Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

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第32話   俺とアーサー王と雲上の決闘

 

「来たわよ、マスター。堂々と正面から」

 

 なるほど、小細工の類は無しか。

 まあ、そんな気はしていたけどな。

 廃墟に続く道の先から、士郎君とアーサー王がやってきたのが俺にも見えた。

 こちらも堂々と姿をさらしたまま、二人がやってくるのを待つ。

 

「よく来たな」

 

「あんた、その顔は……!」

 

 俺の顔を見た士郎君が驚いたのを見て軽く笑う。

 そう、今の俺は仮面をつけていない。

 今となっては、素性を隠す理由も薄いからな。

 聖杯戦争に参加するようなことがなければ暗躍だけして素性は隠したままにした。

 

 参加後も、ネームバリューで無駄に警戒されたりしないように顔を隠した。

 でも今の状況なら、むしろ顔を晒して、聖杯戦争の最終勝者として立ったほうが後始末の助けになる。

 それに。

 

「まあ、ご覧の通りの顔だからな。戦闘中に顔が露見して、その隙をつく様な形になっては気が咎めるだろう?」

 

 俺の顔に士郎君以上の衝撃を受けていたアーサー王が、声を上げた。

 

「何故です!? 貴方は、このようなことに力を貸すような人とは思えない!」

 

 遠坂嬢の反応がアレだった時点で予想していたが、やっぱりこっちもか。

 士郎君とエミヤ、二人への理解が追い付いていない。

 いや、アーサー王の場合、少なからず俺の方に興味が流れていたのもありそうだ。

 となると、これは完全に俺の所為だな。

 

「それなりの事情があってのことだ。結果を見れば納得してもらえる自信はあるが、まあ、今の時点では無理そうだな。ちょうどいいと言えば、ちょうどいいが」

 

「ちょうどいい?」

 

「俺には君と戦わなければいけない理由があってね」

 

「————それは、私の願いと関係が」

 

 おっと、アーサー王の顔色が悪く。

 そうか、この顔でこの物言いは、彼女としてはそう考えてしまうのも仕方がないな。

 

「すまない、そんな顔をさせるつもりはなかった。勘違いしないでくれ。戦わねばならない理由は、君の願いとは無関係だ。言っただろう? 願いはどこまで行っても個人のものだと」

 

 顔色は良くなったが、悩まし気で、少し悲しそうな顔だな。

 

「事情を教えてもらうわけにはいかないのですか?」

 

「戦いの後にであれば。その時には望むなら、君の願いについての話もゆっくりとできるだろう」

 

 事情を知って、変に遠慮をされては困る。

 

「望むのならば騎士らしく、剣をもって勝ち取れ」

 

 ひどく悩んでいるな。

 まあ、受けたいが、士郎君を放っては置けない、といったところか。

 

「セイバー、大丈夫だ。俺の方は何とかする。もともと、アーチャーとは俺が決着をつけなくちゃいけないと思っていたんだ」

 

 アーサー王は、士郎君の顔を見て、そして、俺の顔を見た。

 目を閉じて、少しの間考え、目を開いた。

 

「すみません、士郎。私は……」

 

「良いんだ。セイバーにはずっと助けられていたからな。俺の方も、たまにはお願いを聞かないとだろ?」

 

 話はついたみたいだな。

 

「では、士郎君。君は進むと良い。この先に、君が向き合うべき相手が待っている」

 

 道の先を指して、促した。

 

「ああ、わかった。……なあ、聖杯戦争が終わったら、俺もあんたと話せるかな?」

 

「そういう機会もきっとあるだろうさ」

 

「そうか。楽しみにしとくよ」

 

 士郎君が横を走り抜けていく。

 これで彼の方は良い。

 あとは、なるべくして、なるだろう。

 

「さて、こちらはこちらで始めるわけだが。まずはその魔力不足を解決する必要があるな」

 

 アーサー王と向き合い、その事実を指摘した。

 気づかれていたことに驚きはなく、苦笑が返ってきた。

 

「貴方であれば、お見通しでしょうね。しかし、解決というのは?」

 

「君が俺を信じてくれるのならば、俺とパスをつなげよう。そこまでは信用できないというのならば……」

 

「いえ、それで構いません」

 

 信用し過ぎでは?

 まあ、好都合ではあるから、突っ込みはしないけど。

 

「キャスター、頼む」

 

 心得た様子で、メディアが魔術を用いて、俺とセイバーの間にパスを構築する。

 俺から供給される魔力の量にアーサー王が目を見張った。

 

「凄まじい魔力ですね。しかし、貴方は戦う相手に魔力を供給するような真似をして大丈夫なのですか?」

 

「それなりに備えはしてあるから、この一戦くらいであれば何の問題もない」

 

 軽く請け負ってから、ダンスに誘いでもするかのようにアーサー王に手を差し伸べた。

 

「お互い気兼ねなく戦えるように場所を変えたいと思うが?」

 

「私としても望むところです」

 

 差し伸べられたその手に、アーサー王もまた自身の手を重ねた。

 俺の肩にメディアが手を置いて、転移が発動する。

 一瞬の暗転の後、俺達は遥か上空にいた。

 

 足元には、半透明の足場がある。

 足場のずっと下には雲海が広がっていた。

 強い風が吹きぬけ、遮るもののない太陽が照り付ける。

 高度的に航空機なども存在せず、視覚的にはメディアが偽装してくれる。

 俺もアーサー王も、文句なしに全力で戦える最高のフィールドと言って良い。

 

「イーリアス、アクティベイト」

 

 イーリアスを纏い、そしてもう一つ。

 

「『エクスカリバー』、アクティベイト」

 

 ただでさえ著名な、ゲーム等ではよく使われるこの名前。

 当然というか、あの運営がこの名前の武器を実装しないわけがない。

 強化しきればストーリーの最後まで使っていけるかなりの強武器として、存在していた。

 

 そして、一見して柄だけに見えるこの武器は、ビームガンの性質とビームソードの性質を併せ持つ、俺が最も得意とする、ガンブレイドカテゴリーの武器でもある。

 厳密には刀型の刀身のタイプが一番得意なんだが、今は、コレを使う事にこそ意味がある。

 

「貴方は本当に私を驚かせますね。その武器から感じる強い力。名前倒れというわけでもないらしい」

 

 俺がイーリアスを纏った時から驚愕の表情を浮かべていたアーサー王は、いっそ愉快になってきてしまったようで、楽しそうに笑っていた。

 

「待たせたか?」

 

「いいえ、私としてもここまで来たなら、あなたの本気を見てみたかった」

 

 全力、とは到底言えないが、それでも本気であることは間違いないつもりだ。

 

「では、いざ」

 

 強化魔術を発動して、ビームの刀身を展開し、構えた。

 

「ええ、いざ」

 

 アーサー王が、風王結界を解いて、露わになったエクスカリバーを構えた。

 

「「勝負!」」

 

 メディアが距離を置いて見守る中、俺達の決闘が始まった。

 

 俺はバーニアを吹かして、アーサー王は魔力放出を用いて、お互いに一気に距離を詰めた。

 二つのエクスカリバーがぶつかり合って、そのたびに目がくらむような閃光が走る。

 

 俺が深く踏み込み力に訴えれば、アーサー王は受け流して距離を空けた。

 風王結界を用いた風の攻撃を、ガンモードの射撃で相殺する。

 お互いに攻撃を相殺し合いながら近づいていき、再び鍔迫り合った。

 

 今度はアーサー王の方が魔力放出を併用して押し込んできた。

 同じように受け流しては面白みがない。

 こちらのエクスカリバーの出力を高めて、力で対抗した。

 お互いに、弾き飛ばされて再び距離があく。

 

「なるほど、練度が違う。それが貴方の本当の得意武器ですか」

 

「ああ、戦闘スタイルとしては、二番目にはなるが。一番目は正直、殲滅戦向きのスタイルでな。人間サイズ相手の一対一であれば、これが間違いなく、俺の本気だ」

 

 俺は、この手にしたチートにおいて、ある意味で一番ヤバイのは戦闘経験値の反映だと思っている。

 スタイルとして三番目に挙げた格闘ですら英霊と渡り合える練度なのだ。

 それが最も愛用した、文字通り使用時間の桁数が軽く違う武器となれば、どういう事になるかというと。

 

「っ、速い!」

 

 慣れ親しんだ動きで、アーサー王の懐に入り込み武器を振るった。

 ああ、この世界に来てから初めて使ったが、やっぱり馴染むな。

 徐々にアーサー王の対応が遅れていく。

 俺の体が、戦い方を取り戻していくのと反比例するかのように。

 不利を悟ったアーサー王が、聖剣の力を使って光を放ち、強引に距離を離した。

 

「信じられない。これほどの技量、いまだかつて相手にした覚えがない。非常に悔しいですが、剣技で競えば、私の敗北は必至のようだ」

 

 うーん、めっちゃ悔しそう。

 流石の負けず嫌いだな。

 ちょっと、和んでしまう。

 

「ですが、戦いの勝敗はまだ決まっていない!」

 

 アーサー王の手に持つ聖剣が、まばゆい光を纏い始めた。

 ならば、こちらも受けて立とう。

 

「エクスカリバー、超過駆動。聖剣形成、対象出力測定。こちらの出力を合わせて相殺する」

 

『オーダー受諾。出力を対象と同期します。発動の為、音声鍵を』

 

 俺のエクスカリバーは、AI搭載の、いうなれば一種のインテリジェンスソードだ。

 そしてAIの音声は、察しの良い人間は気付いていそうだが、アーサー王と同じ声である。

 発動の準備が整い、後は求められた音声鍵を入力するのみ。

 タイミングを合わせて、そのキーワードを叫んだ。

 

「「エクス――――カリバー!!」」

 

 同時に放たれた光の奔流は、真正面からぶつかり合い拮抗し、最後には完全に相殺される。

 瞬間、俺とアーサー王との間にあったパスが、より確かなつながりとして作り直されたのがわかった。

 相殺された光が無害な光の粒となって、雪のように周囲に降りしきる。

 

「————髪が、貴方は、まさか」

 

 目に入る前髪だけでもわかる。

 多分、俺の髪は今、完全に金髪になっているのだろう。

 黒に染めていた部分も、良く分からない力で染め直されたっぽいな。

 

 だが、体の変化はそれくらいで、他に異常はなさそうだ。

 まあ、そんな気はしていた。

 ある意味、それくらい俺の体が元より異常であるという証明でもある。

 

「あちらの決着はついたみたいよ」

 

 戦闘が一段落付いたのを見てだろう、メディアが士郎君たちの方の決着を伝えてきた。

 そうか。

 それならこちらも目的は達したわけだし。

 

「勝負は引き分け、という事で良いか?」

 

「説明はしてもらえるのですね?」

 

 アーサー王……いや、もう内心でこう呼ぶ必要もないな。

 アルトリアが、どこか気遣わし気に言ってくるので、努めて明るい声で答えた。

 

「ああ、しっかりと説明しよう。まあ、そこまで大した話でもないんだ」

 

 ちょっとした、身代わりの魔術の仕上げのようなものなのだから。

 

 

 

 





いつも閲覧ありがとうございます。
お気に入り登録や評価、感想と誤字報告にも変わらぬ感謝を。


小話

メディアさんはちょっとの嫉妬とともに、こいつら斬り合ってるくせにイチャイチャしてるようにしか見えないな、と思いつつ観戦しています。
ほんのりアルゴノーツ時代を思い出したとか、思い出さなかったとか。



更にちょっとした小話

今回は、話のテンポ的に詳しくは入れ込めなかった部分の捕捉をオマケとして少々。


ガンブレイドはガンブレードの誤表記ではなく、主人公のプレイしていたゲームでの正表記です。

武器的には、某RPGのガンブレードより某MMOのガンスラッシュが近い武器種。
変形したりするタイプもあるので、サイズが普通である点を除けば一番近いのは某神喰の神機かも?


※これ以降は長めの、知らなくても何となくなら文中でわかる設定の詳細なので、そう言うのが好きな人以外は読み飛ばしても全然OKです。


さて、まず決闘時のアルトリアですが、主人公からのほぼ無尽蔵な魔力供給を受けて、かなり強化されています。
霊基の状態は通常の英霊としてのアルトリアの霊基の範囲では上限。
更に豊富な魔力から、魔力放出や風王結界を惜しみなく使えて、相性の良いセイバークラスでの現界。
結論を端的に言うと、生前のアルトリアに迫るスペックになっています。
強化状態のイーリアス装備の主人公と力負けせずに互角に渡り合えているのはその為です。

一方の主人公ですが、SFエクスカリバーが後期装備にしては弱く見えるのは、あれがビーム兵器の部類で、その出力をイーリアスの動力炉に依存しているためです。
作中の描写で大体お判りいただけるかと思いますが、強化状態イーリアスはおおむね英霊の最上位クラスと同等に近いポテンシャルを持っている装備で、出力上限も大体そのあたり。
結果として、SFエクスカリバーの出力もそこで頭打ちとなります。

あの威力なら、普段使いできないの? という疑問に対する答えは簡単で、真エクスカリバーと正面から切り合える見た目は柄が豪華なライトセイバーとか、エクスカリバーという名前のヤバさもあってとても普段は使う気になれない、という回答となります。
なおギルガメッシュ戦で使用しなかったのは、ギルガメッシュが慢心を捨てると困るから。

そして主人公の技量ですが、ガンブレイドを使った場合は対人では剣聖クラス。
格闘や他内臓兵装を併用すればさらに上乗せ(ただし現時点ではぶっつけ本番の為、武器一本で戦うのが限界)。
本領である対怪物戦においてはそれ以上、となります。

主人公はいわゆる廃人よりのプレイヤーで、長寿であったゲームのプレイ年数も考慮すると、途中離脱者が多かったこともあり、ダントツでの最長戦闘時間を誇ります。
ボスや雑魚狩り防衛、攻城など経験の幅も広く、日常的に大量の戦闘を行っていました。
これが現実に反映された結果、ヘラクレスやヤマトタケルの偉業に勝るような化け物退治を生涯毎日、日常的に長時間行っていたに等しいという、あたおか経験値が蓄積されています。

主人公がこれだけのチートを持ちながら、ある意味でそれ以上に戦闘経験値が反映されているのがヤバイ、と言ったのはこのためです。
主人公が割と平気でヘラクレスに喧嘩を吹っかけたりできるのは、この経験値が囁くから。

「これくらいふつーふつー。むしろ、一体だし、小型目標だし、楽な方だって」

お前、感覚おかしいよ?
とは、主人公の突っ込みか、作者自身の突っ込みか。

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