嫌だと思う人はここから先読まない方がいいです
「ズリャーーー!!」
ピッコロの連撃の突きがカノンの顔面に突き刺さり、顔が左右に振られる。さらに右の蹴りを食らい岩に叩き付けられ、崩れた岩の下敷きになるカノン。そこに向かって連続で気功波を放ち、空をも覆い尽くす土煙が発生する。
「くっくっく、くたばりやがったかっ!?」
土煙を切り裂いてレーザーのような気功波がピッコロの顔に飛んでくる。それを躱すも右頬が薄く切れ鮮血が流れる。今度はカノン自身が飛んできて、お返しとばかりに右の蹴りを叩き付ける。それを受けたピッコロが吹き飛ぶも地面に手を着き無理やり止まる。さらに態勢を崩しているピッコロに追撃を加える為、真正面から突っ込む。
「真正面?舐めるなー!」
膝をついた姿勢から気功波を放つ。しかしカノンを突き抜ける。残像だ。残像のカノンが消えるとピッコロの頭上から本物のカノンが現れ頭に拳を叩き付ける。倒れそうになるピッコロの顎に蹴りを入れ無理やり上空に浮かべる、そこで目の前にきた腹に拳を叩き付ける。
「はああああああ!!」
ピッコロの体が九の字に曲がり出すがピッコロはカノンの両足を上から掴み一回転し腰に膝を付け地面に叩き付ける為に急加速で落下する。地面にぶつかる寸前カノンは上体を反らしピッコロの腰を掴みそして腕を振りかぶりピッコロは地面に頭から突っ込む。
「ふ~、やりすぎてしまいましたか?」
ピッコロが突っ込んだ地面は小さいクレーターになり中心に足だけ見えている状態だ。やりすぎたと言う割にさらに攻撃を加える為、掌をピッコロに向ける。その時足元から腕が出てきてカノンの足首を掴み地面に引きずり込む。
「ぐうううううう!!」
固い砂や石に痛めつけられながら自身が削岩機のようになり掘り進んでいく。そして地面を抜ける。目の前には怒り顔のピッコロ。ピッコロは掴んだ足を振り下ろしカノンは地面にめり込ませる。
「この、クソガキがーーー!!」
前から背中からと地面が砕け散るほど叩き付けられる。このままでは堪らないと足を捻ってピッコロの掴んでる手を離させる。カノンは一旦ピッコロから離れるも再び2人は超高速でぶつかり合う。
「はあ、はあ、はあ」
「ちっ、はあ、はあ」
お互いに息を切らせ、にらみ合う。二人の道着はボロボロになり、体中に擦過傷や痣ができている。当たり前だ、もう何時間も休みなしで戦い続けているのだから。ふと気づくと、もう空が茜色に染まっている。
「ここまでですね。ピッコロさん、ありがとうございました。」
礼を言うカノンにピッコロはしかめっ面をし後ろを向く。
「何度も言うが勘違いするなよ。俺はただお前を利用しているだけだ。貴様の父親を殺す為にな」
ギロリと目線だけカノンに向ける。それを受けてカノンはニッコリ笑い真っ直ぐにピッコロの顔を見る。
「では、私も強くなるためにピッコロさんを利用してることになりますね」
チッと舌打ちしカノンから離れていくピッコロを見ながら、カノンも帰ることにする。
「筋斗う~~~ん!!」
悟空から借りた筋斗雲に酷使した体を乗せ、上空に浮かんでいく。
「ピッコロさ~ん!また、二日後にお邪魔させてもらいますね!!」
カノンの言葉に見向きもせず歩いていくピッコロに気分を害することなく筋斗雲を家に向けて飛ばす。そしてピッコロは小さくなっていくカノンを一瞥し再び修行をするために去っていくのだった。
ガーリックJrとの戦いが終わりまたその時に味わった恐怖からか、カノンの生活は一部変わった。それがピッコロとの実戦形式の修行だ。カノンの転生前は兎も角、今世の戦闘経験は数えるほどだ。しかも悟空との修行がほとんど。それでもめきめきと強くなっていくがどうしてもお互いの手の内が読めていきこれから先、強敵が現れた時の臨機応変さがとれないかもしれない。
そこで悟空以外の修行相手を探すことにした。しかしこの地球上でカノンの相手になるものは少ない。クリリン、ヤムチャ、天津飯、餃子、天下一武道会に出ていた者もすでに全く相手にならないほどカノンは腕を上げていた。ならば一人しかいない、悟空と互角の力を持つ人物。ピッコロだ。
早速とばかりに悟空とカノンはピッコロの気を頼りに探し出し修行の相手をしてほしいと頼むが勿論そんな申し出を受けるわけがない。ピッコロの目的は悟空を倒すこと、その本人と修行をするなどありえない。そしてその場で始まる悟空とピッコロのかつての天下一武道会以上の戦い。
周囲の地形が変わるほどの戦いをし、結局痛み分けに終わる。その戦いを見てやはり悟空以外で相手になるのはピッコロしかいないと考えたカノンは悟空がダメなら自分だけでもと再度頼む。がやはり断られる。
しかしピッコロは、カノンの強くなる執念を甘く見ていた。カノンは悟空と修行をした次の日から、ピッコロの元に向かい断られようが戦いを挑んでいき夕刻には家に戻り、次の日はまた悟空との修行と生活のサイクルを変えた。何時しか、ピッコロもカノンのしつこさに諦めたのかそれともピッコロ自身もいい修行相手ができたのかと思ったかは定かではないが、この奇妙な関係は1年間続いた。しかしそんな日常は地球に侵入した三つの脅威により終わりを迎えることになる。
ここは、北銀河辺境侵略方面軍兼技術小惑星、惑星ベジータ№2。その治療室でメディカルマシーンにて治療を受けている男。そのメディカルマシーンの前には多数の異星の科学者が動き回っており、その男の詳細なデータを目で追っている。一人の科学者が機器を操作し特殊溶液に漂う肘から先がない男の左腕をアームで持ち上げる。そして別のアームで機械的な義手を装着させる。その瞬間痛みがしたのか男は眉を顰めるが、すぐに緩める。
「ラディッツ、左腕を動かしてみろ」
マイクを持った科学者がそう言うと男、ラディッツはゆっくり左腕を動かしていく。様々なデータを処理していき問題がないことを確認した科学者は、メディカルマシーンの特殊溶液を抜き入り口を開ける。顔に装着されていたマスクを、首を振って外し衣服がない状態で出てくる。
「どうだ?その腕の調子は?」
科学者の問いに体やМ字型の生え際、腰まで届く髪から特殊溶液を拭いながら若干眉を顰めラディッツは答える。
「少し違和感がある。どうにかできんのか?」
それに科学者は仏頂面を浮かべる。
「今さっき腕の神経と繋げたんだ。後はなれるしかない。それよりその腕トランスさせてみろ。データがほしい」
さっきまで重傷だったものに言う言葉ではないが、彼はどこまで行っても科学者なのだろう。ラディッツの周りに機器を配置し促す。それに舌打ちし左腕を目の前に持って行き先ほど新たにできた神経の一つに意識を集中する。すると機械然としていた左の義手が一瞬ブレ違和感ない腕に代わる。
「いいぞ!次はこっちだ。急げよ!」
早足で目的地に行こうとする科学者にまずは戦闘服を着させろと止めるラディッツだった。
科学者に連れられてきた場所、それは訓練施設。というより実験施設と言った方がいいだろう。この惑星ベジータ№2はまだ建造途中の惑星だ。そこでこの科学者は自分の権力を使い自分の優先すべき施設を先に作った、その一つがこの実験場だ。
「よし!次はあの的に向かい左手でエネルギー弾を放て」
またもやラディッツの周りに機器を配置する。それに何も言わず言われたとおりに左腕にエネルギーを貯める。体中のエネルギーが左腕に集まってくるのが分かる。戸惑いながらも的に向かい撃ち放つといつも以上の威力を伴い的を突き抜けていく。
「よ~し!いいぞ!今の瞬間、戦闘能力が格段に上がった!あとは経過を見て拒絶反応が出なければひとまず成功だ!」
ラディッツはしげしげと左腕を見る。そして手を開いたり握ったりしながらつぶやく。
「凄いもんだな。敵勢力とはいえ東銀河の連中の科学力は」
「ふんっ!こんなもん、奴らからしたら旧態依然の技術だ。だからこそその技術力を解明し利用する為にフリーザ様たちは安全な後方の辺境に技術惑星をお作りになられたのだ。」
「おいおい、ここは惑星ベジータ№2だぜ。つまり俺たちサイヤ人の星ってことだろ」
「そー言うこと、フリーザ様に少し目を掛けられているって言っても調子に乗らない方がいいぜ」
そこに科学者の言葉を遮るように入ってきた二人の男。
「やめろ。バイアム、ビジュー」
バイアムと呼ばれた巨漢で髪がモヒカンの男はラディッツに詰め寄る。
「なんだよ、ラディッツさんよ。本当のことだろ?」
その後ろで扉を背もたれにして顔を向けてくる中肉中背で少し気障な感じの男ビジューも同意する。
「こんなやつに俺たちサイヤ人が舐められて黙ってるのかい?隊長さんよ」
その問いに何も答えず一瞬だけ科学者に目を向けたラディッツは実験場を後にし慌てて二人は付いて行く。
食堂に行って食料を確保した三人はこれからのことを話し合う為に個室に戻った。
「がつっがつっがつ!!ふぉんとにひひのかほ!ほほははへ!」
バイアムが口に食べ物を含みながらラディッツやビジューに吼える。顔に飛んできた食べカスをいやそうな顔で拭くビジューはバイアムに怒鳴る。
「口の物を飲み込んでから喋れ、何を言っているかわからん!」
それを聞いたバイアムは口に含んでいた物を飲み込み再び吼える。
「ホントにいいのかよ!このままで!ラディッツさんはこの前の戦いで腕を失う重傷を負ったってのにこんな辺境の建造途中の星まで治療なしで送られて!これじゃあ、閑職送りも同然だぜ!」
それを聞いたビジューは肩を竦める。
「事実そうだろ?惑星ベジータなんて付いてるが、その前に辺境侵略方面軍なんて名前がついてんだ。この近辺で俺たちが出向く必要がある惑星が何個あるよ?しかもこれからも俺ら三人以外のサイヤ人が来るんだろ?何人生き残ってるか知らねえけど」
いままで黙々と食事を口に運んでいたラディッツが顔を上げる。
「だろうな。これまでの功績を称えてベジータなんて名前がついちゃいるが実態は後方での補給担当ってところか。舐めやがって!だがこれは俺たちにとっちゃあ逆にいいチャンスかもしれんぞ」
顔を寄せろと手招きする。
「俺たちの力ではフリーザたちには勝てん。それに元から少数民族の我々の数も減ってきているからな。だがここは技術惑星でもある。事実俺は強くなった、気に入らんがな」
左手を見せながら言うラディッツ。それをいやそうな顔で見るビジュー。
「いやだぜ?いくら強くなるって言っても東の奴らみたいに全身機械の体になるなんて」
「まあ聞け。それは例えばの話だ。いやな奴らだがここの科学者は確かに優秀だ、これからもどんどん東、西そして南の敵勢力からの技術が集まってくるだろう。それを俺たちが利用しフリーザを倒す!」
それを聞いたバイアムとビジューはニヤニヤ笑う。
「なるほど!流石、ラディッツさん!さらに俺たちサイヤ人の数が増えれば怖いものなしってことだ。いいぞ!!がっはっは!!これならフリーが!?」
「黙れ!バイアム!何のために周囲に聞こえないように喋ってると思う!」
怒るラディッツに謝るバイアム。それを横目にビジューが提案する。
「じゃあ、隊長さんよ?ここは従順なフリして命令通りここら一帯の星を締め上げ一大補給基地にするか!」
頷くラディッツはついてこいと言いこの辺境の星々の詳細を調べる為部屋を出ていくのだった。
「なんだこれは~!」
これからの未来に向け意気揚々とビジューがモニターに映る星々を見るが碌な星がない。いや補給基地を作るというなら悪くはない星が多いが、サイヤ人としての欲求、戦闘を楽しめそうな星が少ない。
いやそうな顔でモニターを映していくビジュー。同じくいやな顔をしていたラディッツは何かおかしい物でも見たかのような顔をしビジューに画面を戻すように言う。
「なんだよ、隊長。これか、地球?まあまあよさそうな星だけどよう」
「今の今まで忘れていたがここにはカカロットが送り込まれていたはずだ。こんな文明の低い星の連中などとっくに滅ぼしているはずなのになぜ連絡がなかった?」
だがこれで行き先は決まった。理由を聞いてくる二人に応えながら宇宙ポッドに向かう。ラディッツは思う、何か強力な敵がおりそれが理由で滅ぼせていないのなら戦闘を楽しめ、且つカカロットを仲間にできる。逆にカカロットが裏切っているのだとすれば・・・。
「カカロットとの戦闘を楽しめるということだ」
宇宙を切り裂いて飛ぶ宇宙ポッドの中でそう考えるが、果たしてこの戦乱渦巻く銀河での戦いで戦闘能力が上がった自分にこんな後方の星でぬくぬくしていた奴が相手になるのか疑問に思いながらも地球に近づいていくのだった。
どうだったでしょうか?
次回、ラディッツがもう少し詳しいことを喋ってくれます。