Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

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第51話   私とマギスフェア防衛戦

 

「派手にやってるわねえ」

 

 外壁の上からその光景を見ていたら思わず、そんな感想が口からこぼれた。

 そんな私の言葉を聞いていたマルタが同じようにこぼす。

 

「そうね、凄く派手にやっているわね」

 

 戦闘については安心して見ていられるのは、前のマスターとの大きな違いだと言って良いだろう。

 見た感じ、なんだかんだで精神面も頑丈なのかしら?

 いや、あれは頑丈っていうより、やりくりが上手いだけか。

 単純に人生で得てきた経験値でどうにかしてる感じなんだろう。

 なんていうか、ぬらりと受け流している感じ。

 

「……覚悟、決まっちゃったか」

 

 あの性格じゃあ、過程はどうあれ結局はそれを選択したんだろうけど。

 

「その口ぶり、貴方の意見はクリームヒルト寄り?」

 

 難しい所だ。

 これで彼が前のマスターのように無力な人間だったら、巻き込んだ連中を後ろから蹴っ飛ばすくらいはしただろう。

 だが彼はちょっと、規格外が過ぎる。

 

「思う所がないと言ったら嘘になるでしょうね。でも。他に誰が出来るのか、って言われちゃうとね」

 

 ひどい話だとはおもう。

 だが、彼に希望を見てしまう気持ちもわかるのだ。

 能力面でも、人格面でも。

 あんな力を持ちながら、あの感性を持ち続けられるのは一種の奇跡だ。

 思うに私があのタイミングで呼ばれたのは、ヴリトラへのカウンターである以上に、彼に納得のいく選択をさせるためという意味合いの方が大きいのではないか。

 

「それにメルトリリスのあんな態度を見ていれば、本当にそれしかなかったって、わかってしまうし」

 

 少なくとも私の知っているメルトリリスは、あんな表情をするやつではなかった。

 

「まあ、ね。露骨に不快感を示しているクリームヒルトでさえ、あの子には何も言わないくらいだもの」

 

 いったい何をどれだけ失って、そして背負う事になったのか。

 データを引き継いでいるだけで実際に体験したわけでないはずのBBですら彼に対しては態度が違う。

 成立過程に差異があるとしても根の性格は変わっていないように見える、あのBBがである。

 

「だから私たちは、私たちに出来ることで助けないとね」

 

 たらればを言っても意味がない。

 すでに彼は巻き込まれていて、覚悟も決めてしまった。

 だったら私たちに出来るのは、少しでもその負担を減らすくらい。

 

「そうね。英霊として、それくらいはやってみせないとね」

 

 彼の突撃で数が減ってなお無数としか言いようのない竜の群れを見据えて、手に持った旗を高く掲げた。

 その私の横でマルタが手に持った錫杖を握りしめる。

 会話をしている間に、空を飛べる竜たちが移動速度の関係から地上の竜たちに先行して街に接近してきた。

 

「操った竜たちで、飛行型の頭を押さえるからそれに合わせて迎撃を」

 

 シオンに渡された通信機の通話をオンにしてシャドウフォートに要請する。

 シャドウフォートは都市内の空き地に陣取っているが、都市外までその射程は届くらしい。

 

『了解しました。相手の高度が下がって動きが拘束されたのを見計らって火力支援を行います。合わせて街の方にも防衛機能による火力支援を要請しておきますね』

 

 こんな状況でもシオンからはしっかりとした返答が返ってきた。

 比較的安全な位置にいるとはいえ、彼女もなかなか肝が据わってるわね。

 まあ、世界が違ったとしても、あのシオンなら当然か。

 

 それじゃあ、始めましょうか。

 シャドウフォートから供給される魔力を思いっきり消費し、近づいてきた竜たちへと支配の手を伸ばす。

 掌握した竜たちを指揮して支配から漏れた竜たちを攻め立てた。

 徐々に高度の優位を奪って行き、しばらくして完全に私の支配している竜たちが頭を押さえた。

 

「シャドウフォート!」

 

 通信機に向かって呼びかけるが、私が言うまでもなく、シオンが判断を下していた。

 

『BBさん、火力支援を!』

 

『ミサイル発射管、全開放! 機銃展開! いっきますよー!』

 

 シャドウフォートから凄まじい数のミサイルが飛んでいき、側面の装甲から展開した機銃が連射される。

 思った以上の火力に思わずあっけにとられた。

 そう言えばアレももとは彼の所有物だったんだっけ。

 次々に落とされて行く竜たち。

 

 さらには外壁からもバリスタが発射されて行く。

 というか、あれ何度聞いても発射音がバリスタとかいうレベルじゃないんだけど。

 なんか、光って飛んでいくし。

 竜に有効な概念を付与した特殊な礼装を飛ばしているからって話だけど。

 

 ともあれ、これなら制空権は保持し続けていられそうね。

 そうなると次の問題は地上の方か。

 

『地上の竜が射程に入りました。空は一時ミサイルのみでの迎撃に留め、副砲で先制攻撃を』

 

 流石にシオンは判断が早いわね。

 

『了っ解。副砲の弾種をバンカークラスターへ変更。大型の竜種を優先目標に設定。斉射!』

 

 シャドウフォートから発射された砲弾が弧を描いて、途中で分裂し大型竜種のいる地点を中心にして降り注いでいく。

 ……もしかしてシャドウフォートって、今の時代に存在していたらまずいのでは?

 それを言ったらアトラス院に似たような代物が山ほどあるんだろうから、今更か。

 

 生き残った小型の竜種たちが第一波として外壁に近づいてくる。

 それまで状況を見守っていたマルタが錫杖を振るって外壁の門の前に陣取っていたタラスクに指示を出した。

 

「蹴散らしなさい、タラスク!」

 

 その巨体でタラスクが竜たちを蹴散らしていく。

 私は大きく優勢に傾いてきた空の竜をある程度手放して地上の竜に支配の手を広げて、それを助けた。

 外壁の防衛機能やシャドウフォートからの援護を受けて、地上の戦況も何とか安定していく。

 少なからず外壁にも損傷が出ているが、想定の範囲内に収まっていた。

 

「とはいえ、流石にそこまで長くはもたないわね。あとはジークフリート達と、統夜次第か」

 

 戦況を安定させることには何とか成功しているが、何しろ数が多い。

 このまま攻められ続ければ、どこかで限界が来ることは目に見えている。

 戦いの趨勢は結局、ファヴニールとヴリトラを斃せるかどうかにかかっている。

 

「彼らなら何とかするでしょう。私たちの役目は、それまでマギスフェアを守る事よ」

 

 マルタは気楽に言ってくる。

 まあ、私も正直なところなんだかんだでどうにかなると思っているから、人の事は言えないだろう。

 竜殺し達は、普段はとぼけたところがあるが、決める時は決める連中だし。

 彼は人格こそ平凡だが、その力は底が知れない。

 会ったばかりの時とは違って、ああして吹っ切れているならば、きっと負けはない。

 まだごく短い付き合いなのに不思議とそう信じられた。

 

「そうね。ケチのつけようがないくらい、きっちりと守り切って帰ってくる奴らを胸張って迎えてやろうじゃないの」

 

 それくらいやってみせなくて、何が英霊か。

 私は元はと言えば虚構に等しい存在ではあるけれど、それでもかつて人類最後のマスターと多くを乗り越えてきた者として、それなりに自負もプライドもある。

 また同じように世界の危機を前にして、未来を目指そうとする者がいるというのなら、それを助ける事に否はない。

 

 ましてやこの戦いは、前周の人類にとってのまさしく復讐戦。

 アヴェンジャーとして、大手を振って力を貸すことができる。

 きっと今度は、最後の最後までだ。

 前回の別れに後悔は一切ないけれど、それでも、今度はちゃんと最後まで手伝う事が出来るというのであるならば、それに勝ることはないのだから。

 

 何しろこれは、ありえないと思っていた、二度目の奇跡。

 そんな夢の続きの中で全力を尽くさないなんて、もったいなくて仕方がないってものでしょう?

 

 

 

 





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小話

シャドウフォートはこの世界この時代の基準で考えると結構火力がヤバいです。
でも、あくまで自衛用の装備で、素体となった車両は別に戦闘用車両というわけではないという事実があったりします。

SF技術で弾倉が拡張されているため、弾薬が尽きにくいのも割と無法。
でもあくまで輸送車両の範疇なのです。
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