アルフィンの軌跡〜トールズ士官学院編〜   作:龍造寺

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第3章鉄路を越えて編13話です。


第3章ー鉄路を越えて編ー89ー13話ーイチカとマコト。

 

カルバード共和国・クレイユ・クレイユ村付近

 

七燿暦1204年6月20日・昼 共和国・クレイユ村郊外。

 

のどかなクレイユ村から少し離れた郊外のバス停に、一人の青年がベンチに座っていた。シャツにニット細身デニム、革靴風のスニーカーというシンプルな格好の青年――マコト・ユウキである。

 

彼はレミフェミアにいるはずだったが、手紙に書いていた通り、自分なりに動き始めていた。

 

マコト「……確か待ち合わせ場所はここで良かったはずだ」メモ用紙を確認しながら待っていると、約10分後、一台の導力バイクがバス停の手前に停車した。赤いヘルメットにライダースーツを着た女性がバイクから降りてくる。

 

イチカ「あなたがマコト・ユウキさんですよね?」

 

マコト「はい、そうですが……貴女は?」

 

イチカ「私はそのメモ用紙にここを書き込んだ遊撃士、イチカ・ナカノよ。よろしくね」

 

マコト「あなたがイチカさんですか。サナダ先輩たちから聞いています。僕が衰弱して動けない間、陰ながら共和国を守ってくれていたんですね」

 

イチカ「あはは……私一人じゃないんだけどね」

 

マコト「僕が動けない間にいろんなことが起きていた……黄泉の国計画、シドウの反乱……G∴D教団、リベールの異変……」

 

イチカ「そうね、どの戦いもピンチの連続だったけど、みんな諦めずに歯を食いしばって、人々のために頑張ったわ。それはタカヤ司祭の戦いにおけるあなたも同じだったんじゃないの?」

 

マコト「……そうですね。僕も、僕と一緒に戦ってくれた仲間や、支えてくれたみんなのために……」

 

イチカ「そうね。人それぞれ何かのために戦ってるけど、結局はみんな笑顔のために、その笑顔を守るために戦ってるのよ」

 

2人は少し言葉に詰まった。なんと説明していいかわからないような、体の芯から込み上げてくる熱い想い――太陽の少女と呼ばれたエステル、そして暗闇に閉ざされても熱き炎で世界を照らすと言われたアルフィン。

 

彼女たちの周りに集う人々は、縁という絆で結ばれ、それぞれの道を邁進している。

 

マコト「一つだけ確かに言えることは、この世界に厄災を招くようなヤツは許せないってことかな」

 

イチカ「そのセリフ、お姉さんが言おうと思ってたんだけどな〜」

 

マコト「と、世間話はこれぐらいにして……」

 

マコトは竹刀入れから貴族剣を取り出した。

 

イチカ「全く、空気を読めない人は嫌われるんだぞー」

 

イチカもバイクのシート下から鞭を取り出す。二人が臨戦態勢を取ったのは、すでにこの辺りが謎の武装集団に囲まれていたからだった。

 

リーダー「お前たちか、色々と嗅ぎ回ってる連中は」

 

マコト「お前たちは何者だ?」

 

リーダー「俺たちのことを知る必要はない」

 

イチカ「なに? ちょっと前に捕まった連中の残党かしら?」

 

リーダー「あんな連中と一緒にするな。我々の運動を模倣するような連中、信念なんかないんだからな」

 

イチカ「模倣ね〜。てことはあなたたちは、半移民派の連中に雇われた猟兵ってところかしらね?」

 

リーダー「どうせお前たちはここで……死ぬんだからな」

 

猟兵たちが一斉に攻撃を仕掛けようとした瞬間――

 

イチカ「ごめんね〜、お姉さんこういうこともできるんだ……」

 

地面から無数のツタが伸び、猟兵たちを完全に拘束した。リーダーも例外ではなく、がんじがらめにされ、次々と意識を失っていく。

 

マコト「!? ツタ……? イチカさん、それって?」

 

イチカ「うん、あなたたちの❝ペルソナ能力❞にも似てる気がするんだけど、七耀教会の人たちには❝似ているようで非なるもの❞って言われたの。私、昔D∴G教団に捕らわれていたんだよね」

 

マコト「……D∴G教団。世界中の特殊能力を持った子供たちを誘拐して悪魔召喚……僕たちが倒したタカヤもその教団の出身者だった」

 

イチカ「あまり思い出したくない話だけどね。つまり、私のこれは生まれ持った能力みたい」

 

リーダー「……! くっ……そうだ、お前は……隠者の桃(ハーミット・ピンク)のイチカ・ナカノ!」

 

イチカ「はぁ〜、そのあだ名で呼ばないでほしいんだけどね」

 

この後、猟兵団全員をイチカの能力で拘束した二人は、CIDの人物に連絡を入れた。

 

 

カルバード共和国・クレイユ・クレイユ村付近→クレイユ村

 

七燿暦1204年6月22日・夕方 共和国・クレイユ村。

 

捕らえた猟兵団の事情聴取に、イチカとマコトも協力者として参加した。

 

彼らが『一番隊』と名乗る猟兵団であること、そして次の目的が『帝国と共和国にヒビを入れ、両国を戦争へと導く』という計画に関与している可能性が高いことが判明した。

 

CIDから正式に依頼を受けた2人は、そのもう一つの猟兵団を探すことを承諾した。

 

クレイユ村は猟兵たちの休息の地としても知られている。ここで何日か滞在しながら、動きの怪しい猟兵団がいないか探ることにしたのだった。

 

 

カルバード共和国・クレイユ村

 

七燿暦1204年6月23日・昼 共和国・クレイユ村。

 

イチカとマコトは、クレイユ村に滞在している猟兵団に片っ端から話を聞いて回っていた。友好的な者もいれば、明らかに好戦的な者もいたが、そういう連中は村の外、ノルド高原方面で白黒をつけさせた。しかし、有益な情報を持っている猟兵団は一つもなかった。

 

早々に暗礁に乗り上げた形になった二人だったが、クレイユ村のオープンカフェで一息つくことにした。

 

カルバード共和国・クレイユ村・オープンカフェ

 

七燿暦1204年6月23日・昼 共和国・クレイユ村・オープンカフェ。カフェの端の席に座ったイチカとマコトは、紅茶を一口飲んでから本題に入った。

 

マコト「朝からずっと聞き込みをしたけど、有力な情報はなかったな」

 

イチカ「そうね……」

 

マコト「ただ、一つだけ気になる情報はあった」

 

イチカ「大陸最強クラスの猟兵団の一つ、❝赤い星座❞がクロスベル入りしてるって話よね」

 

マコト「なんでそんな連中がクロスベルに……」

 

イチカ「私はしばらくクロスベルに行ってないから詳しくはわからないけど、黒月(ヘイユエ)とやり合うためじゃないかって、遊撃士仲間の間ではそんな噂が飛び交ってるわ」

 

マコト「黒月(ヘイユエ)……共和国の東方人街を本拠とする巨大シンジケート組織か」

 

イチカ「表向きは貿易会社などを通じて経済活動をしながら、裏社会でも強い影響力を持ってる存在よね……」

 

マコト「赤い星座が自分たちだけで黒月を狙うとは考えにくい。奴らが報酬なしで動くとは思えないし」

 

イチカ「猟兵団がボランティアで動くわけないか……つまりマコトさんは、裏で糸を引いてるヤツがいると?」

 

マコト「そう考える方が辻褄が合う。黒月(ヘイユエ)はクロスベルでも影響力を拡大している。クロスベル騒乱で地元マフィアが衰退した今、そこを狙うのは当然だ。それを快く思っていない連中もいるってことだよね」

 

イチカ「クロスベルで黒月(ヘイユエ)が影響力を持つと困る人たち……クロスベル市長……議会? ううん、ディーター市長やマクダエル議長がそんなことするとは思えないし……」

 

マコト「僕も彼らがそういうことをするとは思えない。でも……」

 

マコトは紅茶の水面に映る自分の顔を見つめながら、低く続けた。

 

 

マコト「帝国や共和国の首脳部なら……」

 

イチカ「帝国のオズボーン宰相や、共和国のロックスミス大統領……」

 

マコト「絶対とは言わないけど、可能性はあると見た方がいいかもしれない」

 

イチカ「……そうね……」

 

クロスベルは、長年帝国と共和国が領有権を巡って争ってきた因縁の地だ。学園都市条約が締結された後も、両国は水面下で激しく謀略を巡らせている。

 

そんな時、イチカのENIGMA(エニグマ)が着信音を鳴らした。イチカはマコトに目で断りを入れ、すぐに通話に出た。

 

イチカ「はい、イチカですが……え、アラガキさん!?」

 

イチカがアラガキと言った人物、それはかつてのマコトと一緒に特別課外活動部に所属していたシンジロウ・アラガキである。彼は一度瀕死の重症を負ったが、クロスベルやレミフェミア、学園都市の医療技術でなんとか一命を取り止め、しばらく入院したのち、学校を卒業しカルバード警察に入り、着々と手柄を立て、若くしてカルバード警察の警視正まで成り上がっている。

 

もちろん、CIDのサナダたちとも今でも交流がある。

 

マコト「アラガキさん? まさか、アラガキ先輩!?」

 

シンジロウ「その声は……! マコトか? なんだ、元気そうじゃねえか」

 

マコト「はい。アラガキ先輩こそ、お元気でしたか」

 

シンジロウ「俺はまあ、変わらねえよ。……色々話したいことはあるが、今はお前たちに伝えなきゃならねえことがある」

 

イチカ「伝えなきゃいけないことって?」

 

シンジロウ「警察の諜報部からもたらされた情報だ。『TKS』って名の猟兵団が、帝国と共和国を何度も行き来してるらしい」

 

イチカ「TKS? そんな猟兵団、聞いたことないわね」

 

マコト「僕もないです」

 

シンジロウ「聞いたことねえのが当然だ。設立されてまだ間もない新顔の猟兵団だからな。いろんなところから寄せ集めた連中でできあがったらしい」

 

マコト「寄せ集めの猟兵団……」

 

イチカ「……確か4月に起きた帝国での事件にも、そういう連中が関わっていたわね」

 

シンジロウ「そのTKSが、ノルド高原で何かやらかす可能性が高い。本来なら警察やCID、軍を動かしたいところだが……そうも言ってられねえ状況だ」

 

イチカ「係争地で警察や軍が出動したら、帝国から何を言われるかわからないものね」

 

シンジロウ「ああ。ただでさえ帝国の連中は、こっちの粗を探そうとしてやがるからな」

 

イチカ「まあ…それに関しては何も…」

 

マコト「それで、アラガキ先輩は僕たちにノルド高原に入って、TKSの潜伏先を探し出せばいいのかな?」

 

シンジロウ「そうだな。だから、お前たちに頼みたい。ノルド高原に入って、TKSの潜伏先を探ってくれ。できれば共和国側だけではなく、帝国側の方も調べて欲しい」

 

イチカ「国境を越えて帝国側にも?」

 

シンジロウ「ああ、ノルド方面の共和国軍基地にはすでに許可を取ってある。帝国側にも……連中、ミサキ・カミジョウに報告済みだから咎められることはねえ」

 

イチカ「ミサキ・カミジョウ……」

 

マコト「イチカさん、その人のこと知ってるの?」

 

イチカ「まあね。彼女も私と同じような境遇で……あの教団に捕らわれて……。彼女を救ってくれた人と家族になって……色々あって今は帝国のオズボーン宰相の❝鉄血の子供たち❞の一員に……」

 

シンジロウ「ガイ・バニングス……彼女を救った男の名前だ。ガイは俺たち警察官の誇りだった。カルバードとクロスベルの国の違いはあったが、捜査官としての熱さは同じだった」

 

イチカ「ガイさんはクロスベルである事件を追ってる最中に殉職して……ミサキさんは必死に犯人を探してたわ。彼女、鉄血の子供たちに入る前は遊撃士だったから……」

 

シンジロウ「しんみりした話になっちまったな。とにかく何かあったらすぐに連絡しろ。これは先輩としての忠告だ。危なくなったら無理すんな。()()()()()すぐに駆けつける」

 

マコト「はい」

 

イチカ「わかりました、アラガキさん」通信が切れた後、二人は紅茶を一気に飲み干した。

 

イチカ「さてと、休憩もここまでね。ノルド高原、行ってみましょうか」

 

マコト「そうだね」

 

イチカとマコトはオープンカフェを後にし、ノルド高原を目指して動き出した。

 





学園都市条約とは。

学園都市で行われたクロスベル騒乱の後の話し合い、学園都市を含めた4者会談でも、帝国と共和国は、クロスベルに対してかなり踏み込んだ発言をしていたのだ。

クロスベルは、警備隊を解散。クロスベルは帝国軍と共和国軍が駐留する。クロスベル警察は、共和国警察の傘下に置く、帝国も負けじと鉄道憲兵隊の傘下に置くと発言し両者で揉めた。

学園都市は両者を仲裁し、クロスベルはクロスベル自治州のままで、クロスベル警備隊、クロスベル警察が治安と国防を担うことを両者に認めさせた。

帝国、共和国、クロスベル、学園都市の4者で取り決めた学園都市条約を締結。

七耀暦1204・5月30日・学園都市にて締結。

強引にも条約を締結させた学園都市の特使は、一方通行であった。帝国や共和国からは、白き悪魔と言われている。

ユウのヒロインは誰が良いでしょうか?

  • 1ーエマ
  • 2ーフィー
  • 3ートワ
  • 4ーサラ
  • 5ースミレ
  • 6ーそれ以外(アリサとラウラは除く)
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