Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

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第48話   俺とジャンヌ・オルタと悲しい共感

 

 シャドウフォートの自室で目覚めた俺は、体の調子を確かめてから操縦室へと移動する。

 扉を開くと、そこではシオンがモニターとにらめっこしていた。

 

「おや、もう大丈夫なんですか? もう少し休んでいても良かったんですよ?」

 

 モニターから目を離して、入ってきたのが俺であることを確認したシオンは椅子を回転させてこちらに向く。

 まあ、状況がもっと良かったら、もう少し体を休められたんだけどな。

 

「心遣いだけありがたく受け取っておく。状況は?」

 

 俺もモニターを覗き込み必要な情報を読み取っていった。

 眠っていたのは、半日といったところか。

 シャドウフォートはマギスフェアへ移動中。

 そして、シオンがにらめっこしていたのは、わえ様のデータか。

 

「……通常のサーヴァントの規格からは外れているな。完全な神霊規模とまではいかないが」

 

「通常の召喚ではないんでしょう。恐らくアルビオンによって、BBが言う所の存在のコンバートが彼女にも適用されていると考えるべきかと。宝具の性質などを考えると、無数の竜種をリソースに存在を構築されている可能性が高いのではないでしょうか」

 

 メリュジーヌの代替としては如何にもというか。

 やけに余裕な態度だと思っていたが、それだけの力を持っていたわけだ。

 

「アルビオンは前周の記憶があると?」

 

「記憶が残っているのか、純血の竜としての能力で知ったのかはわかりませんが、そう考えておいた方が無難でしょう」

 

 まあ、だろうなあ。

 となると、シャドウフォートの主砲に据えたブラックバレル・レプリカも牽制くらいには使えても、決め手にはならないか。

 あのアルビオンが一度殺された手に、二度かかるとも思えない。

 

「ヴリトラの弱点、そのままだと思うか?」

 

 神話における弱点は往々にしてサーヴァントになっても変わらず弱点のままである。

 それこそヴリトラであれば、泡に弱い、といった具合に。

 

「そこは大丈夫かと。彼女がヴリトラである以上、それは逃れられない宿命です」

 

 だよな。

 くくく、待っていろよ、わえ様。

 無駄に胃痛を増やしてくれた礼は、きっちりくれてやる。

 

「悪い顔してますねえ。そういう顔をしている時の貴方は割とトンデモをやらかすから、ちょっと心配なんですが」

 

 おっと、顔に出ていたか。

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

「それ、大丈夫じゃないやつだった気がするんですが」

 

 日本のネットミームまで学んでいるとはさすがだな。

 いや、いつだか俺が話したんだったか?

 

「まあ、ちょっとは調子が戻ってきたみたいで何よりです」

 

 おっと、こっちにも心配かけていたか。

 なんだかんだ付き合いも長いからな。

 そりゃばれるか。

 

「少しは整理がついてきたからな」

 

 アドバイスをくれたシグルドと、考える猶予をくれたジャンヌ・オルタには感謝しないといけないだろう。

 

「そう言えば、他のメンバーは、どうしているんだ?」

 

「メリュジーヌさんは休息中、マルタさんとジャンヌ・オルタさんは周辺警戒で車上の見張り台、メルトリリスさんは、こちらに来てからの初戦闘後なので念のためのメンテナンスだそうです」

 

 BBが静かなのは、メルトリリスを診ているからってことか。

 

「見張り台の方にも顔を出してくる。礼も言いたいしな」

 

 メリュジーヌは起きた時で良いし、メルトリリスについては顔を合わせる前に少し準備したい。

 

「それが良いでしょう。あの二人も倒れた貴方を気にしていましたから」

 

 手をひらひらと振って操縦室を後にする。

 シオンもまたモニターに向きなおり、手だけを振って返してきた。

 うん、やっぱり彼女を引き込んで正解だったな。

 

 背後で扉が閉まり、見張り台に行くために歩き出した。

 階段を上って、上部のハッチから車外に出る。

 結構な速度で走っているシャドウフォートの車外は風が強かった。

 扉を開いた瞬間に吹き付けた風にほんの一瞬目を閉じる。

 

「目が覚めたのね」

 

 そんな声が聞こえて目を開くと、髪を押さえて振り返ったジャンヌ・オルタが最初に目に入った。

 そのさらに奥の方に焦点を合わせれば、マルタさんの姿もある。

 

「ああ、体にはそこまでのダメージはなかったからな」

 

 自分でもちょっと驚くくらいに丈夫だからなこの体。

 しかし最初はチートの影響が少なからず出ているんだと思っていたんだが、色々出自が明らかになってみると、これ完全にこの体自体の性能だったんだなあ。

 自分でちょっと引くぞ。

 

「礼を言わせてくれ。君が来てくれて助かった。戦闘の事も、選択の為の猶予をくれたことも」

 

 ジャンヌ・オルタの目が泳ぐ。

 これはちょっと真正面から行き過ぎたか。

 しばらく照れからと思われる動揺を見せた後で溜息をついた彼女が口を開く。

 

「私って、この手の人間に縁があるってことなのかしら。……わかった、お礼は受け取っておく」

 

 俺がFGO世界線の主人公と似ているのなんて、根の平凡さくらいだと思うけどな。

 しかし、召喚されたときのセリフといい、今のセリフといい、彼女はやっぱり、FGO世界線の記憶を持っているのか。

 比較的、世界線が近いのか?

 現状では情報が足りないが、心の隅に置いておくか。

 

 そういえば、なぜ自分の事を知っていたのか、とは聞いてこないんだな。

 俺についての説明をBBあたりから受けて、そういう事もあるだろうと思ったとか?

 気をつかわれているのもありそうだな。

 実際、説明がちょっと難しい部分があるから助かる。

 

 なんというか、本当に丸くなった後のジャンヌ・オルタなんだな。

 そんな感慨を感じていると、少し離れた所にいたマルタさんが近づいてきた。

 

「今のところ異常はないわよ。山での戦闘で大分数を削れたし、これ以上数が減らないようにヴリトラが竜たちの動きを抑えているんじゃないかしら」

 

 俺たちの今の消耗している状態を考えるとありがたいんだが、長い目で見ると厄介だな。

 次があった時は、どんな状況になるか知れたものじゃない。

 どの程度の猶予があるかはわからないが、こちらも備える必要があるだろう。

 

「ほんっとに面倒くさいわね。時と場合ってやつを考えてくれないかしら。まあ、あのヴリトラ相手にそんな期待、するだけ無駄か」

 

 苦々しげにジャンヌ・オルタが吐き捨てる。

 そうだな、無駄だな。

 わえ様だもんな。

 

「あれは障害の権化で、しかもその在り方をこの上なく楽しんでいる口だからな」

 

 俺自身の言葉にもどうしても苦々しさが混じっていた。

 

「二人とも、ずいぶん詳しいのね?」

 

 俺たちの様子にちょっと引いた様子でマルタさんは言う。

 そうか、マルタさんは普通のサーヴァントで普通の召喚。

 別世界線の記憶を鮮明に残しているジャンヌ・オルタはあくまで例外だよな。

 

「あの竜の厄介さは、色々と知っていてな」

 

「私は、前に召喚されたときにちょっと、縁があったのよ」

 

 情報があるというアドバンテージは大きいんだが、あんまり知りたくない類のナマモノなんだけどなあ。

 いや、味のあるキャラではあるんだよ。

 直接かかわらずに、離れて見る分には面白いのも確かなんだけど。

 しかし、当事者の立場で障害として立ちふさがられてしまうと、心底からコンチクショウって感じっていうか。

 

 ジャンヌ・オルタと目が合った。

 うーん疲れたような濁ったような目。

 きっと、俺も同じ目をしているんだろうなあ。

 どちらからともなく、お互いの肩を叩く。

 二人で深い溜息をついた。

 

「貴方達のその反応を見るだけで、ヴリトラが色んな意味でよっぽどだって言うのは良く分かったわ」

 

 そうなんだよ。

 ほんとによっぽどなんだよ。

 

「まあ、何とかはする。一応、弱点は分かっているしな。問題はむしろ、そこに持っていくまでの過程の方だな」

 

 次は前回以上の数を揃えてくるだろうし、ヴリトラの宝具の事もある。

 とはいえ、マギスフェアの方の状況も知らないと、策を立てるのは難しいからな。

 まずは帰還して、シグルドたちに話を聞かないといけないだろう。

 

 





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小話

同病相哀れむというか、この状況でわえ様出てきちゃったら、そう言う反応になるよね、というお話。

というか感想欄でわえ様へ、帰ってください的な反響が凄くて、つい笑ってしまいました。
皆の心が一つに。

流石、わえ様ですね!

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