Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

30 / 118
第30話   俺とチートと英雄王とあと一人

 

「この(オレ)と対峙する理由が、子供の叫びが我慢ならないからと来たか! なるほど、確かに貴様は己で言う通りの雑種らしい雑種よ!」

 

 思ったよりご機嫌だな。

 聖杯の泥で受肉している今のギルガメッシュなら、もっとサクッと殺しにかかってくるかと思ったが。

 ヘラクレスとの戦いで少しテンションが上がっていたせいか?

 

「だが愚かだな。貴様は、我の力を知っているからこそ今まで徹底して我から逃れていたのであろう?」

 

 それはその通りだが意図を完全には読めていないように感じる、ということは、なるほど。

 ギルガメッシュの千里眼ですら俺の事は見えないという事か。

 俺への意外なほどの興味も、そのあたりが由来か。

 

「勝算自体はあった。だが、周囲の被害を抑える算段が付かなくてな」

 

「ほざいたな、雑種。ならばその力、示してみるがいい」

 

 まずは小手調べと言ったところなのだろう。

 数発のゲート・オブ・バビロンによる武具の投射が、こちらを襲った。

 後ろにまだ天の鎖に囚われたヘラクレスと、そのそばを離れないイリヤがいるため回避は出来ないが。

 舐めるなよ。

 この程度なら生身でも十分返せるとも。

 背後を守りながら、きっちりとすべての武具を弾き落とした。

 

「ほう、なるほど。確かに現代の人間とは思えぬ力だな。では、これならどうだ」

 

 先ほどに倍する武器の数。

 俺が突発的に戦闘を始めてしまったせいでメディアの結界は準備がまだ整っていない。

 だが、これは流石に生身のままでは無理か。

 そう思って、イーリアスを纏おうとした時だった。

 どこからともなく投射された武器が、ギルガメッシュの攻撃を撃ち落とした。

 

「貴様、贋作者(フェイカー)!?」

 

 忌々し気にギルガメッシュがその蔑称を口にした。

 気が付けば、視界の横にひるがえる赤い外套。

 俺の横に立った男は、その顔に皮肉気な笑みを浮かべている。

 

「君はもっと頭のいい男だと思っていたのだが、存外、馬鹿だったのだな」

 

 それは、なかなかの誉め言葉だな。

 

「実際の所、自分で自分の頭が良いと思ったことは一度もないんだ」

 

 俺がそう返せば、エミヤは軽く噴き出した。

 

「なるほど、少しだけ君という男がわかった気がするよ」

 

 しかし、まさかな。

 

「良いのか。勝算はあるが、危ない橋ではある。まだ、目的を果たせていないだろう?」

 

 ここで彼の助力を得られるとは思わなかった。

 

「あの少女には少しばかり思う所があってね」

 

 ああ、なるほど。

 イリヤの為か。

 勝算があるなら手を貸しても良いと思えるくらいには、思い入れがあるんだな。

 

「固有結界を。周囲を気にせず力を振るえるならば、勝率は大きく上がる」

 

 士郎君へのアドバイスの話でも聞いていたのか、彼の切り札を言い当てても驚きはなく、エミヤはただ頷いて返してきた。

 さあ、まずは時間稼ぎだ。

 詠唱を阻止しようとするギルガメッシュのゲート・オブ・バビロンでの攻撃を体を張ってでも阻止していく。

 完全に無傷とはいかず、四肢に傷が刻まれ、仮面は一部ひび割れたが、何とか防ぎ切った。

 

「……unlimited blade works!」

 

 詠唱が結ばれ、世界が塗り替わる。

 俺の意図を正しく汲み取ってくれたエミヤのおかげで、結界内には俺とエミヤとギルガメッシュだけだ。

 ならば!

 

「イーリアス、アクティベイト! 死角は任せた!」

 

 イーリアスを纏って強化魔術を重ねた。

 素の状態からは考えられないほどに出力の爆増したバーニアを吹かし、一直線にギルガメッシュ王へ突貫する。

 

「確かに任された! 君は前だけを見ていろ!」

 

 頼もしい請け合いに笑みがこぼれる。

 

「この我の宝物庫にもない装備だと!? 我の眼に映らぬことといい、貴様いったい――――!」

 

「そんな余計なことを考えている暇が、今のお前にあるのか、英雄王!」

 

 掃射されるゲート・オブ・バビロン。

 正面からくるものは、強化魔術によって装甲強度と威力の強化された拳でことごとく打ち落として、それ以外は無視した。

 俺の周囲で、次々にエミヤによって叩き落されていく武器の数々。

 

「おのれ!」

 

 珍しく、手ずから武器を取って俺と打ち合うギルガメッシュ。

 まあ、ゲート・オブ・バビロンからの攻撃はほとんどエミヤに撃ち落とされるから、選択肢があるまい。

 手を変え品を変え宝物庫の武器を振るうギルガメッシュは、思った以上に強かった。

 冷静になる前に詰め切りたいところだが、さて。

 

 先に動いたのはギルガメッシュの方だった。

 数えきれない程の武装をゲート・オブ・バビロンで展開して、エミヤの動きを封じにかかった。

 そして同時に、俺に対してもオールレンジでの攻撃を仕掛けてくる。

 

 死角は無視だ。

 エミヤは任されたと言った。

 前だけを見ていろとも。

 あの男は、こういう時に仕事を仕損じる男じゃない。

 

 正面からの攻撃だけを打ち落としていき、最後の一つは、フェイスヘルメットで受けた。

 強化魔術があってもフェイスヘルメットが一部砕け、わずかに額を傷つけられたがそれだけで済んだ。

 リスクを冒したのは、そうしなければ一手遅れるからだ。

 一歩さらに踏み込み、左手の内蔵兵装であるレーザーブレードを起動して、ギルガメッシュの右手を切り落とした。

 

 斬り飛ばされた手と共に飛んでいく、乖離剣エア。

 勝負を焦ったな、ギルガメッシュ。

 いや、このままだったなら徐々に削り殺すことになっていたから、ここが最後の賭け時だったか。

 エミヤの助力があった時点で、相性的には実質の嵌め殺しに近い形になったからな。

 

「ホロウ・ピアッサー、アクティベイト。終わりだ英雄王」

 

 聖杯の核の解析から得たデータによって、聖杯の泥に特効を持つ杭が生成される。

 右手に実体化したガントレット型の杭打機でギルガメッシュの心臓を穿った。

 打ち出された杭がギルガメッシュを受肉させた聖杯の泥を焼却し、そのままギルガメッシュの霊核をも砕く。

 

 強化魔術の影響を受けていたホロウ・ピアッサーの杭はそのままギルガメッシュを突き抜けて、固有結界の空間すら歪めて奔り、一瞬遅れで衝撃波が周辺を薙ぎ払った。

 衝撃波が収まると同時に、英雄王の霊体が解けていく。

 

「っは、我としたことが。本人そのものではないとはいえ、彼奴(あやつ)がべったりと懐いている男だという事実を軽く見過ぎたか」

 

 はくのんに気づいてたのかよ。

 どおりで、この状態の英雄王にしてはご機嫌度が高かったわけだ。

 そして、それがこの召喚における英雄王の最後の言葉となった。

 

「勝ったな」

 

「ああ、勝った。危うい綱渡りだったけどな」

 

 エミヤと一緒に深く息を吐いた。

 結果的には終始優位に勝ち切ったが、正直なところ被害を抑えて勝てる筋としては、この形が唯一の勝ち筋だったと言っても良かった。

 

「ところで、いつぞやの勧誘は、まだ有効かな?」

 

 ははあ、なかなか、転んでもただでは起きないな、君も。

 ギルガメッシュとの戦闘に巻き込まれた後にキッチリそう言う話を持ってくるとはね。

 

「ああ、有効だとも。君が条件を飲むのであれば、俺も約束は守ろう。今回の事で借りもできたからな」

 

 俺の言葉に、エミヤは頷いた。

 

「条件を飲もう。約束通り機会を用意してくれ」

 

 さて、では、どう転がすかな。

 

「結界を解いたら、まずはメディアの宝具で君と遠坂嬢の契約を解消させる。その後は遠坂嬢をさらって、人質に。士郎君はそれで釣れるだろう。アーサー王については、こちらで抑える。基本方針はこんなところでどうだ?」

 

 ギルガメッシュという最大の障害を排除できたこともあって、ちょっと楽しくなってきてしまった。

 良くないなあ。

 すっかり悪だくみが好きになってないか、俺。

 ライネスの悪癖が感染っている気がする。

 

「悪くないな。しかし、アーサー王は難敵だぞ?」

 

 まあ、普通ならそうなんだが。

 何とかなるだろう。

 

「それなりに考えはあるし、アーサー王には個人的な用もあるからな。どうにかするさ」

 

 話し合いで済めばベストなんだが、流石にそうはいかないだろうなあ。

 UBW世界線でも最初のうちは、二人の衝突を阻止しようとしていたしな。

 

「では、結界を解くぞ」

 

「ああ、了解した」

 

 固有結界が解け、城のロビーに俺たちが戻るとイリヤスフィールを筆頭にアーサー王、遠坂嬢、士郎君が待っていた。

 バーサーカーは回復のために霊体化でもさせているのだろうが、ホムンクルスの二人は城の片づけか?

 アーサー王が戦闘に参加せず残っていたのは、イリヤが敵対した場合に二人を守るためと言ったところか。

 

「勝ったのですか、あのアーチャーに」

 

 アーサー王が瞠目して言葉をこぼした。

 

「勝ったとも。見事なものだった」

 

 エミヤが持ち上げてくるが、ちょっとこっちを茶化してるなコレ?

 

(メディア、容赦なくブスッと行ってやれ)

 

(まあやるけど。なんというか、軽いわね)

 

 珍しく真面目に頑張って疲れたんだ。

 そんな時に揶揄ってくる奴にはそれなりの対処というものがある。

 メディアが姿を現して、エミヤがそちらに向きなおって、無抵抗にルールブレイカーを受けた。

 

「————アーチャー、あんたっ!?」

 

「悪いな、凛。君の下では私の願いは叶えられないんだ」

 

 カッコつけているが、アレはちょっと痛かった顔だ。

 俺にはわかる。

 

「イリヤスフィール。君はしばらくバーサーカーの回復に専念してくれ。この件が一段落付いたら、色々話さなければいけないことがある」

 

「わかったわ。……あと一応、お礼は言っておく。バーサーカーを助けてくれてありがとう」

 

 後ろの方でエミヤが元気に喚く遠坂嬢を担ぎ上げた。

 

「さて、衛宮士郎。お約束のセリフというやつだが、しっかり聞くと良い。遠坂嬢を返してほしくば、君一人で、という条件ではセイバーが納得しないだろうから、まあ、一緒で良いから指定の場所に来い。なるべく早い方が良いぞ?」

 

 あんまり遅れると、外道神父がどんな悪さ始めるか怪しいし。

 それにほら、遠坂嬢って活きが良いから、世話大変そう。

 

 

 





いつも閲覧していただきありがとうございます。
本日二度目の投稿、いかがでしたでしょうか。

改めて、お気に入り登録や評価、感想と誤字報告に感謝を申し上げます。


今話で主人公にとっての冬木聖杯戦争における最大の障害を越え、そろそろ、デスマーチNo.0の終わりが見えてまいりました。
このエピソードも凄く楽しく書いているんですが、ああ、早くNo.1も書きたい……!
この世界の厄ネタ度合いを暴露したい……!

ええ、ですが我慢です。
まずはキッチリと、このエピソードを仕上げなくては。

そんな感じに、これからも頑張っていきますので、良ければこれからも応援よろしくお願いします!



小話

エミヤは変身姿も行いも、あんまりにもヒーローすぎる主人公にウッキウキのノリノリだぞ!
今夜はお前と俺でダブルラ〇ダーだからな、ってあれである。

きっと戦闘時のBGMがあるとしたら、SF装備な主人公も同時にイメージしたテクノ調の機械音とかがバリバリのアレンジ版エミヤ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。