Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

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第50話   俺と総力戦の始まり

 

 しばらくの間は都市から大きく離れずに周辺の竜種を狩ることでリソースの獲得と周辺の安全の確保に励んでいた。

 街から遠く離れる事が出来ていないのは、相手の行動が読めなかったからだ。

 そして読めないながらに、戦力を街から離した場合に街が狙われる可能性が高いのは分かっていた。

 

 前回のファヴニールとの戦闘でも明らかに戦力の大部分に街を狙う動きが見られたし、俺達の対峙したファヴニールとは別のファヴニールが竜種を率いて街へ襲ってきていたという。

 ただ俺たち側の戦闘が早期に決着して、援軍が到着しなかったことで本格的な戦闘になる前に撤退していったらしい。

 実際に外壁に多少の損傷があるくらいで街の中には被害らしい被害はなかった。

 

 でも、よりによって、わえ様がいるからなあ。

 絶対に一番嫌な所をついてくるに決まっているのだ。

 できればもう一体のファヴニールも叩いておきたかったんだが、それに固執すれば足をすくわれるだろう。

 

 まあ、大きく動けなかった分、着実にリソースを集められた。

 わえ様への策もある。

 後手に回らざるを得ないのは少々痛いが、対応が十分可能くらいには用意を整えられたと思う。

 

 そして、それが起こった。

 

 世界そのものが震えるかのような咆哮が響き、特異点内の竜種という竜種が追い立てられるように動き始めた。

 南方に存在するアルビオンの座所から、北方の特異点の端に存在する、マギスフェアに向けてだ。

 

「なるほど、そう来たか」

 

 しかし、真っ向から純粋に物量で攻めてくる方向か。

 想定していた中でもある意味、一番嫌な手であると言えるだろう。

 小細工がない分、こちらとしても正攻法以外の手は取りづらい。

 

『ファヴニールも動いたようです』

 

 ブリーフィングルームも兼ねているシャドウフォートの操縦室にメンバーが集まって、開口一番にBBがそれを報告としてあげた。

 そこは完全に想定通り。

 むしろここで動かない選択肢はないだろうからな。

 

「ファヴニールとそれに共同している竜たちについては俺達が任されよう」

 

 ジークフリートが請け負い、クリームヒルトとシグルドがそれに頷く。

 

「私はシャドウフォートからの魔力供給を受けつつ、竜種を可能な限り支配して、マギスフェアの防衛戦力と連携してマギスフェアを守るわ」

 

 ジャンヌ・オルタがもともとの作戦案に従う形でポジションを定めた。

 

「私も防衛ね。タラスクと共にジャンヌ・オルタの指揮する竜と協力して動くわ」

 

 ファヴニール方面の戦力はジークフリート達が迎え撃ち、マギスフェアの防衛はジャンヌ・オルタと、マルタさん。

 

「ヴリトラの所在は?」

 

 俺の問いに、シオンが即座に返してくれた。

 

「追い立てられてくる竜たちの最後方をゆっくりと移動中です」

 

 まずは、この津波のような竜の群れを越えてみろというわけか。

 上等だ。

 

「メリュジーヌとメルトリリスは俺と共に来てくれ。中央突破だ。竜の群れを突き破るぞ」

 

 空はメリュジーヌに任せて、俺とメルトリリスで地上の連中を切り開く。

 ついでになるべく数を減らして、マギスフェアへの圧力も弱められれば最高だな。

 だが、数が数だ。

 それにこだわり過ぎれば、足が鈍って時間を浪費して、かえって良くない結果になるだろう。

 

 第一優先は、竜を突破してわえ様を討ち取る事。

 ジークフリート達ならファヴニールの方はきっちりと仕留めるだろうから、そうなれば恐慌状態にある竜たちも都市を避ける形で散るはずだ。

 竜の群れの流れをマギスフェアに指向させている要因がなくなるからな。

 その後は、恐らくアルビオンとの戦いになだれ込むことになるだろうが。

 

 ――――目を閉じ、深呼吸をして、己に問う。

 心は決まっているかと。

 もう、大丈夫だ。

 納得のいく俺らしい理由は、ちゃんと見つかった。

 

 目を開いて、号令を発する。

 正直な話、こんなのは俺のガラではないんだが、他に誰がいるのかと全員が見てくるから仕方がない。

 

「これより、ヴリトラおよびファヴニールの迎撃作戦を行う。大丈夫、俺達は勝てる」

 

 そのための準備も策も、しっかりと用意してきたのだから。

 楽ではないだろうが、勝算は十分だ。

 

「全力を尽くしてくれさえすれば、後は気負うほどの事もない。勝つべくして勝つとも」

 

 全員の顔を見渡して、戦意が十分であることを確認した。

 

「それでは総員、行動に移ってくれ」

 

 それぞれが、らしい返事で応えてくれて、それぞれの戦場へと駆け出した。

 

 

 

 

「これはまた、ずいぶんと壮観だな」

 

 外壁の外に出てその光景を目にした俺は思わずそうこぼした。

 大地には竜がひしめき、空もまた竜によって半分以上が覆われようとする勢いである。

 パスを通してメリュジーヌを強化して、目配せと共に言葉を掛けた。

 

「存分に飛んで良いぞ。邪魔な竜はそのことごとくを墜としてしまえ」

 

 イーリアスのフェイスヘルメットの中で、笑みを作れば、メリュジーヌもまた笑って返してくれた。

 

「ふふっ、任せて!」

 

 メリュジーヌが翼を生やして飛び立った。

 

「メルトリリスは、ひとまず力を温存してくれ」

 

 偽装解除状態のアロイに俺と共に搭乗しているメルトリリスに振り返る。

 

「ええ。エスコート、お任せするわ」

 

 イーリアスとアロイの動力炉をつなげて、ツインドライブ状態へ。

 アクセルを思いっきりフルスロットルへもっていき、津波と見紛う竜の群れへと突貫した。

 膨大なエネルギーを纏ったアロイは、暴力的な突破力で竜を薙ぎ払ってまっすぐに突き進む。

 

 パスによる共感で、メリュジーヌと繋がったまま、情報を共有し、ありったけのミサイルを吐き出しながら戦場を走り抜ける。

 無数のミサイルが空を舞って、ワイバーンや飛行型の大型竜種を撃ち落とし、あるいは宙で弧を描いて地上に降り注いで竜の群れの波に大きな穴をあけていく。

 

 進行方向に複数の大型竜が立ちふさがった。

 恐らくはわえ様あたりの指示だろう。

 ある程度は統率が取れるらしい。

 

「小賢しいな。その程度で俺達を止められると思うなよ! デュアルカリバー超過駆動!」

 

 音声鍵の入力と共に、両手に持ったエクスカリバーから光があふれる。

 十字を描く光の斬撃が進行方向の竜を薙ぎ払った。

 ツインドライブ状態の出力で放ったエクスカリバーの威力はそこに留まらず、進行方向にさらに斬撃が伸長して次々に竜を切り裂いていく。

 

「邪魔はさせない!」

 

 空から襲い掛かってくる竜は、メリュジーヌが一匹残らず、テュケイダイトで切り裂き、魔力砲撃で打ち抜き、アロイに近づけさせない。

 出し惜しみせずに出力を更に上げ、速度を上乗せし、エクスカリバーの超過駆動を連発する。

 ツインドライブ状態とは言っても、流石に無茶ではあるのでイーリアスの炉心が熱を持ち始めているが、とりあえず、わえ様の所まで保てば良い。

 

「あまり無茶は――――」

 

 耳元近くでメルトリリスが言ってくるが、そいつは聞けない話だな。

 

「今が無茶のしどころだろ? 大丈夫、この位なんてことはないさ」

 

 実際、まだまだだ。

 前回に比べれば魔力には余裕があるし、炉心の熱だって危険域には程遠い。

 

「任せるって言っただろう。きっちりとエスコートしてやるから、信じてつかまっていろよ」

 

 意識して不敵に笑ってそう言って返せば、俺に捕まる手により強い力がこもったのがイーリアスの装甲越しでも不思議と感じられた。

 そして、メルトリリスは強い感情の色を乗せた声で言葉を紡いだ。

 

「貴方を知ったその時から、疑ったことなんて、一度だってないわ」

 

 ――――そうか。

 なら、その信頼にはきっちりと応えないといけないな。

 その言葉を噛み締めて、俺はただ前を見据えて進み続けていった。

 

 





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小話

冗長になると思って大幅にカットしていますが、リソース集めの過程で都市の人たちとの交流が結構なされています。
FGOをプレイしている人であれば、ウルクとかのような現地民の人たちとの交流の時の感じをイメージしてもらえれば、大体そんな感じです。

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