Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

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第21話   結成される陣営と今後の方針

 

 俺の目の前に、床に四つん這いになった岸波白野がいた。

 まさにあれだよ。

 OとRとZのやつ。

 まあ、気持ちは分かるぞ、痛いほどにな。

 

「監督役で敗退者の保護の役目を持っている教会の神父が外道で、実はサーヴァント持ち。現時点で存在が確認されているだけでも、クー・フーリンに、メドゥーサに、ギルガメッシュなんていう、私でも聞いたことのあるビッグネームぞろいで、トドメに、うっかり溢れたら世界が滅びかねない呪われた聖杯……?」

 

 なお、順当に呪腕先生が召喚されていることを考えるに、直接確認は済ませていないが、アインツベルンは既にFate世界線通りにヘラクレスを召喚していることが濃厚だ。

 さらに加えて、変な人間がマスターになるより人格的にマシで、行動もある程度予想しやすい衛宮士郎にはマスターになってもらうつもりなので、アーサー王の召喚もほぼ確定と言って良い。

 

 衛宮士郎についても、本音を言えば聖杯戦争から遠ざけてやりたい気持ちはあるんだが、彼の場合はサーヴァントがいなくても首を突っ込んで派手に死ぬ未来しか見えないというか。

 アーサー王には世話を押し付けるようで申し訳ないが、彼の命の為に召喚されてやって欲しい。

 英霊エミヤは凜がいる以上は召喚されるだろうし、あれも中々癖はあるが強力な部類だからな。

 

「いやはや、魔境だなあ、今次聖杯戦争」

 

 思わずこぼした俺に、顔だけ上げたはくのんが叫んだ。

 

「デストラップ多すぎませんか!?」

 

「見えてる死因はトラップとは呼ばないのだよ、お嬢さん。そういう意味では、神父の本性と聖杯についてだけは確かに大分ひどいトラップだけど」

 

 聖杯の中のアレを知っているのは、本来の第五次聖杯戦争の世界線だと、溢れさせる気満々の言峰綺礼とギルガメッシュのコンビだけって言うね。

 うん、やっぱり型月世界は地獄だわ。

 

「しかも、その外道神父が、あの麻婆神父さんだなんて」

 

「うっかり遭遇しないようにな。どんな目にあうか知れたものじゃないから。アサシンも、気を付けてやってくれよ?」

 

「留意いたしましょう」

 

 いい加減、床からはくのんを立たせてあげつつ、話を続ける。

 

「とはいっても、聖杯戦争期間中は君には基本的にずっと俺と行動を共にしてもらうから、気を付けるのは俺と別行動になった時だけで良い」

 

 これについては大変申し訳ないが、決定事項である。

 

「聖杯戦争に関わることを決めた以上は危険な目に遭う事は避けられないが、まあ、俺の傍にいる限りは五体満足で生き残らせてみせるとも」

 

 全力でな。

 だって、マジで死んでもらっては困るし。

 それはそれとして、こんな普通の……うん、この世界線の現時点では普通の……女の子が、聖杯戦争に巻き込まれるとか、この手に守れる力がある以上は見過ごせない。

 

「聖杯戦争に参加した経緯とか、参加した理由とか聞いてる時も思いましたけど。神薙さんって、職業が魔術師じゃなくてヒーローか何かなんじゃないんですか?」

 

 ないわー。

 

「すごく嫌そうな顔ね。貴方のそんな顔、初めて見たわ。私との契約で聖杯戦争に直接的に関わる羽目になった時だってそこまでの顔はしなかったのに」

 

 俺たちの話を邪魔しないように黙って傍で控えていたメディアが、思わずと言った様子で言った。

 いや、だって、そりゃねえ。

 

「ヒーローとか、まったくもってがらじゃない。目に映る分だけ、手の届く範囲で、寝覚めが悪くなるような話を蹴っ飛ばしてるだけだ。むしろ本質的にはヴィランよりっていうか。たまたま趣味嗜好が一般的な人たちのそれと被っているから、結果的にそう見えているだけだろうさ」

 

 そもそも俺に言わせれば、正義とか理想とか結果論でしかないのだ。

 別にソレを胸に抱くのも、目指し求めるのも構わない。

 でも世界を生きるにおいて、現実でそれを語るのであるならば、結果をもって語るべきだと俺は思う。

 人はそれが全部ではないが、どうしたって弱いし醜いから、形のない言葉だけのソレは、容易く歪むし、また、逆に人を歪ませもするからだ。

 

 ああ、でも、その論で行くなら、俺のもたらした結果を知ったはくのんが俺をヒーローと評するなら、俺はヒーローってことか?

 勘弁してほしい話である。

 思わず肩を竦めた俺を、はくのんは何か面白いものを見るような、でもそれだけではない不思議な目の色で見つめてきた。

 

「ね、私の言ったとおりだったでしょ、アサシン?」

 

「どうやらそのようで。お見それいたしました、マスター。……神薙殿、今までの非礼をお詫びしよう。マスターがこの聖杯戦争を生き抜けるように、力を貸していただきたい」

 

 まあ、呪腕先生がある程度信用してくれたみたいだから、とりあえずは良しとしておくか。

 ヒーローとか、マジ勘弁だけど。

 

「さっきも言ったけど、寝覚めが悪いのは遠慮したい質でね。自分の為にもきっちりと生き残らせるさ」

 

 さて、気を取り直していこう。

 

「まずこれからの方針だけど、岸波嬢には俺と行動を共にしてもらう。聖杯戦争の期間中は、孤児院にも帰らず学校も休学してもらうことになるだろう。このあたりは、俺とメディアで手配しよう」

 

 暗示なんかも使えば一発である。

 

「えっと、呼び方は白野で良いです。お嬢様扱いは、落ち着かないので」

 

 ふむ。

 性格的に学友からはあんまり女の子扱いされないって話だったっけか。

 それだとあんまり丁重に扱われるのは落ち着かないか。

 まあ、本人がそう言うならそうしようか。

 

「わかった。そう言うわけだから白野。今日のうちに孤児院の方は話をつけて、明日は学校の方をどうにかする。その後は基本的に俺と一緒に行動だ」

 

「わかりました」

 

 ホテルなんかは今も複数部屋があるタイプを借りるか、ビジネスホテルだと隣り合った部屋を借りたりしているから、今まで通りで良いだろう。

 

「アサシンは基本哨戒を。敵を見つけたら、速攻で戻ってきてくれ。逃げるから」

 

「承知しました。しかし、逃げるのですか?」

 

「ああ、逃げる。しばらくは全力で逃げ隠れしながら、戦況を傍観する。勝負は、英霊が全騎そろってからだ」

 

 とはいえ、本格的に聖杯戦争が始まっても、基本は裏でコソコソする感じになるだろう。

 理想としては、衛宮士郎にちょっかいをかけつつ経験値を積ませて、固有結界を習得させる事。

 衛宮士郎の固有結界があれば、ギルガメッシュへのちょうどいい対抗手段になる。

 できれば俺とギルガメッシュの衝突で、周辺に大きな被害が出るような事態は避けたいからな。

 

「アサシン、これは誠意として先に言っておく。俺は、この聖杯戦争を人類の存続という観点で見た時に、最も生き残らせなければならないサーヴァントは、キャスターだと思っている。だから……」

 

「みなまで言われますな。聖杯の真実を知った時から、わかっております。もしもの時はマスターを頼みますぞ」

 

 こうなってみると、召喚されたのがサーヴァントの中でも指折りの人格者の呪腕先生だったのはありがたいな。

 まあ、基本被害担当と言うかタンクは俺になるから、そうそう呪腕先生が落ちる事態はないと思うんだが、聖杯戦争に想定外はつきものだからな。

 

「いいか、キャスター。まずは自分と白野の生存を優先してくれ。俺は自力で必ず生き残る。だから、俺が逃げろと言った時は迷わずに必ず逃げろ。白野もだ。いいな?」

 

 撤退をためらってキャスターが落ちたり、白野が死んだりしたら、本気でシャレにならない。

 なのに、何で二人とも微妙に不満そうなんですかねえ?

 

「私は、貴方のサーヴァントなのだけど?」

 

「だったらマスターのいう事を聞いてくれるよな?」

 

 お互いに目を逸らさずににらみ合う。

 根負けした、と言うか譲ってくれたのはやはり、メディアの方だった。

 頭痛でもこらえるかのように手を頭にやって、深く溜息をついた。

 

「自分よりサーヴァントを優先するなんて、呆れた話ね、まったく」

 

 それはそうなんだが、今回は事情がなあ。

 メディアを残せるかどうかで、未来が大きく変わる可能性すらあるので仕方がない。

 そして、はくのんは自分より付き合いの長いメディアが譲ったので、言葉を飲み込んだようだった。

 

「以上をもって、基本方針とする。さあ、まずは白野の孤児院から話をつけるぞ」

 

 そうして、キャスターとアサシンと言う二騎を擁する俺たちの陣営は動き出すことになるのであった。

 

 

 

 





いつも閲覧していただきありがとうございます。
本日二度目の投稿、お楽しみいただけたでしょうか。

反響の大きさに夢見心地と言うか、ウッキウキな毎日です。

お気に入り登録に評価の投票、まことにありがとうございます。
ただでさえ楽しく書いている本作ですが、さらにモチベが高まっていくのを感じます。

主人公の顔の判明時や、はくのん登場時の感想欄の反応などは特にニヤニヤし通しでした。
いやあ、してやったぜって感じで、凄く楽しい!

誤字報告にも変わらぬ感謝を。
いつも本当に助かっています。

これからも楽しく頑張って書いていきますので、変わらぬ閲覧と登録や評価での応援をどうぞ、よろしくお願いいたします!

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