アルフィンの軌跡〜トールズ士官学院編〜   作:龍造寺

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第2章麗しき翡翠の都編16話です。


第2章ー麗しき翡翠の都編ー55ー16話ー昼間の出来事。

 

トリスタ・第2学生寮

 

七耀暦1204年5月23日・昼・帝国・トリスタ・第2学生寮・用務員用部屋②

 

そして、ステイルともう一人の人物が用務員として潜入していた。アッシュグレーの髪に、整った顔立ちの青年。いわゆるイケメンと呼ばれる部類で、背も高く、穏やかで明るい雰囲気をまとっている。ユウ・ナルカミ。

 

彼は共和国で探偵業を営んでいる。アラミス高等学校の卒業生であり、卒業後は数多の引き手があったが、仲間の探偵業を引き継いで探偵となった。その仲間がCIDへ入ることになったためだ。

 

探偵業の仕事を通じてリベールの異変に関わり、裏側でエステルたちを支えていた。

 

かつて共和国でトオル・アダチによる黄泉の国計画を阻止した中心人物であり、自称特別捜査隊のリーダーでもあった。黄泉の国計画の他にも小さな事件をいくつか解決し、自称特別捜査隊の評価はCIDや軍上層部、政府関係者の目に留まった。彼らをひき抜こうとする動きがあったが、無理強いを嫌ったミツル・キリジョウやサナダたちの反対でそれは回避された。

 

そして仲間のナオト・シロガネがCIDに入ることにより、ユウたちの安全な生活が保障された。

 

それでユウは、ナオトの探偵業を引き継いだのだ。今回、CIDのナオトから新たな依頼が舞い込んできた。

 

『帝国のトリスタにあるトールズ士官学院の旧校舎の調査』

 

ユウも最初は、なぜ帝国の士官学院の旧校舎調査という依頼が自分に来たのかわからなかった。

 

自力で調べられるものは調べたが、共和国に帝国の詳細な情報が載った本などほとんどない。書房や図書館を回ったが、トールズ士官学院のことを詳しく記したものは見つからなかった。リベールの異変で知り合ったオリヴァルトに相談すると、『用務員の募集がある。用務員になって自分で調べるのが早いのではないか』と言われた。

 

ユウは少し悩んだが、他に手はない。オリヴァルトの助言は渡りに舟だった。そして、彼を陰ながら支えていたイゴールとマーガレットは、黄泉の国計画やその他諸々以来会うことはなかったが、今回の件で再びベルベットルームに呼ばれた。

 

ユウが激動の運命の歯車に立ち向かわなければならないと。そのために再び支えていくこと、そしてあの時と同じように絆というコミュニティを築くようにと伝えられた。

 

ユウ「旧校舎の調査もあるけど、まずは生徒たちと仲良くなる必要があるな」

 

第2学生寮は、第1学生寮と違い寮母やお手伝いさんがいるわけではない。学生が自ら家事全般をしなければならない。だから食事は、トリスタのキルシェや士官学院の学生会館の学生食堂で済ませる者も多い。

 

ユウ「食事ぐらいは俺が作ってもいいだろう。食材等は学院長に相談する必要あるな」

 

ユウは荷ほどきをしながら、どんな料理を作るか頭に浮かべ、生徒たちとのコミュニケーションを楽しみにしていた。

 

 

トールズ士官学院・本校舎・屋上

 

七耀暦1204年5月23日・昼・帝国・トリスタ・トールズ士官学院・本校舎・屋上。

 

太陽が真上に昇った真昼、赤髪を赤いリボンでポニーテールにした緑の制服の女子生徒が、屋上の片隅で誰かと通信をしていた。

 

スミレ・ヨシザワだ。

 

彼女が使っているのはARCUSではなく、ENIGMAだった。

 

通話の相手は……

 

ジュディス・ランスター。

 

共和国の芸能界で映画女優として急速に台頭してきた期待の若手。イチカ・ナカノ、ユカリ・タケバ、リセ・クジカワのライバルとして注目を集めている。

 

なぜそんな彼女がスミレと知り合いなのかといえば、互いに調べていたある一件で鉢合わせたのがきっかけだった。

 

 

スミレはヴァイオレットとして、ジュディスは怪盗グリムキャッツとして。

 

一度は互いに戦い、色々と言い合ったが、最後は協力して問題を解決した。解決後に正体を明かし合い、互いの秘密を守り合うことを約束して、友となったのだ。

 

その話は一旦置いておいて、今は――

 

スミレ「そうですか、何もなかったんですね」

 

ジュディス「色々と調べてみたけど、マサヨシ・シドウと関わりのあった連中はみんな特別な刑務所に入れられたまんまみたいよ」

 

スミレ「シドウはともかく、間接的に関わっていた人間は裁判で判決も確定して服役してますから。ただ……嫌な予感もしてます……」

 

ジュディス「スミレ、何者かが一派を脱獄させるんじゃないかってことよね?」

 

スミレは赤髪のポニーテールを風に揺らしながら、真剣な表情で頷いた。

 

スミレ「ええ、私の第六感がそう言ってるんです。帝国にも共和国にも不穏な空気が漂い始めてます……」

 

ジュディス「不穏な空気ね……スミレほどじゃないけど、私も少しはそれを感じるわね。まあ、私は裏から色々と探ってみるわ。表の方はイチカが何やら動いてるみたいだしね」

 

スミレ「イチカさんが?」

 

ジュディス「イチカも色々と何かを感じ取ってるみたいよ。横のつながりで色々やってるみたいだし。スミレ、あなたはあなたの役目を務めなさい。こっちはこっちで私が何とかしてるから」

 

スミレ「お願いします、ジュディスさん」

 

そう言って通信を終え、ENIGMAを懐にしまうスミレ。

 

ふと北東の方向に視線を向けた。そこには旧校舎がある。彼女も旧校舎の不自然さに気づいていた。

 

スミレ「……旧校舎、3月のオリエンテーション以来、少しずつ違和感を感じる……そして今月も先月までとは違う魔力の流れ?」

 

スミレのペルソナ、サンドリヨンが旧校舎の魔力に反応を示しているのだ。

 

スミレ「サンドリヨンが先月よりもよりよく反応してる……」

 

スミレは旧校舎の方向を見ながら考え込んでいたが、それで何かがわかるわけではない。

 

だが、アルフィンたちの調査で分かったことは、オリエンテーションの日と先月の探索時では地下の構造が全く変わっていたこと、謎の装置があったこと、階段の部屋も小さくなっていたことなど。不可思議なことがあの旧校舎で起きているのだ。

 

スミレ「……入るたびに構造が変わるメメントスみたいなもの……?」

 

メメントス――人の集合的無意識が形成した『大衆のパレス』とも言える場所。

 

メメントスは、タクト・マルキとの戦いの後に消滅したはずだったが、スミレはペルソナのサンドリヨンを現実世界でも出せるようになった。

 

認知世界でしか出せないと思っていたペルソナが現実世界で出せるようになったのは、自分の懐にあったあの仮面の力だった。その仮面をつけると、ヴァイオレットに変身できたのだ。

 

そしてスミレの元から離れていった先輩たち、レンとユキナ。仮面をつけた男女2人組が、不思議な守護霊を出して戦ったことがあると、知り合いの遊撃士ジンから聞いたこともある。

 

スミレ「……先輩たちもこの仮面を見つけて……」

 

スミレは、先輩たちがなぜ自分の前から消えたのかを知りたかった。2人が結社に入ったのも分からなくはない。ユキナが憧れていたお姉さんが結社の人間だったから、そしてレンはそんな彼女を支えると誓ったから。それだけではなく、全体的に大人たちへの不信があったからだ。

 

スミレ「もし先輩たちと戦うことになったら、私は戦えるの?」

 

グラウンドからラクロス部の練習する声や馬術部から聞こえる馬の鳴き声、そして風の音。

 

スミレ自身も色々と考え、悩みながら、少しずつ前へ進んでいるのだ。

 

スミレ「……ううん、私は私の信じる道をいくって決めたのだから」

 

ユキナやレンが結社の人間として敵として立ち塞がるのなら、自分自身でそれを止めなければいけないと決意したのだから。

 

怪盗団の仲間もみんなそれぞれの道を歩み出している。たとえそれが違う道を歩んだとしても。

 

スミレはそっと握り拳を作り、気持ちを抑えて休憩時間を終えるのであった。

ユウのヒロインは誰が良いでしょうか?

  • 1ーエマ
  • 2ーフィー
  • 3ートワ
  • 4ーサラ
  • 5ースミレ
  • 6ーそれ以外(アリサとラウラは除く)
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