Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

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第36話   俺とクー・フーリンと超音速の死闘

 

 メディアによって結界が張られてからしばらくの後。

 大空洞へ通じる洞窟の入り口前に陣取っていた俺の元に、言峰綺礼とクー・フーリンが現れた。

 この結界は内から外への遮断に比重を置いているために、入ってくる分には苦労しないから、予定通りだ。

 

「まさかアトラムの後釜に座ったキャスターのマスターが、かのエルメロイの魔人とはな。最初から狙っていたのか? まったく、まんまとしてやられた」

 

 言峰がそう言ってくるが、結果論なんだよなあ。

 まあ、ギルガメッシュを倒すまでは徹底的に暗躍に徹したから正体の秘匿については狙い通りだけどな。

 

「気づいていればもっと早く……いや、ギルガメッシュは君を叩く事には妙に消極的だったから結果は変わらなかったか」

 

 たぶん、消極的だったのは俺を叩く事じゃなくて、はくのんを叩く事。

 しかしそう考えると、はくのんはいるだけで非常に大きな仕事を果たしてくれていたわけだ。

 あとで希望を聞いて、美味しい食事にでも連れて行かないとだな。

 

「仮に俺を突破できたとしても、この先には複数のサーヴァントがいる。勝ち目はないと思うがな?」

 

 そう言われて止まるような奴ではないだろうけど。

 

「あちらに戦力のほとんどを割いたという事は、それなりに付け入る隙はあるような状況なのだろう?」

 

 まあ、そうくるよな。

 だから俺がここにいるわけだし。

 で、あるならば、もはや言葉は無用だ。

 

「イーリアス、エクスカリバー、アクティベイト」

 

 力をもって阻止する。

 

「っは。俺には勧誘は無しかよ、魔術師?」

 

 クー・フーリンがそんなことを言ってくるが。

 

「馬鹿を言え。たとえその男の性質が外道で、望まぬ形で結ばれた主従関係であったとしてもだ」

 

 クー・フーリンが槍を構え。

 俺もまた、エクスカリバーの刃を形成させた。

 

「クー・フーリンは、己が願いをかけて死戦に望むマスターに背を向けるような男ではあるまい」

 

 俺の言葉に、クー・フーリンは呵々と笑ってから、その笑みを獰猛なものに変えた。

 

「嬉しいことを言ってくれるじゃねえか。約束の再戦だ。今度はしっかり殺すぜ、魔術師」

 

「約束までした覚えはないがな。だが、こちらもこう返そう。それは俺のセリフだ、槍使い」

 

 同時に地を蹴った。

 すれ違いざまに凄まじい鋭さと威力の槍を受け流して、立ち位置が入れ替わった。

 

 ————想定以上に強い。

 そうか、令呪か。

 恐らく、前回聖杯戦争でのギルガメッシュとの決戦時のイスカンダルと同じように、令呪で力を上乗せしているな。

 

 おかげで加減を誤って、左肩の装甲が大きく削られた。

 イーリアスの装甲がなければ腕を一本、持っていかれていたかもしれない。

 まったく、最後の最後まで楽が出来ないな。

 

「おいおい、正直決めるつもりで行ったんだぞ? それが装甲を削っただけかよ。嫌になるねぇ」

 

 嬉しそうな顔で言う事かよ。

 だが、今の戦力は把握できたし、次はこちらからだ。

 踏み込みとバーニアのタイミングを合わせて、瞬時に懐に入り込む。

 

「くっ!」

 

 クー・フーリンの口から苦々し気な声が漏れた。

 相手の虚をつくことには成功したようで、今度はこちらが相手に傷をつけた。

 槍で防がれて十分な深さでは入らなかった上に、恐らくは言峰の支援ですぐさま回復されてしまったが、なるほど。

 

 今の奇襲を防ぐか。

 流石はクー・フーリン。

 獣じみた勘と反応速度だ。

 

「これでお互い、小手調べは終わりという事で良いかな?」

 

 我ながらこれはちょっと負けず嫌いが過ぎたかもな。

 

「ほんと、敵にするのに最高の相手だよ、テメエは!」

 

 だがまあ、受けは良かったみたいだ。

 そこから本格的な衝突が始まった。

 お互いに足を止めることなく、位置を入れ替え、場所を縦横に移しながら光剣と槍を交える。

 不意に槍の一撃が大地を砕いて、瓦礫が舞った。

 

 ————目くらましか?

 いや、全方位から攻めるための足場か!

 あの強度の足場で、地面と変わらない機動力とか、どういう技量だ!?

 だが————!

 

 超速の全方位からの槍の刺突を、すべて完全に叩き落した。

 いい加減に、モーションが読めてきた。

 モーションの把握とそこへの対応は、基本も基本だ。

 ここまでくれば、そうそう攻撃を食う気はない。

 

「この短時間で、動きを読みやがったか! しかもそれで即座に対応とは、どこぞの師匠を思い出す呆れた技量だな!?」

 

 あのスカサハと引き比べてもらえるとは、光栄な話だ。

 最後の一撃をひと際に強く弾いて、体勢を崩したところを切りつけるが、クー・フーリンの姿が突然掻き消えた。

 これは、令呪による空間転移か。

 このタイミングであれば、転移先は恐らく。

 

 脚部スラスターと足さばきで、一瞬にして背後へ振り返った。

 斜め後ろ、這うような低い姿勢から繰り出される槍を受け流す。

 

「これも読みやがるか! はっ、しかし、大盤振る舞いだな、言峰!」

 

「私としても、ここは譲れないのでな」

 

 戦闘に令呪による援護が混じり始めるが、遅いな。

 初手で全賭けするべきだった。

 アルトリアとの戦闘と今回の戦闘で、だいぶこのスタイルでの勘が戻ってきた。

 ああ、クー・フーリンは己の不利に気が付いたか。

 これは、仕掛けてくるな。

 

「ここまでやるか。最大限に見積もったつもりだったが、まだ甘かったとはな。だが、これはどうだ」

 

 決めにかかる時のクー・フーリンはよくテンションのトーンが低く変わるが、まさにそれだった。

 ゲイ・ボルクに魔力が注ぎ込まれ、禍々しい赤い光が漏れ出す。

 宝具の発動だ。

 だが、俺もそれを待っていた。

 ここが、勝負どころだ。

 

「イーリアス、超過駆動。纏え……」

 

 こちらも切り札を切る。

 

「ゲイ・ボルク!」

 

「アイギス!」

 

 必中必殺の朱槍をイーリアスのまとった絶対防御の輝きが拒絶する。

 オデュッセウスの鎧をインスパイアしているこのイーリアスには当然のごとくに、あの鎧の正式名称であるアイギスという名のスキルが付与されていた。

 その効果は、一撃のみの絶対防御。

 

 その防御の性質は、元ネタのアイギスよりもむしろ、アーサー王の鞘であるアヴァロンのそれに近い。

 初心者向けの救済装備には実におあつらえ向きの保険になる能力であり、元ネタの再現にもなる運営の悪ふざけにして、俺の今回の切り札。

 

 聖杯戦争が進むにつれて、クー・フーリンとの激突は不可避であることを察した俺は、ずっとこの手札を伏せ続けた。

 今この瞬間の為にだ。

 宝具を真っ向から防がれて無防備になったクー・フーリンの霊核をエクスカリバーで貫いた。

 

「勝負の際の際まで、そんな切り札を伏せ続けてたとは。これは、完敗ってやつだな」

 

 満足げな顔をして、言葉をこぼすクー・フーリン。

 最後に一つだけ、伝えておくべきことがある。

 

「バゼット・フラガ・マクレミッツは無事だぞ。腕についても、まあ、何とかなるだろう」

 

 なんだかんだで、何故か気にいられた橙子さんの伝手もあるしな。

 

「そうかい。礼を言うべきか?」

 

「別に、不要だ。好きでやった事だしな。礼を求めたわけじゃなく、ただ言っておくべきだと思ったから言っただけさ」

 

 くつくつと、本当に楽しそうに笑う、クー・フーリン。

 

「名前を教えろよ、魔術師」

 

「神薙統夜」

 

「覚えとくぜ、その名前。次があった時は、肩を並べてみたいもんだ」

 

 その言葉を最後に、クー・フーリンは送還されていった。

 

「負けた、か。そしてこちらも時間切れか」

 

 言峰が心臓のあたりをおさえて崩れ落ちた。

 メディアたちがやり切ったのか。

 地に倒れ伏した言峰のもとに近づいて、その顔を見下ろした。

 息も絶え絶えの様子で、苦々し気な顔をした言峰は俺に対してこう吐き捨てた。

 

「つまらない男だ。本当に」

 

 憎まれ口を。

 要は、普通の感性で生きられる俺が妬ましいっていう話だろ?

 正直この男の行いは外道が過ぎて、気に入らないことこの上ないんだが。

 罪を憎んで人を憎まずなんて言葉もあるし、カレンの事もあるからな。

 

 命までは助けないが、言葉をかけるくらいは良いだろう。

 生の終わりに、その人生、その心、切開してやる。

 

「言峰綺礼。お前はあんな呪いに答えを求める必要はなかった。何しろお前が今に至るまで生きる事を許されていて、今お前が命を落とした理由だって結局は、お前の生まれ持った性質を咎められてではなく、あくまでその性質に従った行いを咎められてなんだからな」

 

 そもそも。

 

「善悪などというもの自体、人という群体で生きる種に最適化される形で定められた価値観に過ぎない。ある物語ではな、善と悪の価値観が完全に逆転している世界を描いたものがあったが、案外それらしくまわっていたぞ?」

 

 まあ、結局その方向性では人類みたいな種はドン詰まるから、必然的に現実においては善という概念が多数派に支持されるわけだが。

 

「俺は神なんて信じていない口だが、存在を仮定した場合、ただ一点だけ感謝していいと思っていることがある。良くも悪くも、現世に何一つなさない事だ。神の愛が存在するとしたなら、これこそがそれだと思うくらいに」

 

 何を思っているのか。

 言峰は俺の言葉に、一切口を挟んでこない。

 

「だから、人は自らで考え、歩かねばならない。神に問おうなんて時点で、お前はズレている」

 

 実際、変に真面目過ぎるからそんな生き方になるのだ。

 ちょっと考えれば、現実と己の性質をすり合わせる生き方は見つけられたはずだ。

 

「人の不幸は蜜の味、なんて言う言葉があるくらいにお前の抱える悪性はありふれたものだ。お前の問題の芯はそこじゃなく、あたりまえの幸福を感じられない欠落にこそある」

 

 なんだかんだで、踏み外すまでは上手くやっていたのだ、この男は。

 何しろ、わからないながらに、羨むことは出来る程度にはたどり着いていたのだから。

 

「それこそ、戦場で医師の真似事でもやってみればよかったんだ。多くの不幸も、そこから立ち上がる人の輝きも、存分に眺められただろう。善行をもって己の悪性を満たし多くを救って感謝を得て、そうして死ぬまで生きたなら何か一つくらい、きっと満足のいく答えが得られただろうに。愚かな男だな、お前は」

 

 つまらない男、という言葉への返答として、愚かな男と返す。

 

「まったく、見事な説法だな。君は魔術師などより宗教家の方が向いていたのではないか?」

 

 だから俺は神なんぞ信じていないと言っているだろうが。

 カレンと同じようなことを言いやがって。

 そんな皮肉が、彼にとっての最期の力を振り絞ったものだったらしい。

 今にも眠りにつくかのように、目が閉じられていく。

 

「カレン・オルテンシアは、なんだかんだで幸せそうに暮らしているぞ」

 

 この男が、カレンに関わらなかったのが、ただ興味がなかったからなのか。

 それとも、己の性質故に、近しい者の不幸を求めずにいられないから遠ざけたのか。

 俺にはその答えは分からない。

 だが、俺の言葉を聞いて、いまわの際に口もとを笑みの形に歪めるくらいには、なにがしかの思い入れはあったのだろう。

 

 

 

 





いつも閲覧ありがとうございます。
評価投票1000人越えです!
更には総合評価29000!
月間順位は一位を維持できていますし、年間でも五位以内が見えてきました。


そんなわけで、今回もお礼の二回目投稿を19時に行います!


いやあ、本当にありがとうございます。
おかげさまで冬木編を気持ちよく走り切ることが出来ました。
これからも頑張ってまいりますので、よろしければ、閲覧やお気に入り登録、評価、感想などでの応援をお願い致します。

誤字報告もいつも感謝です。



小話

さて、そんなわけで第五次聖杯戦争、決着です!
槍ニキは性格的に、この状況で言峰を裏切ったりするとは思えなかったのでこういった結果になりました。

次話からインタールードに入って大まかなリザルトと戦後処理を行い、さらにもう一話で戦後処理の残りと、次の事件の導入、といった感じになるかと思います。
三話から五話程度になると思われる、このインタールードの最後にて世界の真実がつまびらかになり、同時にデスマーチNo.1へとなだれ込む予定です。


さらなるちょっとした小話

FGOのイベントでオデュッセウスと別の赤いオデュッセウスが出てきて笑いました。
そして、バリバリにアイギスを使っていて、こんなにネタ被る事ある?
となりました。
いや、ホント、こんな事ってあるんですねえ。

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