エレボニア帝国・帝都ヘイムダル中央駅→鋼都ルーレ駅
七燿暦1204年6月26日・昼 帝国・鋼都ルーレ駅。わたくしはルーレ駅に降り立ちました。やはり鉄鋼業が盛んな街ですわね。鉄の匂いが漂ってきて、わたくしの中に眠る職人魂と言いますか、物を作るのが好きだった頃の感覚が少し蘇ってきます。
ユーシス「ふう、やっと着いたか」
ハチマン「やっぱ長旅はケツが痛いぜ」
アルフィン【《ノルド高原》に向かうためには貨物列車に乗り換えるんですよね?】
ガイウス「ああ、この4番線から出る貨物列車に乗る手筈になっている」
アリサ「4番線と言うと、階段を上って左端のホームに降りる必要があるわね」
エマ「それじゃあ、行きましょうか」
わたくしたちは階段を登って左端のホームに向かおうとした途中、
エマ「そういえばもうお昼でしたね。どこかでお弁当とか買った方がいいんでしょうか?」
ハチマン「だよな、セントアークの時みたいにあったか弁当屋みたいな屋台はないものかね」
アリサ「あったか弁当、確かに美味しかったわね。ルーレ駅にもあって欲しいけど」
ガイウス「何にせよ、何か買っていた方がいいだろう。ここから4時間も鉄路で行くのだからな」
ユーシス「さすがに貨物列車では車内販売はないだろうしな」
アリサ「そういうことなら、一度改札を出ましょうか。ランチボックスを売ってる駅の売店があったはずよ」
アルフィン【それじゃあ、そこに向かおうとしましょうか】
???「いえー、それには及びませんわ」
聞き慣れた声が、どこからともなく聞こえてきました。え? この声ってまさか、シャロンさん!?
アリサ「へー」
ハチマン「この声って、まさか!?」
エマ「シャ、シャロンさん!」
アリサ「ど、ど、ど……どうしてあなたが先回りしてるのよっ!!」
シャロン「それはもう、お嬢様への愛がなせる業と言いますか……朝とは違い、腕によりをかけたお弁当を用意いたしました。どうぞ、お召し上がりください」
アルフィン【あ、ありがとうございますわ、シャロンさん】
わたくしはシャロンさんから、全員分の特製弁当を受け取りました。
わたくしはシャロンさんから、全員分の特製弁当を受け取りました。シャロンさん、トリスタから帝都まで行き、帝都からルーレ市まで飛行船で来られた可能性が高いですわね。わたくしたちが使うような裏技ではなく、正攻法のやり方ですけど。
エマ「その、すごくありがたいんですけど……」
ガイウス「どういうカラクリなのか、さすがに気になってしまうな」
ユーシス「フッ、ラインフォルトのメイドは主人を驚かせるのが趣味らしい。大方帝都で定期飛行船に乗り込んだと言ったところか?」
アリサ「あ、」
ハチマン「そりゃ正攻法のやり方だな。あんたなら裏技使ってここに来ることもできるはずだからな」
シャロン「ユーシス様のおっしゃる通りです。ちなみにお弁当は、定期飛行船の厨房をお借りしてこしらえました。それとハチマン様がおっしゃったような《裏技》というものは使用していませんので」
アリサ「裏技?」
シャロン「アリサお嬢様はお気になさらずに。出来立てですのでご賞味ください」
シャロンさん、ハチマンさんがおっしゃった裏技は使っていないみたいですね。
エマ「あはは……ありがとうございます」
ガイウス「ありがたくご馳走になろう」
ハチマン「色々と言いたいことはあるが、あんたの料理はピカイチだからな。美味しくいただかせてもらうよ」
アリサ「全く何か企んでるかと思ったら。このまま、ノルド高原まで来るつもりじゃないでしょうね?」
シャロン「いえ、実はこの後、別のお仕事が入りまして。トリスタに戻るのも少々遅れそうな見込みです」
アリサ「別の仕事……?」
???「本当ならタツヤに手伝ってもらう仕事だったけど、タツヤも別件が入ってね。急遽シャロンに私の仕事手伝いを頼むことになったのよ」
え? わたくしたちは声のした方に振り向きました。そこに歩いて来られる一人の女性がいらっしゃいました。あの貴婦人は、アリサさんのお母様ではないでしょうか。何度かバルフレイム宮でお見かけしましたし。お名前は確かイリーナさんでしたっけ。
アリサ「か、か、か、母様……!?」
イリーナ「久しいわね、アリサ。そしてそちらが《Ⅶ組》の面々というわけね。アリサの母、イリーナです。ラインフォルトグループの会長を務めているわ。よろしくお願いするわね」
アルフィン【こちらこそよろしくお願いします。アルフィン・レンハイムですわ】
イリーナ会長はわたくしをちょっと見つめられましたが、わたくしが首を軽く振ったので、分かっていらっしゃるようです。
エマ「は、初めまして。エマ・ミルスティンです」
ハチマン「ハチマン・ヒキガヤだ」
ガイウス「ガイウス・ウォーゼル。よろしくお願いする」
ユーシス「ユーシス・アルバレア。お見知りおきを願おうか」
イリーナ「まあ、せいぜい不肖の娘と仲良くしてやってちょうだい。仕事があるのでこれで失礼させてもらうわ。シャロン、行くわよ」
シャロン「かしこまりました。会長」
イリーナ会長とシャロンさんは、わたくしたちに背を向けて歩いて行かれます。アリサさんがプルプルと震えながらイリーナ会長に
アリサ「い、いい加減にして! いつもいつも、そうやって仕事ばかり最優先して……! 勝手に家から飛び出した娘に何か一言くらいはないわけ!?」
シャロン「お嬢様」
イリーナ「あなたが士官学院に入る経緯はタツヤから聞いているわ。あなた自身の人生……好きに生きればいいでしょう。ラインフォルトを継ぐことを強制する気はないわ。タツヤに継いでもらうこともできるしね。
アリサ「……っ……」
イリーナ「それにあなたの学院生活も《最低限度のことは把握しているわ》。学院からの月ごとの報告でね」
学院からの月ごとの報告ですか。ま、まさか、ルーファスさんみたいに常任理事とかではありませんの? あの時、確か3人いらっしゃるとおっしゃっていましたし。
アリサ「え? シャロンが母様に報告するのは当然覚悟はしていたけど……その、学院からの報告って……?」
イリーナさんたちが再びこちらを振り向きました。
アルフィン【イリーナ会長、ルーファスさんと同じ学院の常任理事ではありませんか?】
アリサ「え?」
ユーシス「兄上と同じ学院の常任理事だと!?」
イリーナ「ええ、彼女の言うとおりよ。《トールズ士官学院》――あなたたちの学院の常任理事を務めてもらっているから」
アリサ「!!」
ハチマン「ラインフォルトの会長なんて、常任理事として申し分ないだろうよ」
ガイウス「ふむ」
イリーナ「ARCUSと魔導杖についてもそれなりに関わっていてね。《Ⅶ組》の運用レポートについては、毎回、興味深く拝見しているわ。今回の《特別実習》についてはまあ、期待させてもらいましょう」
イリーナ会長はそれだけおっしゃると、今度こそ私たちの前から立ち去っていきました。
アリサ「……」
シャロン「それではお嬢様。お帰りをお待ちしております。皆様も、どうかお気をつけて行ってらっしゃいませ」
シャロンさんもそれだけおっしゃるとイリーナ会長と一緒に立ち去って行きました。アリサさんはその場に座り込んでしまいました。
エマ「ア、アリサさん?」
ハチマン「大丈夫か?」
イリーナ会長、仕事人間だとお聞きしていましたが、見た目以上に仕事人間な感じがしましたね。普通は男性が仕事人間になるパターンが多いんですけどね。旦那さんを事故で亡くしてからあのようになったと聞いたことがあります。アリサさんは、そんな母親に反抗心みたいなものをお持ちなのでしょうか。本当は怒ってほしいという感じ……自分の方に振り向いてほしい、そんな気持ちなのでしょうね。
その気持ちがわからないわけではありませんけどね。
エレボニア帝国・鋼都ルーレ駅→ノルド高原へ向かう途中
七燿暦1204年6月26日・昼過ぎ 帝国・ノルド高原へ向かう途中。
ルーレ駅で貨物列車に乗り換え、シャロンさんが作ってくださった特製お弁当をみなさんでいただいた後、話すことにしました。アリサさんはイリーナ会長とお会いになられてから、ずっと沈んだ表情をされていましたので、何とか元気になってもらうために色々と話していました。
アリサ「……だ、騙された……せっかく家を出たと思ったのに……手のひらの上だったなんて……タツヤもタツヤよ……知ってたのならなんで」
エマ「えっと、その……」
アルフィン【……アリサさん、お母様とはうまくいっていないみたいですね?】
アリサ「ええ、見ての通りよ。何と言うか、昔から折り合いが悪くてね。いつもタツヤが中に入って仲裁してくれたわ。そんな彼からアドバイスをもらって士官学院に入ったのに……まさかあの人が理事をしている学院だったなんて、タツヤだって知ってたのになんで教えてくれなかったの! バカ、バカ!」
ハチマン「それは何と言うか、よーく調べなかったのが悪いだろうしな」
エマ「ご愁傷様と言うしかありませんね」
ガイウス「ふむ……そこまで嫌がることか」
アリサ「その、色々あるのよ。昔から、仕事人間のくせに私には変に干渉してきて、口では好きにしろとか言いつつ今回みたいに手を回してきて。はあ、変だと思ったのよ。お祖父様から頂いた学費講座が入学以来、減ってないんだもん」
アルフィン【それってつまり、お母様が支払ってるとしか思いませんよね】
ハチマン「羨ましい話だが、常任理事をしているんだ、それぐらい朝飯前だろ」
ユーシス「フン、いいじゃないか。その程度の干渉くらいありがたく思うべきだろ」
アリサ「なっ!!」
ユーシス「あの場に現れて、俺たちに挨拶しただけマシだというものだ。完全な無視よりはな」
先月の特別実習の時ですよね。ユーシスさんのお父様は、わたくしたちに挨拶すらありませんでしたからね。イリーナ会長は、わたくしの前に来てくださって挨拶されただけでも違うってものでしょうね。
ハチマン「マキアスから聞いたけど、無視されるのは辛いよな」
エマ「ユーシスさん」
アルフィン【ユーシスさん】
ユーシス「フン、つまらんことを言ったようだ」
アルフィン【そうだ、何か楽しい話をしましょう。暗い気持ちでノルド高原に行っても楽しくないですからね】
わたくしたちは、場を盛り上げるために何とか色々と話をして暗いイメージを払拭しようとしました。そんな中、貨物列車がトンネルに入りました。
ガイウス「トンネルに入ったか。しばらくは山間部を出たり入ったりするだろう」
ハチマン「そうみたいだな」
シャロンさんのお手製弁当を食べてお腹が満腹状態ですから、なんだか眠くなってきますわね。ハチマンさんとエマさんがちょっと眠っていらっしゃいます。ガイウスさんが眠たいのなら眠っていいとおっしゃられましたから、少し眠ることにしました。わたくしは寝ている間に不思議な夢を見ていました。それは夜の空が真っ赤に染まるような色をしていて、ノルド高原が赤く燃えているような、そんな夢でした。
これって、わたくしの予知夢? 危険探知や未来予測みたいなスキルの一つです。危険探知や未来予測と違い、予知夢は寝ている時にしか見えないという制限がありますけどね。真っ赤に燃える姿を映した夜空、赤く燃えるノルド高原。これは最悪の未来を予知夢がわたくしに見せてくれたのですわ。大賢者がおっしゃっていたデータベースにない勢力の仕業なのかしら?そうならないためにもわたくしたちが行動するしかありませんわ。
そう思った時、わたくしは目が覚めましたわ。どうやら他の皆様は起きていらっしゃって、貨物列車の乗組員さんと話していらっしゃいました。
乗組員「へえー士官学院の実習なんかで高原に行くのか。軍人のタマゴってのも色々と大変なんだなぁ」
アルフィン【あはは……それなりに大変ですわね】
エマ「普通の士官学校としてはかなり異例だと思いますが……」
ハチマン「異例中の異例だと思うがな」
乗組員「しかし、あの時のおまえさんがそんな制服を着てるなんてなぁ。馬子にも衣装って言うかなかなかかっこいいじゃないか」
ガイウス「そうか……ありがとう」
ハチマン「ガイウスは背丈が高いから士官学院では目立つんだよな」
アリサ「そうね。2年の先輩を含めてもかなりの高さじゃないかしら」
確かにガイウスさんより高い先輩方もそうそういらっしゃいませんからね。
ユーシス「ノルドの民というのは、皆、お前のように背が高いのか?」
ガイウス「いや、俺より背が高いのは俺の父ぐらいだろう。弟は小柄な方だが、これから伸びるかもしれない」
エマ「ガイウスさんって確か兄弟が多いんですよね?」
ガイウス「弟が1人に、妹が2人いる。人見知りするかもしれんが、よろしくしてやってくれ」
アリサ「ふふっ、分かったわ」
アルフィン【ええ、任せてください】
ハチマン「それにしても、だんだんとノルド高原に近づいてきた気分になってきたな」
ユーシス「フッ、確かにな」
乗組員「は〜なんだか羨ましいねぇ。今、ちょうどアイゼンガルド連峰の半分くらいまで来ている。ゼンダー門まで2時間くらいだから、もう少しのんびりしていてくれ」
エマ「ええ、わかりました」
ガイウス「よろしくお願いする」
乗組員さんはわたくしたちに一礼すると、運転席の方へ戻っていかれました。
アルフィン【ガイウスさん、先ほどの乗組員さんとは春に士官学院に入学される時に知り合ったんですか?】
ガイウス「ああ、その時も同じ貨物列車でな。帝国の習慣についても色々と教えてもらった」
アリサ「ふふ、なるほど」
ハチマン「だからか、帝国の習慣に違和感なくやれていたのは」
エマ「それは助かったでしょうね」
ガイウス「ああ、俺を士官学院に推薦してくれた恩人も含めて色々な人に世話になっている。これも風と女神の導きだろう」
ユーシス「風と女神か……」
ハチマン「ふっ、ガイウスらしい言い回しだな」
わたくしたちは、ちょっと話してから再び睡眠の時間になってしまいましたわ。わたくしは眠る前に先程の予知夢が一体何なのかまだわかりませんが、この先に何かあるってことは間違いないでしょうね。あらゆる問題を想定していろんな対処の方法を考えているうちにわたくしはいつの間にか眠っていたのでした。
そしてエマさんがわたくしたちを起こしてくれました。
エマ「アルフィンさん、アリサさん、ユーシスさん、そろそろ到着みたいですよ」
アルフィン【そろそろ到着ですの?】
アリサ「はっ……」
ユーシス「……む……」
窓の外に広がる光景、ノルド高原。まだ綺麗には見えませんけど、あの光景は一度見たら忘れないものですからね。
ユウのヒロインは誰が良いでしょうか?
-
1ーエマ
-
2ーフィー
-
3ートワ
-
4ーサラ
-
5ースミレ
-
6ーそれ以外(アリサとラウラは除く)