Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

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第108話   ケルヌンノスとの決着

 

 複数の巨大な黒い手の包囲を、キャメロットからのキャストリアの支援砲撃と従えたエクスカリバーの砲撃で蹴散らした。

 最初のうち、キャストリアは俺のいる付近にロンゴミニアドを撃つことに躊躇があるみたいだったが、今ではすっかり慣れたものである。

 

『慣れたわけじゃないから! 諦めたって言うか、状況的に撃たないとどうしようもないだけだからね!?』

 

 おっと、物言いが入ったか。

 通信越しに感心した俺の声か何かがもれていたかな?

 

『ていうか、これっていつまでやるの? キリがないんだけど』

 

 まあキリがないのはそう。

 何しろ溜まりに溜まった呪いが相手だからな。

 

『申し訳ない気はするけど、ケルヌンノスを直接叩くって言うのは……』

 

「事前に説明しておいたとおり、あまり意味がない」

 

 FGO世界線とは目的が違うからな。

 今回の戦いの主題、その最たる目的は妖精國に積もり積もった呪いを祓い清める事。

 そしてケルヌンノスは呪いの核のような役割を果たしてはいるが、呪いそのものというわけではない。

 

「魔力回路がきついようなら少し休憩していて構わないぞ?」

 

 キャストリアには回復薬を各種渡してはあるが、ロンゴミニアドの砲撃をずっと続けるのはきついものがあるだろうし。

 

『馬鹿! 統夜が戦ってる最中に休めるわけないでしょ!? ちょっとお腹の中がタプタプする気がするけど、回復薬をがぶ飲みしても援護は続けるから! 統夜だって任せたって、そう言ったでしょ!?』

 

 副作用とかはないとは思うが、体には悪そうな話である。

 でも止めても聞きそうにないから、好きにしてもらうか。

 

「じゃあ、引き続き援護は任せるからな?」

 

『――――うん! 任せて!』

 

 嬉しそうに答えるじゃないか。

 そんな風に頑張られたら、こっちも気合を入れ直さないとな。

 無数に襲い来る呪いの手を切り裂きかいくぐり、呪いの凝縮された漆黒の球体から放たれる光線を手に持った壊天と周囲を飛び回るエクスカリバーで切り裂いていく。

 

 そんな攻防を繰り返し続ける中、不意に一瞬だけ攻撃の圧力が弱まった。

 疑問に思う間もなく、答え合わせはケルヌンノスからもたらされた。

 ケルヌンノスの体内に高密度で凝縮されて行く呪いの力。

 

「ブレスかっ!?」

 

 迎撃を――――っくそ、攻撃の密度が急に高く。

 そのための一瞬の溜めだったか!

 これは覚悟を決めて、一発は食らうしかないか?

 

『――――それは来りし導きの星、希望の路、楽園への先導者。誰に呼ばれるまでもなく、貴方は星を掲げるでしょう。運命は誰の為に――『きみをいだく希望の星(アラウンド・カリバーン)』!!』

 

 

 キャストリア!?

 ロンゴミニアドの援護射撃と並行して宝具展開とか、なんて無茶を――――!

 

 未だ英霊ならざる彼女がその力を用いたのは、楽園の妖精としての本能ゆえだろうか。

 俺を守るために展開されたその宝具は、歩んだ旅路の相違の為かFGO世界線における彼女の宝具とは趣を異にしていた。

 俺の目前に展開される星のような輝きが、英霊となった後の彼女の宝具に近しい護りを展開して、ケルヌンノスのブレスを完全に遮断して俺を守り抜く。

 ブレスが収まりきるまで、その守りには一欠けらの綻びすら生まれる事はなかった。

 

「……助かった。あとは任せろ」

 

 通信越しに聞こえるキャストリアの荒い息。

 無理をしたことに対する注意も、もっとしっかりとした礼だって、たくさん言いたいことはあったが今は一言で済ませた。

 

「ワールドブレイカー、エクスカリバー、連動超過駆動!」

 

 キャストリアの作ってくれた機会を無駄にせずワールドブレイカーとエクスカリバーの全機を同期させて超過駆動状態へもっていく。

 ワールドブレイカーから供給されたエネルギーをもとに、通常の超過駆動に数倍する出力をエクスカリバーが発揮する。

 

 ブレスが防ぎ切られた後もむしろ勢いを増して、数も増えていた呪いの手のそのことごとくを吹き散らし、切り祓っていった。

 輝きが、妖精國の夜を白昼のごとく照らし、殺到する呪いのことごとくを消し去る。

 すべての呪いが消え去った後、ケルヌンノスはその動きを止めて、静かにたたずんでいた。

 

 呪いを祓いきったのか?

 想定よりだいぶ早い。

 警戒しつつも、俺はケルヌンノスの顔の前へと近づいていく。

 

 間近まで来たが、ケルヌンノスは再び戦闘行動に移る様子はなく、静かにこちらと向き合っていた。

 少々疑問は残るがひとまずケルヌンノスがこれ以上戦闘を続けるつもりがないのは確かなようである。

 軽く息を吐いて、こちらも戦闘態勢を解いた。

 

「聞こえているか、ケルヌンノス。貴方に一つ、返したいものがある」

 

 声をかければ、ケルヌンノスはわずかに身じろぎで返した。

 ふさふさの毛で隠れているのか、そもそも存在しないのか分からないが、それでも視線のような物を向けられている感覚も確かに感じる。

 言葉は届いていると思って良いだろう。

 

「集められたのは、殆ど残滓のような物でしかなかった。だから、ほとんど新造したようなものではあるが……」

 

 そう断わりながら、ストレージからあるものを取り出す。

 それは、白い衣装に包まれたある人物の遺体の代わり。

 この妖精國に残されていた、ケルヌンノスの巫女の残滓をすべて集めて再構成した、弔いの為のヒトガタだ。

 

「~~~~~~~~~!」

 

 声ではないが、それでも何かがケルヌンノスから発せられた。

 ケルヌンノスの巨大な手がこちらへと、ゆっくりと伸ばされる。

 俺の目の前でぴたりと静止したその手のひらの上に、ケルヌンノスの巫女の名残をそっと横たえた。

 

 ケルヌンノスは彼女を受け取ると、ゆっくりゆっくりと、大事そうにそれを自らの胸元へと引き寄せるともう片方の手も合わせて大事に抱えるような姿勢になった。

 再びケルヌンノスから発せられる感情の波のような物に体を揺らされた。

 

 ケルヌンノスは大地に片膝をついて、完全に戦いの空気は霧散する。

 その身から発せられる昏い呪いの気配も薄まっていくようだった。

 巫女の残滓をすべて集めて、そこから弔いに足るだけの形を取り戻すのは中々に骨が折れたが、やるだけの価値はあったようだ。

 

『なんだか、ちょっと悲しいね……』

 

 消耗からいくらか立ち直ったらしいキャストリアが通信越しにしんみりとした様子で言った。

 まったくもって、ケルヌンノス関連の話は妖精國関連の話でも指折りの酷い話だからな。

 はじまりのろくにんに関しては、生きていたらマジで地面から這い出してくるたびに何度でも頭から埋めてやりたいくらいには所業がエグイ。

 

 ケルヌンノスとその巫女は完全に被害者でしかない。

 されたことを思えば、ケルヌンノスは妖精國に対して穏当すぎるくらいだろう。

 

『ともあれこれで一件落着――――』

 

 キャストリアがほっとした様子でそう締めくくろうとしたのだが。

 

『ごめん、統夜! ちょっとマズイことになったかも!』

 

 横入りしてきたメリュジーヌの通信と共に、妖精國の夜空を揺らす呪いの波動が北の地より立ち上った。

 妖精國全土に轟く竜の咆哮。

 ここからでも目に入る、昏い黒色の竜の影。

 なるほど、想定より呪いの量が少なかったのはそれが理由か。

 

「残念ながら、もう一仕事ありそうだぞ?」

 

 肩を竦めて言うと、通信からはアルトリアのため息が聞こえたのであった。

 

 






いつも閲覧ありがとうございます。
お気に入り登録や評価、感想と誤字報告にも変わらぬ感謝を。

先日は暖かいお言葉の数々、ありがとうございました。
これからも無理をせず、しっかりと頑張ってまいります。


小話

統夜は当初、巫女の名残を集めるだけで死後を辱めるような行為になりかねない死体の復元行為は行うつもりはありませんでしたが、残されていたものの状態があまりにもあまりな状態だったために、「死に化粧」として割り切る形でほぼ新造に近い復元を行いました。

ケルヌンノスも神として、捧げるように返還された巫女のヒトガタに込められた統夜の真摯な気持ちを汲んだ形と思っていただければとおもいます。

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