あれから食堂のオーブンは回収しないといけないので、連邦生徒会と関係する企業に即座に交換してもらうことを伝え、フウカはこの部屋を後にした。
「それで俺の知識が必要なものってのは?」
とりあえず席につく。
今この部屋にいるのは俺、アロナ、マコト、ヒナ、先生の5人。
重要人物が集まってる感あるな。
「まず雷帝を知っているか?」
「雷帝?……イヴァン四世のことじゃないよな?」
「それが誰か知らんが間違いだ」
俺の世界の知識だしな。9割方違うと分かってて聞いた。
「雷帝……ですか」
アロナが顔を少し歪ませる。
彼女でさえこのような顔をしてしまう程のヤツなのか。
「雷帝というのはゲヘナの2年前の生徒会長だ。鉄拳政治でゲヘナを統治した恐怖の政治家。そして天才と言っていいほどの発明家だ」
「発明……?」
その言葉に嫌な直感が働く。
「博士の思った通りよ。その雷帝の生み出した道具───私達は雷帝の遺産と呼んでいるのだけど、それらは稀に見つかるような少しおかしなものより残酷で強力な異常な力を持っているわ」
「なるほど……」
東弊重工とかに似た感じか?
「じゃあその雷帝の遺産は見つけたらどうしてるんだ?」
「基本的には破壊だ。置いておいても危険が残ってしまうからな」
なるほど、GOC的思考か。
「悪いが収容方法なら助言は出来るが破壊方法については俺が言える事は少ないぞ?」
あくまでSCP財団の理念として破壊は最後の最後に使う最終手段だ。
「構わない。今回は少々特殊でな。生物なんだ」
「生物?どんなのだ」
「巨大な爬虫類よ」
「巨大な……爬虫類…………!」
冷や汗が止まらなくなる。
この世界にヤツはいるのか!?
「もしかしてソイツは、超敵対的でイカれた再生力とか生命力を持ってるんじゃないだろうな!」
「そうらしいな」
少し俺がテンパって詰め寄るが冷静に返される。
「らしい?」
「今のところ私達も雷帝の残したレポートからしか情報を知らないの」
まぁソイツが作ったんなら記録は残ってるか。
「そのレポートは?」
「これだ」
差し出されたものを確認する。
内容を要約するとそれは偶然の産物で産まれた意図しない存在であること。
そしてそれはあまりの凶暴性と暴力性により制御することは不可能なこと。
なので強酸性の液体で満たされたプールに押し込めて隔離している。
なるほど、一応収容状態には出来ているのか。
だが、1つ重要な事項が抜けている。
「収容場所は?」
「それが問題なの。先生にも強力してもらって1週間前から捜索しているのだけど見つからなくて」
「残念だけど私じゃ力及ばずで。だから博士、そしてアロナの力を借りたいんです」
先生も申し訳なさそうに言う。
正直場所なんて見当もつかないが……。考えてみるか。
「まずこのレポートを見る限り、一連の開発に携わったのは雷帝1人、もしくはごく限られた人数。つまり、メインの活動範囲と思われるゲヘナ地区及びその周辺。そしてこれもレポートからの予測だけど、人が死ぬのを良しとはしてなさそうではある。だから人が寄り付かない場所。加えて収容違反───脱走された場合、鎮圧する戦力が迎える場所。あと俺がそういう場所にするなら高い山とか魅力的な自然とかそういうのが無いどこにでもありそうな森の中を選ぶ」
「今まで雷帝の遺産の発見された地点の分かるデータはありますか?」
「少し待て……これだ」
マコトが資料を少しあさって見つけたものをアロナへ渡す。
「ありがとうございます」
彼女がそれに目を通すとタブレットのマップを開き、ひとつの地点にピンを立てる。
「最も可能性の高い地点はここですね」
「フフッ」
先生が自身のタブレットの画面を見てクスリと笑った。
「先生、なにかあった?」
「ごめん、気にしないで」
ヒナが聞くが先生ははぐらかす。
そしてアロナは先生の方、というより先生のタブレットを見ながらドヤ顔をしている。
「何やってんだ?」
「コホン。お気になさらず」
こちらも同じリアクションである。
変な2人だな。
まぁアノマリーには関係ないしいいか。
「とりあえず場所がわかったのなら確認に行こう!」
「待て。その前に確認だけどどれくらいの人数で行くつもりだ?」
「ここにいる人で全員だけど」
「あのクソトカゲにこんだけの人数で応戦するとか無理だ」
アイツは現実改変とかミーム汚染とかの能力は無いが、その分クソみたいな強さのフィジカルを持っている。
ミームなどの特殊能力持ちを除いた場合において、純粋な生物としてスペックであのクソトカゲより強い存在を知らない。
「私これでも強いのよ?」
「強かろうが救える数にも限度がある。先生、貴方も現場に行くんでしょう?」
「もちろん。生徒だけ危険に晒されるなんて許せないですから」
「ですよね」
聞いていた通りの人物だな。
生徒の為なら自分を一切かえりみない突き抜けた善人。
「俺のもといた組織ではこのクソトカゲに対しては少しでも動く、話す、脱走を試みた場合はすぐに、その状況を解決するのに必要な最大限の力で対処してくださいって書いている」
「そこまでですか……」
「そこまでだ。というか初めにも言ったが俺のいた組織は破壊のノウハウは少ない。それは確保しているからだ。しかしコイツは別だ。あらゆる方法で無力化しようとしている。様々な兵器、他のオブジェクトとかも使ってな」
「……分かったわ。戦力は可能な限り用意しましょう」
「連邦生徒会の方でも集めます」
「頼む」
これで何とかなれば良いが……。
「ここですね……」
ということで俺達は目的地へ到着した。
そこには岩肌の露出した壁がそびえるだけ。
「どうしましょう」
「何も無いけど……」
「いやある」
壁に手をやる。
「やっぱここだな。ヒナ、この壁を打ってくれ」
「え、えぇ」
全員をヒナより後ろへさげる。
ドガァァァン!!!
強い衝撃音が鳴り、砂埃が消えるとそこには通路ができていた。
「ビンゴだな」
読みが当たったか。
「行こうか」
先生の言葉にみんな頷き中へ侵入する。
内部は意外と簡素だった。
破壊しての侵入のはずなのに警報も鳴らない。
こんな設備でクソトカゲを収容出来るのか?
そう考えながら奥へ奥へと進んでいく。
ちなみに今回の人数は合計50名。戦力の無い先生と俺を除くと、ゲヘナから24名、連邦生徒会から24名。どちらも精鋭揃い。
屋内なこともあり、用意出来る戦力には限りがある。
つまりこれが限度なのだ。
「多分ここだな」
1番奥の特に厳重な扉。
その横にはカードキーリーダーがはめ込まれている。
「どこかで探さないとか?」
「私に任せてください」
先生が前に出てタブレットをそのカードキーリーダーへ当てる。
ピピッ
そんな音が鳴り、どうやら解錠に成功したらしい。
「総員警戒」
この場にいるのは俺と先生含めて26。残りは道中に分散させて待機させている。
万が一にも収容違反が起きた場合の時間稼ぎと救援要請を出すためだ。
俺と先生は最後尾へ。
最前列をヒナ、それに並んでマコト。
「行くわよ」
「ああ」
両者共に真剣な眼差しで扉を開けて侵入する。
合わせてなだれ込むように入っていく。
最後に入るとそこには塩酸プールに入れられたクソトカゲがいた。
沈黙。
全員が銃口をヤツに向けてトリガーを指に掛けている。
その爬虫類特有のギョロっとした目は突然入ってきた生命を一体一体見ていく。
見られた人はその殺意と憎悪を持った目に怯んでしまう。
そうして一人一人見ていき、最後に俺を見た。
「…………」
「憎い……」
「総員警戒!作戦4実行準備!」
俺はクソトカゲが言葉を発したのを合図に叫ぶ。
怯んでズレていた銃口が再びクソトカゲへ向けられる。
そしてその場にいた人員の半分が扉側へ近づく。
しかし変わらずその目は俺を捉えている。
それは憎悪であれなんであれ、俺に興味があるということ。
道を開けてもらいクソトカゲの前に出る。
前と言っても10mは離れた場所だ。
ここからなら突然暴れ始めてもギリギリ意識を逸らせる。
「はじめまして。俺は博士と呼ばれている。お前みたいなイカれた能力持ちの研究をしていてな。インタビューに応じる気はあるか?」
「〜゛〜゛〜゛」
腹の奥に響くような低い唸り声をあげる。
「答える気は無いか……」
「……」
「お前は雷帝によって作られたのか?」
「……否だ、忌まわしき財団の科学者」
「!?なぜ知っている……」
どういうことだ。今俺は財団とわかるものを一切身につけていない。
いや、まずなぜこの世界の存在であるはずのコイツが財団を知っている。
「作戦4実行!」
「クロさん!すぐ逃げますよ!」
「あ、あぁ」
先生により実行合図が出されていることにアロナに呼びかけられてから気付く。
そうしてクソトカゲから目を離さずに後ろ足で退出。最後にヒナが部屋から出て施錠された。
その後、クソトカゲに動きは無く、ゲヘナの人員を監視役として常駐させることで現状の収容プロトコルとすることになった。
http://scp-jp.wikidot.com/scp-682
ということで有名SCPのクソトカゲの愛称で知られる不死身の爬虫類です。
元々は弱体化させて戦うつもりでしたが、そうするとクソトカゲの最強のボーダーラインというロマンが無くなってしまう気がしたのでこういう風にしました。
有名なので知っているという方も1度元記事見に行ってみてください。
補遺682-Bの赤い██を押すと音声を聞くことが出来ます。
音声が聞けるなんて今回知りました。