Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

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第104話   そして、一夜の空騒ぎがはじまる

 

 無人のキャメロットで時間を潰しているうちに、キャメロットからの最後の疎開の一団がニュー・ダーリントンに入ったという報告を受けた。

 

「さて、それじゃあ覚悟は良いか、アルトリア」

 

 俺の言葉にキャストリアがしっかりと頷きを返す。

 

「うん、大丈夫」

 

 キャストリアにはこの玉座のもとでこれから行う大儀式の、言うなれば祭の主役を務めてもらわなければならない。

 儀式が完全に形になって軌道に乗るまでは此処を動くことが出来なくなるだろう。

 

「とはいえ、元よりキャメロットは堅牢な城だ。生半な呪いは通らないだろうし、呪いの大本のケルヌンノスは俺が抑えるから、あまり心配はしなくていい」

 

 ついそんな安心させるための言葉を掛けた俺に、キャストリアは笑って。

 

「最初からそんな心配、してないってば。むしろ、ロンゴミニアドを使って統夜の事ちゃんと手伝ってみせるんだから」

 

 胸の前で両手を握っていきごんでみせるキャストリアに俺もまた笑った。

 余計な心配だったらしい。

 

「そういう事なら、後方援護は任せた」

 

「任せて!」

 

 力強く請け負って、キャストリアが杖を構えた。

 

「それじゃあ、始めるか」

 

 玉座に手で触れて、術式を起動する。

 この玉座は元々、モルガンがこの妖精國の維持に用いていたものであり、この世界に存在しているすべての妖精たちの要石のような物。

 それを利用して妖精たちを繋ぎ、巡礼の鐘をも利用して陣となし、この妖精國そのものを巨大な祭事場と為す。

 

――――さあ、この妖精國で最初で最後の大祓の大祭のはじまりだ。

 

 妖精国全体にすべての巡礼の鐘の音が幾重にも重なって鳴り響いた。

 そして、それに呼応するかのように、キャメロットの眼前に存在するケルヌンノスの封じられた大穴から鳴動が発せられる。

 しばらくの鳴動の後、ぴたりと静かになり、そして呪いがあふれ出した。

 

 バルコニーに移動していた俺は、眦を決して今こそ叫ぶ。

 

「ブレイカー、アクティベイト!」

 

 もう一つのクラスの力を解放し。

 

「ワールドブレイカー、アクティベイト! さあ、行くぞケルヌンノス!」

 

 パワードスーツ、ワールドブレイカーを纏い、バルコニーから爆発的な速度で飛び立つ。

 あふれ出した呪いに向かって加速し、同時にエクスカリバーをストレージから取り出した。

 

「クアッドカリバー、超過駆動!」

 

 俺に並んで飛ぶ四本のエクスカリバーから極光が放たれ、無数の黒い手として顕現していた呪いを薙ぎ払っていく。

 呪いの密度が下がり、その先のケルヌンノスの姿がはっきりと見えた。

 その巨大な手が、大穴の淵にかかっている。

 

 俺はむしろ更に速度を上げ、迷わず距離を詰めて、ケルヌンノスの胸元に勢いの乗った蹴りを叩き込んだ。

 強烈な衝撃にケルヌンノスの体が浮き上がり、俺はさらにスラスターの出力を上げてそのままケルヌンノスを押し出していく。

 キャメロットから引き離すためだ。

 流石にキャメロットの間近であるここでは戦えないからな。

 

 パワードスーツのスラスターから放たれる光が強くなるにつれ、ケルヌンノスは大穴から押し出され徐々に押されて行き、ついに足が大地から離れた。

 

「うっそだあ……」

 

 パワードスーツの非常に高性能なセンサーが、キャストリアの何とも言えない味のある声を拾った気がしたが、とりあえず気にしないことにして、ここぞとばかりにスラスターの出力をピークに持っていった。

 ケルヌンノスの巨体と共に空へと加速しながら飛び、一定の高度とキャメロットからの距離を稼いだところで落下に転じた。

 

 今度は重力をも味方につけて加速していき、ケルヌンノスの体を大地へと叩きつける。

 大地とのインパクトの瞬間にこちらは反転をかけて離れ、大地を削りながら横滑りしていくケルヌンノスを見送った。

 

 正直、ケルヌンノスはこの妖精國においては徹頭徹尾で被害者なのであまり痛めつけるのは心が痛むんだが、彼? は非常に丈夫なので、きっとこれくらいなら平気だろう。

 案の定、ケルヌンノスが大地を削って起こした土煙の向こうから、無数の黒い呪いの手が噴き出してくる。

 再びスラスターを吹かし、呪いの手を躱しながら追随するエクスカリバーで呪いを切り祓っていった。

 

 そんな中、土煙の中からケルヌンノスが姿を現し、ゆっくりと立ち上がる。

 周囲に恐らくは呪いが収束したと思しき、黒い球体。

 瞬時にまずさを悟って、エクスカリバーを超過駆動状態に。

 そして、手に壊天を呼び出す。

 

 球体から光線のような物が放たれると同時にエクスカリバーの超過駆動を発動し迎撃。

 数が多かったために迎撃しきれなかった分は壊天で切り裂いた。

 わずかに残ったしぶきのような物が装甲に浴びせられ、やな音を立てて焼却された。

 これは一種の攻勢防御機能が発動したという事。

 

「――――対世界級エネミー仕様の装甲に、防御機能を発揮させる呪いとは恐れ入るな」

 

 それだけ、この妖精國に積もり積もった呪いが深く膨大だという事なのだろう。

 なんて、感心してる間に第二射がきそうだ。

 

『統夜、いったん上空に! 援護射撃行くよ!』

 

 通信からキャストリアの声が聞こえた。

 それと同時に一気に上空へと距離をとる。

 キャメロット方向で強い閃光が奔り、幾条かの光がケルヌンノスの展開した黒い球体を貫いて爆発を起こした。

 

 ケルヌンノスがそれによって体勢を崩し、展開されていた他の球体も揺らいだように不安定に。

 その隙を見逃さずに上空から一気にエクスカリバーたちを引き連れてケルヌンノスへ肉薄し、揺らぐ黒い球体をエクスカリバーで破壊し、壊天の斬撃でケルヌンノスのまとった呪いを幾度も切り祓う。

 

 しかしそのたび呪いはケルヌンノスから再び噴き出し、そのうちそれだけでなく大地からも呪いの手が湧きだしてきた。

 呪いの手とケルヌンノスの放つ呪いの包囲を避けるため、再び上空へと逃れた。

 その上空から、妖精國の全景を見渡す。

 今頃はきっと妖精國の各地でもモースが大量発生しているだろう。

 被害も恐らくは出ているはずだ。

 

 しかし、これはどうしても必要な事。

 この妖精國には始まりのその時から罪があり、この國に生きる妖精たちもまた、少なからず罪とは無縁ではいられない。

 だから今この時、祭場となっているこの妖精國で彼らは自分たちの罪を祓わねばならない。

 そうして初めて彼らは楽園へ至ることが出来る罪なき者へと生まれ変わるのだ。

 

 そしてもう一つ。

 妖精たちを儀式でつなぐときに俺は一つ仕掛けをした。

 その繋がりの中心を俺と共に旅をしたサーカス団の妖精たちにしたのだ。

 

「さあ、クソったれだけど、罪知らぬ無垢なる妖精たち! お前たちに罪の在処とその意味と、そして善を掲げる高揚と誇らしさを教えよう!」

 

 高らかに、この妖精國の多くの理不尽に挑むように叫ぶ。

 

「この國、最後の祭りの時だ!」

 

 今は夜のとばりの落ちる空の中で手を広げ、歌うように、謡うように。

 

「一夜限りの空騒ぎ! 妖精らしく、演じてみせろ!」

 

 この國のフィナーレだ。

 せいぜい盛大に行こうじゃないか。

 もちろん俺だって手は抜かない。

 呪いの核たるケルヌンノスの纏う呪いは、俺が、いや、俺とキャストリアが祓ってみせるとも。

 

 だが今この時の主役は、俺じゃない。

 この國に生きるすべてのものが主役。

 舞台の上で、自分たちの生を高らかに謡い、戦う。

 この夜の空騒ぎは、この妖精國に生きるすべての妖精たちの為に。

 

 歌え、踊れ、妖精たち。

 戦いの中で、知るべきを知り、学ぶべきを学べ。

 そして、この夜が明けるころ、少しはメルヘンな生き物になってみせろ。

 

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