Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

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第42話   メリュジーヌと対竜都市マギスフェアと街歩き

 

 マギスフェア。

 それは本来、霊墓アルビオンの中に存在する採掘都市の名前である。

 それが何故この特異点の中で、対竜都市などというものとして存在しているのかというと、BB曰く存在のコンバートとでも呼ぶべき現象らしい。

 

 要するに霊墓アルビオンの中に存在した採掘都市マギスフェアが、特異点に取り込まれる際に、この特異点に存在しておかしくない形に変換されたのが、対竜都市マギスフェアだ。

 霊墓アルビオンの中には、封印指定の本拠地も存在するはずだが、そちらは現状では取り込まれずに済んでいるらしい。

 

 あの封印指定の本拠地だしな。

 しばらくの間をしのぐ位は出来ても不思議ではない。

 それも時間の問題なのだろうが。

 

 前周においては、最終作戦の際にアルビオン以外の竜種を引き付ける囮としての役割を果たして、壮絶な戦いの末に壊滅したらしい。

 亜種特異点が孵った後、霊墓アルビオン内は竜種はびこる魔境と化したらしいが、採掘都市マギスフェアは、それら竜種に襲われるまでもなく、最初から壊滅していたという。

 特異点内での出来事が、特異点が現実に反映されたことで現実のマギスフェアにも適用されたのだろう。

 

 さらに仮にアルビオンを打倒せしめたとしても、特異点内のマギスフェアが壊滅していた場合、現実のマギスフェアにも何らかの影響が出る可能性は否めないという。

 霊墓アルビオンからの様々な神秘の供給は、時計塔にとって欠くべからざるもの。

 先々の事を考えるなら、この都市は可能な限り防衛しきるのが望ましい。

 

「お、見かけない顔だな兄ちゃん! どうだ、腹減ってないか、うちの果物は旨いぜ!」

 

 いや、しかし、なんというか逞しいな。

 FGO世界線の物語でも思っていたが、この世界の人間たちの追い詰められた時の逞しさって何なんだろう。

 竜種に支配された世界の中の唯一の生存圏である都市の住人とか、もっとどんよりしていてもおかしくないと思うんだが。

 

「悪いな、今日は冷やかしなんだ。ちょっと市場を見て回っていてな」

 

「はは、この時世に気楽なもんだ! どっかの坊ちゃんか? ま、次があった時にはなんか買ってくれよな!」

 

「ああ、そうさせてもらうよ」

 

 次があった時は、か。

 あっけらかんと気楽に言うもんだ。

 しかし、街並みに多少の面影はある気がするが、基本は別物だな。

 あちらとの共通点を挙げるとするなら、住人の多くが魔術師である事か。

 そうでもなかったら、竜種に滅ぼされずに存在し続けるなんて不可能だっただろうけど。

 

 おっと、城壁の方で光が。

 またワイバーンでも撃ち落としたのか?

 世界の性質からなのか、この都市の竜に対する対処手段はかなり発達しているからな。

 

「なんかちょっと肌がピリピリする」

 

 そうこぼすのは一緒に歩いているメリュジーヌである。

 竜種避けの結界か何かだろうか。

 メリュジーヌがそんな風に感じるレベルとなれば、寄ってくるワイバーンの数が極端に少ないのも納得だな。

 それでもたまに、大型の竜種に率いられた大群に襲われたりもするらしいが、この都市には何体かのサーヴァントが守護者として存在していて、彼らが撃退しているという。

 

「痛いとかじゃないんだな?」

 

 マルタさんも亜種特異点が成立してすぐに都市の中に召喚されたらしいし、抑止力の本気度の高さがうかがえるというか。

 残りはジークフリートとクリームヒルトのコンビと、シグルドである。

 そこは、ブリュンヒルデも喚んであげなよと思ったが、彼女は竜に対する優位な性質、ゲームで言う所の竜特効を持ってないし、セットで呼ぶとシグルドと殺し愛を始めちゃうからなあ。

 なお、愛は誤字ではない。

 まあ、そのあたりも考えると余裕のない状況だと仕方ないのかもしれないな。

 

「うん、大丈夫。ふふ、ありがとう統夜」

 

 自然に腕が組まれて、ぴたりとくっつかれた。

 少し歩きにくいが、好きにさせる。

 冬木の一件からこの騒動で、あんまりかまってあげる時間がなかったからなあ。

 

「そんなに気にしなくても大丈夫よ? 多少距離が離れたって、私と統夜はしっかり繋がっているから、寂しいとか感じないし」

 

 まあ、それはそうなんだが。

 実はメリュジーヌとの間のパスは、なんというか、非常に強固で太いというか。

 日本とイギリスに離れていても、すぐ隣にいるかのような錯覚を感じるくらいだし、近くにいるとお互いの感情なんかがナチュラルに伝わる。

 考えていることが筒抜けとかではないけどな。

 

 メリュジーヌが特別な竜だからというだけでなく、なんというか俺のパワードスーツ等の兵器を用いるものとしてのチートも影響を与えている気がする。

 FGOの特別な竜種ってなんていうか、メカメカしいというか、彼女本人の自認も戦闘機とかだったりするくらいだから、兵器運用面のチートが適用されてる疑惑があるのだ。

 ようするに、俺とメリュジーヌは色んな部分で相性が良すぎるのだと思う。

 アルビオンと対になると思われる、赤き竜の因子をもつアーサー王との縁であるとか。

 そもそも今の彼女を成立させたのが、俺であるというのも大きな要因だろう。

 

「何時もちゃんと大事に思ってくれているのは知っているから」

 

 腕に顔がくっついてぐりぐりとされた。

 

「貴方は竜としての私も、この姿の私も、等しく受け入れてくれる。貴方がいる限り、何一つ欠けることなく、私は私でいられる。もはやアルビオンすら過去でしかない、貴方のメリュジーヌとして」

 

 だって、メリュジーヌの竜の姿、文句なしにカッコイイじゃん?

 俺は素直にどっちの姿のメリュジーヌも好きだし。

 そして、そんな俺が彼女のありようを決定づけたせいか、それとも俺のチートが何か影響しているのか、彼女は何の負担もなく、竜の姿と人の姿を行き来できる。

 

「だからそんなに心配しないで。この特異点中でも私には悪い影響は出ていないし、仮に此処でアルビオンを倒しても、私には何の影響もないから」

 

 パスからの情報である程度わかっている事ではあるが、あらためて本人から保証されれば、やはり安心感が違う。

 何か問題が出たとしてもどうにかしたが、ないならそれに越したことはない。

 正直、戦力的に特異点案件でメリュジーヌを連れてこない選択肢はなかったしな。

 頭を撫でて、いろんな分の感謝を示した。

 メリュジーヌは嬉しそうに微笑む。

 おっと、いかん。

 

「どうも、メリュジーヌといると言葉を忘れがちになるな。言葉にせずとも伝わるとしても、言葉にすることも大事な事なのに。俺からも色々とありがとう、メリュジーヌ」

 

「貴方のそういう所、大好きよ」

 

 うーん、やっぱり色々しっくりきすぎる。

 悪い気はしないが、気を付けないと普段のコミュニケーション能力が落ちそうだ。

 そんなことを考えながら、街の様子や地形を見ながら歩いていると、不意に声をかけられた。

 

「貴方達、まさか二人の時っていつもそんな感じなの?」

 

 おや、マルタさんじゃないか。

 確かに二人だけの時は、結構こんな感じかもしれない。

 何気に二人きりって滅多にないから、つい甘やかしてしまうというか。

 あれ、俺もしかしてメリュジーヌに大分毒されているか?

 考えてみると、純粋に異性としてメリュジーヌを考えた場合、距離感バグっているか。

 しかし、わざわざマルタさんが探しに来たってことは。

 

「割とこんな感じだな。それで、都市長との面会が許されたのかな?」

 

 マルタさんには可能なら都市長から話を聞きたいと頼んでいたのである。

 やっぱり、一番情報が集まるのはトップだろうしな。

 

「不思議と色めいた感じはしないから、あんまり咎めるものでもないのかしら? まあ、そちらはとりあえずいいわ。面会の許可が取れました。今からでも構わないと言われていますけど、どうしますか?」

 

 マルタさんはぶつぶつと言葉にしながら少し考えてから思考を手放した。

 そして、聖女モードで要件を伝えてきた。

 一応猫かぶりは続行するのか。

 まあ、街中だからというのもあるかもしれない。

 

 しかし都市長は英霊などではなく人間の魔術師と聞いているけど、何とも果断だな。

 いや、むしろ当然か。

 マギスフェアのコンバートとはいえ、恐らくこの都市は特異点のモデルになった世界線の最後の人類生存圏が原型だろう。

 

 そんなキツイ状況下で都市をそれなり以上に回せている。

 そこのトップがぐずぐずと結論を先延ばしにするような無能なはずもないか。

 前周では人類が特異点に突入した時点で都市は大分疲弊し、都市長はすでに死亡していたらしいが、さて、どんな人物かな。

 出来ればすんなりと良い情報が得られると良いんだが。

 

 

 






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小話

主人公とメリュジーヌは出会ったころから、二人の時は割といつもこんな感じです。
ほんとに最初の最初は主人公も適切に距離を取ろうとしたんですが、パスから流れてくる無垢で一心な好意に絆されて、甘やかしているうちに常態化しました。
ただ今回については、主人公を慮ってあえてべったりとしている部分もあります。

ライネスやカレンはこの様子をたまに目撃しているのですが、マルタさんが指摘した通り、色めいた雰囲気は現時点では全くと言って良いほど無く、どちらかというと幼い子供が親に甘えるような風情の為に見逃されています。
ただし、ぱっと見の見た目的にはアレなので、いじりはするという感じ。
そこには、親しい兄を取られたような、あるいは異性としての嫉妬もあったりなかったり。

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