龍娘々伝   作:苦心惨憺

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風邪で会社休んだのに更新してしまった。明日は絶対休めない。

みんな~!オラに元気をわけてくれ~!

今回の話は結構残酷な描写があります。嫌いな人は見ない方がいいです。


第16話

 仙豆を飲み込み、ガバッとベッドの上で身を起こす二人。カノンは周囲を見回すが二人を見て安堵しているチチと牛魔王、隣で同じくベッドから身を起こす悟空しかいない。サッと青ざめチチに縋りつく。

 

「母様!悟飯君は!悟飯君はどこです!!」

 

 そんなカノンに涙目になりながら、首を振るチチ。そして牛魔王はカノンの肩を掴む

 

「この辺りを探したども、悟飯ちゃんは見つからなかっただ。おそらくあいつらに連れ去られ」

 

 牛魔王の言葉を最後まで聞かずベッドから抜け出し外の扉に向かうが、それを悟空に腕を掴まれ引き戻される。

 

「カノン!落ち着け!」

 

 カノンは悟空を睨み自分の激情をぶつける。

 

「落ち着け?どうやったら落ち着けるんですか!もしかしたら今この瞬間、悟飯君が酷い目に合わされているかもしれないのに!!父様は心配じゃないんですか!?」

 

 悟空の手を振り払おうとするが、パアンと頬を叩かれる。そしてグッと抱き寄せられる。

 

「落ち着けカノン。冷静さを欠いたままあいつらのところに行ってもいいようにやられるだけだ。勿論、オラも悟飯のことが心配だ。でもカノン、おめえのことも心配なんだ」

 

 悟空に抱きしめられその温かい体温を感じ頭が冷えていく。そして先ほど悟空に言ったひどい言葉に罪悪感を感じ涙が出てくる。

 

「ごめ、、、ごめんなさい。父様。わた、わたし、、そんなつもりじゃ」

 

「でえじょうぶだ。カノンは優しいもんな、オラ全然気にしてないぞ」

 

 ニッと笑う悟空を見てその逞しい胸に顔を押し付けた。

 

 

 

 

「す、すいませんでした」

 

 一頻り泣いたカノンは恥ずかしさで顔を赤くし悟空に謝る。それを見て悟空はニッコリ笑い頭を撫でる。

 

「へへっ落ち着いたみてえだな。よし!そんじゃ悟飯を助けに行くべ!」

 

「はい!」

 

 冷静さを取り戻したカノンは元気よく挨拶し、悟空とカノンは目をつぶりガーリック三人衆と言っていた三人の気を探る。

 

「ダメです。全然気を感じません」

 

「近くにはいねえみてえだな。今のオラたちじゃあ遠くの気までは探れねえ」

 

 いくらカノン達がこの数年で気の探知を広げられたとはいえ地球全土までの範囲を探るのは無理だ。そういえばとチチが思い出す。

 

「悟空さ、そういえばうちにあった残りのドラゴンボールがなくなっていただ。それをドラゴンレーダーで追えば」

 

 悟空は祖父、孫悟飯の形見である四星球を見つける過程で2つほどドラゴンボールを見つけていた。ガーリック三人衆は確かに言っていたドラゴンボールに用があると。

 

「それだ!チチ!ドラゴンレーダーで追えば悟飯のところに行ける!今日、亀仙人のじっちゃんのところにブルマが行っていて明日遊びに行く約束してたんだ!そこにドラゴンレーダーを持って来てるかもしんねえ!」

 

「父様!早速行きましょう!」

 

 急いで出ていこうとする二人にチチが呼び止める。

 

「カノンちゃん!ホントは母親として止めるべきだども、悟飯ちゃんを助けてけれ。勿論、カノンちゃんも無事に帰ってくるんだぞ。悟空さ二人のこと頼んだべ!」

 

 カノンと悟空は力強く頷く。

 

「母様、心配しないでください。必ず悟飯君を助けてきます!」

 

「二人のことは任せておけ、チチ!すぐ帰ってくっからご馳走を用意してまっててくれ」

 

「わかっただ!うんっとうまいご馳走作っておくだ!」

 

「婿殿もカノンちゃんも気を付けるだぞ」

 

 チチと牛魔王に見送られ筋斗雲でカメハウスに向かうのだった。

 

 

 

 

 カメハウスに着いた二人は扉を破るかのように入っていく。丁度夕食時だった為、鍋をつついていた亀仙人、クリリン、ブルマは突然入ってきた者に驚くがそれが悟空、カノンであると分かり笑顔を向け二人を迎え入れる。

 

「おお~悟空ひさしぶりじゃの~。ほれ!そんなところに突っ立ってないでこっちに来い」

 

「カノンちゃんも大きくなって!ますます可愛くなったわね!」

 

「どうしたんだよ悟空!明日くるんじゃなかったのか!?へへっこれはもっと鍋の材料を用意しないとな!」

 

 亀仙人たちは久しぶりに会った悟空達にそう言うが、再開を喜んでいる暇はない。

 

「ちょっと待ってくれ!ブルマ!ドラゴンレーダー持って来てるか!?」

 

「えっ、ええ。一応話の種になると思って持って来てるわよ。何があったの?孫君」

 

 どう見ても普通じゃない悟空にブルマが問いかける。心配そうに見てくる亀仙人たちに悟空は訳を話す。今3歳の息子がいること、その息子が攫われてしまったこと、その息子を攫った奴らがドラゴンボールを持って行きその為にドラゴンレーダーが必要なことを。

 

「なんと!悟空に息子ができていたとはのう。悟飯か祖父と同じ名前じゃな。しかしそやつら悟空とカノンの二人がかりでもかなわんとは」

 

「いえ、言い訳になりますけど私たちは直前まで修行をしていてかなり消耗していました。力が戻った私たちなら十分相手になります」

 

 自信を持って言うカノンに4年前に見た激闘を思い出し亀仙人は確かにそうだと頷く。

 

「それにしてもどんな修行してるんだよ。そんなに消耗するなんて」

 

 呆れたように言うクリリン。自分も頑張らなくてはと決意しているクリリンを押しのけドラゴンボールの行方を調べていたブルマはレーダーを悟空達に見せる。

 

「見て、ここ!もう五つ揃ってる!それに残りの二つもここに向かってる!どんな願いをかなえるか分からないけど急いだ方がいいわ!」

 

 ブルマからドラゴンレーダーを受け取り、外に向かい筋斗雲に乗る悟空とカノン。

 

「サンキュー!みんな、ぜってえ悟飯を取り戻してくる!」

 

「今度は悟飯君も一緒に遊びに来ます!」

 

 筋斗雲が徐々に浮かび上がっていく。

 

「気を付けるのじゃぞ!」「悟空!カノン!頑張れよ!」「無茶しちゃだめよ!」

 

 亀仙人達の声援を受け筋斗雲は急スピードで目的地に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 ドラゴンボールが集まっている場所、南方に位置する紅海の海。もう夜だというのに大気が赤くなっているそこにガーリックJrの大宮殿がある。遠目にそこが見えてきたとき、光る柱が現れる。

 

「くそっ!あいつら神龍を呼び出したな!」

 

 悪態をつく悟空。カノンは遠目でよくわからないがあれが悟空から聞いていたどんな願いも叶えてくれるという神龍かと思い見ていた。そして奴らはいったいどんな願いを叶えようというのかという疑問も。宮殿の上空に着き下に悟飯を攫った三人と小柄な男、ガーリックJrが見える。

 

「いくぞ!カノン!」

 

 初めに悟空が飛び降り。

 

「はい!父様!」

 

 カノンが悟飯を奪い返し、借りを返す為に筋斗雲から飛び降りる。

 

 

 ガーリックJrが願いを叶えられたことを喜ぶジンジャー、ニッキー、サンショの前に現れる悟空、カノン。二人が生きていたことに驚く三人だったが、すぐにニヤニヤと笑い出す。

 

「なんだ、お前ら生きていたのか?で、何しに来たんだ?」

 

 ジンジャーがバカにしたように悟空達に言ってくる。

 

「オラたちは悟飯を返してもらうために来た!悟飯はどこだ!!」

 

 三人は顔見合わせ、笑いあう。

 

「ひあああっはっはっ!!なに?あんたたち、あんなクソガキの為にわざわざ殺されに来たの?」

 

「ぐぁっはっはっ!!俺たちに全く歯が立たなかったのに、よく来れるもんっす!」

 

「はっはっは!!お前ら確か、天下一武道会でピッコロを倒した孫悟空とその娘の孫カノンだったよな?俺たちはそのピッコロを倒してるんだ。そしてお前らも。わかるか?それだけの差が俺たちの間にあることを?」

 

 ニッキー、サンショ、ジンジャーが笑いながら言う、悟空達はその内容に驚く。

 

「なに!?ピッコロが!?」

 

 悟空達は知らないことだが、ガーリック三人衆とガーリックJrの4人で不意打ちしピッコロを倒している。その時、空から光が降ってくる。そしてそこにいたのは神だった。

 

「ガーリックやはり300年後に蘇っていたか」

 

 突然の神の出現に驚くガーリックJr。だがすぐに嘲りの笑みをうかべる。

 

「どうやらピッコロは死んでいなかったようだな。神よ、ようこそ」

 

 神は顔を歪める。

 

「その野望の為には手段を選ばんのは父と同じだな。親も親なら子も子だな」

 

 そして、神は言う。300年前ガーリックJrの父ガーリックと神の座に就くために競い合っていたことを。結局先代の神にガーリックは選ばれなかった。先代の神は気づいていたのだ。ガーリックの野心を。そしてガーリックは先代の神に反旗を翻し、その結果、300年後に蘇るという言葉を残し封印された。

 

 

「そうだ。父ガーリックに代わり神、お前に復讐しその後は人間どもに血と絶望を与え永遠にこの星の支配者となる。ドラゴンボールで永遠の命を得た私がな!」

 

 高らかに笑うガーリックJr。

 

「不老不死!?ドラゴンボールでそんな願いを」

 

「そういうことだ小娘。どうだ、私の部下にならんか?いいぞ。人間どものもがき苦しむ姿は!」

 

「だれが!奥ですね。悟飯君がいるのは!?通らせてもらいます。行きましょう!父様!」

 

 カノンと悟空は素早く動きガーリックJr達を置き去りにし奥に急ぐ。それをジンジャーたちが追いかける。そして神とガーリックJrが対峙するのだった。

 

 

 

 

 

 悟空達がたどり着いたのは大広間だった。宮殿を不可思議な力で覆われている為はっきり悟飯の気は感じないがおそらく上の方だろうと足を進めようとするが、目の前にガーリック三人衆が現れる。

 

「これで二回目だな。どこへ行くつもりだ?ここから先は通行止めだ」

 

 完全に舐めた口調で言うジンジャーにこちらも笑って答える。

 

「初めからボロボロだった私たちに勝ったぐらいでえらく余裕ですね」

 

「今度はオラたち力がみなぎっているかんな。前みたいにはいかねえぞ!」

 

 それを聞いたジンジャーたちはそれでも余裕な顔で襲い掛かってくる。

 

「今度はちゃんと息の根を止めてやる!!」

 

 ジンジャーがカノンに突きを繰り出してくる。それを上空に飛んで避ける、が上からニッキーが襲い掛かってくる。だが、さらに上から悟空の蹴りがニッキーに炸裂し吹き飛ばされる。ニッキーの横に並び同じく攻撃をしようとしているサンショが悟空に気を取られている内にカノンは懐に入り腹に肘をブチ当て吹き飛ばし、さらに地上にいるジンジャーの後頭部を悟空と一緒に蹴り上げ吹き飛ばす。吹き飛んだ三人はふらつきながらも立ち上がる。

 

「な、何なのよ!こいつら全然動きが違うじゃないのよ!」

 

「だから言ったろ?前とは違うって」

 

 前とは明らかに違う悟空達の動きに驚くニッキーたち。だがここからが本番だと力を貯める。

 

「ショウガヤキーッ!!」

 

「ノドアメーッ!!」

 

「ウナジューッ!!」

 

 ジンジャー、ニッキー、サンショがそう言うと三人の体が盛り上がり気が上がる。

 

「本気になったということですか」

 

 カノン、悟空が構えジンジャーたちを正面から迎え撃つ。三人はカノン達の周りを高速で周り突きや蹴りのコンビネーションを繰り出していくが背中合わせになったカノン達は軽々とその攻撃を捌いていく。それに焦りを感じ二人から離れ3方向から気功波を撃とうとするジンジャーたち。しかしジンジャーたちの攻撃はカノン達とジンジャーたちの間に飛んできた気功波が遮る。

 

「余計なお世話だったか?孫悟空と小娘。だが俺はそいつらに借りがあるんでな」

 

 攻撃を遮ったものピッコロが現れる。ピッコロが来るとは思っていなかった悟空は驚きの声を上げるがカノンは階段の上に悟飯がいるのを見つける。

 

「おねえちゃーん!おとうさーん!」

 

「悟飯君!大丈夫!?助けに来たよ!!」

 

 それを見たジンジャーが悟飯を人質にすべく悟飯に近づく。それに気づいたカノンは超スピードでジンジャーの体を突き飛ばし一緒に宮殿の奥に飛んで行く。

 

「あーーっ!おねえちゃーん!」

 

「大丈夫!悟飯君はそこにいてええええぇぇぇぇぇぇーーー!!!」

 

 そのまま遠ざかっていくカノン。それを見た悟空はニッキーに飛びかかり、ピッコロに目を向ける。

 

「ピッコロ!おめえはそいつの相手をしてくれ!」

 

「俺に指図するなーーー!!!」

 

 悟空の言葉に怒りながらもサンショに襲い掛かるピッコロ。そして宮殿の奥に飛んで行ったカノンは、ジンジャーの体を離し急停止する。ジンジャーはそのまま壁にぶつかりようやく止まる。そしてカノンを怒りの表情で見据える。

 

「こ、このクソガキが~!俺をこんな目に合わせてただで済むと思うなよ!?」

 

 そんな言葉を聞いていないかのようにカノンはうつむいている。それにますます怒りを募らせるジンジャーは両腕から二刀の刀を出す。

 

「聞いているのか!!ガキ!よーし!お前を少しずつ切り刻んでやる!!そしてバラバラになったお前をさっきのガキの前に持っていってやる!!」

 

 そう言って笑うジンジャーはふと周りの様子がおかしいことに気が付く。パラパラと宮殿の床に散らばっている小さな破片が浮かんでいるのだ。それはカノンを中心に渦巻いている。

 カノンはうつむいていた顔を上げる。

 

「ヒッ」

 

 そんな声を上げジンジャーは後ずさる。カノンの顔は能面のようになり目が凍り付いていた。

 

「おい、おまえ。今さっき何しようとしてた?もしかして私の弟を人質にでもしようとしていたのか?いい加減、私もムカついてきたわ。母様とお爺様に手を上げ、父様をボロボロにし、そして悟飯君を泣かせた。覚悟はできてんだろうな?おまえ、、、楽には死ねんぞ?」

 

「ヒッヒャアアーーーー!!!」

 

 ジンジャーは恥も外聞もなく逃げ出した。魔族の自分がただの人間に逃げ出したのだ。しかし急にバランスを崩し倒れる。目の前にカノンがいた、いたがカノンは何かを持っている。見覚えがある。いつも見ているものだ。左腕を見る。肘から先がない。カノンの持っている物を再び見る。自分の左腕だ。それを意識した瞬間、強烈な痛みが降りかかる。

 

「ギヤアアアアアアア!!!!」

 

 肘から血を垂れ流し、倒れこむジンジャー。それを冷めた目で見たカノンは持っていた腕を放り投げる。

 

「拾え」

 

 ゾッとする声で命令する。大口を開け悲鳴を上げながら拾おうとするジンジャーの口に蹴りを打ち込む。

 

「黙れ、耳障りだ」

 

 口を残った右腕の刀を投げ出して押さえる。指の間から折れた歯と血が噴き出す。恐怖で一杯になった頭でこのままでは殺されてしまうと思ったジンジャーはイチかバチか落ちている左腕の手に握られている刀を拾いカノンに切りかかる。

 カノンはそれを軽く避け、左手で右の手首をつかむ。そして左の手に気を集中させ、自分の手より二倍ほど大きい光り輝く龍の手を模したものを作り出す。それでジンジャーの手首を握りつぶす。そのまま今度は右手首の先が地に落ちる。

 

「ギャ゛ア゛ア゛ア゛ーーーッ!!!ムグッ」

 

 再び叫ぶジンジャーに左の手と同じく右手にも龍の手を作り出したカノンはジンジャーの顔下半分を塞ぐように握る。

 

「なあ、私は黙れと言ったんだぞ。こんな簡単なこともできないのか?っ!?」

 

 二つの気が消えたのをカノンは感じた。タイムアップだ。

 

「お前のお仲間がくたばったみたいだぞ?私も父様に合流しないといけない。よかったな?これで楽に死ねるぞ?」

 

「む~!!む~!!」

 

 口を押さえられ、涙を流しながらも目で助けを求める。

 

「なんだ?助けてほしいのか?安心しろ、地獄で残りの二人が待ってるぞ。そしてお前の主、確か不老不死になったんだよな?そいつが地獄にいけないのは残念だがその代り、生き地獄を味あわせてやる」

 

 右手に力を入れていき、一気に握り潰す。首から上がなくなった体が落ち、首から吹き上がる血が口許にかかる。それをぺろりと舐め、ブッと床に吐く。

 

「まじい」

 

 そして合流するために悟空たちの元に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 ガーリックJrに敗れた神、そして緊張の疲れから眠ってしまった悟飯を後ろにかばうように悟空とピッコロはガーリックJrと対峙していた。

 

「如何やら小娘が最後の一匹を倒したようだな」

 

 ピッコロは一つの気が消えたのを敏感に感じていた。

 

「ああ、あとはあいつだけだな」

 

 悟空は体に着ている重りを脱ぎながら答える。それを見てピッコロもターバン、マント、リストバンド、アンクルを脱いで床に放り投げる。するとドゴンッ!ドゴンッ!と床に穴が開き落ちてゆく。

 

「ひえ~。おめえ、前は付けてなかったリストバンドやアンクルを付けてるからおかしいと思ってたけど、どんな重さの着てるんだ?」

 

 どう考えても悟空以上の重さを着ているだろうピッコロに驚きの顔を見せる。

 

「フンッ!貴様ら親子が修行して前以上の力をつけているだろうことは想像できていた。なら俺は貴様ら以上の修行をするだけだ。そしてあのゴミを倒した後はお前らの番だ」

 

 ピッコロは重りを取り軽くなった首を回す。

 

「ゴミだと?わかっているのか?私は不老不死になったのだ。貴様らには絶対に私は倒せん!」

 

 ゴミ扱いされて顔を顰めるガーリックJrだがすぐに冷静さを取り戻す。何故なら自分は絶対に死なないのだから。

 

「だったら、五体をバラバラにして海にでも沈めてくれるわ!!孫悟空!貴様は引っ込んでろ!!」

 

 そのまま突撃していくピッコロ、そしてそれを追う悟空。

 

「そうはいかねえ!あいつと戦うのはオラだ!!」

 

 それを見たガーリックJrは体を巨大化させ迎え撃つ。

 

「かああああ!!!」

 

「ぜりゃああ!!!」

 

 二人の同時の攻撃を胸に食らい吹き飛んでいく。

 

「なにっ!」

 

 あまりの威力に驚くガーリックJr、吹き飛ばされたまま追ってくる二人に両手からそれぞれ気功波を放つ。しかしピッコロも悟空も軽く避け、一瞬で接近する。二人で顔を滅多打ちにし嫌がるガーリックJrは顔をガードする。と同時に悟空とピッコロは懐に入りそれぞれ手を胸に置き、強力な気功波を放つ。

 

「がああああーーーー!!!」

 

 そのまま消滅していくガーリックJr。ピッコロはそれを見て面白くなさそうに鼻を鳴らし今度は悟空を見る。

 

「さあ、今度は孫悟空。貴様の番だ!」

 

「ちょ、ちょっと待てよ。あいつは死なねえんだろ!だったら!」

 

 不老不死になったガーリックJrを警戒する悟空がピッコロを止めようとする。

 

「関係ない。いくらでも復活すればいい。だがそんなに気になるなら初めに言ったように五体をバラバラにしてやるわ、それが終わったら今度こそ貴様の番だぞ」

 

 そう言ってガーリックJrが消えた方に向かう。しかし全く反対側から気を感じる。だがピッコロは焦らなかった、何故なら上空に大きい気を感じていたからだ。

 

『かめはめ波―――――!!!』

 

「ぎゃああああ!!!」

 

 下半身を吹き飛ばされ周りの残骸に埋もれるガーリックJr。そして重りを脱ぎながらカノンが降りてくる。下半身が吹き飛んだガーリックJrを無視して悟空の元に向かう。

 

「父様、悟飯君は?」

 

「でえじょうぶだ。あっちで疲れて眠ってる」

 

 ホッとするカノンに、怒りの声が聞こえる。瓦礫が吹き飛び下半身を再生させたガーリックJrが出てくる。

 

「き、貴様ら。許さんぞ!この星の支配者にこんな狼藉を働くとは~~!!」

 

 屈辱に身を震わせるガーリックJrだが、もはや勝負はついたも同然である。カノンは生き地獄を味わせようと思っていたがあまりの無様さに憐みの心までうかんできた

 

「えっと、ガーリックJrさん?もういいです。貴方の実力では100年たっても私たちに勝てないでしょう。悟飯君達にしたことは許してあげます。なのでこれからは私たちの目の届かないところでひっそりと暮らしてください」

 

 肉体に攻撃はしなかったが心にダメージを与えた。それを聞いて悟空もあちゃ~と顔を空に向け、ピッコロは腕を組み目を閉じて少し笑っている。それを聞いたガーリックJrはますます身を震わせ、しかし笑い出す。

 

「くっくっく、いいだろう。貴様らには一条の光も差さない身も心も凍る異次元空間『デッドゾーン』を作り出し死ぬまで閉じ込めようと思ったが、やめだ!!それよりももっと凄まじい地獄を見せてやる!!!」

 

 そう言うと両腕を前に向け掌をカノン達に向ける。それを見て構えるカノン達。やがてガーリックJrの掌に瘴気が集まりだす。いや違う掌から出ているのだ。カノンは目を凝らす。点だ、黒い点。それが徐々に徐々に広がりだす。

 

「な、なんだこれは!?」

 

「こ、これは!?」

 

 悟空、ピッコロがあまりの瘴気に顔を顰める。それを見てやっと意趣返しができたと思ったガーリックJrは得意顔で説明しだす。

 

「見えるだろう。この黒い穴が、ここから先は魔界と呼ばれる世界だ。私では魔界の浅い部分までしか扉を開けないが、まあ安心しろ。魔界の魔族どもはみんな獰猛だ。死ぬまで戦闘を楽しめるぞ」

 

 ニヤリと笑うガーリックJrにカノン達は震えていた。それを見たガーリックJrは自分に恐れをいだいたと思い高笑いする。

 しかし違う。カノン達はガーリックJrを恐れているのではない。後ろにいるガーリックJrには見えていないが小さい穴の中に見えるのだ。目だ。金色の目。カノンと目が合い目がグニャリと歪む、笑っているのだ。それを見た瞬間。

 

「おげえええええええ」

 

 カノンは嘔吐する。吐瀉物が床に広がる。しかしそれを見ても悟空もピッコロも動かない。というより足に力が入らず無様に腰が落ち動けないのだ。

 

(じ、次元が違いすぎる!いや世界そのものが違う!相手の強さがあまりにも大きすぎて知覚できない!!)

 

 カノンは恐怖で凍る心で相手の強さを測ろうとするがそのたびにえずく。全く気付いていないガーリックJrはますます笑うが、穴から出てきた腕がガーリックJrの手首を掴む。病的なほど真っ白い細い腕、おそらく女だろう。そして所々に文様が描いてある。

 

「え?」

 

 急に掴まれた腕を見てそんな言葉を言う。次にものすごい力でどう考えてもガーリックJrの巨体が入りそうにない小さい穴に引っ張り込む。穴を通る時の体が削れる音、苦痛の悲鳴が鳴り響く。そのあと徐々に小さくなる穴の向こうからガーリックJrの悲鳴と肉を食う咀嚼音が聞こえ穴が完全にふさがる。

 

 どれだけ呆然としていただろうか。悟飯の声と神の声が聞こえ硬直が解かれた三人は動き出す。ピッコロは静かにカノンと悟空を見て何も言わず去っていく。

 

「うあーん!おねえちゃーん!おとうさーん!」

 

 泣きながら胸に飛び込んでくる悟飯をあやしながらカノンは悟空の方を見る。悟空は何も言わず首を振る。カノンはもう一度穴が開いていた方を見る。あれは何だったのか。あの目を思い出すと、恐怖で体が震える。だがそれとは逆にカノンの口元には笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




すっきりしない終わり方ですが、これでガーリックJr編は終わりです。

最後にオリキャラを出しましたが正体がわかるのはだいぶ先です。





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