度がそっけないと……な。彼女からしたらもっと兄と話したいみたいだからな。俺も妹がいたもんだからな。なんとなく兄の気持ちもわからなくもない」

 

ハチマン「日本時代のか?」

 

ステイル「まあな。あの国でもまあ能力が無いと色々とな。妹の方は優れてたからな。それに比べて俺は……」

 

ハチマン「……昔のあんたは知らんけど、今のあなたはすごいんだ。だから胸を張って生きてりゃいいってこったろ?」

 

ステイル「ハチマン、俺を励ましてくれるのか。まあ、そういうならお前もすごいってこったろが」ステイルはニヤニヤしながらハチマンの肩を叩いた。

 

ステイル「改めて、これからよろしくな」

 

ハチマン「ああ、こちらこそな」

 

ハチマンは、ステイルが来てくれたおかげで、少し肩の荷が降りた気がした。副長とロジーヌだけだと、ちょっと息が苦しかったのもあるからだ。

 

ふと窓の外を見てみると、リィンとアルフィンが士官学院の方から歩いてくるのが見えた。

 

ハチマン「今月も生徒会の依頼をやっているのか」

 

そう、小声で呟いて、ステイルの荷物を箱から出すのであった。

ユウのヒロインは誰が良いでしょうか?

  • 1ーエマ
  • 2ーフィー
  • 3ートワ
  • 4ーサラ
  • 5ースミレ
  • 6ーそれ以外(アリサとラウラは除く)
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