アルフィンの軌跡〜トールズ士官学院編〜   作:龍造寺

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第3章鉄路を越えて編10話です。


第3章ー鉄路を越えて編ー86ー10話ーそれぞれのお昼。①

 

エレボニア帝国・トリスタ・雑貨屋・ブランドン

 

七燿暦1204年6月20日・昼前 帝国・トリスタ・雑貨屋・ブランドン。

 

アルフィンとリィンが西トリスタ街道で導力バイクの能力テストをしている頃、Ⅶ組のハチマンとラウラは雑貨屋ブランドンにいた。ハチマンはトマス教官の手伝いが早く終わったため、トリスタをぶらぶらしていたところ、水泳部の休憩中に町へ来ていたラウラと合流し、一緒に店に入ったのだった。

 

ラウラ「それにしても色々とあるものだな。小物などにはあまり親しみがなかったが……なあ、ハチマン。❝年頃の女子❞とは、どんなものを好むのだ?」

 

ハチマン「は? なんだよ、いきなり」

 

ラウラ「……最近、同年代の女子との感覚のずれに気づかされてな。この間、モニカやアルフィンが可愛らしい小物を選ぶ横で、私は前の手入れ道具を物色していた。これは同年代の女子として、かなりずれているのではないか?」

 

ハチマンはため息を吐き、頭を軽く掻きながらラウラを見た。

 

ハチマン「年頃の女子は、剣なんか振り回さないからな。剣より可愛いものに興味が行くのかもしれない。でもな、周りに合わせて自分を押し込めることが正しいとは思わない。俺は、剣を振ってるラウラの方がカッコいいと思うぜ。まあ、可愛いものにキャーキャー言う女子が男子受けするのかもしれないが……ラウラはラウラだ。他の誰でもない。お前が無理して変わる必要なんてないんだよ」

 

ラウラ「……ハチマン」

 

ラウラは真っ向からそう言われ、自分の中で何かが変わっていくのを感じた。しかし、それが恋だと気づくまで、まだ時間が必要だろう。

 

ハチマン「ったく、俺は何を言ってるんだ……ステイルみたいなクサいこと言ってしまったぜ」

 

ハチマンは自分の言葉に少し恥ずかしくなったのか、棚に置かれたみっしぃのぬいぐるみを手に取り、カウンターで精算した。そしてそれをラウラに差し出した。

 

ハチマン「ほら、ラウラ。いつもこれ気にしてただろ」

 

ラウラ「ハチマン……そなた、これを私に?」

 

ハチマン「ああ、まあ……中間テストの勉強を教えてくれた礼みたいなもんだ」

 

ラウラ「そのことか、別に私は礼には及ばないぞ」

 

ハチマン「ラウラが良くても、俺が礼をしたいんだよ」

 

ラウラ「ハチマン……ありがとう」

 

ラウラはハチマンが買ってくれたみっしぃを大事に抱きしめた。そして知らず知らずのうちに、彼女はハチマンに相応しい女性になろうという想いを、心の隅に芽生えさせていた。

 

ラウラ「ハチマン、そなたの❝私は私らしくいればいい❞という言葉、心に響いた……また機会があれば、こうやって一緒にいてくれないか?」

 

ハチマン「ああ、構わないぜ」

 

こうして、ハチマンとラウラの絆はより深まったのだった。

 

 

エレボニア帝国・トリスタ・花屋前(ガーデニングショップ)

 

七燿暦1204年6月20日・昼前 帝国・トリスタ・花屋前(ガーデニングショップ)。

 

同時刻、用務員のユウはトリスタと士官学院の間を行ったり来たりしていた。生徒会の依頼以外にも雑務があり、それをコツコツこなしていたのだ。一区切りがついて町を歩いていると、Ⅶ組のフィーと鉢合わせした。

 

ユウ「フィー、随分と熱心に花を見ていたみたいだな?」

 

フィー「なんだ、ユウか。そだよ、園芸部で花を育てることになって。道具も一通り揃えないと」

 

ユウ「そうなのか。じゃあ、この俺も手伝うよ。以前、従妹と家庭菜園をやっていたからな」

 

フィー「ふーん、まあいいよ。それじゃ、あとはヨロシク」

 

ユウ「いやいや、手伝うとは言ったけど、全部やるとは言ってないぞ!」

 

フィー「ちぇ」

 

ユウ「ちぇ、じゃない。何事も自分でやらないと始まらないぞ」

 

フィー「うー」

 

ユウはフィーをなだめながら、花屋に置かれた花々を見た。

 

ユウ「花と言っても種類がいろいろあるからな。フィーは何か育てたい花でもあるのか?」

 

フィー「一応」フィーは種子の入った小さな袋を取り出してユウに見せた。

 

ユウ「これは?」

 

フィー「名前も知らない花の種。団にいた頃にもらって……なんとなく今まで持ってた」

 

ユウは、フィーが猟兵団出身であることを知っていた。サラやマユミ、そして本人からも聞いていたからだ。

 

ユウ「……そうだったのか。その育て方とかは分かっているのか?」

 

フィー「一応、教えてはもらった。❝あとは愛情を持って育てられるかどうかだ❞なんて、冗談めかして言われたけど」

 

ユウ「ああ、その通りだぞ。俺も従妹と家庭菜園をしていた時、愛情を注いでいたからな。植物もそれに答えてすくすくと育ってくれる」

 

フィー「園芸部の部長も言ってた。❝愛情❞とかよくわかんないんだけど」

 

ユウ「フィー……だったらこの機会に育ててみたらどうだ? それにしても猟兵団って物騒なイメージがあるけど、フィーのいた猟兵団は、なんだか温かみのある❝家族❞みたいなものを感じるな」

 

フィー「物騒……まあ、無理ない。《猟兵》なんて悪名の方が知れ渡ってるし。どうしたって受け入れられない人もいるよ」

 

ユウ「確かにそうかもしれないな」

 

フィー「早く道具と肥料を買おう」

 

ユウ「そうだな。一応珍しい花の種みたいだし、店の人にも相談してみよう」

 

店の人に相談した後、道具と肥料を揃えたユウとフィーは学院に戻った。

 

 

エレボニア帝国・トリスタ・花屋前→トールズ士官学院・園芸部・花壇

 

七燿暦1204年6月20日・昼前 帝国・トールズ士官学院・園芸部・花壇。

 

早速園芸部の花壇に戻り、花の種を植えることにした。

 

フィー「ん、これでOK。ちゃんと育ったら、数ヶ月後に花が咲くはず」

 

ユウ「そうだな、ちゃんと愛情を注げば花だってちゃんと答えてくれる」

 

フィー「そだね、ユウってリィンやアルフィンみたいにクサいこと言うんだね」

 

ユウ「クサいって……俺は思ったまま言っただけだぞ」

 

フィー「……とりあえず、今日はお礼を言っとく。サンクス」

 

ユウ「ああ、こちらこそサンクス」

 

こうしてフィーとユウの絆は深まった。ユウと別れた後、ユウは園芸部の花壇から離れた。

 

すると、ユウの胸に新たな声が響いた。

 

我は汝……汝は我……汝、新たなる絆を見出したり……

 

絆は即ち、激動の時代を進む力なり……

 

汝、『隠者』のペルソナを生み出せし時、

 

我ら、更なる力の祝福を与えん。

 

ユウは静かに息を吐き、胸の内に新たな感触が生まれるのを感じた。

 

ユウ「これが俺とフィーとの絆……。フィーはなんだかほっとけない。これからも話す機会があれば話していこう」

 

ユウは離れたところから園芸部の花壇をもう一度見つめ、技術棟方面へ歩き出したのだった。

 

 

エレボニア帝国・トリスタ・トールズ士官学院・学生会館・第2チェス部

 

七燿暦1204年6月20日・昼 帝国・トリスタ・トールズ士官学院・学生会館・第2チェス部。

 

学生会館で昼食を済ませた後、何をしようかと思いながら館内を歩いていると、マキアスさんを見かけました。気になって後をついていくと、ある教室に入られました。

 

そこは部室で、『第2チェス部』と書かれていました。中に入ると、マキアスさんがもう一人の男性と対局中でした。

 

わたくしが入ってきたことに気づいていない様子です。マキアスさんが一呼吸置いたタイミングで、わたくしの気配に気づかれたようでした。

 

マキアス「ああ、アルフィンか。ついつい熱中していたようだ」

 

アルフィン【いえ、わたくしこそお邪魔してすみませんでしたわ。それにしても白熱した対局ですね】

 

マキアス「何せ、チェス部の存続がかかっているからな。次の試合では必ず貴族生徒たちを下して見せるつもりだ」

 

ハチマンさんやスハルトさんがおっしゃっていたことを思い出しました。マキアスさんは第1チェス部の貴族生徒たちと勝負して負けてしまったそうです。それ以来、勝てるように色々と策を練ったり試行錯誤されているみたいですね。

 

せっかくですから、マキアスさんのチェスの実力を見てみるのもいい機会かもしれませんわ。

 

アルフィン【マキアスさん、せっかくですので見学させてもらえませんか? わたくしも一応チェスのルールぐらいはわかりますから】

 

マキアス「ああ、もちろんだ。だが、せっかくわかるなら試しにやっていかないか?」

 

アルフィン【いいんですの?】

 

すると、もう一人の男性の方が明るく声をかけました。

 

ステファン「せっかくだから是非楽しんでいってくれ! 僕は見学しているから、こっちの席に座るといいよ!」

 

アルフィン【ありがとうございます】

 

こうして、わたくしとマキアスさんはチェスをすることになりました。一応、前世のアルフィンとしてもチェスは結構やっていた方だと思います。ただ、強いか弱いかと言われれば……。

 

マキアス「これでチェックメイトだ」

 

アルフィン【ま、負けましたわ。マキアスさん、お強いんですね】

 

わたくしはあまりチェスは強くないんですの。お兄様やお姉様はお強いですけれど。

 

マキアス「はは……大したことないさ。子供の頃に父に教えてもらってね。以来ずっと父と遊んでいたから自然と身についてしまったんだ」

 

ステファン「なんでもマキアス君は、地元では無敗だったらしいんだ。いや〜、やっぱり我が部の救世主にふさわしいよ!」

 

アルフィン【子供の頃から大人の人を相手に……強くなるはずですわ】

 

大賢者【告、マスターも武術を大人相手にしていたわけですから。競技は違えど同じようなものですね】

 

アルフィン【確かにそうですけど……】

 

大賢者【解、頭脳に関しては前世からかなり能力がありましたからね】

 

アルフィン【あれは……前世のわたくし自身が能力がないと思っていたから、知識で対抗するしかないって必死に覚えたというわけですわ】

 

マキアス「アルフィン、君の腕もなかなかのものだった。もっと経験を積めばさらに上に行けるのかもしれないな」

 

アルフィン【ありがとうございます。チェスも面白いのですが、今は水泳部が一番ですので】

 

マキアス「無理強いはしないさ。君には君のやりたいことがあるんだからね。話は変わるが……僕も前回の実習では色々と考えさせられた。以前のように貴族というだけで突っかかるようなことはできるだけしたくない。平民にもいい人間と悪い人間がいるように、貴族にもいい貴族と悪い貴族がいるってことも……」

 

アルフィン【ふふっ、リィンさんたちと仲直りできて本当に良かったですわ】

 

マキアス「そ、そう言われるとなんだか恥ずかしいんだが……」

 

ステファン「うんうん、よくわからないが青春だねえ」

 

この後、ステファンさんから第2チェス部に入ってくれないかと熱心にお願いされましたが、丁重にお断りしました。熱意は確かに受け取りましたけれど、何個も部活動を兼任するのはわたくし自身も無理だと判断しましたから。

 

もし生徒会の依頼がなければ、入っていたかもしれませんね。

 

マキアス「アルフィンのことは残念だが、実力差のある相手をいたぶって楽しむような第1チェス部は、貴族云々は関係なくチェスプレイヤーとして許すわけにはいかない。僕とステファン先輩で必ず下して見せるよ」

 

ステファン「マ、マキアス君!」

 

アルフィン【わたくしも陰ながら応援していますわ】

 

マキアス「ああ……見ていてくれたまえ!」

 

わたくしとマキアスさんの仲が、こうしてまた少し深まったのでした。

 

 

エレボニア帝国・トリスタ・喫茶・キルシェ

 

七燿暦1204年6月20日・昼 帝国・トリスタ・喫茶・キルシェ。

 

学院とトリスタの町を回っていたリィンは、喫茶キルシェの外のオープン席で、見覚えのある人物がコーヒーと軽い食事を運んでいるのを見つけた。それは少し前まで一緒にいたアルフィンだった。彼女はなんとメイド服を着ていた。

 

アルフィン【お客様、お待たせしました】

 

生徒1「あれ? アルフィンさん、ここでバイトしてたっけ?」

 

アルフィン【してませんわ。これはちょっと訳ありでして】

 

生徒1「訳あり?」

 

アルフィン【本来ならスミレ先輩がバイトしていたんですが、ちょっと用事があるらしく、代わりにわたくしが代理で入っているんです】

 

生徒1「そうなんだ。アルフィンさんがいてくれたら毎日でも来るよ」

 

アルフィン【あはは……お上手なんですね。褒めても何も出ませんわ】生徒1「これって本当の気持ちだって」

 

アルフィン【ごゆっくりどうぞ】

 

アルフィンはその生徒から離れ、店の中に戻ろうとした時、リィンに気づいた。

 

アルフィン【あ、リィンさん。コーヒーか紅茶をお飲みに来られたんですか?】

 

リィン「別にそういうつもりじゃなかったんだけど、アルフィンの姿が見えたから、ちょっと寄ってみただけだ」

 

アルフィン【昼食の方がまだでしたら、軽く作ることもできますよ?】

 

リィン「そうだな、ならお願いするよ」

 

アルフィン【かしこまりました。それで何を食べますか?】

 

アルフィンはメニュー表をリィンに見せた。彼は一通り目を通してから答えた。

 

リィン「そうだな、サンドイッチでいいかな」

 

アルフィン【サンドイッチですね。リィンさんにはわたくしの特製のサンドイッチを作って差し上げますわ】

 

店主であるフレットの許可を得て、アルフィンは調理場でサンドイッチを作り始めた。王道の組み合わせ――卵、ハムチーズ、ハムタマゴ、ハムとレタス、トマトなどをテキパキと挟み、出来上がったものをリィンの席へと運んだ。

 

アルフィン【リィンさん、お待たせしました】

 

リィン「う……美味そうだな」

 

リィンはアルフィンが作ってきたサンドイッチを手に取り、一口食べた。

 

シャロンが第3学生寮の管理人になるまでは、Ⅶ組の中で料理ができる者たちが交代で炊事をしていた。その時にリィンは、アルフィンの作る料理が特に美味しいと感じていた。もちろん他のメンバーの料理も美味かったが、アルフィンのものはどこか懐かしく、思い出すような感覚があった。それが何なのか、リィンにはまだわからなかった。

 

アルフィン【リィンさん、どうでしょうか?】

 

リィン「食べてみて、改めて美味いことがわかったよ。アルフィンって最初から料理をするのに手慣れてたよな? やっぱり実家とかでやってたのか?」

 

アルフィン【まあ……そうですね……わたくしたちは旅をしている期間が長いですし、実家より旅先で自炊をすることが多かったので……それで色々覚えましたわね】

 

リィン「そうか……家族揃って旅か……なんかそういうのいいな」

 

アルフィン【……そうですね。旅先でいろんな出会いがありますから。……今は特別実習でいろんな人たちと出会いましたよね……】

 

リィン「ああ、そうだな。だから今回の特別実習でどのような出会いがあるか、楽しみでもあるかな」

 

アルフィン【そうですわね】

 

リィンとアルフィンは、次なる特別実習先はどこになるのかを思い浮かべながら、しばらく二人で語り合っていた。

 

こうして、リィンとアルフィンの仲はさらに深まったのだった。

 

 

ユウのヒロインは誰が良いでしょうか?

  • 1ーエマ
  • 2ーフィー
  • 3ートワ
  • 4ーサラ
  • 5ースミレ
  • 6ーそれ以外(アリサとラウラは除く)
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