Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

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第34話   俺とマスター達

 

 アインツベルン城の一室。

 戦闘で荒れなかった部屋の中で、マスターたちへの情報共有の席としての茶会が開かれていた。

 参加者は、俺、はくのん、イリヤ、遠坂嬢、士郎君の五人である。

 霊体化が出来ないセイバーも特例的に参加している。

 桜については表向きにはマスターではないことになっているし、ワカメ君はギルガメッシュ襲撃の際に、ヘラクレスとの戦闘に巻き込まれて、軽傷を負って病院送り。

 

 うん、実はワカメ君、あの時いたんだよね。

 余裕がなくてほとんど意識していなかったけど。

 俺が手を出すまでもなく、軽傷程度で済んで穏当に脱落しているあたり、妙な運の良さがあるよな。

 

 言峰は当然いない。

 彼が、唯一残った敵性マスターという事になる。

 遠坂嬢はアーチャーとの契約を失っているため、厳密にはマスターではないのだが、冬木御三家の遠坂家当主としての参加という形だ。

 

 当然、話し合う内容は汚染された大聖杯についてになるのだが。

 席について全員に紅茶がいきわたって、開口一番にイリヤが口にしたのは、まったく別の話だった。

 

「ねえ、あの使い魔、一体譲ってくれない?」

 

 あの使い魔というのは、俺謹製のクマのぬいぐるみ型使い魔の事である。

 いや、そんなファンシーな姿をしているのには、それなりに理由があるんだ。

 大本はチート由来のちょっと戦闘を手伝ってくれたりする、ペットロボット的なアイテム。

 それを、錬金術で再現したものだ。

 

 敢えてそのままのファンシーなデザインを採用したのは、もとはといえば、まだ幼かったころのカレンの護身用に制作したものだからである。

 ちょっと調子に乗っていい素材をふんだんに使ったら、結構洒落にならない出来になって、例のごとく二世が胃を痛めていた。

 

「譲らないでもないが、結構な額だぞ? ホムンクルス換算だと、アインツベルン製であることを加味しても、さて、何体分になるか」

 

 ぶっちゃけ、アインツベルンならその資金でホムンクルスを作った方が絶対いい。

 リーゼリットなんか、経験値的な問題ですぐ倒されるとはいえスペック的には多少はサーヴァントの相手も可能なレベルなんだし。

 俺謹製の彼らだって流石にサーヴァントの相手が出来たりは……いや、足止めくらいなら行けるのか?

 

 彼らの戦闘アルゴリズムって、イーリアスの戦闘データから構築してるからな。

 ちょっとくらいの時間なら行けるかもしれない。

 ファンシーな見た目で油断させられれば案外、もつかも?

 

 まあ、そんな見た目と性能が女性陣にうけて、結構な数を作る羽目になった。

 出来のいい個体を厳選して、それぞれに数体ずつ持たせている。

 量子ストレージを参考に作ったブレスレット型収納礼装もつけてね。

 今回、その厳選から漏れた個体を城の片づけに貸し出したら、見事にイリヤの心を射抜いたらしい。

 

 別に狙ったわけじゃないんだ。

 もとがもとだけに頭の出来とかも良くて力もあるから、手持ちの人に貸し出せるような使い魔としては、ダントツに適任だったんだよ。

 

「高い……でも欲しい」

 

 ぐぬぬ、とイリヤが唸る。

 彼らを見た事があり、既に護身用に数体贈られているはくのんは、納得しかないと言った表情で頷いている。

 一方で、見た事がない遠坂嬢と士郎君は疑問顔だ。

 

「まあ、その話は後にしよう。今は他に話さないといけないこともあるしな」

 

 このままだと本題に入れないので、ひとまずその話については打ち切った。

 遠坂嬢が深く溜息をつく。

 まあ、あれだ。

 今、被害者、もとい協力者が増えるから、そう嫌そうな顔をしないように。

 

「事の起こりは、第三次聖杯戦争に遡る」

 

 そうして始めるのは、大聖杯が汚染された経緯の話だ。

 第三次聖杯戦争の時、アインツベルンは勝利を求めてあるサーヴァントをルールに違反する形で召喚した。

 アンリマユ。

 ゾロアスター教、あるいは拝火教とも言われる宗教に伝わる、この世全ての悪、なんて言う大仰な悪魔の名前を持つサーヴァントは、その実その名を被されただけの弱小サーヴァントだった。

 

 しかし、人々に望まれてその名を被ったという彼の成り立ちが故に、聖杯にくべられることで彼は本当に世界全てを呪い殺すアンリマユへと変生した。

 それが聖杯の泥を生み出す、聖杯の中にある悪性の正体である。

 

「それでは、切嗣が、私に令呪で聖杯の破壊を命じたのは」

 

 セイバーに頷いて返す。

 

「聖杯がすでに汚染されていて、そのまま儀式を成就すれば、想像を絶する災害を巻き起こすことを知ったからだろう。だが、儀式が成就に近かったことと、聖杯の破壊という強引な手段をとったことが災いしたんだろうな。結果として、最悪よりはマシだったにせよ、災害は起こった」

 

 厳密には色々な部分がちょっと違うんだが、わかりやすい形に端折った。

 冬木の大災害。

 多くの命が奪われて、衛宮士郎という少年の人生が歪められた事件。

 

 三者三様の表情を見せるマスターたち。

 イリヤは恐らく、聖杯の汚染と切嗣の行動の真意を知った驚き。

 少なくともこの世界線では、知らなかったか、確信までは持っていなかったと言ったところか。

 士郎君は、災害の真相を知った事、それに切嗣とセイバーが関わっていた事、それら諸々に対する驚き。

 

 すでに俺から聞いて事情を知っていたはくのんは、それでも失われた命に対して、沈痛な面持ちを。

 遠坂嬢は、士郎君に気遣わし気な目を向けていた。

 精神的なフォローなどは、後に回すとしよう。

 今は話の続きだ。

 

「当初は、儀式の外から適宜介入するつもりだったんだが、本来の時計塔枠の参加者の一人がポカをやらかしてな。俺が直接参加する羽目になって、聖杯の汚染による問題を解決するために色々暗躍して今に至るわけだ」

 

 士郎君が、ここで疑問顔になった。

 

「なんで、もっと早く教えてくれなかったんだ? そうすれば、戦いにならずに協力出来ていたんじゃないか?」

 

 彼からすればもっともな疑問だな。

 

「参加マスターの中に一人、この呪いを是非とも世に放ちたいっていう、外道がいたんだ。しかもそいつは、監督役の立場を利用して、マスターの一人からサーヴァントを奪って、さらには前回から生き残っていた非常に強力なサーヴァントを秘匿していた」

 

 遠坂嬢がこぶしを握り締めて、恨み骨髄と言った調子で言葉を漏らした。

 

「あんの、外道め……!」

 

 すでに話してあったんだが、あらためて怒りが再燃したらしい。

 

「前回聖杯戦争の生き残りのサーヴァント、英雄王ギルガメッシュ。結果的にはアーチャーの協力が得られたお陰で最小の被害で倒すことが出来たが、あれの存在がどうしてもネックでね。下手につついて悪い方に転がると、汚染された聖杯どうこう以前にあのサーヴァントによって冬木が壊滅するような可能性も否めなかった」

 

 ほんっとに、苦労させられた。

 ギルガメッシュさえいなければ、どれだけ楽な話だったことか。

 

「だから、あのサーヴァントを排除するまでは表立っては動けなかったわけだ」

 

「イリヤさんや、城に向かっていた先輩達がマズイとなった瞬間に欠片も迷わずに、すっ飛んでいきましたけどね」

 

 はくのんめ、そこは言わないお約束ってやつじゃないか?

 

「先々を考えると、戦力は温存したかったからな」

 

 これもこれで本当の話なのに、何で皆して生暖かい目で見てくるかな?

 いや、士郎君だけ、なんか目が輝いているか?

 やめたまえ。

 チートでも持っていないと、この生き方はお勧めできない。

 軽く咳ばらいをして、話を続ける。

 

「イリヤスフィール。すまないが、君のこの心臓は返すことができない。これから行う大聖杯とアンリマユの分離作戦に必要になるからだ」

 

 絶対に必要かといわれるとそうでもないんだが、これを返すという事は彼女に聖杯としての役割が再び発生するってことだからな。

 あー、あの目は、こっちの意図を見透かされている目だな。

 あれで頭の回転とか速いし勘も良いからな。

 

「私は負けた身だもの。貴方に従うわ」

 

 すました顔だが、口もとにわずかに笑みがあった。

 まあ、お節介を嫌がられていないなら、良しとしておこう。

 俺は彼女に頷いて返し、他の面々にも告げた。

 

「君たちには、サーヴァントと共に、この作戦に協力してもらいたい」

 

 はくのんが一番に頷き、士郎君がそれに続いた。

 遠坂嬢が最後に肩を竦めて言った。

 

「私はもうサーヴァントはいないけど、ま、出来る事で手伝うわ。遠坂としての責任があるしね」

 

 大いに結構。

 ならば、説明を始めよう。

 

「それでは、作戦の概要を説明する」

 

 この作戦が、今次聖杯戦争における最後の戦いになるだろう。

 

 

 

 






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小話

冬木聖杯戦争編は間もなく決着。
その後、冬木聖杯戦争の後始末から、デスマーチNo.1の発端までの幕間を挟み、ついに世界の真相の開帳と共に、真のデスマーチが幕を開けます。

あれもこれも、書きたい場面が目白押しで、もっと書く時間と体力が欲しい――――!
更に先のNoも、あのキャラとかあのシーンとか、絶対、書いてて楽しいのにぃぃぃ!
これだけやって生きていることは出来ないのが残念でなりません。
ほんとに。

皆さんにもこの楽しさが、物語を通して少しでも伝わっていると嬉しく思う次第です。

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