Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

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第27話   俺と遠坂凜と衛宮士郎

 

 目の前で、メドゥーサの発動した結界が発動と同時に解けていく。

 流石はメディア。

 言っていた通り、完璧な仕事だ。

 

 しかも、結界を解くだけでなく、アフターケアも万全である。

 下手に動いて今起きている事態に巻き込まれないように、校舎内の生徒たちが眠りについていく。

 どう考えても今の状況で意識がある方が危ういから、そのように仕掛けてもらったのだ。

 

 一応、眠りにつく前に猶予があるから階段から転げたりはしないはずだが、確認はしていくか。

 校舎を巡り、生徒たちの状態を見て回った。

 見る限りでは問題なさそうだな。

 

「————髑髏仮面!?」

 

 なんだその、怪人か何かみたいな呼び名。

 俺を見て叫び声を上げたのは、上の階から降りてきた遠坂嬢である。

 横には士郎君をともなっている。

 

「結界を破ったうえで生徒たちを昏倒させたのは、あんたのサーヴァントの仕業?」

 

 ガンドをいつでも打てるようにこちらに指を向けたまま問う彼女に、軽く頷いた。

 

「いかにも、その通りだが。これについては感謝されこそすれ、文句を言われる筋合いはないと思うがな」

 

 何故にそんなに敵意バリバリなのか。

 ああ、いや、違うな。

 これは恐怖か。

 うん、まあ、今はアーチャーが傍にいないようだし、上の方から聞こえる音的にアーサー王はメドゥーサと戦闘中。

 ヘラクレスと渡り合うような相手と向き合うなら虚勢でも張らなければやっていられないというわけだな。

 

「そう怯えるな。別に今ここで君たちとやり合うつもりは……」

 

 いや、まてよ?

 今のタイミングなら邪魔が入りにくいし、士郎君をちょっと追い込んで鍛えるのはアリだな?

 

「よし、気が変わった。少しばかり相手になってもらおう」

 

「なんでさ!? 今の1秒無いような時間でどんな心変わりだよ!?」

 

 中々の突っ込み。

 何気に士郎君は突っ込み体質を持っているよなあ。

 結構ボケもこなすけど。

 

「前回はキャスターに任せて、君とは直接的にはやり合えていないからな。まあ、痛い目を見たくなければ頑張って抗ってみる事だ」

 

 一息に懐に飛び込み、手加減して拳を振るう。

 士郎君は何とか反応して、強化を施したモップの柄で攻撃を受けるが、容易くへし折れた。

 なお俺は強化の類は一切使っていない。

 

「脆い。話にならない練度だな。見るにそもそもの話、君の本領はそこにはあるまい」

 

 軽く撫でる程度のつもりで蹴りを入れたら、だいぶ派手に士郎君は吹っ飛んだ。

 

「衛宮君!? この!」

 

 遠坂嬢がガンドを撃ってくるが軽くかわす。

 

「判断が甘い。俺の戦闘力はサーヴァントたちから聞いているはずだ。何故、初手に全力を持ってこない。俺が本気であれば、すでに死んでいたぞ」

 

 額に軽くデコピンをお見舞いする。

 頭が少しぶれて、ふらつき、数歩フラフラと後ずさってから額を両手で押さえてうずくまった。

 

「いったあぁい!? ナニコレ、どういう威力!?」

 

 お、立ち直った士郎君が再び向かってきたな。

 なんというか、頑丈と言うか我慢強いというか。

 真っ二つになったモップの柄を、エミヤを真似して双剣のように扱って向かってくるが、だからそれじゃダメなんだよ。

 容易くモップを拳で粉砕して言葉をかける。

 

「何度も同じことを言わせるな。君の魔術の本領はそこじゃない。自分でも薄々、感覚的には気付いているだろう?」

 

 俺の言葉に、士郎君が目を見張った。

 

「俺の、魔術の本領……?」

 

「その心に、ずっと居座っているものがあるだろう? 出来るはずがないなどと己に枷を嵌めずに、手を伸ばしてみろ。魔術とは言うなれば、そうした出来ないはずの事に手を伸ばすためのものなのだから」

 

 おっと、士郎君の雰囲気が変わったな。

 はたから見てもわかる集中力。

 

「衛宮君?」

 

 遠坂嬢が士郎君を見て目を見開く。

 魔力がほとばしって、彼の両手に収束していく。

俺たちの見ている前で士郎君は、不完全ではあるが投影魔術を成功させてみせた。

 

「さて、では採点だ」

 

 今度は拳だけには強化魔術を纏って強度を高めて迎撃する。

 最初の双剣は一合で砕けた。

 再び投影を行う士郎君を待ち、また打ち合う。

 

 今度は二合もった。

 その次は三合。

 だが、そこで限界が来た。

 魔術回路の酷使に体が悲鳴を上げたのだろう。

 士郎君が痛みに呻いて膝をついた。

 

「まだまだではあるが、まあ、初めてにしては上出来か」

 

 恐らく魔術回路が不具合を起こすだろうが、そこはエミヤに任せて良いはずだ。

 

「あなた、どういうつもりなの?」

 

 遠坂嬢がとりあえず士郎君に対する諸々は飲み込んで、俺に聞いてきた。

 

「あまりに不格好だったからな。少しばかり教示したまでだ。……上も片付いたな」

 

 戦闘音が止んだ。

 最後にひと際に大きな音と振動が響いたから、メドゥーサが宝具を使ったんだろう。

 なるほど、メドゥーサが葛木に殺されずに生き残っていると、このあたりはFateルートの流れになる訳か。

 

「念のために弁解しておくが、生徒たちは安全のために眠らせただけだ。魔術の隠匿の問題もあるしな」

 

 遠坂嬢は俺の主張に口をつぐんだ。

 まあ、こんな時間にこんな場所で戦闘に及んだことを、たしなめられた様に感じたんだろう。

 別にそんなつもりはないんだけどな。

 

 しかし、思い付きの行動にしては望外の結果になった。

 まさかこの時点で、投影魔術に成功するとは。

 メドゥーサの結界による被害も防げたし、言う事なしだ。

 だが、Fateルートの流れにメドゥーサが乗ったならば、あちらには一つ仕掛けが必要だな。

 

「さて、用件は済んだ。失礼させてもらう」

 

 魔術回路の異常で座り込んでしまっている士郎君と、それに肩を貸す遠坂嬢に背を向けた。

 

(メディア、メドゥーサの行く先は追えているか?)

 

(ええ、きっちりと。尾行を避けるためか一度、間桐邸とは違う方向へ向かって潜伏しているようね)

 

 ちょうどいいな。

 その潜伏先で少し話をするとしよう。

 

 

 

 

 校舎を後にしてしばし。

 メドゥーサの潜伏している郊外の森にたどり着いた。

 途中でワカメ君とは別れたのか、都合よく一人だ。

 

「貴方ですか」

 

 あえて気づかせるつもりで近づいた俺に、メドゥーサが振り返った。

 

「少し話をしても?」

 

「構いませんよ。貴方には大きな借りがありますから」

 

 素直で助かるな。

 妖怪爺の件は俺が好きでやった事だし、相手にしてもどちらかと言えば貸しの押しつけの部類だと思っていたんだが、メドゥーサの根の生真面目さの部分に助けられたか。

 では単刀直入に本題といこう。

 

「このままだと、君はセイバーと戦い敗れる事になるだろう」

 

 容赦なく、少し先に訪れるであろう彼女の未来を口にする。

 彼女としても予感があったのか、俺の言葉を否定はしなかった。

 彼女の性格的に、自分が消えたほうが桜の為だと思っている部分もあるかもしれない。

 思わずため息がこぼれる。

 

「君はもう少し、自分の価値を認められるようになった方が良いと思うがな」

 

 俺の言葉に、戸惑うメドゥーサ。

 まあ、自分を厭うのもメドゥーサと言う英霊の成り立ちを考えると仕方のない部分もあるけどな。

 

「今しばし、間桐桜には君が必要だ。君としても、彼女を見守り続けることは本意だろう?」

 

 言って、メディアと俺の合作である形代を投げ渡した。

 

「それを持っていれば、一度だけ死を偽ることができる。しかも、形代に込められた魔力が発動と同時に聖杯に送られて、サーヴァントの敗退をも偽装できる優れものだ」

 

 メドゥーサが息をのんだ。

 まあ、だいぶ無法な性能をしているからな。

 俺が魔術世界に足を踏み入れてから手に入れた素材と、メディアの魔術師としての技量、そして聖杯の核の解析結果という数々の要因があって初めて製作が可能になったアイテムである。

 

「なぜ――――」

 

「できれば、サーヴァントは温存しておきたいというのが一つ。多くの参加者が考えているよりも、この聖杯戦争は闇が深いからな。……やるべきことが済んだなら、間桐桜の傍にいてやれ」

 

 他の理由までは、敢えて口にしなかった。

 

 

 

 





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小話

主人公 「オリチャー発動! なんか士郎君の成長を促せそうな絶好の機会!」

オリチャーが珍しく悪さをしなかったケース。
いやオリチャーって多分、もともとはRTAのリカバリーとかアドリブに対して使われていた感じだから、オリチャー=悪い(もしくは愉快な)ことになる、と言うのは偏見なんですけど。

……偏見デスヨネ?


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