Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制) 作:空門 志弦
それは、事件簿世界線の物語で語られていたグレイの生まれた村における事件が解決した後のこと。
イゼルマの一件以来、距離の近づいたライネスとグレイがティータイムを共にしていた時の話だ。
俺は最初、ライネスの護衛として彼女の背後に控えていた。
しかし、どうせ今この場には身内しかいないのだからと、俺もテーブルに座るように促されて、最初からしれっと席についていたメリュジーヌと、給仕をしていたカレンも巻き込んでの茶会となった。
「前々から、もしかしてと思っていたんだが、君たち、ちょっと似すぎじゃないか?」
ちょうど席がグレイの隣になっていたのもあって、ちゃんと見比べる事が出来てしまったからだろう。
ついにライネスが、その事実に切り込んできた。
……とうとう、言われてしまったか。
グレイがたまに俺を見て首を傾げたり、二世が考えるようなそぶりを見せたりしてはいたが、ついぞ指摘しなかったその事実を。
「え、だって二人って、そこまで血は近くなさそうだけど、血縁でしょ? そういうことがあっても不思議ではないんじゃないの?」
そして、皆の前なので王子様モードなメリュジーヌがとんでもない爆弾を投げ込んできた。
メリュジーヌさんや?
トドメ刺すのやめてもらえますかねえ。
「え? え?」
グレイは混乱している!
ライネスは、驚いてはいるが、すぐになるほどという顔になった。
カレンはちょっとびっくり、くらいか。
「君のルーツの一つはそこに繋がっていたわけか。曾祖父か、曾祖母かそのあたりだろう」
「あ、そういえば、母から曾祖母の妹が村を飛び出した、なんて話を聞いた記憶が……」
それ話したの、グレイにもその選択肢があることを示したかったんだろうなあ。
結局、多くの助けや思惑はあっても彼女はここにいるわけで、グレイの母親の望んだ未来は果たされたわけだが。
剥離城と双貌塔の件については多少の干渉をしたが、彼女の件は遠巻きに見る位で干渉はしなかった。
あまりに綱渡りな経緯だったからだ。
そして、俺が強引にチートの力で解決するよりも、その綱渡りの方が結果が良い類の件でもあった。
結局、剥離城では時任次郎坊清玄はこの時点で救うことは出来ず、オルロック・シザームンドは、彼の意思を尊重して見送った。
救えたのはハイネ・イスタリくらいだ。
まあ、妹さんの事を考えれば彼を救えたことには大いに意味があるが。
イスタリ家がエルメロイ寄りになったことも小さくない成果だ。
双貌塔ではカリーナに忠告程度はしたが、結局彼女は死を選んだ。
それが失意の為か、愛の為かは俺にはわからなかった。
蒼崎橙子は俺との敵対は避けたし、最後の場面でもあんな怪物を相手にするのは面倒くさいから、口に状態異常回復薬を突っ込んで、自爆のごとき行為は食い止めてやったわ。
目を白黒させていたのはちょっと面白かった。
なんというか、橙子さんについては、別世界線のかっこいい所も愉快な所も知ってしまっているせいで、他の魔術師たちのように冠位凄い、怖い、みたいに思えなくて、ちょっと扱いが雑になっている感がある。
マイオ?
あれに語る価値があるとは俺は思わない。
魔眼列車は、大いにかき回してやった。
トリシャ・フェローズは死を偽装したことで生き残ったし、カラボー・フランプトンについても存命だ。
ぶっちゃけ俺、ハートレス嫌いなんだよね。
手前勝手な理想を口先で掲げて、不幸をまき散らしやがる。
しかも本音は極論してしまえば八つ当たりと来た。
動機については理解はする。
だがやり口が身勝手で、押しつけがましい。
得られるもの、失われるもの、それらと正しく真摯に向き合えているかというと、甚だ怪しく見える。
傷つけるわけにいかない列車が近くになく、フェイカーが全力で逃げの一手に走らなかったらあの場で仕留めてやったのに。
あの事件は、グレイにちょっと怖がられたのがぶっちゃけ、一番の痛手だった。
この先の冠位決議の時はライネスの守りをメリュジーヌに任せるしかないだろう。
同時に起こる冬木聖杯戦争の状況がまずかった場合に即応できるように備える必要があるから、ハートレスとの決着はやはり二世に任せることになる。
ギルガメッシュが陣取っていなかったら、さっさと介入していたんだが。
彼の英雄王が相手では確実な勝利となるとイーリアスでは流石に不足だ。
だが、それ以上となると冬木への影響が無視できなくなってくる。
「遠い目をして、韜晦するのはやめたまえよ、我が弟子」
ライネスの声で現実に引き戻された。
折角俺が、脳内で俺式事件簿を垂れ流して全力で現実から目を逸らしていたというのに。
「現実逃避くらいは許していただけませんかね、師匠?」
ええ、そうですとも。
俺の顔は、グレイのそれによく似ていますとも。
しかし、他の世界線の事を知っている俺にとって、俺が似ているというか瓜二つなのは、グレイ、ひいてはアルトリアではない。
プロトタイプアーサーである。
前までは、黒髪と幼さのせいで、他人の空似だと目を逸らせていたんだけどな。
二世も性別の違いと、黒髪、後は多分だが表情の違いで、アルトリアとの相似に確信を持てなかったんだろう。
顔はプーサーだが、俺の作る表情は不敵とかそっち方向でリチャードとか寄りだし。
魔術回路が高性能なはずだよ。
はっきりと言われていたわけじゃないが、グレイと同じ線上にある血筋だとするなら、俺の体はアルトリアの、そして系譜を紐解けばあのモルガンにも通じるような因子を持っているってことだからな。
グレイはどちらかというと器として霊媒としての才が現れたからか、本来的にはそこまで大した魔術回路は持ってない。
一方で俺はモルガン寄りの魔術師としての才が現れたわけだ。
「少し力を抜いては? 眉間にしわが寄っていますよ?」
カレンがいつの間にか席を立って、新しい紅茶を注いでくれる。
すっかり様になったなあ。
なお、当然というべきかトリムマウもすでにメイド型になっているんだが、俺の世話は必ずカレンが行っていた。
トリムマウは俺が色々いじった関係で大分高性能化しているんだが、カレン的にはそこは譲れない一線らしい。
「その、拙と血のつながりがあるのは、お嫌だったでしょうか?」
いかん、変な誤解をさせてしまった。
違うんだ。
「グレイと親戚だというのはむしろ嬉しいくらいだぞ? ぶっちゃけ今の自分は天涯孤独の身の上だと思っていたし、身近に実は血縁がいたなんて、ちょっと面白いし」
なんなら、元から妹みたいに可愛がっていたからな。
グレイもそれなりに懐いてくれていた、と、思う。
それだけに怖がられたときのダメージが大きかったわけで。
今にして思うと、お互いに無意識に血縁を感じ取っていたのか?
「それならよかったです」
グレイが胸をなでおろす。
誤解が解けて良かったと、俺もまた胸をなでおろした。
まあ、でも、俺みたいなチート付きの魂を受け入れられた体が、普通なモノの訳もなかったんだよなあ。
それが英雄の精神と魂の入れ物たる肉体を作ろうとしていた血筋だなんて、あまりにらしくて笑ってしまう。
俺は精神や魂は凡人のそれだけど、チート付きだからな。
「そうしていると、本当に兄弟のようですね」
俺のついでに他の皆にも紅茶を注ぎつつ、カレンはほのかに微笑む。
「後で義兄を驚かせるネタが出来たな」
ライネスがニヤリとした。
ああ、それはちょっと、楽しそうだ。
あれ、まてよ?
そういえば。
「メリュジーヌが初めて会った時から妙にグレイに優しかったのって、このことに気が付いていたからなのか?」
「そうだよ? 匂いというか気配というか、そんなものがよく似ていたから一発でわかったし」
そういう事は先に……言わないでくれて良かったな、うん。
グレイと血のつながりがあるのは実際、嬉しいくらいなんだよ。
でも、それとこれとは話が別というかだね。
だって、すでに色々キャパいっぱいな感じがあるのに、実は男性版アーサー王の似姿ですとか、出来れば目を逸らしておきたいじゃん?
そんな、一見穏やかな、しかし実は割と驚きな事実が判明した昼下がりのお茶会であった。
え、事件簿関連の詳細な話?
まあ、そこはいつか機会があったら、という事で。
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