Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

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第28話   英霊と言う存在とその力

 

 俺は今、はくのんと一緒にアーサー王とメドゥーサの戦闘を観戦していた。

 いや、まさか学校での一件の後すぐ、その日の夜に仕掛けるとは思わなかったぞ。

 でも、よくよく考えてみると、あの時に俺と士郎君たちが遭遇したってことは、あの二人というか、主には遠坂嬢なんだろうが、ワカメ君を恐らくほぼガン無視したってことだからなあ。

 

 うん、そりゃ今のワカメ君の性格ならこういう事になっても不思議はないよね。

 しかし、俺が言うのもなんだけど、英霊って存在はつくづくいかれている。

 なんでビルの壁面駆け上がりながら戦闘できるんだよ。

 

「分かってはいたつもりなんですけど、こうして見るとあらためて英霊ってとんでもない存在だなって感じますね」

  

 まあ、今の俺ならできるけど。

 何なら、プリズマ☆イリヤ世界線の美遊ちゃんみたいに、足元に結界張るような形で空中戦余裕だけど。

 美遊ちゃんも言っていたが、魔術によって空中で行動しようと思うとあの方式が一番コスパが良い。

 特に俺の肉体の運動性能なら、下手に魔術に頼るより足場だけ作って体動かしたほうが機動力上になるし。

 

 パワードスーツ?

 あれはそもそも、重力制御やらサイズから考えられない出力のバーニアやらついているからノーカンである。

 アレは空中戦と言うか、宇宙戦も考慮された仕様だから。

 

「今回、白野を連れてきたのは正にそれを見てもらうためだ。基本的に今次聖杯戦争で前線に立ってもらうような機会はほとんどないと思うが」

 

 イリヤの前に出てもらった時だって、サーヴァントを二人つけたうえで周辺には敵性サーヴァントがいない前提の話だったしな。

 過保護?

 なんとでも言って欲しい。

 

 彼女が別世界線でどういう存在であったか知っている者だけが俺に石を投げなさい。

 俺は俺以外の人間が同じ行動をしていても石はとても投げられないけどな。

 むしろ安全をなるべく確保していたとはいえ、イリヤの前に出したことを責めるかもしれない。

 

「白野には英霊と言うものがどれだけでたらめか、それをしっかり知っておいてほしかった。特に今回はどちらも本気。恐らくだが、アサシンの対個人用のものとはまた別の宝具を見る機会があるだろう」

 

 呪腕先生の宝具も十分以上に凄いんだけど、その凄さは見た目にはわかりにくいからな。

 逆に今回の二人の宝具は、どちらも見た目にわかりやすく強烈だ。

 

「神薙さんって、過保護ですよね」

 

 って、君が言うのかよ!?

 いや、はくのんの性格からすれば、ある意味納得感はあるけど。

 ずっと不満そうだったもんなあ。

 事情を知らずに客観的に見れば、俺にだけ負担をかけている様に見えるもんな。

 

「そうして扱ってもらえるうちは甘えておけ。あまり脅かしたくはないが、君は聖杯戦争などと言う魔術師から見てさえ眉唾ものの、神秘に満ちた儀式に関わった。しかも英霊を従えた経験を得てしまった、魔術師としての素養を持った人間だ」

 

 横にいるはくのんの頭を撫でながら話す。

 最初は、子供のころから妹みたいに世話を見ていたカレンにそうしていた癖でついやってしまって焦ったんだが、なんか満更でもない反応が返ってきて常習化した。

 変な下心は無いというか、いっそ下心だったほうが良かったというか。

 

 この世界線のはくのん、孤児だからなあ。

 この子の心の強さは知っているが、それでもなんて言うか頭を撫でられるなんて言う普通の子供だったらいくらでも得られるような経験が、満足に得られていなかったであろうことが透けて見えるのはちょっと心にくるものがある。

 

 この子は俺が護らねば。

 いや、ホント、あらゆる意味で放っておくわけにいかない。

 別世界線の事も、本人の生い立ち的にも、そして今回の一件である。

 

「本当なら、君をあたりまえだった日常の中に帰してやりたい。だが、出来て時間稼ぎくらいだ。君自身の安全を考えれば魔術師として最低限、自衛できる手段と実力は手にしなければならないだろう」

 

 彼女の運命力みたいなものを考えると最低限じゃ多分足りないんだが、彼女が魔術師として育つまでそこはなるべく俺がフォローするしかない。

 おそらく立場は、俺の弟子ってあたりが落としどころになると思う。

 

 教育は主にはエルメロイ教室に所属させて、二世にお願いすることになるだろう。

 魔術師の才能を育てるという事については、やっぱり二世は別格だ。

 高校卒業くらいまでは普通の生活を続けられるように出来るから、彼女の選択次第では先の話になるけどな。

 

「そんな申し訳なさそうな顔しないでください。私は十分に助けられてますし、護られていますから」

 

 だからこそもっと貴方を助けたいのだと目が言っているのだが、まことにすまない。

 まだちょっと、過保護はやめられないかな。

 

「最初に、傍にいる限りは五体満足で生き残らせてみせると約束してしまったからな」

 

 肩を竦めて言えば、はくのんはじっとりした目を向けてくるが、少しして諦めた。

 観戦していたセイバーたちの戦闘に、変化が見えたからだ。

 ビルの壁面を登り切ったところで、自身の機動力による有利を失ったメドゥーサが切り札の宝具を使った。

 

 これだけ離れていても、肌に伝わる魔力の高まり。

 血によって描かれた魔法陣から現れる、純白の天馬ペガサス。

 そしてそのペガサスにかけられる、あの手綱こそがメドゥーサの宝具だ。

 

 騎英の手綱(ベルレフォーン)と言う真名のそれは、幻想種すら御してさらにはその能力を向上させる宝具。

 メドゥーサは自分の伝説と関わり深いペガサスを召喚してこの宝具を併用することで、非常に高い機動力と対軍すら可能な攻撃力を両立させる。

 普通であれば、対処の難しい非常に強力な宝具と言って良いんだが。

 

「————アレが」

 

 俺からアーサー王の正体についてすでに教えられているはくのんが息をのんで見つめるのは、メドゥーサのペガサスではなく、解放されたアーサー王の手の中の剣であった。

 風王結界が解かれ、まばゆい光を発する聖剣が開帳される。

 

「そうだ。聖剣というカテゴリーにおける頂点。星によって鍛えられた最強の幻想。あれこそがアーサー王伝説に語られる約束された勝利の剣、エクスカリバーだ」

 

 俺達の見守る先で、ついにその光は放たれた。

 光に飲まれて行くメドゥーサだが、俺達の角度からそして俺の動体視力だからこそ、直撃のほんの一瞬前にペガサスがギリギリで送還されたのが見えた。

 ペガサスが巻き込まれることを嫌ったか。

 形代の効果はそこまで及ばないからな。

 

「大丈夫よマスター。形代はちゃんと効力を発揮したわ。今頃、メドゥーサは本当のマスターの所に戻されているでしょう」

 

「そうか。大丈夫だとはわかっていたが、確証が得られてほっとした。ありがとう、メディア」

 

 これで表向きはライダーが最初の脱落者、という事になるな。

 

「しかし、流石は音に聞こえし伝説の聖剣。恐ろしい威力ですな。メドゥーサ殿の宝具も恐るべきものでしたが、あれは別格と言うしかない」

 

 呪腕先生が感嘆とも畏怖ともとれる感情をにじませて言葉をこぼす。

 まあ、エクスカリバーは宝具の中でも間違いなくトップクラスのものだからなあ。

 単純な威力とか、神秘としての格であれと勝負になるのって、それこそギルガメッシュのエアとか草薙の剣みたいな神剣とか、本当に一握りなのである。

 

「よく覚えておけ、白野。あれが英霊という存在の持つ力だ。人の身では太刀打ちできない身体能力や技量もそうだが、ある意味でああした宝具こそが英霊の力の本質と言ってもいい。まあ、ちらほら人間側にも俺のような例外はいるんだが」

 

 だがそんな力や宝具を持っていても戦術次第で、度を越した例外ではない範囲の普通の例外の部類に殴り殺されたりもするっていうね。

 いや、型月世界がオカシイだけで、葛木を普通の範囲の例外と考えるのは感覚狂っているか?

 まったくもって聖杯戦争とか以前に、世界自体が魔境過ぎる。

 

「それでも、ちゃんと知って対策を取りさえすれば、太刀打ちが出来ないわけではない。これは魔術全般にも似たようなことが言える」

 

 この世界って、魔術とか神秘関連のルール的に結構相性ゲー的な側面があるからな。

 

「知ること、そしてそれをもとに考え続ける事。この世界で神秘と関わって生きていくならば、この2つがすべての基礎になる」

 

 俺の言葉に、はくのんは深く頷いた。

 

「その教え、絶対に忘れずに覚えておきます」

 

 

 

 





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小話

気になっている人がそこそこいそうなので軽く。
ネタバレと言うほどではないですが、バゼットさんの現状など。


話のテンポが悪くなりそうなのであえて触れずにいますが、バゼットさんは例の館でぐっすり中です。
一応、言峰が離れた後に隙を見て主人公が最低限の治療を済ませています。
(魔術で)寝かしつけたのはメディアさん。

彼女については聖杯戦争後のリザルトと次の章への接続を兼ねた幕間あたりで触れる事になるかと思います。


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