アルフィンの軌跡〜トールズ士官学院編〜   作:龍造寺

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第3章鉄路を越えて編15話です。


第3章ー鉄路を越えて編ー91ー15話ーノルド高原。

 

カルバード共和国・ノルド高原・ノルドの遊牧民キャンプ

 

七燿暦1204年6月25日・夜 共和国・ノルド高原・ノルドの遊牧民キャンプ・客人用テント。

 

あれから丸二日が経った。イチカとマコトは、ノルド高原に点在する遊牧民のキャンプを一つひとつ巡り、情報を集めていた。

 

帝国側と共和国側を最近頻繁に行き来している猟兵団はいないか。

 

怪しげな武器商人風の人物は見かけなかったか。

 

遊牧民たちは意外と多くの情報を提供してくれた。妙な双子の姉妹や、大学の教授風の人物を見かけたという話も出た。もちろん、猟兵団らしき集団がここ最近増えているという情報も得られた。今夜は一番帝国寄りの遊牧民キャンプにお世話になっていた。夜も深まったので、軽い夕食を済ませた後、二人は今日集めた情報を整理していた。

 

マコト「まさか、猟兵団以外の情報まで得られるとは思わなかったけどね」

 

イチカ「そうね。双子の姉妹というのは、おそらくあの双子でしょうね」

 

マコト「あの双子?」

 

イチカ「結社の双子の暗殺者……絶対零度(アブソリュート・ゼロ)のコトミ・ミサカ、超電磁砲(レールガン)のミコト・ミサカ。元々は要人暗殺を生業にしていたみたいだけど、結社にスカウトされて入ったのよ」

 

マコト「噂では聞いたことがある。ミラさえ払えば暗殺を引き受けてくれる双子の姉妹……都市伝説か何かだと思っていたけど、本当にいたんだ」

 

イチカ「本当にいるのよ。共和国の政府要人なども何人も消されているって話だから」

 

マコト「そんな連中がノルド高原に出入りしているとなると、かなり気を引き締めないといけないね」

 

イチカ「そうね……できれば遭遇したくないわよね」

 

マコト「その双子とは別に、教授風の人物も出入りしているとなると……」

 

イチカ「考古学の教授とか博士じゃないとすると……嫌なことを思い出すんだけどね」

 

マコト「あ、ワイスマンという結社の……」

 

イチカ「ワイスマンといい、ヨアヒムといい……教授や博士ってそんなのしかいないのかしら」

 

マコト「全ての教授や博士がそんな連中と同じじゃないよ」

 

イチカ「頭ではわかっているつもりなんだけど……心のどこかでそう感じてしまうのよね……」

 

マコト「心の傷が、そう簡単に癒されないよね……」

 

遊牧民から貰った飲み物を一口飲み干してから、マコトはテントの外の闇を見つめながら静かに言った。

 

マコト「こんな穏やかな場所を……心を落ち着かせられる場所を、戦火に包ませるわけにはいかない」

 

イチカ「私も同じ気持ちよ。こんなに心地のいい場所を、戦火で焼かせてなるものですか」

 

マコト「共和国側のノルド高原では、もうこれ以上話は聞けそうにないかな」

 

イチカ「そうね。ここの族長にも話したけど、もっと詳しい話を聞きたければ帝国側にいるノルドの民に聞くしかないって言われたわ」

 

マコト「帝国側のノルド高原か……向こうの方が遺跡も自然も多く残っていると聞いたね」

 

イチカ「遺跡群なら共和国側より帝国側の方が多いって話よ」

 

マコト「……そういう遺跡群の中なら、武器を隠す場所や猟兵団の潜伏先になりうるんじゃないかな?」

 

イチカ「そういうことになるわね。明日は帝国側に入って、そっちの族長に話を通しましょう」

 

マコト「それしかないね」二人がそんな会話をしていると、入り口の布がめくられ、遊牧民のおばちゃんが顔を出した。

 

おばちゃん「お風呂が湧いたけど、いい湯加減だからすぐに入れるよ」

 

イチカ「あ、はい、わかりました」

 

マコト「はい、ありがとうございます」

 

イチカ「さてと、今日の疲れもお風呂で癒しますか」

 

マコト「じゃあ僕は先に、明日のための荷物をまとめておくよ」イチカ「マコトさん?」

 

マコト「はい?」

 

イチカ「なんなら一緒にお風呂入りますか?」

 

マコト「な、何を言ってるんですか! 僕たちはそういう関係じゃないんですから! そんな冗談は言わないで、さっさと入ってきてください」

 

イチカ「そこはもうちょっと嬉しそうにするとか、興奮したりとか、そういうリアクションしてくれないと、お姉さん魅力ないのかなってショック受けちゃう」

 

マコト「僕をからかわないでください。仮にも僕の方が年上なんですから」

 

イチカ「ふふっ、そういうとこあるから、お姉さんやめられないのよね〜」

 

マコト「早く入ってもらえませんかね? 後で僕も入りますから」

 

イチカ「は〜い」

 

イチカは着替えのカバンを持って、客人用のお風呂場へ向かった。

 

マコト「はぁ……僕だって男だ。その気になったら……」

 

マコトは頭を振って、明日の準備を始めた。

 

 

カルバード共和国・ノルド高原・ノルドの遊牧民キャンプ→帝国側のノルド高原

 

七燿暦1204年6月26日・朝 共和国・ノルド高原から帝国側へ向かう途中。

 

イチカとマコトは朝食まで世話になった後、共和国側のキャンプを出発し、西に向かって歩き始めた。朝のひんやりとした風が、二人のそばを吹き抜けていく。

 

イチカ「あの細いエリアを通り過ぎれば帝国側に出るわね」

 

マコト「話によればそうだね」

 

イチカ「……なるほど。あれが帝国側の監視塔ってわけね」

 

共和国側からも見える帝国の監視塔。もちろん共和国側にも軍の基地はある。特別に両国を行き来できる権利を持っている2人は、静かに国境を越え、帝国側のノルド高原へと足を踏み入れた。

 

そんな2人を、どこからか見つめている人物がいた。少し高い丘の上から、2人を眺めている男――トオル・アダチ。

 

やや細身で平均的な身長、茶色がかった短髪に寝癖のように跳ねた髪。警察官が着ていてもおかしくないスーツにネクタイを締めているが、ネクタイは曲がり、着こなしはだらしがない。顔つきは一見優しげで人懐っこいが、どこか影のある笑みを浮かべていた。

 

トオル「……へぇ、あれが主から報告のあった2人か」

 

彼は黄泉の国計画の首謀者であり、共和国を混乱に陥れようとした男だった。しかし自称特別捜査隊によって野望を砕かれ、逮捕・服役したはずの人物である。ただし、ここにいるのは❝本物❞ではなく、誰かの認知から生まれた別個のアダチだった。

 

トオルはフォルダーから導力拳銃を取り出し、誰もいない岩場に向かって何発か撃った。

 

トオル「ここはノルド高原……帝国と共和国の係争地……何が起こってもおかしくねえ場所だ。奴らに顔見せするのも一興かもな……まあ、Gって連中が来てるらしいから、邪魔はするなって言われてるけど……アシストくらいはしてやるさ」

 

そう言いながら、アダチは境界線上の岩場から石を一つ拾い、遠くへ投げた。

 

トオル「石は転がり始めた……さあ、楽しい舞台の幕開けだぜ」

 

 

エレボニア帝国・トリスタ・トールズ士官学院・第3学生寮

 

七燿暦1204年6月26日・朝 帝国・トリスタ・トールズ士官学院・第3学生寮・307号室(アルフィンの部屋)。

 

今回の特別実習は実質4日間ということになりますわね。そのうち2日は移動だけで終わってしまいそうです。ノルド高原はそれだけ遠い場所にあるのですから。

 

大賢者【告、マスターにとっては何度も行き来した場所ですけどね】

 

アルフィン【大賢者、それは言わなくていいですわよ。あくまで行き来していたのはほとんど共和国側の方ですから】

 

大賢者【解、確かにそうですが、無駄口を言うためにマスターに話しかけたのではありません】

 

アルフィン【何かあったのかしら?】

 

大賢者【解、ノルド高原に妙な連中が入り込んでいる可能性があります】

 

アルフィン【妙な連中、ですか? それは結社ですか? それとも猟兵団?】

 

大賢者【解、詳しくは調べていないのですが、探知していた時に妙な反応がヒットしましたので】

 

アルフィン【ノルド高原は、わたくしたちが特別実習に向かう先ですわ。それにガイウスさんの故郷もあります。争いの種を持ち込ませるわけにはいきません。大賢者、探索と警戒度を上げてください】

 

大賢者【了】

 

やはり、ケルディックやバリアハートのように、何か問題が起こる可能性は高いと見ておいた方が良さそうですわね。

 

わたくしは、自身の得物である籠手を新しく新調しました。以前に質屋のミヒュトさんに依頼していたものが昨日届いたのです。

 

籠手は専用の入れ物にしまっていますけどね。

 

あの後、テイトクさんはサラ教官やわたくしたちにある情報を教えてくれました。それは先ほど大賢者がおっしゃっていたように、いろんな勢力が帝国や共和国に出入りしているという内容です。

 

もちろんクロスベルの方も……。

 

帝国では来月、夏至祭に合わせて様々なイベントが開催されますが、そういうところを狙ってくる可能性も十分にあると聞きました。

 

思えばリベールのあの式典の時にも襲撃がありましたわね。

 

アルフィン【今は夏至祭のことは一旦置いておいて、特別実習先のノルド高原に何事もないように動かないといけませんわね】

 

本来ならショルダーバッグが良かったのですが、今回は列車での長時間移動がメインです。ノルド高原に着いたら馬を使うとガイウスさんから聞きましたので、抱えて持っていくことにしました。

 

アルフィン【さてと、計4日間の特別実習、ノルド高原へ】

 

スーツケースと得物の入った入れ物を持って、部屋を出ることにしました。

 

 

エレボニア帝国・トリスタ・トールズ士官学院・第3学生寮・玄関前

 

七燿暦1204年6月26日・朝 帝国・トリスタ・トールズ士官学院・第3学生寮・玄関前。

 

玄関前に着くと、すでにみなさんが集合していらっしゃいました。

 

ハチマン「しかし驚いたな。まさかガイウスの故郷である《ノルド高原》に特別実習に行くことになるとは」

 

アルフィン【確かにそうですわね。ノルド高原とブリオニア島、A班もB班も今回は街ではなく広いエリアですから】

 

エマ「確かに。でもA班のノルド高原は、士官学院を設立したドライケルス大帝ゆかりの地でもあるんですよね」

 

ユーシス「ああ。《獅子戦役》の折、大帝が自ら挙兵した場所だったな」

 

アリサ「逆に言うと、そのくらいしか知らない場所だけど……」

 

アルフィン【ノルド高原、あの辺りには色々と遺跡群があると聞いていますわ】

 

ハチマン「確かにあの辺りには遺跡がいっぱいあったな」

 

ガイウス「2人ともよく知っているな。とにかく、ノルドの地については行きの列車で説明しよう。長旅になる。片道8時間以上、列車に揺られることになるだろう」

 

エマ「そ、それは大変ですね……」

 

ハチマン「8時間以上、絶対に尻が痛くなるな」

 

ユーシス「まあ、得難い経験になりそうだな」

 

アルフィン【長旅もみなさんと一緒なら苦痛になりませんわ】

 

ハチマン「アルフィンはポジティブだな……まだ朝方だが、着くのは夕方ぐらいか……」

 

アリサ「うーん、お店でパンとか買った方がいいのかしら?」

 

シャロン「ふふっ、それには及びませんわ」

 

シャロンさんが大広間の方から出てこられました。手に何かを持っていらっしゃいますけど、それはまさか!

 

アリサ「むっ……」

 

エマ「シャロンさん、どうもおはようございます」

 

アルフィン【そろそろわたくしたちも出発しようとしていたところですわ】

 

シャロン「はい、お気をつけていってらっしゃいませ。それと、よろしければこちらもお持ちください」

 

アルフィン【これをわたくしたちに?】

 

シャロン「はい、サンドイッチとポットに入れたレモンティーでございます。朝食は用意できませんでしたので、列車でお召し上がりいただければと」

 

エマ「ふふっ、ありがとうございます」

 

アルフィン【本当にシャロンさんには頭が上がりませんわ】

 

ユーシス「気が利くな、管理人」

 

ハチマン「管理人というか、俺たちの世話係も兼ねてるよな。それはそれで助かるけど」

 

ガイウス「ありがたく頂戴する」

 

シャロン「いえいえ、皆様のご世話がわたくしの役目ですから」

 

アリサ「はあ、すっかり管理人として馴染んじゃってるし……あれだけ反対したのに、まんまと外堀を埋められたみたいね?」

 

シャロン「ふふっ、滅相もない。お嬢様、どうか道中、くれぐれも気をつけてください。このシャロン、一日千秋の思いでお待ちしておりますわ」

 

アリサ「はいはい、気をつけるわ。……って、シャロン。あなたまた何か企んだりしてないよね?」

 

シャロン「……? 何のことでございますか?」

 

アリサ「ち、違うならいいんだけど。まあいいわ。それじゃあ行ってくるわね」

 

シャロン「はい、いってらっしゃいませ」

 

アルフィン【わたくしたちの留守中、よろしくお願いしますね】

 

わたくしたちはシャロンさんに第3学生寮を任せ、特別実習先であるノルド高原へ向かうため、まずはトリスタ駅へと向かいました。




お久しぶりです。ちょっと色々ありまして遅れました。

ユウのヒロインは誰が良いでしょうか?

  • 1ーエマ
  • 2ーフィー
  • 3ートワ
  • 4ーサラ
  • 5ースミレ
  • 6ーそれ以外(アリサとラウラは除く)
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