龍娘々伝   作:苦心惨憺

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またしても話が進んでいない。






第6話

 ようやく頂上に到着したカノンは宮殿らしき中で、座り込み呼吸を整えていた。

 

「なんだら~。ずいぶんちっこいヤツが登ってきたなや」

 

 疲れすぎていたカノンは、自分に向かって歩いてくる男に気づかなかった。見上げるとそこには小太りで乱雑な黒髪長髪、そして腰に刀を差しせんべい袋を片手に持った男が立っていた。カノンはすぐに立ち上がり、確認する。

 

「あの、あなたが仙人様ですか?」

 

「仙人~~?。俺がそったらもんに見えるだか?」

 

 どうやら目の前にいる人物は仙人ではないらしい。では、仙人はどこにいるのかと周りを見渡す。キッチン、風呂場に洋服箪笥、ベットもあるどうやらここは居住区画らしい。

 

「そんで、おめえなんて名前なんだ。ちなみに俺はヤンジロベー様だ」

 

 自分よりはるかに年下の子供に偉ぶりたいのか、自分のことを様付で言う。

 

「あ、失礼しました。ヤンジロベー様、私は」

 

「ヤンジロベーだ!!」

 

「え、ヤンジロベーさん?」

 

 あまりの訛りに相手の名前が分からないカノンとそれを訂正する男性のやり取りが数分続き、やっとわかった名前はヤジロベーというらしい。

 

「あの、大変失礼しました。改めて、私の名は」

 

『こっちじゃ。上まで上がってこい』

 

 上の方からこちらに呼びかける声が聞こえる。

 

「おい。こっちだ、付いてこい」

 

 結局、ヤジロベーはカノンの名前などには興味がなかったのか、先導し付いてくるようにいう。球形になっている外側に階段があり、そこを登っていくと二階部分に出る。

 そこには壺らしきものがある台座があるだけで何もなかった。そしてそこには白い猫が杖を持って立っている。

 

「にゃんにゃん」

 

「にゃ?」

 

 つい猫好きなカノンがそう言うが、おそらくこの人物こそが仙人だと気づいた。雰囲気で分かる、不思議な気配だ。そしてカノンは先ほどの失礼な言葉を詫びる。

 

「し、失礼致しました!!仙人様!!」

 

「ほっほっほっほっ。いい、いい。それにしてもよくわしが、仙人だとわかったのう」

 

 仙人は気にするなといい、カノンがすぐに自分が仙人だと分かった理由を問う。カリン塔に登頂したものは過去に二人のみ、その二人も自分が初め仙人だと分からなかった。

 

「気配です。仙人様から感じる気配が常人の者より澄んで感じました」

 

「ふーむ。おぬし幼いのにずいぶん感覚が鋭いの。それに、この塔をこんなに短時間で登ってくるとは。如何にもわしが仙人様じゃ。正確にいえば仙猫様じゃがな。ま、わしのことはカリンと呼べ。」

 

それを聞きカノンは、膝をつき拝礼する。

 

「カリン様、カリン様に修行を付けていただきたくやってまいりました。どうかあなた様の教えを私に伝授してくださいませ」

 

「ほー。こりゃまた礼儀正しいやつがきたの。そこにいるヤジロベーにおぬしの爪の垢でも飲ませたいわ」

 

カリンは手すりを椅子にせんべいを齧っているヤジロベーの方を見そう言う。うるせー。とヤジロベーはそっぽを向き、カリンは真剣な顔でカノンに向き直る。

 

「それで娘よ、何故力を求める。おぬしも知っていよう。ピッコロ大魔王が死にこの世は平和になった。ましておぬしはまだ子供、子供は自由に遊んでおればいい」

 

 そうカノンに説いてくるがカノンには、どうしても力をつけたい理由がある。

 

「私にはどうしても戦いたい人がいるのです。でも今の私の力ではその人の足元にも及ばない。だから強くなりたいのです!!お願いいたします!!カリン様!!」

 

 必死の想いでカリンに頭を下げるカノン。その必死の願いに邪気はなく、純粋にその者と戦いたいのだろう。カリンは仙人だけあって人の心を読むことができる、しかしそれをしなかった。そんなことをしなくてもカリンには、カノンの性根はわかった。

 

「うむ。よいじゃろう」

 

「宜しいのですか!!ありがとうございます!!」

 

もう一度頭を下げるカノンにカリンは、壺が置かれている台座を示し

 

「では、あの超聖水を飲むがいい」

 

 修行を付けて貰えると思っていたカノンは、何故超聖水とやらを飲まなければいけないのか分からず首を傾げるカノン。超聖水を飲みにいかないカノンにカリンは訝しむ。

 

「どうした。超聖水がほしくないのか?」

 

「あのカリン様、超聖水とはなんですか?」

 

「なんじゃおぬし、そんなことも知らずにここに来たのか」

 

カリンは言う、超聖水とは飲んだものの力を何倍にもあげることができるという聖水であると、その説明をしている間、ヤジロベーがニヤニヤしているのが気になったがカノンの答えは決まっていた。

 

「カリン様、それではその超聖水は私には必要ありません」

 

「なんと!おぬしは強くなりたいんじゃろ。それなのに何故超聖水を飲まん」

 心底、不思議だという顔をするカリン。しかしカノンにはそんなもの何の役にも立たない。

 

「カリン様、そんなもので強くなり何の意味がありましょう。私は自分の努力で強くなりたいのです。自分の足で走り、苦しみ、そして自分の手で壁を壊し限界を越えたい。生意気を言ってすいません。でもこれが私の望む強さなのです!!」

 

 カノンは、転生前の世界を思い出す。いつも辛く苦しい毎日、おそらく師に会わなければ男の慰みものになり、どこかで野垂れ死んでいただろう。

それを助けてくれた師、その師に教えてもらった武術。修行は苦しかったが、どんどん強くなっていくことが楽しかった。そう強くなる過程が、重要なのだ。

その過程を無視し一足飛びで強くなるなんて意味がない。それをカリンに言う。

 

「・・・・・・、にゃっはっはっはっは!!いやすまん。別におぬしのことを笑ったのではない、そうじゃの。こんなもので強くなっても意味がない。ほんにおぬしの言う通りじゃ」

 

 カリンは嬉しかった。この目の前の少女はこの超聖水は意味がないと言っている。この壺の中身は水だ。カリンは超聖水を飲むのを邪魔し、超聖水を手に入れる過程でスタミナ、スピード、体裁き、相手の動きを読む先読みの技術得る。つまり結局のところ努力をしなければ力を手に入れられないのだ。

 

「確かにおぬしの言う通り、努力なしに強くなるのは、邪道じゃろうな。じゃが、それが時には必要な時がある。それがなんだかわかるか?」

 

 この時、カリンの脳裏にあったのは悟空のことであった。悟空はピッコロ大魔王に勝つために超神水を飲み強くなった。超神水が猛毒というリスクはあったがそれを乗り越え、ただ飲むという行為で強くなった。しかしそれに意味がないか?

 

「それは、その者の大切なものを守るためじゃ。答えを言うがこの超聖水はただの水、先ほどおぬしが言ったように強くなる過程のただの道具だの。じゃが実際に飲めば強くなる水がここにはある。」

 

カリンは鋭い眼光をカノンに向けこう問いただす。

 

「おぬしが、大切な者を守るために絶対に勝てない相手と戦わなければならない。勝たなければ大切な者が奪われてしまう。そして、そこには飲むだけで強くなれる水がある。どうじゃそれでもこの水を飲まないか」

 

「・・・・・いえ」

 

 そういわれると何も言えなくなる、前世の時は守るべきものがなかった。しかし転生してからは、確かに守るべき者がある。母や祖父、それに村のみんな。それを天秤にかけたときどちらに傾くかなど、わかりきっていた。

 

「おい。カリン、こんなガキに何小難しいこといってんだぎゃ」

 

 明らかに気落ちしているカノンを見てヤジロベーが言う。

 

「なーに。これからの人生、そういうこともあるかもしれんということじゃ、今言ったことは胸の片隅にでも止めておけばいい。」

 

「勉強になりました。カリン様」

 

 本当に勉強になった。このことを知っただけでもここに来てよかった。そしてカリンはすでに薄暗くなった風景を見て修行は明日にしようとカノンを下の居住区に案内する。

 

「さーて。今日の晩飯は何にするかな」「肉だ。肉にしろ」

 

「ヤジロベー、お前はいつもそれじゃの」

 

 晩御飯のことで争っているカリンとヤジロベーにカノンはチチに持たされたお弁当のことを思い出した。

 

「あのカリン様、ヤジロベーさんよかったら母様が持たせてくれたお弁当一緒に食べませんか?」

 

「いやそれは、ありがたいがの。このヤジロベーは意地汚いのでおぬしの弁当を全部食っちまうぞ」

 

「誰が意地汚いだ」

 

 どう考えてもこんなに小さいカノンの弁当だとても3人で食べれるとは思わないカリン。そしてヤジロベーも腹の足しにもならないことが分かっていたのでくれとは言わなかった。

 

「大丈夫です。母様が大目に用意してくれましたから。」

 

 そう言うと、カノンはホイポイカプセルを取り出しボタンを押して投げる。ボワンという音を出し、中から出てきたのは途轍もない箱。それが居住区いっぱいに広がっている。

 

「それでは、お弁当開けますね」

 

 呆気ににとられているカリンとヤジロベーに気づかずお弁当箱?の上に乗り箱を開ける。中を見ると肉魚、山菜、果物がぎっしり入っている。

 

「おい、本当に食っていいんだな」

 

呆気にとられていたのは一瞬、いい匂いが食欲を促し我慢できずにヤジロベーが言う。

 

「はい、勿論です。カリン様もどうぞ遠慮なさらず」

 

「う、うむ、それではこの焼き魚を」

 

 ガブガブガブと本当に遠慮なく食べるヤジロベーと、そしてふと母親がこんな巨大な弁当を幼い子供に持たせるのか気になったカリンがカノンの方を見る。

 

「おぬしこんな巨大な弁当、どうする・・・・」

 

 つもりじゃと続けようとして絶句する。カノンは、カプセルで出したであろう机と椅子に座り、ナイフ、フォーク、スプーンや箸を使い行儀よく食べている。だがそのスピードが尋常ではなかった。口に入れる端から食べ物が消え、手が見えない。

 

「なんですか?カリン様?」

 

「いや。何でもない・・」

 

その日が更けていく。

 

 

 

 

 そしてあくる日、いよいよカリンとの修行が始まる。カリンとカノンは、互いに向き合いカノンが頭を下げる。

 

「それではお願いします!!カリン様!!」

 

「うむ。では修行の内容を言うぞ。それはこの壺をワシから奪うことじゃ」

 

 いよいよカリンの修行が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 




こんな駄文を読んでいただきありがとうございます。

そこでお願いがあるのですが、この小説のここが面白い、またはここが面白くない。単純に面白い、つまらないでも結構です。

面白いと思ってくださる方が多ければこのまま突っ走ります。面白くないのならば面白くする為頑張ります。

流石に物語の大筋が決まっていますので大きく変えることはできませんが、もし次回作をするときがあれば参考にさせていただきますので、ご意見ご感想お願いいたします。








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