Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制) 作:空門 志弦
ちょっとヤバイ名前を聞きはしたものの、だからといって何ができるというわけでもない。
まあ、念のためORT関連の何かが持ち出されていたりしないかは、ついつい確認してしまったけどな。
念話でBBに連絡してその能力を活用して調べさせたが、とりあえずそこは心配しなくてもよさそうだった。
ORTは、言ってしまえばこの世界の裏ボス的ポジションの存在というか、ほとんどそのまま宇宙怪獣というちょっとカテゴリーエラー気味の存在なので、南米で寝ている本体でなくても分体とか出てくるだけで洒落にならない。
お前が言うな?
否定はしないしスペック的に俺なら対処もできるんだが、予想される戦闘規模的にどう考えても大陸一つ二つくらいは駄目になる。
通常空間で対峙するなら事前に色々準備はしたいところである。
今回はそういう事にはならずに済んだが、先々考えると念のため対ORTの作戦くらいは用意しておいた方が良いかもしれない。
なにしろ、こんな世界だからな。
くっ、久々にちょっと胃が痛いぞう。
名前が出てくるだけでコレとか、ほんと精神衛生に良くない。
そして、そんな事案がORTだけでもないという。
ほんと、型月世界はさあ!
「気持ちは分かるが落ち着け」
小声でのセリフと共にエミヤに肩をポンと叩かれ、あごの動きでティーネの方に視線を誘導された。
目に入る、まだ年若いティーネの姿。
露骨に態度には出ていなかったようだが、BBとの念話のやり取りもあって考え込んでしまってはいたらしく、ティーネが少し不安そうな顔をしていた。
こちらからも肩を叩いてきたエミヤの腕を軽く叩いて感謝を示し、表情を緩めた。
「大丈夫。念のため懸念材料を整理していただけで、特に問題はないさ」
しいて言えば、出てくる神霊がアステカの主神クラスかもしれないってくらいかな!
なんて言う事は当然口にしない。
ORTよりはずっとましだが、普通に考えて大問題である。
流石にティーネには重い情報だろう。
俺の言葉にティーネは素直に胸をなでおろしてほっとしたようだったが、オーランドは俺の様子から飲み込んだ内容があることを察して、眉間の皺を揉みほぐしていた。
しばらく眉間を揉みほぐした後に大きく溜息をついたオーランドが椅子から立ち上がった。
「拠点の用意は望み通りにして、渡せる情報も渡した。私はこれで失礼させてもらう」
引き際が鮮やかだな。
普通の魔術師にとっての神霊が関わるような案件に対する対処としては、実際それが正解である。
「連中が街の方で妙な悪さをしているようだったら連絡をくれ」
こっちが陽動という可能性もゼロじゃないからな。
なので一応、ティーネの部族の本拠地の方にもファルデウス君の伝手で人はやっていたりもする。
「了解した。何かあった時は連絡しよう」
素直にそう答えたオーランドにヴェラ嬢が一瞬だけ驚いたような顔をした。
まあ、気持ちはわかる。
あの街はオーランドのナワバリ同然。
普通なら、こんな対応にはならない。
だがしかし、だ。
「今回の案件は、神霊が関わっているかもしれない案件だ。扱いには細心の注意を払ってもまだ足りない。だからこそ、彼の協力を仰いだのだ。これは、政府やかの部族からの要請があったからというだけの話ではない。それを肝に銘じておけ」
オーランドがヴェラ嬢にたしなめる調子でそんな言葉を掛け、こちらに軽く目礼を寄越す。
弟子の無礼への謝罪である。
ヴェラ嬢もそれに気づいて、こちらに対して深く頭を下げてきた。
ヴェラ嬢の気持ちも分かるので軽く手を振って、口を開いた。
「気にしなくていい。神霊だなんだと言われてもすぐにはピンとこないのが普通だろうしな」
普通はね。
この時点のヴェラ嬢はまだ色々と未熟みたいだし、なおさらである。
そんな本当に気にした様子のない俺の答えに安堵したヴェラ嬢を連れて、オーランドは屋敷を後にした。
その後、数日は静かな日々であった。
こちらの戦力が増強されたのを受けて、相手も色々と練り直している感じだったんだろう。
そして数日後の夜の事である。
「来たな」
テーブルに料理を並べていたエミヤがぽつりと言った。
「みたいだな。やれやれ、折角の夕飯だっていうのに。冷める前に片付けられると良いんだが」
少し行儀悪く、おかずの一つをつまみ上げて口にほうり込む。
うーん、旨い。
良し、決めた。
冷める前に速攻で片付ける。
「エミヤ、ティーネを頼む。あとついでに、逃げようとする奴がいたらここから狙撃して仕留めてくれ」
ここには今、俺とエミヤとティーネだけ。
他の護衛はかえって邪魔なので遠慮してもらった。
本拠の方の守りも念のため固めておいて欲しい、という建前もあったから割とすんなりいう事を聞いてくれた。
食卓の席から立って、部屋を出る。
悠々と廊下を歩き、玄関から堂々と外に出た。
「ようこそ、襲撃者諸君。せっかく来てくれたのに悪いが、もうすぐ食事の時間でな。さっさと片付けさせてもらうが、恨むなよ?」
口上を述べながら義眼を用いて敵の全てをマーキング。
……思ったよりは数が少ないか?
まあ、ひとまずは良い。
片手を高く挙げ、空間上に複数の銃を全方位に対して展開する。
こうした普通の規模の戦闘にも使えるように用意した普通の火力の銃である。
義眼からの情報を全ての銃と同期する。
突如中空に現れた無数の銃座に、襲撃者たちが動揺するのが伝わってきた。
魔術での攻撃や防御をしようとする者たちもいるようだが、甚だ遅い。
高く挙げた手を、前へ向けて勢いよく振り下ろした。
同時にすべての銃座から、的確な狙いで無駄のない回数の射撃が行われる。
ほんの数瞬の轟音の後、義眼に映る生存者の反応はなかった。
「派手にやったな。いや、君としては最大限地味とも言えるのか?」
部屋に戻った俺にエミヤがそんな風に声をかけてきた。
なおティーネは目を丸くしたままである。
「もうちょっと抵抗があると思ったんだけどな。街で襲ってきた連中は銃を使ってきたのに、こっちはそれもなかったし」
「魔術の腕のいい連中を集めた主力部隊といったところだったんだろう。まあ、君の今回取った戦術に対してはかえって相性が悪かったようだが。おかげで俺の仕事がなかった」
俺の答えに肩を竦めたエミヤが更にそんな風に返してくる。
なるほど、あちら視点だと魔術師主体の主力部隊みたいな扱いだった可能性があるのか。
数が思ったよりも多くなかったのはそのせいか?
そんな風に考えていた俺に肩を竦めたエミヤは手にしていた弓を消してキッチンの方へ歩いて行った。
少ししてテーブルにまた料理が並び始める。
どの料理もまだ温かいままである。
そうしてすべての料理が並び、はっとした顔をしてティーネが正気に戻った。
「え、あの、終わったんですか?」
「ああ、だから君も席に着くといい」
エミヤが椅子を引いて、ティーネに着席を促した。
ほんとに執事気質というか。
ティーネはまだ少し混乱している様子だったが、食事を始めると料理の味の方に意識が行って落ち着いたようだった。
俺も存分にエミヤの料理を楽しむ。
うん、さっさと片付けて正解である。
実に美味。
そんな風に料理に舌鼓を打って、食後のコーヒーを楽しんでいた頃。
不意に連絡が入ってきた。
『部族の方の本拠地に攻撃がありました。大きな被害はありませんが、ティーネさんの弟さんが一人、さらわれたようです。こちらで追跡中です』
声の主はファルデウス君である。
俺は深く溜息をつき、低い声で返す。
「わざと攫わせたな?」
大方、禁足地内の本命の位置の割り出しが目的か。
さらわれた弟君の命の安全も追跡班に対する命令には入れているんだろうが、それもどちらかといえば俺への言い訳程度の話だろう。
こちらを恐れているとしても、コイツの性格を考えればもう少しきっちり釘をさしておくべきだった。
「お前、帰ったら説教な」
ここについてはきっちり詰めておかなかった俺も悪いので、今回はそれくらいで済ませておいてやる。
コーヒーをぐいと飲み干して席を立った。
不本意なやり方にはなったが。
「それじゃあ、この件にもそろそろケリをつけるとしようか」
いつも閲覧ありがとうございます。
お気に入り登録、評価、誤字報告も本当にありがとうございます。
年度替わりやらいろいろ折り重なっての関係でいろいろ忙しく、ちょっと執筆ペースが落ちていてすみません。
あと、今回は一つ、ご案内をさせていただきたく。
間もなく五月に入り、本作も近々連載開始から一年を迎える事となります。
そうなるとどうなるかといいますと、年間ランキングが徐々に下がり始めるわけです。
閲覧する際にそちらの方から本作を探していらした方は、まだであれば良ければお気に入り登録をしていただけたら嬉しいな、というのと、アカウントを持っていない場合などふくめて、年間ランキングで100位から90位の間をウロウロしているのでそちらから探していただくか、原作カテゴリからFate/で探してもらうと見つけやすいですよ、という、そんなご案内でした。
そんなわけで、二年目もこの作品をよろしくお願いいたします。