Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

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第19話   俺とアサシンと、ぇえ、何でいるの?

 

 桜の件を片付けた次の日。

 俺とメディアは、一般人の振りをして街をぶらついていた。

 ちなみに町全体に色々と仕掛けはしているが、工房は作っていない。

 

「工房を作らないというのはなんというか、魔術師としては微妙に落ち着かないわね。実際、貴方がマスターだと作っても意味がないというか、デメリットが勝ってしまうのだけど」

 

 そう、メディアの言う通りで作っていないというか作る必要がない、と言うべきだろう。

 そもそも俺の魔術回路から生成される魔力がまず常識外れなレベルで潤沢。

 しかも即座に取り出せる量子ストレージ内に、ここ数年で錬金術によって作り貯めたアイテムの数々がある以上は、俺が歩く工房みたいなものでもある。

 

 チート由来の物品を抜きにしてもこの有様なのだから、敵からしたらひどい話だろう。

 量子ストレージから直結で、前に話に上った内燃機関モチーフの魔力炉から、この聖杯戦争の期間くらいならほぼ無尽蔵と言える勢いで魔力を汲み出せるしな。

 

「逃げ隠れがいくらでもできるって、素晴らしいよなあ」

 

「貴方、戦いのときはあのスタイルなのに、割と嬉々として搦手を講じるわよね」

 

「そりゃ俺は基本、根が凡俗だからな。戦闘スタイルはあれが一番強いからあんな感じにしているだけだ」

 

 しかし、魔力炉が出来上がっちゃった時の二世の顔は中々見ものだったなあ。

 もう出来たのかよ、という驚きと、なんだその馬鹿性能、という困惑、扱いに困る、という苦悩が絶妙にブレンドされて、それが胃を直撃。

 反応を予想していたグレイがタイミングよく渡した水で、すかさず俺謹製の胃薬をあおっていた。

 

「凡俗、ねぇ。まあ、人格面に関して言えば、確かにそういう面もあるんでしょうけど」

 

 含みのある言い方するじゃん?

 確かにチートがある上に元からの体のスペックも実はやばかった結果、能力面はもろ外れ値になってるけど。

 

「言いたいことがあるなら聞くけど?」

 

 まあ、とにかくそんなわけで、身動きが取れなくなり行動の選択の幅が狭まる特定拠点に依存する利点がほとんどないのだ。

 なので、ビジネスホテルやら普通のホテルやらを転々としながら、街の地形などを確認したり、あちこちに細工を仕掛けたりして過ごしている。

 

「別に、特にはないわ。しいて言えば、貴方みたいなマスターに仕えている自分が案外悪くないと思えることが、自分自身でちょっと意外だったけど」

 

 そうはいっても、根はどっちかと言うと善性とまでは言わずとも、まともなタイプだからなメディアは。

 俺から見れば別に意外でもないんだけど、本人的には自分の生前の行いなんかに色々思う所があるんだろうなあ。

 

「昔はどうか知らないけど、今のメディアは自分が思っているよりだいぶ真面目で面倒見がいいぞ?」

 

 俺になんだかんだで付き合ってくれているんだから間違いない。

 なお、メディアは別世界線でもだいぶ最初の方に召喚されていたが、この世界線でもそれは同様のようで、まだサーヴァントは全てはそろっていない。

 ランサーはちょこちょこ威力偵察に動いているようだが、俺達についてはそれも済んだ後なので、今はちょうど凪のような期間になっていた。

 こうして、割と気楽にブラブラできているのもそのおかげである。

 

「好きで面倒見をよくしていると思わないで欲しいわ。貴方は放っておくと、シャレにならないことをしれっとやらかしそうで怖いのよ。サーヴァントを口先で足止めするとか言い出した時は、正気を疑ったわ。戦いになっても生き残れるだろうと思ったから、あえて止めはしなかったけど」

 

 ちょうど話に出たが、桜を自由にするついでに、厄ネタの点火元になりかねない臓硯をいち早く潰せたってのも大きい。

 あいつについては、桜の事がなくても恐らく最初に潰していただろう。

 仮に、冬木の第五次聖杯戦争でRTAをやれと言われたら、俺は必ず最初に臓硯を始末する。

 色んな意味で、生かしておけない奴だし。

 臓硯死すべし、慈悲はない。

 

「聖杯は状態があれだし、それでもメディアがいれば余程の内容でなければ複数の願いを叶えるのも行けるだろうし、交渉材料が潤沢なんだから、戦う以外の選択肢も断然ありだろう?」

 

「そのあたりはオマケで、結局は貴方、あの子を助けたかっただけじゃないの」

 

 それはそう。

 

「そろそろ腹が減ったし、なんか食べないか?」

 

「真正面から堂々と話を逸らしたわね。まあ、いいわ。今日は何を食べましょうか?」

 

 そういえば、このあたり、アレがあるんじゃなかったっけ?

 そう、あの激辛マーボーの店である。

 メディアには、別のものを注文してもらえばいいし。

 

「中華はどうだ?」

 

「そういえば、中華はまだ試してなかったわね」

 

 よし、決まりだな。

 たしか、ここの角を曲がって、お、あるある。

 そう、この店こそ、例の激辛麻婆豆腐の店。

 泰山である。

 

 一応、外道麻婆神父がいないことは確認して、と。

 よし、大丈夫だな。

 たのもう!

 って、マジで声出したりはしないけどな。

 店に入って、席に座り、失敗を悟った。

 

(マスター、気づいている?)

 

 念話でメディアが語りかけてくる。

 

(ああ、気づいた。と言うか多分、気づかされたな。牽制だろう)

 

 このレベルの隠形となるとアサシンだろう。

 どうりで、召喚出来ないはずである。

 そう、メディアと契約した時点で、俺達はアサシンの召喚に挑戦したが失敗していたのだ。

 

 牽制の理由は、こちらがアサシンのマスターに気が付く事を見越して、先手を打ったと言ったところか。

 こんなところで騒ぎたくないのは、こちらとしても同感なので、マスターと思しき学生服の少女の方にはあまり目を向けずに、普通に注文を済ませた。

 

 やってくる、激辛麻婆豆腐。

 クッソ赤いな。

 メディアが、近くにいただけで目に染みたのか顔を少しそむけた。

 さて、では一口。

 

 口に運び、味わう。

 うん、辛いというか痛い。

 だがしかし、もう一口。

 痛みに慣れて来て、その先にうまみが見えてきた。

 

 なるほど、これは興味深いな。

 割と行けてしまうのは、この体の強靭さゆえか、男とは言え腹ペコアルトリア属の肉体ゆえか。

 メディアが割と本気で心配そうにする中、俺は結構余裕で完食した。

 

「マジか。私とたまに見かける神父さん以外で、そんな悠々と食べきる人、初めて見た――――!」

 

 そんな小さいながらも驚愕に満ちた声がして、思わずそちらを向いてしまう。

 目に入るのはマスターと思しき、制服の少女。

 驚愕で歪みながらも、それでも可愛い顔に、長い少しウェーブがかかった茶髪。

 そう、漫画とかなら、ちょうど、顔面偏差値が魔境なクラスで三番目に可愛いとか形容されそうな――――。

 

 ちょっとまって。

 なんで?

 はくのんなんで?

 なんで、はくのん、いるのん?

 

 ――――あぶねえ!?

 口に麻婆豆腐はいってたら、絶対に吹くかむせてた!?

 いや、どういう事だよ!?

 おかしいだろ!

 なんで岸波白野がこの時代にいるうえに、マスターに選ばれちゃってるんだよ!?

 

 ……でも冷静になって考えると、この時期にこの辺に存在していた世界線は確かにあったな。

 時期という面では、そこまでおかしくもない、のか?

 

 あ、はくのんが、めっちゃ、しまったっ! って顔してる。

 よし、こうなったからには、仕方あるまい。

 身振り手振りで、ちょっと面かせや、のサインを送る。

 はくのんは、どうかご勘弁を、と言ったサインを同じく身振り手振りで返してきた。

 

「何やっているのよ貴方達。実は知り合いだったの?」

 

 ああ、いや、俺が一方的に知っているだけというか。

 

「そう言うわけじゃないんだけどな。んー、悪いようにはしないと約束するから、少し話さないか? 多分だけど君、何も知らずに巻き込まれた口だろう?」

 

「あ、そう言うの分かっちゃいますか?」

 

 分かっちゃうようになっちゃいましたね。

 配送屋やっている時はそんなことなかったのになあ。

 

「えと、何かまずいこと聞いてしまったでしょうか?」

 

「ああ、いや、そうじゃないんだ。ただ、人生の無常というものを噛み締めていたというか……」

 

 うん、本当にそれだけなんだ。

 

「大丈夫だよ、アサシン。多分悪い人じゃないと思う」

 

 小声で、そんな声が聞こえた。

 念話にも慣れていない感じかー。

 本当に完全に素人なんだな。

 

「あの、それじゃあ、色々説明とか、お願いしてもいいでしょうか?」

 

 思い切りのいいところは、はくのんらしいな。

 そんなこんなで、そういう事になったのだった。

 

 

 

 





いつも閲覧ありがとうございます。
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そう言えば活動報告の最初の挨拶以来、言っていなかったなと思うことがあったので、この場を借りて改めて引用する形でお話させていただきます。


感想をいただいている皆様。
いつもすべてに目を通して、本当に楽しく嬉しく思いながら読ませていただいています。
感想返しにつきましては、申し訳ないのですが人に対して贈る文章はどうしても凝ってしまう性分で、作品の執筆時間がそれで削れては本末転倒というもの。
どうか作品の執筆によってお返事と代えさせてください。


また、追記として、本文の内容の疑点や指摘などについては、「確かに分かりにくかったな」と思ったところは加筆修正したりしていますし、「確かに間違っているな」という所は直しています。
指摘の後にしばらくしても何も直っていなかったら、あえてそうしている部分であるか、「直す必要はなさそう」と考えた部分であるとご理解ください。
なお、平日は余裕がなかったりするので、修正は数日後になることもあるかと思います。


さて、とりあえずこれで、伝えるべきところは伝えられたかと思います。
それでは皆様、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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