Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制) 作:空門 志弦
「なんというか、悲しいほどに効果的だな」
禁足地内の祭壇に続く洞窟の中。
岩陰に体を隠し銃撃を行いながら、思わずこぼした。
「真っ当な魔術師ほどこういった手は盲点になりがちだからな」
俺と一緒に岩陰に隠れて銃撃を行っていたエミヤがそんな言葉を返してくる。
考えてみれば、彼の義父がまさにそういった手管で魔術師殺しなんて呼ばれていたな。
「街中で銃撃戦なんてしかけてきたくらいだから、てっきりこういった手にも慣れているのかと思っていたんだけどな」
おっと詠唱している奴がいるな。
だが魔術で身を守っているとはいえ、堂々と身を晒しているのはいただけない。
空中に複数の銃を展開して火力を集中。
相手の守りはあっという間に削れて、魔術師はハチの巣に。
「普通の相手であれば、もう少し対処できていたのではないかと」
本人の要望もあって付いてきたティーネがどこか沈痛な面持ちでそんな事を言う。
その言葉に軽く笑って、エミヤが別の魔術師に対して一点に銃撃を集中させることで守りを抜いて始末した。
「うちの部族も最近は政府などとの関係もできたことで近代的な戦闘手段にも詳しくなってきましたが、それでもお二人に対抗できるとは思えません」
新たな被害者を見て何か祈るようなしぐさを見せるティーネ。
明日は我が身というと違うのだろうが、比較的古い価値観を守ってきていた部類の魔術師にあたるティーネとしては身につまされるモノがあるらしい。
「安心していい。私にせよ彼にせよ間違いなく外れ値の類だ」
それはそう。
エミヤの言葉にほっとした様子のティーネを横目に見つつ、再度の銃撃を行う。
こちらの銃撃に対して敵も岩などを盾に身を守りはじめた。
流石に身を晒すバカはいなくなったか。
でも、それで攻撃頻度を下げたらダメだろ。
「あまり時間もかけられない。突入する。援護は任せた」
端的な俺の言葉に、エミヤもまた言葉少なに請け負う。
「そうだな、了解した」
すぐに使えるように腰に下げておいた手製の刀に手をかけ、岩陰から飛び出した。
まばらな攻撃を時に回避し、時に切り払い、相手に向かって駆けていく。
後方からはエミヤによる、牽制射撃が行われ、敵の攻撃の圧力はさらに弱まった。
一気に距離を詰め、岩陰に隠れた魔術師達に肉薄。
「だから、判断が遅いって言っているだろうが」
言ったのはこいつらにじゃないけども。
いや、結局は屋敷を襲ったあいつらにも言葉では言ってなかったか。
驚愕の表情を浮かべて魔術を使おうとする連中を、一息に切って捨てた。
「片付いたようだな」
戦闘の終了に気づいたエミヤが、ティーネを連れてこちらに歩いてきた。
さりげなく死体からティーネの視線を切っているあたり見事だ。
俺もちょっと位置関係気を付けておくか。
ティーネは年齢に似つかわしくない程度にはそういったものになれてしまっているようだが、それでも無駄に目にする必要はないだろう。
「街で襲ってきた連中に屋敷で襲ってきた連中、あとはここで戦った連中も合わせれば敵の戦力はほとんど片付いただろ。あとは連中の頭を潰せば、この騒ぎも片付くわけだが……」
合流して再び移動を開始しながら、口を開く。
「相手が強引に動いたのが気になるか?」
エミヤの返した言葉に、ため息をつきながら頷く。
「神霊にちょっかいをかけようって言うんだから、正直もっと時間がかかると思っていたんだ。だからあっちの手をかわしつつ、隙を見てこっちから強襲をかけるつもりだった」
「聞く限りは、十分に妥当な戦略だな」
だが、結果として相手の動きはこちらの予想を超えて早かった。
禁足地内にある祭壇の位置の特定も早すぎる。
ティーネから弟へのターゲットの変更、あるいは元から弟の方が本命だった可能性もあるが、その切り替えの潔さにも意表を突かれた。
恐らく、こっちの想定にない要素を相手がもっていたのだ。
可能性として考えられそうなのは……。
「ティーネ。彼の部族から離れた者たちの話って聞いていたりするか?」
俺の問いにティーネが考える様子になってから、少しして答えた。
「そうですね、聞いている範囲だけでも私たちの部族に取り込まれるまでに、少なくない脱落者があったことは間違いないかと」
なら、多分そこだな。
実際にこの洞窟の中にはチラホラ魔術的な封印のようなものの痕跡が残っていた。
そう、痕跡である。
しかも強引に破壊したような跡でもない。
ティーネの同行をすんなり受け入れたのは、そのあたりの封印が部族の血を引く者によってのみ解ける可能性も考慮してのことだ。
義眼で見る限り、封印が解けたのは昨日今日の事ではなさそうであるし、そうすると弟君を手に入れる前に封印は正規の手段で解けていたことになる。
まさか脱落者の中に封印を解けるような重要性の高い血筋の人間が交じっていたとはな。
しかしそうであるなら、何故弟君は攫われなければならなかったのか――――!
「まずい! 走るぞ、先頭は俺だ。罠があったら食い破る! エミヤはティーネ嬢を頼む!」
エミヤは即座にティーネ嬢を抱き上げ、全速で走り出した俺の後ろについた。
洞窟の中を罠を蹴散らしながら駆け抜ける。
くそ、我ながら迂闊な!
でかい事件に遭い過ぎて、感覚が鈍ってたか!?
それとも、日常に戻って気が抜けてたのか!?
例の部族が信仰していたのはアステカを源流としたものだぞ!
その部族の崇めた神霊に干渉するために年若い子供をさらったって言うなら、目的なんぞ知れているだろうが!
俺はどれだけ時間をロスした!
ティーネの弟が生け贄に捧げられるまでの猶予は、あとどれほどだ!?
洞窟を駆け抜け、光がさす出口を抜け、天井が吹き抜けのようになった大空洞へとたどり着き、俺はそれを目にした。
「にゃっはっはっはっは! へいへーい! 狙いが甘いんじゃなーい?」
……うーん、なんと言うべきだ、あのナマモノ。
いや、知っているんだ。
知ってはいるんだが。
微妙に脳が理解を拒否するというか。
思わず首を俺に遅れてソレを目にしたエミヤの方に向けると、彼は彼でいわゆるチベットスナギツネ顔をしていた。
わかりみしかなかった。
いや、しかし一つ確認はせねば。
『メディア。急で悪いんだが藤村先生って今、ちゃんと無事かな?』
『本当にずいぶん急ね、ちょっと待って。……ええ、念のためにつけている使い魔で確認をとったけど、普通に無事よ?』
チートアイテムを活用しての超長距離念話で確認をとってみれば、藤村先生は普通に無事らしい。
つまりあれはあくまで、この世界線の藤村先生がベースではないという事だな。
それは良かった、のか?
とはいえ、目の前の現実は何一つ変わらないんだよなあ。
いや、助かったけども。
まあ、そのなんだ。
つまり俺の目の前にはティーネの弟君と思しき少年を守って、妙な力を振るっている敵と戦っている、なんか虎っぽい着ぐるみを着て戦う藤村先生にしか見えない、ナマモノがいた。
「おっやぁ? しまった、着いちゃう前に片付けられなかったか~! なんか神二人に捕まって、『あいつ忙しいんだから、こっちの神話体系の事であんま負担かける前に始末つけとけ』とか詰められたのに、失敗しちゃった、てへ☆」
ありがたい配慮なんだけども、その人選はどうなんだ。
いや、アステカ由来の神霊の力が満ちている所にあの二人のどちらかでも来たらヤバそうなのは分かるけども!
同じ理由でテノチティトランも選から外れるのは分かるけども!
ある意味で俺たち以上に混乱して思考停止状態のティーネをそっと降ろして、エミヤが両手で顔を覆った。
気持ちを落ち着けるためだろうか。
俺も許されるならそうしたいなあ。
そんなこんなで。
禁足地の奥、祭壇の鎮座する大空洞の中。
俺達は、ジャガーマンと出会った。
ホントナンダコレ。
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誤字報告もいつもほんとうに助けられてます。
と、感謝をして、ちょっと一つカミングアウトしますとですね。
脳内カレンダーが、ガチで一日、ズレてました。
ガチでマジです。
言い訳とかじゃないんです。
私のゴールデンウィークの内の一日は、一体どこに消えたのでしょうか。
なんか、ほんのり切ないです。
ふと曜日を見たら「あれ、思っていた曜日と違う」となったんですよね。
休みに入って一日二日は泥のように眠っていたので、原因はそのあたりな気がします。
そんなわけで、月曜に出しそこねた理由でした。
小話
ジャガーマン、登場です。
思った以上に予想している方が多くて、正直な話をするとちょっと驚きましたw
この流れなら、ORTは本編で可能性を排除しているので横に置くとして、ポカニキかケツァル・コアトル、大穴でククルカンあたりだと誘導できると思ったんですけどね~。
ジャガーマンの存在感を甘く見てましたね!