アルフィンの軌跡〜トールズ士官学院編〜   作:龍造寺

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第0章トールズ士官学院入学編4話です。


第0章ートールズ士官学院入学編ー5ー4話ーオリエンテーリング。②

 

七燿暦1204年3月31日・午前・エレボニア帝国・トールズ士官学院・旧校舎を見下ろせる丘

 

アルフィンたちがサラ教官によって旧校舎の地下に落とされたその頃、旧校舎を見下ろせる丘の上に、複数の男女と一人の女性教官が集まっていた。

 

その中には、士官学院正門でアルフィンたちを出迎えた小柄な茶色の髪の女子生徒と、作業着姿のふくよかな男子生徒もいた。彼らがこれからアルフィンたちと深く関わっていくことになるが、今のアルフィンにはまだわからない。

 

ライダースーツを着た女子生徒とバンダナを巻いた男性が何か話していると、赤毛をポニーテールにした緑の制服の女子生徒と、大人の女性らしい落ち着きを持つ女性教官が近づいてきた。

 

???「アンもクロウも、ふざけてないで後輩たちをちゃんと見守りましょうよ?」

 

赤毛のポニーテールの女子生徒は、スミレ・ヨシザワ。東方系の出身だと自称しているが、これは彼女が都合よくそう言っているだけかもしれない。大人の女性らしい女性教官は、マユミ・アレイスター。小柄な茶色の髪の女子生徒はトワ、作業着姿の男子生徒はジョルジュ、クロウ、アンゼリカ、スミレ、そしてもう一人が入学した際、マユミも教官としてトールズ士官学院に赴任してきた。彼女もまた、東方系の出身らしい。

 

クロウは肩をすくめ、軽い調子で答えた。

 

クロウ「ちゃんと見守ってるつもりだぜ、マユミ教官」

 

アンゼリカは、いつもの気さくな笑顔でスミレに絡む。

 

アンゼリカ「スミレもさ、そんなに肩肘張らずにやればいいじゃん? な、マユミ教官?」

 

マユミは微笑んだが、その目は笑っていない。

 

マユミ「クロウくん、アンゼリカ、スミレの言う通りよ。あの旧校舎の仕掛け……あなたたちが作ったんでしょ? ちゃんと後輩ちゃんたちが無事に出てくるまで見守るのが筋ってものでしょ?」

 

クロウとアンゼリカは、マユミの笑顔が本物の怒りを隠していることに気づいた。過去に何度かこの【「笑顔の圧力」】で痛い目を見ている2人は、思わず背筋を伸ばす。

 

クロウ「……おっしゃる通りです、マユミ教官」

 

アンゼリカ「右に同じく」

 

その時、正門にいた作業着姿のジョルジュが口を開いた。

 

ジョルジュ「マユミ教官、旧校舎でのオリエンテーリングは始まったんですか?」

 

マユミ「ええ、サラ教官から今から始めると連絡があったわ」

 

ジョルジュ「ついに始まったんですね」

 

そこへ、もう一人の女子生徒が駆け寄ってきた。白の制服を着た彼女は、エメラルドグリーンのゆるふわな髪に、ブルーとレッドのオッドアイが印象的。まるで『IS』のセシリアを大人っぽくしたような雰囲気だ。

 

???「マユミ教官、マユミ教官!」

 

マユミ「シェルファニール、どうしたの? そんなに慌てて?」

 

シェルファニール「サラ教官から苦情が寄せられまして。何やら火薬の量が多かったとかで……」

 

マユミは無言でクロウとアンゼリカを睨んだ。その無言の圧力に、二人は完全に言葉を失い、冷や汗をかいている。

 

トワが、心配そうに尋ねた。

 

トワ「マユミ教官、後輩さんたちは大丈夫なんですか!?」

 

シェルファニール「トワ、サラ教官からは【『あの子たちは大丈夫』】って言われたけど、確認まではできてないわ」

 

スミレは旧校舎の方をじっと見つめ、何かを呟いているようだった。

 

スミレ「……うん、大丈夫……みんな無事みたい」

 

クロウが怪訝そうに声をかける。

 

クロウ「どうした、スミレ? ぶつぶつ言って?」

 

スミレ「え、私、何かブツブツ言ってた?」

 

クロウ「あー、なんか聞こえた気がしたんだが。気のせいだったか?」

 

スミレ「あ、えっと……金髪の女子生徒、どこかで会ったことないかな? なんてね」

 

アンゼリカが反応した。

 

アンゼリカ「一番後ろにいた女子生徒だろ? あたしもどこかで会った気がしてたんだ。スミレもそう思うなら、ただの気のせいじゃないかもな」

 

クロウ「アンゼリカの場合、ナンパかなんかで会ったんじゃねえの?」

 

アンゼリカ「そうかもしれないけど……なんか違うんだよな……」

 

クロウ「お前の話はまあ置いといて。今は、歓迎会が始まった新入生たちを見守るとするか。ま、頑張ってくれよ、新入生達!」

 

 

七燿暦1204年3月31日・午前・エレボニア帝国・トールズ士官学院・旧校舎地下。

 

わたくしは足から綺麗に着地し、すぐに地下の空気に気づきました。カビの匂いと埃っぽさが漂う、まさに長年使われていない場所そのもの。閉ざされた扉と、何かの台座があるだけの殺風景な空間ですわね。

 

ふと、金髪の女子生徒が何やら怒っているのが目に入りました。近くにいるハチマンさんに、様子を聞いてみることにしました。

 

アルフィン【ハチマンさん、金髪の女子生徒さんと黒髪の男子生徒さん……何かあったんですか?】

 

ハチマン「……ラッキースケベイベントだな」

 

アルフィン【ラッキースケベイベント、ですか……】

 

ハチマン「……まあ、大方、あの黒髪のヤツが金髪の女を助けようとして、なんかやらかしたんだろうな」

 

アルフィン【そうですか】

 

黒髪の男子生徒が金髪の女子生徒を助けようとして、それが思わぬハプニングに繋がったということらしいですわね。

 

ふふっ、なんだか当麻さんを思い出しますわ。

 

わたくし、当麻さんのようなヒーローになりたい……いえ、当麻さんの横に並び立つ、相応しい相棒になりたいと、ずっと願ってきました。

 

でも、わたくしが彼に相応しかったかなんて、今さらわかるはずもありませんわね。

 

大賢者が割り込んできました。

 

大賢者「解。そういう気持ちが、マスターを女の子に転生させたのでしょうね」

 

アルフィン【……一番最初のあの世界から、ずっとわたくしは……いえ、正式には、わたくし、アルフィンで二度目ですわね。一度目は……】

 

大賢者「解。光井和也として生まれるはずだったあの世界で、女の子として生を受けたのでしたね」

 

アルフィン【わたくしが存在するのに、光井家には和也も誕生していましたわね……】

 

わたくしは、ユーフェミアという名前で、四葉真夜の娘でした。あの時の記憶が正しければ、四葉家は学園都市と協力し、生殖能力がない人間でも子を成す技術を開発。それによって生み出されたのが、あの世界のわたくし……そして、あの世界の光井和也。彼は、当麻さんのような人でした。

 

これは女神たちの計らいでしょうか……いいえ、あれは憎き存在……このエレボニア帝国の呪いが全てを……あの美しい世界を……

 

前世の記憶に浸っていると、ハチマンさんが心配そうに声をかけてきました。

 

ハチマン「大丈夫か、アルフィン? なんか顔色悪くねえか?」

 

アルフィン【顔色? 全然悪くありませんわ。ちょっと嫌なことを思い出して……】

 

ハチマン「どこか悪いならちゃんと言えよ。あの教官に言ってやるから」

 

アルフィン【ハチマンさん、ありがとうございます。もう大丈夫ですので】

 

わたくしとハチマンさんがそんな会話をしていると、突然、パンフレットと一緒に渡されていた帝国製の戦術オーブメント――ARCUS(アークス)から、着信音が一斉に鳴り響きました。

 

リベールやクロスベルのENIGMA(エニグマ)よりも最新だと、オリビエ兄様とタツヤ・ラインフォルトさんが話していたのを、つい聞いてしまったことがありますわ。タツヤさんのことは、また後でお話ししますわね。

 

 

わたくし達は、それぞれARCUS(アークス)の通話ボタンを押しました。すると、サラ教官の声が響いてきました。

 

サラ「【さっきは自己紹介できなかったわね。あたしはサラ・バレスタイン。今日から君たち【Ⅶ組】の担任を務めさせてもらうわ。よろしくね】」

 

緑の髪でメガネをかけた男子生徒や、赤毛の男子生徒、メガネをかけた女子生徒、青髪の女子生徒たちが驚いた表情を浮かべています。

 

???「な、Ⅶ組……!?」

 

???「それに『君たち』って……?」

 

???「ふむ、聞いていた話とは違うな」

 

???「あの、サラ教官? この学院の1学年のクラスは5つだと記憶していますが? それも、身分や出身に応じたクラス分けで……」

 

サラ「【お、さすが首席入学。よく調べてるじゃない】」

 

オリビエ兄様の提案で、今年からトールズ士官学院に新設された、身分や出身に関係なく一緒に学ぶクラス――特科クラス《Ⅶ組》。

 

陰でこのクラスを支えている方々がたくさんいらっしゃいます。Ⅶ組が成功するか、失敗するかは、わたくしたちにかかっているんですわ。

 

サラ「【そう、5つのクラスがあって、貴族と平民で分けられていたわ――あくまで❝去年❞まではね】」

 

???「え……」

 

???「そんな話、聞いたことありませんわ!」

 

メガネをかけた女子生徒や金髪の女子生徒が驚いていますが、ほぼ全員が驚いていると言っても過言ではありません。ハチマンさんは、ずっとわたくしを睨んでいますし……。

 

サラ「【今年からもう一つ、クラスが新設されたのよ。すなわち、君たち――身分に関係なく選ばれた特科クラス《Ⅶ組》がね】」

 

???「特科クラスⅦ組……」

 

???「身分に関係ないって、本当なんですか?」

 

???「じ、冗談じゃない!」

 

戸惑う生徒たちの中、緑の髪でメガネをかけた男子生徒が大声で叫びました。

 

???「身分に関係ない!? そんな話、聞いてませんよ!」

 

サラ「えっと、確か君は……」

 

マキアス「マキアス・レーグニッツです!」

 

レーグニッツ……どこかで聞いた名前ですわ。確か、帝都知事のカール・レーグニッツ閣下。帝国時報でよくお名前を拝見していました。もしかして、マキアスさんはそのご子息かしら?

 

大賢者「解。彼はマキアス・レーグニッツ、カール・レーグニッツのご子息です。母親はおらず、父親に育てられたようです」

 

アルフィン【父子家庭も珍しくありませんわ】

 

大賢者「解。共和国や学園都市、日本ならそうかもしれませんが、帝国ではまだ珍しく、陰でヒソヒソ話されることもあるようです」

 

アルフィン【大賢者、そうかもしれませんけど……何か事情があるのでしょう。余計な詮索はなしですわ】

 

大賢者「了」

 

マキアス「それよりも、サラ教官! 自分はとても納得できません! まさか貴族風情と一緒のクラスでやっていけと言うんですか!?」

 

サラ「ふ~ん、そう言われてもねぇ。同じ若者同士なんだから、すぐに仲良くなれるんじゃない?」

 

マキアス「そんなわけないでしょう!」

 

サラ教官に訴えても、どうにもならないと思いますわ。このクラスの組み合わせは、オリビエ兄様や他の協力者たちが決めたもの。わたくしやサラ教官に変えられるものではありません。

 

マキアスさんがなぜそこまで貴族を嫌うのか、わからないでもありませんが……。

 

マキアスの隣にいた金髪の男子生徒――もしかして、ユーシス・アルバレアさんかしら? 昔、リーゼ姉様と彼が話しているのを見たことがありますわ。

 

ユーシス「フン……」

 

マキアス「……君、何か文句でもあるのか?」

 

ユーシス「別に。❝平民風情❞が騒がしいと思っただけだ」

 

マキアス「これはこれは……どうやら大貴族のご子息殿が紛れ込んでいたようだな。その尊大な態度……さぞ名のある家柄と見受けるが?」

 

ユーシス「ユーシス・アルバレア。❝貴族風情❞の名前ごとき、覚えてもらわなくても構わんが」

 

ユーシスさんの名前――いや、アルバレアの名を聞いた瞬間、皆が驚きました。長身の男子生徒、赤髪の男子生徒、銀髪の女子生徒を除き、わたくしとハチマンさんも含めて、ほとんどの生徒が動揺しています。

 

アルバレア家は、エレボニアの四大名門の一角。帝国東部のクロイツェン州を治めるアルバレア公爵家の名は、良くも悪くも知れ渡っています。州都バリアハートや、交易で栄えるケルディックは特に有名ですわね。

 

マキアスさんは怯まず、ユーシスさんに食ってかかります。

 

マキアス「だからどうした!? その大層な家名に誰もが怯むと思ったら大間違いだぞ! いいか、僕は絶対に――」

 

サラ教官が手を叩き、仲裁に入りました。

 

サラ「はいはい、そこまで! 色々あるとは思うけど、文句は後で聞くわ。そろそろオリエンテーリングを始めないとね~」

 

???「オリエンテーリング……それって一体、何なんですか?」

 

???「野外競技の一種なら聞いたことありますけど……」

 

メガネをかけた女子生徒や金髪の女子生徒が、サラ教官に質問しています。そんな中、黒髪の男子生徒が鋭い指摘をしました。

 

???「サラ教官、正門で預けたものと関係があるんじゃないですか?」

 

サラ「へぇ~、いいカンしてるわね。オリエンテーリングに行く前に、君たちが今持ってるソレについても話さないとね。これは特注の《戦術オーブメント》よ」

 

サラ教官によるARCUS(アークス)の説明が始まりました。

 

サラ「これはエプスタイン財団とラインフォルト社が共同で開発した、次世代の戦術オーブメント。第5世代戦術オーブメント、【ARCUS】よ」

 

???「ARCUS……」

 

???「戦術オーブメント……魔法(アーツ)が使える特別な導力器のことですね」

 

サラ「そう。結晶回路(クオーツ)をセットすることで魔法(アーツ)が使えるようになるわ。というわけで、各自受け取りなさい」

 

サラ教官がそう言うと、台座の方でガコンという音が響きました。

 

わたくしたちの視線の先、台座の上には、正門で預けた得物が置かれていました。

 

マキアスさんとユーシスさんは、すぐに自分の得物がある場所へ移動。他の生徒たちもそれにつられ、台座へと向かいます。

 

ハチマン「さてと、俺達も移動するか」

 

アルフィン【そうですわね】

 

わたくしとハチマンさんも、得物が置かれた台座に近づきました。

 

台座には箱が置かれており、箱を開けると、中には結晶回路(クオーツ)が入っていました。

 

大賢者が教えてくれます。

 

大賢者「告。それはマスタークオーツと呼ばれるものです」

 

アルフィン【マスタークオーツ、ですか】

 

サラ「それは『マスタークオーツ』よ。ARCUSの中心に嵌めれば、魔法(アーツ)が使えるようになるわ。さあ、セットしてみなさい」

 

わたくしたちは、ARCUS(アークス)の中心にマスタークオーツを嵌め込みました。

 

すると、わたくしたちとARCUS(アークス)が光り出しました。

 

サラ「君たち自身とARCUSが共鳴・同期した証よ。これでめでたく魔法(アーツ)が使えるようになったわ。他にも面白い機能が隠されてるんだけど……ま、それは追々ってところね。それじゃ、さっそく始めるとしますか」

 

サラ教官がそう言うと、閉ざされていた扉がガラリと開きました。

 

サラ「そこから先のエリアはダンジョン区画になってるわ。割と広めで入り組んでるから、ちょっと迷うかもしれないけど……無事終点までたどり着ければ、旧校舎1階に戻れるわ。ま、ちょっとした魔物が徘徊してるんだけどね」

 

大賢者が補足します。

 

大賢者「解。魔物とは、人工的に作り出された魔獣のこと。学園都市が訓練用に魔獣を製造し、軍や猟兵、遊撃士の育成に活用しています。野生の魔獣を調教する場合もあります」

 

アルフィン【訓練用の魔物ですか。遊撃士の訓練でも使われますよね】

 

大賢者「解。はい、遊撃士の育成にも活用されています」

 

アルフィン【なるほど】

 

サラ教官の声が一段と高まります。

 

サラ「それでは、これより士官学院・特科クラス『Ⅶ組』の特別オリエンテーリングを始めます! 各自、ダンジョン区画を抜けて旧校舎1階まで戻ってくること。文句があったらその後に受け付けてあげるわ。なんなら、ご褒美にほっぺにチューしてあげるわよ♪」

 

そう言い残し、サラ教官はARCUS(アークス)の通話を切りました。

 

つまり、このオリエンテーリングのミッションは、ダンジョン区画を抜けて旧校舎1階まで戻ること。

 

わたくしは心の中で気合いのポーズを取りました。さあ、始めましょう!

 

ユウのヒロインは誰が良いでしょうか?

  • 1ーエマ
  • 2ーフィー
  • 3ートワ
  • 4ーサラ
  • 5ースミレ
  • 6ーそれ以外(アリサとラウラは除く)
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