Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

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第26話   俺とアーサー王とエミヤ

 

 いやあ士郎君、もうちょっと警戒心持ったほうが良いんじゃないかなあ。

 ほいほい操られて、ここまで連れてこられちゃってまあ。

 とはいえ、こちらとしては作戦通り。

 

 メディアには遠坂嬢のサーヴァントである英霊エミヤを通すことは事前に伝えてあるし、その正体、なぜそうするのかも伝えてある。

 手の内も教えておいたし、俺の錬金術で用意したアイテムだけじゃなく、チート由来のアイテムも少しだけ渡した。

 呪腕先生にも念のため控えてもらっているし、問題なく上手くやってくれるだろう。

 

 ――――来たか。

 しかし、俺があの山門でアーサー王を迎え撃つ立場になるとは、なかなか面白い。

 

「貴方は、あの時の――――!」

 

「また会ったな。ごらんの通り今回は君の足を止めさせてもらう役割、と言うわけだ」

 

 強化魔術を発動し、事前にかけておいてもらったメディアのバフと重ね合わせる。

 ヘラクレス戦を経て、効率がさらに上がった感がある。

 これならアーサー王と戦ってもそうそう後れは取らないだろう。

 

「貴方とは一度ゆっくりと話をしたかったが、今は……そこをどいてもらう!」

 

 アーサー王は問答を最小限に、魔力放出を惜しみなく活用して砲弾のように突撃してくる。

 聖剣こそ解放しないようだが、最初から本気で来るか。

 まあ、ヘラクレスとの闘いは見られていた訳だし、当然だな。

 普通なら、風王結界によって隠された刀身の見切りに苦労するんだろうが、クー・フーリンとヘラクレスとの戦いで情報は収集済みだ。

 

 視界に直接データを投影するチート由来のアイテムによって、解析で得た刀身の形を表示させる。

 こうして見えていれば、問題はない。

 剣の腹に拳を合わせて弾いた。

 さらに斬撃が重ねられるが、そのことごとくを撃ち落とした。

 

「ヘラクレスとの戦いで使っていた大剣の扱いも十分な技量だったというのに、まさか、貴方、徒手の方が本領だったのか!?」

 

 おっと、そう見えたか。

 まあ、ヘラクレスの時のような過度に巨大な大剣よりは得意ではあるが。

 

「まことにすまないが、スタイルとしては三番目くらいだ。とはいえ、程よい武器がなくてな。現状なら、これが俺にとって最も適した戦闘スタイルと言って良い」

 

 愕然とするアーサー王にちょっと楽しくなってしまう。

 まあ、実際にはどんな戦闘スタイルでも格闘は混ぜ込むので厳密には三番目と言うのは違うかもしれないが。

 

「だから正直、君のように自分に合った専用の武器がちゃんと手元にあるのは少し羨ましい」

 

 一番目のスタイルはぶっちゃけ通常空間、特に市街地などでは絶対に取れない戦闘スタイルなので横に置くとして。

 生身の時用に二番目のスタイルに関係する得意武器を用意しようと努力しているんだが、徒手以上の戦闘力を発揮できるような納得のいく出来のものが中々作り出せない。

 

「それは、その、残念ですね?」

 

 チートの方のクラフト能力で作ろうとすると、ある意味とてもお出しできないものが出来上がるから、もっと錬金術の腕を上げなければならないだろう。

 しかし何か、羨ましく思う気持ちが思った以上に言葉にこもってしまったようで、アーサー王を戸惑わせてしまったようである。

 時間稼ぎにはなっているから、まあよし!

 

「まさか、時間稼ぎ?」

 

 内心が態度に出ていたのか、アーサー王がはっとした顔をする。

 だがしかし、それは邪推である。

 

「時間は稼ぎたいが、言ったことは完全に本音だ」

 

 アーサー王が今度は困ったような顔になった。

 

「どうも調子が狂う。貴方のような相手はあまり記憶にない。そもそも、何故敵意を向けてこないのです?」

 

 あ、これ本気で困惑してるな?

 雰囲気が完全に戦闘時のものじゃなくなったぞ。

 これは少し悪いことをしたか。

 別に困惑させたいわけではないんだが。

 

「状況ゆえに対峙はしているが、別に憎いわけではないからな」

 

「士郎は無事なのですね?」

 

 あ、ヤバい。

 流石、直感のスキル持ち。

 あれは基本戦闘向けのモノっぽいが、そこを抜きにしてもアーサー王は明らかに勘が良いタイプだからな。

 こんな会話だけで、現状は士郎君に害意がないのがばれたか。

 

「無傷とはいかないだろうがな」

 

 確信している顔だったので、仕方なく認める。

 もう少し直接の手合わせで実感として力を測っておきたかったんだが、完全に戦闘をする空気ではなくなってしまった。

 まあ、このあと英霊エミヤともうひと勝負あるだろうから、ちょうど良いと言えばちょうど良いか。

 

「いったい何が目的なのです?」

 

「今回の件で言うなら、威力偵察とマスターの人格や目的の把握と言ったところだ」

 

 まあ、一番は士郎君に経験値を与える事だが。

 

「聖杯戦争に参加した目的は?」

 

 ずいぶん踏み込んでくるな。

 思ったより彼女の願いに言及したことが効いているのかもしれない。

 

「しいて言うなら、人類の存続だ」

 

「そ、れは……」

 

 その反応は、前回の聖杯戦争の時のアーサー王のマスターである衛宮切嗣の願いと似た願いに思えたからだろうか。

 だが、それは間違いだし、何よりも願いの内容以前に俺と彼では大きな違いがある。

 

「勘違いするな。聖杯にその願いをかけるわけじゃない。聖杯によって、それが脅かされないようにするためだ。俺はこの手の超常の力に頼って何かを叶えようとは思わない」

 

 そもそも、願いが何でも叶うアイテムとか、この聖杯のように欠陥を抱えていなくても胡散臭くてかなわない。

 そこを抜きにしてもだ。

 

「俺は願いをかなえるのであれば、自らの手の届く範囲で、自分の力で叶えられる限度まで。そして必ず自分の手でと決めている。それが、譲る気のない俺の流儀だ」

 

 大きすぎる力を持ってしまったからこその、自分なりの生き方のコツと言うか。

 まあ、誰かに力を貸してもらって背伸びをすることは多々あるが。

 今なんか、だいぶメディアに助けられている。

 俺の言葉を聞いたアーサー王は深く目を閉じて、何かを考えているようだった。

 目を開いて、何かを口にしようとした時、士郎君が山門から現れた。

 

 斬りかかってくるアーチャーから辛くも逃れて、階段を転がり降りてくる。

 アーサー王が駆け寄っていこうとするのを手で制して、回復薬を渡した。

 

「君が傍にいればそのうちに回復するだろうが、使ってやれ。痛みは長引かないに越したことはないだろう?」

 

「感謝します!」

 

 アーサー王が士郎君を助け起こし薬を飲ませるのを横目に、なおも士郎君を襲おうとする英霊エミヤを迎撃する。

 

「邪魔をするか、魔術師!」

 

「するとも。弓使い」

 

 エミヤの双剣を拳で弾き、腹に前蹴りを叩き込む。

 浅いか。

 後ろに飛んで威力を減じたな?

 だが距離は出来た。

 

「その少年を連れて退くと良い。彼の相手は俺がつとめよう」

 

 階段を下った先を指さしてアーサー王へ促す。

 

「いつか、ゆっくり話す機会は得られるでしょうか?」

 

 思わず目を丸くした。

 本当に思った以上に、俺の言葉が効いていたんだな。

 

「しばらくは対峙するしかないだろう。だが、聖杯戦争が決着する頃にお互いに無事であれば」

 

 その時には、ゆっくり話す機会も持てるかもしれない。

 

「……勝ち残らなければいけない理由が増えてしまいましたね」

 

 呟いてから、俺に深く頭を下げて士郎君を連れて離れていく。

 俺が睨みをきかせていたのでエミヤは二人に手を出せなかった。

 俺をどかそうと再び切りかかってくるが、再び双剣を拳で迎撃する。

 俺の強化とメディアのバフで強化された拳は、剣を弾くたびに金属質な音を響かせ、魔力がスパークを起こす。

 

「化け物め、それで本当に人間なのか!?」

 

 失敬だな。

 

「どこぞの槍使いにも言ったが、生物学的にはきっちりと人間だとも」

 

 うん、言ったら悪いが、ヘラクレスやアーサー王に比べたらだいぶ楽だな。

 ヘラクレスほどの圧倒的な膂力もないし、アーサー王のような魔力放出によるブーストもない。

 まあ、彼の本領は今使っている剣術でも弓兵としての弓術でもなくて、それらを土台にしつつ固有結界を併用したその先にこそあるのだから、あたりまえだが。

 アーサー王も士郎君もすっかり姿が見えなくなった頃合いだった。

 

「キャスターの言っていた言葉、どこまで本気だ」

 

 打ち合いながら、エミヤが問いを投げてきた。

 

「どこまでも本気だとも。こちらが出す条件を飲むのであれば、君の願いを叶えるための舞台を万難を排して用意しよう」

 

 俺の答えを聞いたエミヤは、最後に一度強めの一撃を放って距離を取った。

 当然のごとくその攻撃をはじき返して、しかし距離を取ることは見逃す。

 

「その条件とは?」

 

「大まかには二つ。大聖杯の中の呪いがあふれる事を防ぐのに協力しろ。そして、衛宮士郎を殺すのであるならば、必ずその心を完全に折ってからにすると誓え」

 

「条件を飲まずに行動に移したら?」

 

 そりゃ当然。

 

「邪魔をするに決まっているだろう?」

 

 苦虫を噛み潰したような顔をするエミヤを仮面の下で笑う。

 

「まあ、すぐに決める必要はない。精々、考える事だな」

 

 後者の条件の難しさを誰よりも知っている彼にとって、きっと悩ましい条件である。

 実際、その条件下で戦わせられるなら衛宮士郎の死はまずありえない。

 だが同時に、可能ならそうしてから殺したいというのもエミヤにとっては本音のはずだ。 

 

「食えない男だ。それで、そろそろ通してもらえるのか?」

 

 もう今日は士郎君を襲うつもりもなさそうだし、良いだろう。

 階段の脇に避けて意思を示した。

 警戒しつつ、俺の横を通ってエミヤは去って行った。

 とりあえず、これで今日の目的は果たしきったと考えて良いだろう。

 

(そちらは無事か、メディア?)

 

 大丈夫だとは思うが、念話で確認を取った。

 

(ええ、傷一つないわ。貴方は?)

 

 ヘラクレス戦とは違ってダメージらしいダメージは無い。

 セイバーとは結局、俺が空気を緩くしてしまったせいで数合の勝負。

 エミヤとはそれなりにやり合ったが、あくまで双剣のみだったからな。

 まあそれでも、ヘラクレス以外の英霊というものはそれなりに体感できた。

 

(こちらも無事だ。傷一つない)

 

 これなら表向きは引き分けでも、実質は勝利と言って良いだろう。

 目的はほぼ達成だ。

 さて、次はどうすべきかな。

 しっかりと、着実に、詰めていくとしよう。

 

 

 

 





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小話

意訳→聖杯の泥の問題を解決するのを手伝って、ついでに士郎君の経験値になってよ☆

衛宮士郎が英霊エミヤ相手であれば意地で、死んでも折れないこと。
その衛宮士郎を見て、英霊エミヤが答えを得ること。
それらを知っている主人公からすると、殺害に際して心を折ることを条件に盛り込めば、おおむね勝ち確。
結論。
ひどい詐欺。


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