龍娘々伝   作:苦心惨憺

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第4話

 牛魔王とチチが村人を城に避難させて約3時間、テレビで情報を集めていた。

 

「わ、私たちは今、東の都近くにいます!!」

 

 現場レポーターが緊迫した顔でテレビに映っている。遠くでは人の悲鳴や何かが壊れる音、爆発音、銃声が聞こえる。

 

「あまり近くによると我々の身が危険にさらされるので、少し離れたところで中継しております!!ピッコロ大魔王が解き放った、化け物は町を破壊し暴れまわっております!!」

 

 望遠カメラが町の様子を映し出しその様子を映し出す。道にひびが入り、建物が破壊され、人が何人か倒れている。

 

「遠目の為、詳しくはわかりませんがすでに何名かの被害者が出ている模様です!!」

 

 その他、化け物以外の者も暴れまわり重火器を用いて警察署を攻撃したり、その矛先は一般市民にまで向けて居る。またその混乱に乗じ火事場泥棒、略奪何でもありだ。囚人服を着ている者もいることから暴れまわっている者たちが手引きし脱走させたのだろう。

 そして何故か暴れまわっている者を化け物を攻撃しない。ピッコロ大魔王の言葉通り悪人たちの味方をしているのだろう。

 

「このテレビを見ている皆さん、我々は人間です!!化け物ではないのです!!どうか理性的になって行動してください!!ピッコロ大魔王の言葉に乗せられてはいけません!!!」

 

 現場の人間を見て、レポーターはテレビカメラに向かい必死に叫んでいる。

 

 初めそれに気づいたのはレポーターを映していたカメラマンだった。レポーターからテレビカメラを空に向ける、そこには翼をはためかせてくる黒い影いや化け物だ、その化け物がこちらに向けて口を開き光ったとおもったらテレビ画面が砂あらしになる。

 

 牛魔王はテレビのスイッチを切り疲れたように椅子に座る。

 

「た、大変なことになっただな。ここも何時あんな化け物がくるかわかったもんじゃないべ」

 

「なあ、おっとう。悟空さなら、悟空さならピッコロ大魔王を倒してくれるんじゃ」

 

 チチが希望を見出したように、牛魔王に言う。

 

「無理だ。いくら悟空でも勝てるわけねぇ」

 

「そ、そんなことねぇ!!悟空さならきっと!!」

 

 その様子を見てカノンも牛魔王と同じことを思った。

 

(無理です。父様がどんな強さかわかりませんが、あんな化け物に勝てるとは思えない。そして今の私でも。今は耐えて数年、力を蓄えてから挑まなければ!!)

 

 カノン自身は、それほど絶望していなかった。前世のスペックでは絶望的だが今の体の潜在能力があれば必ず勝てるという確信があった。

 正直、勝てないとわかっていても今すぐに挑みたい。だが、いくらチチが武術をするのを認めてくれたとはいえ絶対に行かせてくれないだろう。死地に子供を行かせる親がいるとは思えない。

 

 そう考えていたその時、外が騒がしくなる。そして転がるように城の外観で見張りをしている村人の男が駆け込んでくる。

 

「ぎゅ、牛魔王様!!来ました!!化け物が来ましたーーーー!!!!」

 

「な、なにーーーー!!!」

 

急いで部屋を出、城のバルコニーから空を見る。確かに遠くから5匹ほどの化け物が近づいてきている。

 

「みんな!!絶対に城から出るんだねぇべ!!オラがいってやっつけてやるべ!!!」

 

 牛魔王がそこに集まっているみんなに言う。

 

「そんな、いくら牛魔王様でも無茶です!!相手は5匹もいるんですよ!!!」

 

 村人たちはそう言い、われらも戦うと鍬を高々と上げる。

 

「ダメだ!!!!おめえらのかなう相手でねえ!!!被害がでるだけだ!!!」

 

 牛魔王の言う通り相手は重火器も聞かない化け物だ、鍬程度で攻撃しても効かないどころか、攻撃を当てることすらできないだろう。それが分かっている村人たちは悔しそうに下を向く。

 

「でも、おっとう!!いくらなんでも多勢に無勢だ!!そんならおらが助太刀するべ!!」

 

「お爺様!!私も戦います!!!」

 

 チチとカノンが必死に懇願するも牛魔王が首を振る。

 

「ダメだ。チチおめえは、悟空さに会って結婚するんだべ。カノンちゃんもお父さんに会うんだ。こんな所で死なせるわけにはいかねぇ。ここは爺ちゃんに任せてくれ」

 

 そう言うと、巨大な斧を持って外に出ていった。

 

 城の外に出た牛魔王に向かい、五匹の化け物が降りてくる。そして五匹の化け物は牛魔王を囲み気味の悪い笑い声をあげる。

 

「ギ、ギ、ギギギギギ!!」

 

「来い、化け物共!!!みんなやチチ、孫には指一本触れさせないべ!!!」

 

 ドス、ドス、ドスと正面にいる化け物に近づき、上段から斧を振り下ろす。その一撃は薄く化け物の体に傷をつけるも上空に逃げられてしまう。振り下ろした斧を戻そうとするも左右、後ろから化け物が接近し牛魔王に攻撃を加えていく。

 

「ぐうううう」

 

 やはり多勢に無勢、牛魔王は一気に防戦に追いやられる。そして上空に逃れた化け物の1匹が、止めと言わんばかりに牛魔王の頭めがけて突っ込んでくる。

 

「おっとう!!」「お爺様!!」『牛魔王様ーーー!!!』

 

 バルコニーから戦況を見ていた、チチ、カノン、村人たちは牛魔王の危機に叫ぶ。

 しかしその攻撃を牛魔王は、読んでいた。

 

「むおおおおおおおお!!!!」

 

突っ込んでくる化け物に向かい斧を振りかぶる。急加速で降下していた化け物はその斧を避けきれず、頭から股にかけて切り裂かれ紫の血を牛魔王の体にぶちまけ絶命する。

しかし、牛魔王の攻撃はそこまでだった。上空の敵を迎え撃つために無防備になったところを残り四匹になった化け物の波状攻撃を受けてしまう。

 

「がはあああ!!」

 

 血を吐き、片膝をつく牛魔王。そこをさらに攻撃してくる化け物たち。牛魔王は腕力や体力には自信があるが動きは鈍い。避けることができず、そしていくら体力に自信があるといってもこれほどの攻撃を受けてはどうしようもならない。ついに持っている斧を落とし、前のめりに倒れる牛魔王。

 ガンッと倒れた牛魔王の頭を踏みつける化け物、残りの化け物がそれを見て笑い声を上げる。

 

「あ、、、あああ。おっとう」

 

 カノンの隣で絶望の声を上げる、チチ。その隣のカノンは、化け物の所業を無表情で見ていた。おそらく現実を理解できず呆然としているのだろう。牛魔王が倒されたことで絶望している者たちは痛ましい顔でカノンを見ていた。

 

 だが違う、違うのだ。カノンが感じていたのは怒り、それも今までに感じたことがないほどの怒りだった。

 

 牛魔王を倒した化け物は、次の標的を殺すために城に向かう、と足が止まる。下を見るとボロボロになった牛魔王が足を掴んでいた。

 

「い、言ったはずだべ。ごほ、ごほ。みんなには指一本触れさせないと」

 

 それを冷たい目で見ていた化け物が、止めを刺そうと口を開き口内が光り輝いていく。

 

「おっとーーう!!!今、助けるだ!!!!!」

 

 チチが牛魔王を助ける為、バルコニーから飛び立とうとするがここからではとても間に合わない。

 

(み、みんな。逃げてくれ!!!チチ!!カノーーーーン!!!!!)

 

 そして、口から気功波を放つ。

 

 ボン!!!!!!

 

(ッッッ、、、、・・・・・?生きている?なんでだ?)

 

 牛魔王は前を向く、前には奇妙なものがあった。まず足、腕、胴、大きく見上げ頭を見るしかしそこにはあるべき頭がない!!!頭は遠くに吹き飛んでいた。そしてそこにはカノンが立っていた。

 

「カ、カノンちゃん」

 

バルコニーから、高速で飛んでいき化け物の頭を吹き飛ばしたカノンが牛魔王に近づき優しく語り掛ける。

 

「もう大丈夫です。お爺様。後は、私に任せてゆっくり休んでください」

 

 限界に来ていた牛魔王をそのまま気を失う。そしてカノンは城のバルコニーにいるチチを見る。

 

「母様。お爺様をお願いします」

 

「へ、、、、あ、ああ。わ、わかっただ」

 

 隣にいたカノンが一瞬で移動し、化け物の頭を浮き飛ばしたのを呆然と見ていたチチはおそらくこれから戦うだろうカノンを止めるのも忘れて返事をする。

 そして、急に現れたカノンを遠巻きに見ていた化け物たちの方を見るカノン。

 

「さて、よくもお爺様を痛めつけてくれましたね。こんなに怒りを覚えたのは初めてです。怒りに身を任すのは武道家として失格でしょう。冷静さを失い、正常な判断ができなくなる。でも今はこの感情に身を任せたい」

 

 化け物は知能が低い、が野生の獣のように強いものの気配は分かる。しかし自分たちの親ともいえるピッコロ大魔王の命令は絶対だ。それに相手は自分たちより背の低い子供だ。

 一匹では敵わないかもしれないがこちらは3匹、いくら知能が低くてもそれぐらいの計算はできる。

 

「どうしました?かかってこないのですか?」

 

カノンが化け物に問う。それが合図になったのか、化け物の1匹が地を蹴りカノンの右頬に拳を叩き込む。

 

「カノンちゃん!!!」

 

 チチの叫びが響くが、カノンは一歩も後ろに下がらなかった。それどころか拳が当たって口が切れている口角を持ち上げ笑う。

 

「安心しました。この程度の攻撃ではお爺様が殺されることはなかったでしょう」

 

 顔に当たっている拳を掴み、力を籠め砕く。絶叫をあげカノンの腕を振り払おうとする化け物の腕を引っ張り腹に拳を打ち込む、体を九の字に曲げ顔を下げたところに蹴りをぶち込む。

 

 

「ブギャ~~~~!!」

 

 化け物は10mほど吹き飛び顔面から落下する。

 

「どうしました?早く立ってください。手加減しましたから立てるでしょ?」

 

 カノンは笑いながら言うがその眼は笑っていなかった。

 

 残り2匹の化け物は、1匹の化け物に体を向けているカノンの背から一斉に襲い掛かる。そして攻撃が当たる。が全く手応えがない、残像だ。2匹の化け物たちは混乱するがそこにさらに多数のカノンが現れ幻惑する。

 

「ほら、攻撃してきなさい。化け物なら本当の私がわかるでしょ?」

 

 その挑発に攻撃をするが、カノンにはかすりもしない。そして2匹の後ろに現れ、化け物の頭を掴みぶつけ合う。頭をぶつけられ、ふらつく化け物の腹それぞれに掌を押し付け気を叩き込む。

 血反吐を吐き吹き飛ぶ、2匹。重なるように倒れこむ2匹は力が入らない足で起き上がる。

 

「いいですよ。今の一撃も手加減しましたが、さきほどの者よりあなた達は根性がありますね。私がなぜ手加減しているか分かりますか?あなた達は、お爺様を痛めつけてくれました。そのお礼です。因果応報ってやつですね」

 

 化け物2匹は、このままでは勝てないと思い切り札を出す。2匹が並び大きく口を開き、口内に気を高めていく。

 

「カノンちゃん!!ダメだ!!逃げるだーー!!!」

 

 チチがカノンに呼びかけるもカノンは両の掌を相手に向け、受けの態勢に入る。

 それを見た化け物達はニヤリと笑い、最大の力で気功波を放つ。赤い閃光がカノンに向かい、ドーーーーーンという音とともにカノンに直撃、土煙が舞う。

 

「カノンちゃーーん!!!そ、、そんな」

 

「ギッギっギギギギギ」

 

 生意気な子供が跡形もなくなった、土煙が舞うその光景を見て化け物達は笑う。その笑いにチチは怒りを覚え目から涙が溢れ出す。

 

「おっとうだけでなく。カノンちゃんまで。殺してやるだ、おめえら!!!おらが殺してやるだ!!!」

 

 強敵だった子供がいなくなり、余裕を取り戻した化け物がチチに近づいていく。

 

「なんだ。気功波というものがどんなものかと思いましたがこの程度ですか」

 

 カノンの声が聞こえ、おそるおそる土煙が晴れていく場所を見ると全く無傷のカノンが立っていた。それを見た化け物達はブルブル体を震わせる。化け物達が感じているのは恐怖。そして空を飛び逃げる、自分たちの親から受けた命令を無視して。

 

「あなた達みたいなやつらを逃がすわけないでしょう!!!!!」

 

 そしてカノンは構える。

 

「か」

 

 両手首を合わせ、手を開き前方に向ける。

 

「め」

 

 腰付近に手をもっていく。

 

「は」

 

 腰にもってきた掌に気を集中させる。

 

「め」

 

 凝縮した気が光り輝く!!!

 

『はーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!』

 

 先ほど化け物が放った気功波などとは比べ物にならない青い閃光が煌めき、極太の光線が逃げ出した化け物2匹に追いつき消滅させる。

 

「なんだ。凄い威力じゃないですか」

 

 自分が放った気功波を見てカノンが呟く。

 そして最後に残った化け物を見る。化け物は完全に戦意をなくし、自分が飛べるのも忘れ後ずさっていく。

 

「さ、残ったのはあなた一人です。いつでもかかってきていいですよ。」

 

「ヒッ・・・・・ガ、ガガガ!!!」

 

 化け物は突然苦しみだし倒れる。確認すると死んでいた。

 

「な、なんで?」

 

 その数十分後、謎の少年がピッコロ大魔王を倒したというニュースが世界中に発信された。

 

 

 

 

 




 ナメック星の最長老が産み出すのは同じナメック星人なので、最長老が死んでも死にません。これは原作通りですね。

 しかしピッコロ大魔王が産み出した魔族はピッコロ大魔王が死ぬと死んでしまうかは不明(作者は知りません、誰か教えてください)なので、この小説ではこう言う設定です。



 

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