Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

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第52話   私とBBの後方支援

 

『都市防衛の戦況は安定して推移しています。こちらは現状の維持で問題ないかと』

 

 複数のドローンからの情報を整理したBBがモニターにマップと共に戦況の推移を表示してくれた。

 なるほど、敵はある程度は竜の群れの動きの流れの向きを変えられるようですが、細かな指揮は出来ていないようですね。

 統夜さんの方の戦闘を見るに、近場の竜種に指示を出す程度は出来ているようですが、全体としてみると無秩序な暴走、という表現がしっくりくる動きです。

 

 結果的に戦力の逐次投入に近い形になっているのは、私たちにとっては幸運だったと言えるでしょう。

 これがもっと組織立った形で明確な意図の下に動いていたら、流石に長くは持ちこたえられなかったはず。

 

「であれば都市防衛の方は良いとして、別方面から侵攻してきたファヴニールの方はどうなっていますか?」

 

 マップが都市周辺の特に竜が押し寄せている側の外壁周辺から、また別方向の少し離れた場所に切り替わった。

 敵を示す赤い点が、相当な速度で減って行っているのがわかる。

 流石は名高き竜殺し達と、その竜殺しの剣を持ったサーヴァント。

 

『あちらの観測ドローンと映像を繋ぎます』

 

 複数のドローンからの映像がモニターに映し出される。

 まず目に入ってきたのは、ジークフリートによる宝具の攻撃。

 広範囲に広がる光波が戦場を走って、竜たちを薙ぎ払っていく。

 

 その範囲に入らない位置を駆けながら、下手なサーヴァントの宝具にも匹敵しかねない威力の攻撃で、大型の竜を潰して行くシグルド。

 クリームヒルトはジークフリートの傍を離れることなく、宝具発動の隙を狙ってくる竜たちに対処していた。

 

 ファヴニールは後方のそれもかなりの高度を飛んで、高みの見物ですか。

 まったくもって、実にいやらしい。

 そして同時に、実に効果的な行動です。

 サーヴァントだって継戦能力の限界は当然に存在しますからね。

 

「何か、手を考えたいところですが……」

 

 シャドウフォートの武装は非常に強力ですが、流石にあの距離まではまともに届きませんし。

 ――――いや、ブラックバレルであれば。

 あれは性質が性質だから、距離で威力が減衰するようなものではありませんし、ここからでも届くし、当たれば殺せるでしょう。

 どうせ今周のアルビオンには成果があまり望めないのだから、ここが使い時だ。

 

「BBさん、この距離からの狙撃、当てられます?」

 

 各種の実験データや試射のデータをBBに送ったうえで端的に問う。

 BBはすぐに、ちょっと自慢気な声で返してきた。

 

『当てるだけならば何一つ問題ありません。ただし、相手が回避行動をとらないことが絶対条件です』

 

 竜というのは、実に埒外の生き物なので、あの巨体からは考えられない反応でありえない動きをしますからね。

 それは前回の統夜さんたちとファヴニールの戦闘からも明らか。

 なるほど、確かにこの距離からでは、撃ったことに気づいてから避けるくらいはしてきてもおかしくないでしょう。

 ならば、回避ができない状況に持ち込んでもらえばいい。

 ちょうど近づいてきた竜を斬り倒してわずかに手の空いたクリームヒルトに通信を繋げた。

 

「クリームヒルトさん、一つ相談があるんですが……」

 

 こちらからのプランを告げると、最初驚いたがすぐに静かになって考え始めた。

 彼女はバーサーカーとは思えないほどに理知的で、こういう時でも頼りになってありがたい。

 

『どこかで勝負をかける必要はあったし、そのための手札が一つ増えるなら、願ってもない話ね』

 

 私たちの会話が聞こえていたらしいジークフリートさんがシグルドさんに軽く剣を振って合図をした。

 映像の中で頷いて同時、残りの二人とも通信が繋がった。

 

『俺たちは何とかしてファヴニールに隙を作ればいいわけだな?』

 

 ジークフリートがそう言えば、すぐにシグルドから提案が。

 

『そういう事であれば、当方に腹案がある。今少し機を見るつもりだったが、もう一枚の手札が加わるというのであるならば、決めきれるだろう。すまないが、ジークフリート。発射台になってくれ』

 

 なんとなく、やろうとしていることに想像がついて、驚くとともに呆れてしまう。

 それはクリームヒルトも同じだったようで、ため息とともに口を開いた。

 

『無茶を考えるわね。もう少し時間をかけて安全策を取っても良いと思うけど?』

 

 そんなクリームヒルトに、ジークフリートとシグルドは不敵に笑った。

 映像越しでもわかる、アレは完全にやる気の顔だ。

 

『並外れた力があろうとも、あんな普通の精神性しか持たない彼が、誰よりも最前線で戦っている』

 

 ジークフリートが決然と言い、その言葉にシグルドが深く頷いた。

 

『当方にも英霊としての矜持がある。彼のような人間がああして戦っているのであるならば、応えねばなるまい』

 

 シグルドもまた、意思に満ちた声で語る。

 

『ほんと、これだから英雄って生き物は――――! わかったわよ、付き合えばいいんでしょう!』

 

 クリームヒルトは腹立たし気に言ってから、少し声のトーンを落として続けた。

 

『私だって、彼には思う所がある。英霊として、そして一人の英雄の末路を見届けたものとして』

 

 それは、私だってそうだ。

 世界の事を教えられた時、とんでもないことに巻き込まれたと思ったけど、同時に巻き込まれてよかったとも思った。

 こんな大きすぎる問題を彼一人に背負わせるなんて冗談じゃない。

 それに結局は関わる事になるだろうという理由があったのが見え見えではあるにせよ、彼の方から巻き込んでくれたのは、少しうれしくもあった。

 

 私にとって彼は、人として生きる事の意味を教えてくれた兄のような人であり、たとえばシャドウフォートを用意するようなことを共にやらかす悪友でもある。

 

「では、そちらはお願いします。こちらはこちらで、タイミングを合わせますので」

 

 今は余分になる思考を打ち切って、作戦のための準備を始めた。

 ブラックバレルのセーフティーを解除し、使用可能状態へ。

 砲身が展開され、ファヴニールが存在する方向の空へと向いた。

 

『アンカー展開、車両固定』

 

 掌紋で認証を通して、最終セーフティーを解除する。

 

「魔力充填、続けて疑似運命力装填」

 

 疑似運命力とは、複数の魔獣などから抽出して合成した人造の運命力。

 ブラックバレルという、天寿へと干渉する兵器に必要な令呪と共に込める運命力の代用品だ。

 発案は、統夜さんである。

 あの人の考え方は、なんというか本当にアトラス院的で、時々義父が本気の勧誘を行っていたりする。

 

 人間に運命力を削らせなくても別の何かで代用できるならすればいい。

 生け贄なんてありふれた魔術の基本的な手法だし、半端な人間よりむしろ強靭な化け物の類の方が単純な運命力とか強そうじゃないかと、軽く言うのだ。

 あわない部分は加工すればいいとも。

 

 あの人は時々そういう怖い所を見せる時がある。

 情を働かせる必要のない部分では、ひどく冷静で分解的なのだ。

 そして、もとが魔術師でないからか、発想に枷がない。

 それが面白くて、気が付けば一緒にとんでもないものを作ってしまっていた、なんてことが度々あった。

 

『こちらはいつでも行けます!』

 

 彼との思い出に思いを馳せるうちにこちらの準備が整って、BBがゴーサインを出した。

 映像の中で三人の英霊たちが動きだす。

 ジークフリートが宝具の発射体制に入って、クリームヒルトが隙を突こうとする竜たちを寄せ付けないように立ち回る。

 

 シグルドはいったん大型竜を潰す作業を止めて、進行方向の竜種を切り裂きながら、ジークフリートの方へ走る。

 宝具の発射準備が整って、ジークフリートが剣を振り下ろした。

 ファヴニールのいる方向だ。

 これによって、ファヴニールまでの進路が開けた。

 宝具を打ち終えたジークフリートの下にシグルドがたどり着き、彼に向って飛び掛かった。

 

「ああ、やっぱり、そうするわけですね」

 

 シグルドが、ジークフリートの構えたバルムンクの刃の腹に足を乗せた。

 まるでバットをフルスイングするかのようなフォームでジークフリートはシグルドの乗ったバルムンクを振りぬく。

 絶妙のタイミングで自らも剣を蹴ったシグルドは、砲弾すら軽く超えるような速度で空へと打ち出された。

 みるみる縮まっていく、シグルドとファヴニールの距離。

 

「BBさん! 照準の準備を!」

 

『ええ、わかってます!』

 

 ドローンからの情報や、シャドウフォートのセンサー類の情報をもとに、ファヴニールを捕捉する。

 

『絶技用意。太陽の魔剣よ、その身で破壊を巻き起こせ!『壊劫の天輪(ベルヴェルク・グラム)』!』

 

 とんでもない方法で強引にファヴニールを射程に捉えたシグルドが、宝具を発動した。

 ファヴニールはかなり動揺した様子で、それでも何とか反応して直撃は避けたようだが、翼に一撃を受け、無理な回避もあって動きが止まった。

 

『主砲照準、ブラックバレル・レプリカ、発射します!』

 

 存在の天寿を穿つ魔弾が、光の尾を引いて空へ飛び立った。

 その光はすぐにこちらからは見えなくなり、代わりに映像の中に現れて、見事にファヴニールに着弾した。

 空から真っ逆さまに落ちていくファヴニール。

 これで、こちらは決着ですね。

 

『ファヴニール、討伐を確認。あとは統夜さんの方ですが』

 

 声に明らかに心配の色が乗っていた。

 BBは口は悪いし、すぐにふざけた態度をとるが、意外と統夜さんに対しては心配症でもあることに最近気が付いてきた。

 しかし、メルトリリスもそうなのだけど、誰も彼も、統夜さんの事を心配し過ぎですね。

 いや、同じ男性だからなのか、ジークフリートとシグルドはそうでもなかったかもしれません。

 

 彼ってアレで結構強かというか、いざとなれば逃げも隠れもできる人なのでそういう方向の心配はほどほどで良いんですが、付き合いが短いと分かりにくいかもしれませんね。

 今回は珍しく長く悩んでいましたが、問題の大きさを考えればある意味当然。

 戦いに出る前には、もうなにがしかの結論が出ていたみたいですし、ああなったらもう心配するだけ無駄です。

 

 むしろヴリトラには、ちょっと可哀そうなくらいかもしれませんね。

 あの人、ストレスがたまった後って結構無茶やらかしがちですし、ヴリトラに対してはかなり腹に据えかねたのか、策を考える時に凄く悪い顔してましたからねえ。

 

 

 





いつも閲覧ありがとうございます。
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小話

シオンから見た統夜という人間は、普通の人間だからこそ無理をし過ぎないし、人格が出来上がっているからなんだかんだストレスへの対応や処理も上手い、そんな人物です。
だから彼女は他のメンツに比べると、気をつかいはしてもそこまでの心配はしていません。
このあたりは、付き合いの長さの差と言えるでしょう。

ジークフリートやシグルドは、同じ男だからという部分と会話の感触で、そんな心配しなくてもこいつなら何とかするだろ、と流しています。
でも、男として英霊として、
「こんな普通な精神性の奴がこんなに頑張ってるなら、俺達はもっと頑張らないとカッコつかないよなあ?」
と、お互いに目と目で発破をかけあっています。

クリームヒルトは、そんな彼らを見てため息をつきながらも、カッコつくとかはともかく統夜の事情を知っていれば、自分も頑張らないわけにはいかないので付き合うしかないという、苦労人ポジ。
あんな英雄らしい英雄二人のストッパーは一人では手に余るのは当然だよね!



追記

流石に疑似運命力の下りは説明が薄すぎたと感じたので活動報告で設定をあげています。
本編中やあとがきで書くには長かったので、ご容赦を。
興味のある方はふらっと見に行ってみてください。

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