Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

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第24話   聖杯の器と英国の地での決着

 ヘラクレスとの戦闘を終えた俺は合流場所に決めてあった郊外の廃墟にたどり着いた。

 三人の姿を確認して、少し安堵を覚える。

 一応、念話で聞いてはいたが、やはり実際無事を目にすると実感が違った。

 

「あ、お帰りなさい、神薙さん!」

 

 キャスターとアサシンと共に俺の帰りを待っていたはくのんが駆け寄ってくる。

 その姿は、FGOでプレイアブル化されたときのセーラー服に学ランぽい上着を羽織ったような姿に近い。

 学帽も被っていて、ついでに今は外しているが敵の前に出る時は狐面を装備している。

 素性は隠しておくに越したことはないからな。

 

 いや、別に俺の趣味じゃないんだ。

 俺の手持ちのチートが由来で度を越さない程度の装備、と言うかほぼ見た目だけ装備なんだが。

 それでも下手な礼装とかよりは丈夫で防護効果も高い装備から好きなものを選んでもらったらこうなったのだ。

 まあ、完全な同一人物とは言わずとも同じ趣味で選んでいるわけだから、ある意味必然だな。

 

 こういう系の装備は女性型のサブキャラの着せ替え用に大量にストックがあるのになあ。

 なお、はくのんには知人の置き土産のようなもの、と言って誤魔化した。

 事情を知らない人から見ると、流石に女性用の装備を大量にもっているのはアレだからな。

 

「ああ、不用意に触れないでくれ。血が付く」

 

「血って、怪我したんですか!?」

 

 おっと、言い方が悪かったか。

 いかんな痛みと疲労で頭の回転が鈍ったか?

 まだ魔術世界の初心者のはくのんを不安にさせてどうする。

 

「大丈夫だ。もう回復しているから傷一つない」

 

 あの場を離れてすぐに回復薬でちゃんと直した。

 まあ、戦闘中に結構な痛みが続いていたせいで、まだ痛いような感じが残ってはいるんだが。

 足止め目的だったために、相手に圧力をかけ続ける必要があったからな。

 アーサー王がしていたみたいにもっと足を用いた立ち回りも使えていたら、また結果は違っただろう。

 

 

「痛むのね? 見せて。魔女としての業ゆえに今の私は治癒の魔術は使えないけれど、状態を見るくらいは出来るから」

 

 見せてと言いつつ、半ば強引に腕をとって袖をめくられた。

 腕の状態を目で見つつ、手で触れて、恐らくは魔術も使って診察していた。

 

「肉体的にも、魔術的にも問題はなさそうだけど……精神的なものでしょうね。やっぱり、ヘラクレスの足止めなんて、一人でさせるべきじゃなかったわ」

 

 そう言って悔いるメディアを見ていると、なんというか、ばつが悪い。

 今回はかなり強引に話を通したからな。

 とはいえ、あちらにはメディアと呪腕先生が必須だった以上、こればっかりは適材適所だ。

 

「結果、きっちり五体満足の無傷で帰ってきているだろ? で、そっちの首尾は?」

 

 例のごとく強引に誤魔化した俺に少しジト目を向けてため息をついた後、メディアは手元に呼び出した魔術的封印を施された容器入りのそれを見せてくれた。

 結晶のようなものが融合している心臓。

 そう、聖杯の器の核たる、イリヤの心臓である。

 

「イリヤスフィールの様子は?」

 

「問題はないでしょう。流石に多少は出力が落ちたでしょうけど、あの仕上がりの心臓に私が手を加えたのだから。偽装も施しているから、しばらくは何らかの呪詛で力を減じられた、くらいには思わせられるのではないかしら?」

 

 今回入れ替えに使った偽の心臓は、元々は内燃式の魔術炉のダウンサイジングの研究過程で生まれた生体型魔術炉だ。

 それをもとにメディアが手を加えて、最終的には結構やばい代物になった。

 なんだかんだで、イリヤの生成魔力は2割から3割の減に収まる見通しである。

 

「そいつは重畳だな」

 

 ニヤリとして見せる俺に、はくのんが苦笑をこぼす。

 

「悪い顔しますね。やっていることは先々を考えればむしろ彼女の為なのに」

 

 そりゃ、動機はどうあれ、悪だくみの類だし。

 

「こういう悪だくみって、ちょっとワクワクするだろう?」

 

「それはまあ、わかります」

 

「マスターは、実にノリノリでしたからな。あの見事な悪役っぷりは、神薙殿にもお見せしたかった」

 

 ああ、うん、はくのんって結構悪ノリする方だもんな。

 イリヤの前では結構ノリ良く演じていたわけか。

 そんな風に思って頷いていると、アサシンに対してはくのんからの物言いが入った。

 

「いや、アサシンはそう言うけど、結構いっぱいいっぱいだったからね!? なんかイリヤスフィールさん、ちっちゃくてかわいくて、罪悪感凄かったし!」

 

 なるほど、実際には年齢が士郎君より上な事も、魔術師として残酷なこともできる性格も教えていたから、そこまで罪悪感というものを重視してなかったが、実際に姿を見てしまえばまた話は変わってくるか。

 人間、やっぱり見た目にはつい引っ張られるもんなあ。

 

「まあ、そんなに気に病むなよ?」

 

「そこは、はい。最終的には悪いようにしないと信じていますし、大丈夫です。対面して脅すような形になっていた時はちょっと心にきましたけど、引きずってはいないつもりです」

 

 ならばよし。

 変に気にしたままだと、危ないからな。

 

「尾行の類は無いようだし、街に戻って宿をとりましょう。貴方も白野も、休養を取るべきだわ」

 

 メディアの言葉に呪腕先生も同意を返し、俺達に休息を勧めてきた。

 もっともな話なので、この後の行動についての話し合いについては後回しとして、宿を探して休むこととなった。

 ホテルの部屋にたどり着いた俺は、倒れこむようにベッドへ横になって、すぐに意識が落ちた。

 

 自分で思っていた以上に疲労が蓄積していたらしい。

 ――――流石に、生身でヘラクレスの相手は、しんどかったか。

 そんな自嘲が、意識を失う前の最後の思考だった。

 

 

 

 

 ぐっすりと眠り、次の日、確認するべきことがあったのでイギリスへと電話をかけた。

 

『この、大馬鹿者が! 冬木の聖杯戦争を監視しに行くと聞いた時から、こんなことになるんじゃないかとは思っていたが、案の定か!』

 

 まったくもって二世の説教は耳に響くなあ。

 いや、これに関しては完全に俺が悪いんだが。

 

『そもそも、アトラムからの借りは私の責任下のものだ、君が返さねばならないようなものではあるまい』

 

「そうはいっても、俺は二世に何かと世話になっていますからね。直接的な借りでないとしても、あの状況で見過ごすのは流石に」

 

 うん、無理だったわ。

 生け贄たちの命の事もあったし。

 

『……生きて帰ってくる自信はあるんだな?』

 

「それは十分に。問題はむしろ最悪の場合、街一つ壊滅しかねないという事実の方ですね」

 

 電話越しに、二世の呻き声が聞こえる。

 この通話が終わった後、また胃薬をあおるんだろうなあ、まっことお労しや。

 

「避けるようには動いていますが、状況は予断を許しません。念のために、後処理にまわる心づもりくらいはしておいてください」

 

『わかった。非常に不本意だが、万一の事態に備えてはおく』

 

 表の世界には何事もなく終わるように動くつもりだが、備えないわけにはいかないからな。

 

「それで、こちらの報告はそんなところとして、そちらはどうなりました」

 

 そう、事件簿世界線の時系列的にも俺が日本に発つ前の状況的にも、ちょうど冠位決議が終わりハートレスとの決着がついている頃合いだと思って連絡を取ったのである。

 

『決着はついた。ドクターハートレスが暗躍することは二度とない。決議の方も余裕をもって乗り切った』

 

 決議の方に余裕があったのは、事件簿世界線との差異だな。

 この世界線だと俺の影響でエルメロイの力が段違いだから、そこは当然の成り行きと言える。

 

「グレイの様子は?」

 

『懸念していたよりも、進行が遅いし影響も小さい。君はこれを狙っていたのか?』

 

「流石に買いかぶりですよ。本来は聖杯戦争の参加者になる予定はなかったから、結果論です」

 

 そう、アーサー王の召喚による、その器としての適性を持つグレイへの影響は事件簿で語られていた事。

 当初は、もう少し後手になる予定だったのだが、俺の聖杯戦争への参加により事情は変わった。

 今、俺の黒髪は、一部が金髪に変わっている。

 悪目立ちするので見た目上は黒く染めているけどな。

 

 肉体的再現度で言えば俺よりよっぽど近いグレイであるが、今は遠く異国の地にいる。

 一方の俺は、ごく近くにいて、しかも同じ魔術儀式に参加しているわけだ。

 さらに言うならば伝説の上ではアーサー王は、女性ではなく男性である。

 俺が自分の中でことさらにアルトリアではなくアーサー王として認識しようと努めていたことも多少は効果があっただろう。

 

 これらの条件がそろった時、さて、はたしてアーサー王召喚による影響をより大きく受けるのは、グレイになるのか、プーサー似の俺になるのか。

 結果は御覧の通りと言うわけだ。

 似ているもので身代わりとするなんて、魔術ではありふれた手法である。

 

「グレイには黙っておいてくださいよ。絶対に気にするでしょうから」

 

『わかっている。だが君は問題ないのか?』

 

「もともとが色々人間離れしていますからね、俺の場合。ぶっちゃけ、もとからなのか影響によるものなのかわからないレベルです」

 

『それはそれでどうなんだ』

 

 うん、俺もそれには同感なんだけど、実際そうなのだからしょうがないのである。

 

「そっちの皆には、よろしく言っておいてください。土産でも持って帰りますよ」

 

 場合によっては、そこにまた人間が含まれるかも、とは今は言わないでおこう。

 

 

 

 





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小話

二世は電話の後、胃薬をダースで飲んでから最悪のケースに備えた対応案の策定を始めました。
それが分かっているので、主人公はお土産はゲームにすべきか胃に優しい食べ物にするか割と真剣に悩んで、結局は迷惑料もかねて両方を買っていく事になります。
主人公と共にいる以上、二世も種類こそ違いますがデスマーチをする羽目になる宿命なのです。
合掌。
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