Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制) 作:空門 志弦
メルトリリスが足の刃でワイバーンを切り裂いていく。
うん、完全に復調したみたいだな。
少なくとも俺の知っている他の世界線のメルトリリスとは遜色がないように見える。
「しかし、案の定というべきか数が少ないな」
いや、少ないと言っても大概ではあるんだけどな。
この山に来るまでも、ひっきりなしに襲撃を受けていたし。
会話の途中にとかいうレベルではないというか。
こちらを休ませない意図もあったんだろう。
「そうね。計算上の生息数からすると明らかに数が少ないわ。どこかに温存しているんでしょうね」
シャドウフォートは麓に見つけた洞窟に潜伏している。
流石に山だと動きが制限されるし、ファヴニールクラスが相手だと安全とは言い難いからだ。
あちらが狙われるようなことがあった時は、虚数潜航で逃れる手筈になっている。
「ほんとに狡猾な奴なんだね。あんまり竜っぽくない」
ワイバーンに打撃と同時に魔力を浴びせて貫きながら、メリュジーヌが言う。
まあ、あの竜は元人間という話だし。
根が力こそパワーみたいな部分の強い真正の竜とは毛色が違うのは確かだ。
「貴方達、この状況でよく涼しい顔で会話ができるわね」
ちょっと呆れた声で言ってくるのは、俺達に竜に対抗するバフをかけてくれているマルタさんである。
なおそんな台詞を言いつつ、たまに自分の所まで来たワイバーンは錫杖でどついて沈めていたりする。
「そうはいっても、ずっとこれだからな。いい加減慣れもするぞ?」
かくいう俺も、イーリアス装備状態でワイバーンをシバいている真っ只中である。
右手にエクスカリバー、左手にもエクスカリバーで二挺拳銃ノリの射撃モードでバシバシとワイバーンを撃ち落としている。
え、それ二本もあるのかって?
そりゃあるとも。
基本的にはMMOゲームの中でたった一つだけのユニーク武器なんて物語の中だけだぞ。
まあ実装直後の武器で入手難易度が高いとかだと、ほんの一時的にサーバー上に一つだけしか存在しない事実上のユニーク装備って事態は生まれたりするかもだが。
「欲を言えばもっと数を削っておきたかったけどな。奴の巣穴と思われる地点も近い。そろそろ仕掛けてきてもおかしくないところだが――――」
山に咆哮が響いた。
視界を塞ぐ岩陰向こうから舞い上がってくる、巨大な影。
ようやくファヴニールのお出ましか。
相手は空に舞い上がって射線を確保すると、迷わず初手でブレスを放つ構えだ。
「タラスク!」
マルタさんがタラスクを呼び出し、俺達をその影に隠す。
だが、それだけでは不足だろうし、此処でタラスクを失うのは損害が大きすぎる。
「アロイ! シールド展開! タラスクを援護しろ!」
アロイを呼び出してタラスクの眼前にシールドを展開させる。
シールドが張られるとともに、ファヴニールの口から放たれるブレス。
ブレスはアロイの張ったシールドに減衰されタラスクの甲羅で防ぎ切られた。
一瞬、イーリアスの翻訳機能を通してタラスクの熱がる悲鳴が聞こえたような気がした。
すまん、あれだったら後で回復薬使うから勘弁してくれ。
マジで助かった。
「感謝する、マルタ、タラスク!」
言葉をかけてから、偽装解除状態のアロイにまたがって空へ駆け出した。
メリュジーヌがそれに追随する。
ファヴニールはこちらから距離を取ろうとするが、メリュジーヌがそれを許さない。
素晴らしい加速でファヴニールを追い抜いて、その鼻っ面にアロンダイトの一撃を叩き込んで制した。
俺もすぐに追いついて、エクスカリバーでファヴニールの翼を切りつけたが、身をひねってかわされた。
あの巨体でよく動く。
そして、俺達が戦闘に入ると同時に、山やその周辺から一斉にワイバーンや竜種たちが空へと飛び立つ。
そして飛べないものは地を走っていく。
進行方向はやはり、マギスフェア方面か。
「このっ邪魔!」
メルトリリスの声に地上を見やれば、俺たちに加勢しようとしたメルトリリスとマルタさんの方にも少なくない数がけしかけられていた。
まあ、そう来るか。
ここからは時間との勝負だな。
アロイで空を駆けながら、エクスカリバーの射撃モードでファヴニールを狙い打つ。
何発かは直撃しているが、翼や頭部といった箇所は巧みに避けられ、防御の厚い所だけに被弾を抑えられていた。
明らかに火力不足だが、超過駆動を当てるには隙が足りない。
空を駆けられると言っても、アロイは結局バイクだから、機動力で劣っている部分も否めなかった。
で、あるならば。
「乗って、統夜!」
メリュジーヌが叫んで、その姿を竜としてのものに変えた。
俺はアロイを収納して、その背に降り立つ。
イーリアスの重力制御システムでその背にしっかりと己の身を固定した。
「全力で飛べ、メリュジーヌ! 俺に対して一切遠慮するなよ!」
返事として声にならない歓喜が、パスを通じて返ってきた。
ただでさえ速いメリュジーヌが更に速度を上げていく。
イーリアスを装備していてさえ体にGを感じるレベルだ。
だが。
「最っ高!」
気分よく叫ぶメリュジーヌに、心から同意する。
風になるって言うのは正にこういう事を言うのだろう。
パスを通して俺の強化の魔術がメリュジーヌに浸透していく。
普通なら他者、それも竜に対して強化を通すなんてありえない話だが、俺とメリュジーヌであれば話は別だ。
メリュジーヌの翼が羽ばたき、その身がありえない軌道を描く。
ファヴニールが対応できない速度で、想定できない複雑な動きで、その死角を取った。
二つのエクスカリバーを射撃モードで連射し、羽の付け根に全て着弾させた。
「――――!」
流石に羽ごと捥げたりはしないが、ファヴニールが悲鳴のような鳴き声を上げる。
明らかに飛行速度が落ちたのを確認してから、メリュジーヌが一度ファヴニールから距離を取った。
少し前まで俺たちのいた場所に放たれるファヴニールのブレス。
「反応が遅いわ。今の私たち相手にそれじゃあ、いつまでたっても当たらないわよ?」
嘲るように言って、今度は交差するような軌道でファヴニールへと肉薄するメリュジーヌ。
「超過駆動! 切り裂けエクスカリバー!」
すれ違いざまに左手のエクスカリバーの超過駆動で切りつけた。
大きく体に傷がついて、ファヴニールが血を飛び散らせた。
あれを浴びるとジークフリートみたいになったりするんだろうか。
一瞬そんなことを想ったが、すぐに切り替えた。
再びファヴニールから放たれたブレスをメリュジーヌは悠々とかわして、ファヴニールの直上へと急上昇していく。
十分な高度を稼いだ後に反転、今度は重力加速度も味方にして、凄まじい角度でファヴニールに迫った。
ファヴニールの口にはブレスの光があるが、交差までには間に合わないだろう。
メリュジーヌの翼の一部がテュケイダイトに酷似した刃状に変わって、すれ違いざまに首のあたりを切りつけた。
悲鳴をこらえたファヴニールがブレスを放つためにその顔を通り過ぎたメリュジーヌに向けるのを、俺は上空から眺めていた。
「私の方ばかり見ていていいの?」
その揶揄うような声に、ようやくファヴニールが気が付くが、遅すぎる。
メリュジーヌのつけた傷をなぞる様に、今度は右手のエクスカリバーの超過駆動で。
「そのそっ首、叩き落す! エクスっ――――カリバー!!」
先立っての一撃で鱗による守りを失っていた首は、ついにその一撃に耐えることは出来ずに胴体と泣き別れる事になった。
空を墜ちていく俺の元にメリュジーヌが飛んできて、再びその背に俺を乗せる。
「案外歯ごたえがなかったわね」
思わず苦笑がこぼれた。
流石にそれはファヴニールに酷だろう。
相手の知らない強力な手札を一気に叩きつければ、こういう結果になるのは必然というもの。
事前の情報もなしに、俺の強化を受けたメリュジーヌとそれに騎乗した俺の双方を相手にした空中戦であそこまで戦えたなら、むしろその健闘を称えるべきだ。
「でも、おかげでなかなか素敵なデートだったから、そこは感謝ね」
上機嫌に笑うメリュジーヌに俺も笑って返す。
さて、後は都市に向かった竜たちを都市にたどり着く前に可能な限り数を減らせば――――。
「き、ひ、ひ……! まさかこうも見事にアレを斃すとはなあ。だが、流石にこれではつまらんし、すこしばかり、わえも手を出してみようかのう?」
はあ!?
おま、ふざけんなよ!?
ありそうな候補として考えてはいたが、よりによって――――!
「さあ、艱難辛苦を授けようではないか。精々苦しむさまを見せてみよ」
ここで、わえ様は、流石にレギュレーション違反ってもんだろ!?
週末いえーい!
そして、ついに年間五位に滑り込んだぞひゃっほう!
そんなこんなで、今日はお礼の二回投稿でっす!
二度目の投稿は例のごとく19時予定です!
今デスマーチ序盤の山場にして見せ場、是非楽しんでいってください!