俺たちはゲヘナ学園へやって来ていた。
目的はこの学園の給食室にあるオーブン。
先日、連邦生徒会へ報告書が上がってきた。
内容はゲヘナ学園の給食室のオーブンに突如として異常性が確認されたので調査を頼みたいというもの。
二つ返事でOKして早速給食部の生徒とも連絡を取り、向かうこととなった。
「こんにちは、愛清フウカです」
「博士だ。よろしく」
「連邦生徒会長です。それで早速ですが」
「はい、どうぞこちらへ」
案内されたのは給食室の厨房。
その一角に置かれているのは据え置き型のオーブン。
大型ではあるものの食堂に置いてあるものとしてはよくあるようなものだろう。
「普通に使う分にいいんですけど予熱を入れようとすると」
彼女はツマミの1つを回して予熱を始める。
すると覗き窓には強い爆発が起こり、星が生まれ、銀河が生まれという宇宙の誕生からの一生が流れていた。
そうして覗き続けるとひとつの星へとフォーカスされ、生物が生まれ、進化していき、文明を築く。
「こういう感じに映像が流れてツマミも扉も開かなくなって」
試しに捻ってみるがびくともしない。
「そのまま待っていたら」
オーブン内の映像は人型知的生命体の発展が流れていく。
そしてそのまま技術が発展していき宇宙進出を開始する。それと同時期にナノテクノロジーを発明し、自己複製を開始。
その自己複製分子ナノテクノロジーは即座に周辺環境の消費を開始しグレイ・グーシナリオ、つまり自己増殖を行うもので世界が覆われる世界滅亡シナリオが発生。
それは惑星内にとどまらず恒星系、銀河と宇宙全体を飲み込んでいく。そうして最後はYK-クラス世界滅亡シナリオ、ビックバンの逆の現象であるビッククランチにより一つのアップルパイへと変化して一連のプロセスは終了した。
「これでやっと開くようになるんです」
フウカは扉を開くと中からアップルパイを取り出した。
「ちなみにそれを誰かに食べさせたりは?」
「言われた通りしてません。というか見た感じ気分のいい材料からはできてなさそうなので言われなくても出しません」
「賢明だ」
初めに連絡した時に貰った情報から当たりをつけて忠告しておいて正解だったな。
アップルパイを受け取って見てみる。
「少しもったいない気もしますが……」
「まぁ見た目じゃ普通のアップルパイだしな。でもこれの組成には人肉も含まれてる可能性が高い。それでも食いたいなら止めはしないけど?」
「いえ、大丈夫です!」
アロナへアップルパイを差し出すと速攻で拒否する。
まぁ廃棄だよな。
ポイとゴミ箱へ捨てる。
「それでどうやったら解決します?出来るだけ早ければ助かるんですけど……」
「普通にオーブンを取り替えればいいだけだしすぐ解決するぞ」
この異常性はあくまでオーブン自体が保有しているだけなのでそれだけでいい。
「取り替え……万魔殿がそんなお金出してくれますかね……」
フウカは諦め混じりのため息をこぼす。
「万魔殿ってそんな金も出してくれないんか?」
ゲヘナの生徒会組織だっけ?
これくらいのオーブンなら2桁万くらいの金額にはなるだろうが、異常性が解決するならそれに越したことは無いだろ。
「少し議長が困りものでして……」
少し考える。
「連邦生徒会で出せないのか?」
「出せないことは無いですが、平時でも沢山のトラブルの起きるゲヘナへは補助金を送っているので他校からゲヘナだけ優遇しすぎだと批判される可能性が高いですね……」
「ですよね……」
緊急でもお金を出せないほどか。ヤバいな。
「じゃあ交渉するしか無いか」
ゴミ箱に捨てたアップルパイを取り出す。
「汚いですよ?」
「いいんだよ。これが交渉材料だからな」
切り分けてタッパーに入れた。
コンコンとノックする。
「入れ!」
部屋の中からは待っていたと言わんばかりに即座に返答がくる。
扉を開けて中に入ると黒い軍服風制服に身を包んだ少女が不敵な笑みを浮かべていた。
「キキッ。待っていたぞ連邦生徒会長!」
「こんにちはマコト議長」
「やぁこんにちは」
そこにはマコト以外に二人、シャーレの先生もいた。
「先生もいたんですね」
「ちょっと野暮用がありまして」
俺が話しかけるとそう答えてマコトともう1人のボリュームのある髪をした小柄な少女に目を向ける。
「君は?」
俺がその少女へ聞くと1歩こちらへ前に出る。
「あなたが連邦生徒会の博士ね。こんにちは、私は風紀委員長の空崎ヒナよ」
聞いたことがある。ゲヘナはおろか、キヴォトス全体で比較しても1位2位を争うほどの強さを持つ実力者。
「ヒナさんがここにいるなんて珍しいですね」
「まぁ私も野暮用があってね」
フウカの言葉に先生と同じように答える。
「それでこのマコト様への用件はなんだ?」
「食堂のオーブンの交換費用の申請に来ました」
フウカはそう言ってマコトの前に申請書類を置く。
手に取ると軽く中身に目を通す。
「出してやらなくも無いぞ?キキッ」
「本当ですか!?」
フウカが予想外の返答に驚く。
「だが交換条件がある」
「条件?何やらせるつもり?」
フウカは心底嫌そうに顔をしかめた。
「お前にじゃない」
そう言って俺の方を見てくる。
「博士よ、お前の力を借りたい」
「俺の?……つまりアノマリー関連か。もちろんいいぞ」
アノマリー関連ならこちらから申し出る程度には興味がある。
「キキッ。なら交換費用を出してやろう!」
そう言って書類へ認可の印を押した。
その書類を受け取るとフウカはホッとする。
「良かったですね」
「はい、ありがとうございます」
「ほんと良かった。コレを使わずにすんで」
後ろ手に持っていたパイを取り出す。
「それは?」
「これはですね」
先生が興味深そうに俺の持つアップルパイをテーブルへ置くとマコトが手に取る。
「手土産とは殊勝な心掛けだな」
彼女はそのアップルパイを口に運ぶ。
「食うな!」
瞬間、光の筋が彼女の手と口の間を通り抜けて手元にあったアップルパイはその光の先にあった壁でぐちゃぐちゃに潰れていた。
「何をする空崎ヒナァ!!!」
「ごめんなさい食べ物を粗末にしてしまって」
マコトのことは意に介さず、こちらへ謝罪してくる。
「いや、俺も軽率だった」
「それでそのパイは?」
改めて先生が聞いてくる。
「今回のアノマリーで生み出されたものです。少しアレな内容ですが……見ますか?」
タブレットを取り出し聞く。
「ほう、面白そうだな!見せてみろ!」
マコトがそう言うので調査記録として録画していたものを再生した。
再生終了後……。
「なんでそんなものを持ってきたんだ!」
再生終了するとマコトが怒り気味に聞いてくる。
「いや、もし交換費用を拒否れば口の中に突っ込んで交渉しようかと」
「それは拷問じゃないの?」
少し皆からひかれてしまった。
「1人の犠牲でそれ以上が助かるなら迷うことなくそれを選ぶのが俺の理念なので」
というよりかはSCP財団の理念に近いか。
100人の犯罪者の命で100人の一般人が助かるならそっちを取る。
100人の一般人の命で1000人の一般人が助かるなら迷う理由は無い。
財団はトロッコ問題への正解を決めているのだ。
命の価値というものをはかりにかけて、より多くの人が助かるための仕方の無い犠牲は許容する。
それが財団だ。
「そうだ、ついでにこっちにもアップルパイあるんだけどいる?これはアノマリー由来じゃないし安全だぞ?」
「いらん!」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-3049
今回はアップルパイでした。
さすがに人肉入りアップルパイは誰でも食べたくないですよね。
あと普通にキャラエミュ下手なんでそろそろこのキャラはこういうこと言わないって言われそう。
言ってくれたらできる限り改善するのでよろしくです。