Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

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第54話   アルビオンと俺のチートの本領

 

 世界竜アルビオンをこの目で見た正直な感想を言おう。

 正直ないわー。

 いや、もう、それしか言いようがない。

 あれどう見ても、時間神殿とか対ORT戦とかの戦力で戦うべき相手だろ。

 

 前周の人類、アレを相手によくぞブラックバレル・レプリカを当てるまでもっていったもんだ。

 感嘆しかない。

 ほぼほぼ時計塔の総戦力に、サーヴァントも相当な数がいたらしいが、それでも大金星だと思う。

 

 なるほど、こんなのが後いくつあるかわからない様な状況では俺のチートなしでは越えられないというのも納得である。

 

『統夜さん、聞こえていますか! 撤退です! いったん特異点から脱出し、態勢を整えるべきです!』

 

 シャドウフォートからシオンが通信を入れて来て叫んだ。

 

『最低でも三等惑星級を超える出力規模です! こんな少人数で相手に出来るものではありません!』

 

 まあ、まったくもってその通り。

 普通ならその判断が正解だ。

 だが、しかし、である。

 

「いや、あれは此処で、俺が倒す」

 

 目覚めさせてしまった以上は、撤退はない。

 外にどんな形で影響が出るかわからないし、今まで守ってきたマギスフェアだって助からないだろう。

 

『正気ですか!?』

 

 正気を問われるのも、まあ納得ではあるんだが。

 

「大丈夫だ、信じろシオン。俺は出来ないことを出来るとは言わない」

 

『――――! はぁ。わかりました。こちらで出来る事はありますか?』

 

 俺の言葉でシオンは溜息を一つだけ挟んで冷静さを取り戻してそう問う。

 

「こちらの二人を迎えに来てやってくれ。なんだかんだで消耗しているだろうしな」

 

 竜たちはすでに散り散りに逃げ始めていて、戦闘は完全に収束に向かっている。

 

「そういう事だから、二人はシャドウフォートと合流していったん下がってくれ」

 

 上空から降りて来ていたメリュジーヌと元から傍にいたメルトリリスに声をかけた。

 

「手伝いは必要なさそうだね。わかった、みんなと一緒に待ってる」

 

 メリュジーヌは素直に頷いてくれた。

 問題は、泣きそうな顔のメルトリリスか。

 アルビオン相手では完全に不足になるイーリアスの装備を解いて生身の状態でメルトリリスと向き合った。

 

「メルトリリス。君の口から聞かせて欲しい。君が寄り添った、前周の人類の話を。彼らは格好良かったか?」

 

 答えは分かり切っていたが、それでも聞いた。

 メルトリリスは、瞳を揺らし、目を潤ませて、それでも涙をこぼすことなく俺の問いに答える。

 

「みんな、本当に頑張ったのよ……どんな絶望的な状況だって、笑顔を絶やさずに、未来を目指して」

 

 それは、覗き込んでしまった彼女の夢の内容のままの話だ。

 

「最期の最期まで、人類がたった一人になっても、諦めなかった」

 

 そして、夢では見る事のなかった、人類の末期の話でもあった。

 

「私たちは、そんな誇らしい、愛すべき彼らに託されて、ここに来たの――――」

 

 泣きそうになったのだろう。

 メルトリリスは、言葉を詰まらせた。

 俺には、失われてしまったものは返せない。

 今周でその彼らが失われないように努力することは出来るが、それだけだ。

 でも一つ、彼女にしてあげられる事はある。

 

「なら、しっかり見ておけ、メルトリリス。そんな彼らが、彼らに託された君たちが選んだ男の力を」

 

 その、巻き込んでしまった俺への罪悪感。

 それくらいは拭ってみせよう。

 

「君たちの選択の正しさを見せてやる。ついでに、俺にとってはこれくらい、どうってことはないって思い知らせてやろう」

 

 ほんの少しだけこぼれた目の端の涙を指で拭ってやって、不敵に笑ってみせた。

 

「俺を巻き込んだなんて、そんな罪悪感は抱くだけ無駄だって事を教えてやるよ」

 

 本来の俺からすればらしくもなく格好をつけて、背を向けて歩き出す。

 

「だからもう、そんな顔をしなくていい。すべてが終わった後にでも、笑顔でありがとうと言ってくれれば、それで十分だ」

 

 ずっとそんな顔をされるより、そのほうがよっぽどモチベになる。

 俺は、泣き顔よりも、笑顔の方が好きだからな。

 

 ――――ああ、いま、この瞬間に最後のピースがはまった気がする。

 

 そうだ、俺が戦う理由はこれだ。

 前周の人類には悪いが、人類の未来だとか希望だとか、俺には正直しっくりこない。

 ちょっとスケールのでかい話と、あんまりな悲劇に目がくらんだけど、俺の根本は変わらない。

 自らの手の届く範囲で、自分の力で叶えられる限度まで。

 

 もはや前周の悲劇は遠く、俺の手は届かない。

 今周の人類の命運だって、大きすぎて手に余る。

 だから俺は、目に映る範囲の手が届く相手のために戦う。

 今この時は、ずっと苦しそうにしている、メルトリリスの為に。

 

 悪いが、人類の命運とかはついでの結果論だ。

 俺の理由はそんな平凡な、ちっぽけなもので良い。

 いいや、それで、じゃないな。

 それが、良い。

 

 きっと、それこそが平凡で凡庸な俺らしい理由だ。

 

「『ブレイカー』、『ブレイズアトレイラー』アクティベイト」

 

 自分の存在が、切り替わっていくのがわかる。

 この二つは、兵装やアイテムの名前ではない。

 MMOにおいて俺が就いていたクラスの名前だ。

 直訳すれば、破壊者と先駆者といった意味を持つ。

 

 そもそも今に至るまで、俺はアイテムや装備こそ活用していたが、キャラクター自体の持っていた力については、戦闘経験値しか使っていなかったのである。

 ずっとイーリアス以上のパワードスーツを使わなかったのには、そもそもそれ以上の装備にはチートなしの素の体では耐えられないという理由もあった。

 

 正直、素の体のあの性能はチートの影響でキャラクターとしての力が漏れ出ているからとかだと思っていたんだけどなあ。

 SF世界の強化された人間にある程度迫れるような肉体が普通に生まれてくる型月世界の恐ろしさよ。

 

 ずっと使用を避けてきたのは、強力すぎるというのもあったが、正直に本音を言えば、怖かったのだ。

 別に一度使ったら取り返しがつかないとかではない。

 オンオフは割と気軽にできる事は感覚としてわかっていた。

 だが一度使えば、使うか使わないかという天秤は、絶対に使う方に大きく傾く。

 

 こんな異常な力を持って、使うという方に天秤が大きく傾いた状態で、ちゃんと自分らしく生きていけるのか不安だった。

 だが、もう大丈夫だ。

 俺は二度と、自分のこの、自分らしい理由を見失わない。

 さあ、それじゃあ、始めようか、アルビオン。

 

「『ワールドブレイカー』アクティベイト」

 

 迷わず、シナリオ上の最終装備であるパワードスーツを纏った。

 世界を破滅させ得る存在に対抗するために、世界を破壊し得る力をもって為す。

 そんな意味を込められた対ワールドエネミー決戦兵装だ。

 地を蹴って、空へと飛び立った。

 

 一瞬でかなりの高空へと舞い上がり、飛んでくるアルビオンを迎え撃つ。

 彼我の距離がある程度縮んだところで、まずは下準備に入った。

 量子ストレージから空間隔離兵装を呼び出し、決戦場を形成する。

 現れた柱のような杭が大地に突き立ち、空間を割ってその狭間に新たな空間を差し込む。

 

 同時に駄目押しとしてついさっき手に入った結界宝具も展開した。

 ヴァジュラがその数を増やして立方体の角をなして、キューブ状の結界を形成した。

 完全に通常空間から隔離することも可能なようだが、今回はメルトリリスに戦う姿を見せる必要もあるので隔離までは行わなかった。

 これだけ念を入れれば、俺とアルビオンが全力で戦っても外に被害は出ないだろう。

 

 アルビオンは、余裕のある態度で決戦場の形成を見守っていた。

 純血の竜らしい、ある種の傲慢さ。

 とはいえ、実力に裏打ちされたそれを、油断とは言うまい。

 

「クアッドカリバー、アクティベイト」

 

 四本のエクスカリバーを呼び出して、周囲に浮かべた。

 この四本を軸に後三つの兵装を状況で切り替えて本体と別に同時操作して戦うのが俺本来のバトルスタイル。

 俺の持つ二つのクラスの組み合わせによって可能になる、ソロにしてパーティー火力に届くと言われる、全会一致の壊れ構成。

 種を明かせば、本来パーティーメンバーが入る枠を自分の装備で賄う特殊スキルである。

 使いこなせない場合、素直に傭兵NPCを入れたほうがマシになる扱いの難しいスキルでもあったりする。

 

 しかし、ホントに、余裕を崩さないな、アルビオン。

 そこまで来ると、流石に油断だと思うぞ?

 ちょっとばかり、痛い目を見せようか。

 

 エクスカリバー四本を同時に起動した。

 ワールドブレイカーの強力な炉心からエネルギーを供給されたエクスカリバーの出力は、ただの通常攻撃がイーリアスで使用したときの超過駆動を上回る。

 

 四方から襲い掛かる長大な光の刃に流石のアルビオンも動きを見せた。

 巨体からは考えられない、というか、なんだあの鋭角の空中機動。

 そんな音速以上の速度で気軽に直角以下の角度で曲がるなよ。

 

「――――!」

 

 あ、今嗤いやがったな?

 そんな攻撃が当たるかって?

 ようし、いい度胸だ。

 受けて立ってやろうじゃないか、

 

 アルビオンの戦闘機動にワールドブレイカーの機動力で並ぶ。

 同時にエクスカリバーも追随させ四方八方からオールレンジ攻撃を行った。

 忌々し気な目でこちらを睨みながら、それでも被弾を許さずに飛び続けるアルビオン。

 

 今度はあちらからも仕掛けてきた。

 すれ違いざまに手の鉤爪で切りかかってくる。

 こちらは拳で迎え撃って、完全にパリィしてのけた。

 

 その時の衝撃が空間を伝播して、不幸にも結界形成に巻き込まれていた竜たちが、一瞬で血煙へと姿を変える。

 結界はこの程度なら揺らぎもしていないようでちょっと安心した。

 お互いに何度か交差し、攻撃を弾き合う。

 アルビオンも飛びながら魔力砲撃を交え始めて、状況は完全に超高速の空戦の様相となった。

 

 結界内の大地に向かった攻撃がキノコ雲を生み出し巨大なクレーターを残し、結界に被弾しては激しい閃光の華を咲かせる。

 正直ちょっと舐めてたな。

 ここまで有効打を与えられないとは。

 いまいちまだ力が馴染んでいないとはいえ、ここまで回避されるのは驚きだ。

 

 相手も同じような気持だったようで、新たに手を打ってきた。

 アルビオンの口に集まる膨大な魔力。

 ――――ブレス攻撃か!

 

「クアッドカリバー、超過駆動!」

 

 音声鍵は先行入力済み。

 二本をブレスへの迎撃に回して、もう二本はブレスで出来た隙を狙う。

 

「――――!!!」

 

 凄まじい咆哮と共に星を薙ぐようなブレスが放たれ、二本のエクスカリバーの超過駆動と一瞬拮抗した。

 一瞬だったのは、撃ち負ける事を瞬時に察したアルビオンがブレスをすぐに打ち切って回避に転じたからだ。

 打ち切られたブレスを貫いて、それまでアルビオンのいた空間を貫く閃光。

 

 その後の隙を狙った残りの二本の攻撃もアルビオンは回避してのけた。

 だが、わずかに翼をかすって、その機動を鈍らせることに成功する。

 

 ――――ここが決め時だ。

 武装を呼び出せる残りの三枠を使ってガトリング系の射撃兵装を召喚して、アルビオンの動きを制限し、追い込んでいく。

 同時にワールドブレイカーの炉心の出力を高めた。

 

「ワールドブレイカー超過駆動! コード『スター・オブ・ジエンド』!」

 

 ひどく単純に『終わりの星』と名付けられたその力を解放する。

 ワールドブレイカーの全身から凄まじいエネルギーが放出され、ただでさえ異常なスペックが更に激増した。

 ほんの一瞬、ウラシマ効果を無効化するキャンセラーが発動し、通常の空間を光速すら超えて飛ぶ。

 流石のアルビオンも、オールレンジで激しい攻撃を受ける中では、これに反応できなかった。

 

 俺の蹴りが、アルビオンの体ごとその竜の炉心を蹴り穿つ。

 蹴りぬけた先で、超過駆動を終了し、纏っていた光を霧散させた。

 振り返れば、地へと落ちていくアルビオンが見える。

 そのまま、地面に叩きつけられるのは忍びなく感じて、空中で受け止めて、ゆっくりと地面に降ろした。

 

 余計な真似をって顔だな?

 

「別にいいだろ。お互い、自分の望んだ未来のために戦ったが、別に憎くて戦ったわけじゃないんだから」

 

 今度は鼻で笑いやがったよこいつ!

 くっそ、結構愉快な奴だな!?

 メリュジーヌの親みたいなものだと思えばちょっと納得だけども!

 

 ……別の出会い方だったら、もっと仲良くやれたかもしれないと思うとちょっとだけ残念だ。

 アルビオンはゆっくりと目を閉じた。

 なんだかんだで最後の戦いが楽しかったのか、その顔はどこか満足そうにも見えた。

 

『お見事でした、統夜さん』

 

 BBから通信が入る。

 

『シオンさんは貴方の戦いを見て、ちょっと放心状態なのでとりあえず私から』

 

 あーうん、それはしゃあなし。

 今頃、この危険因子をどうしたものか、でも持っているのはこの人だしとか、頭の中でぐるんぐるんしてるんだろうなあ。

 ああ、そういえば、いい機会だから、一つ聞きたかったことを聞いておくか。

 

「流石にそんな性格悪いことはないと思ってはいるんだが、一応聞かせてくれ。お前のオリジナル、メルトリリスの事は狙っていたわけじゃないよな?」

 

 ないとは思うが、流石に俺を焚きつけるためにあの子を利用したというなら苦言の一つくらい……いや、もう、文句をいう事も出来ないわけか。

 

『私のオリジナルも、さすがにそこまではしませんよ。なんだかんだ貴方に嫌われたくはなかったでしょうし。こちらに来た体を持った代表がメルトリリスだったのは、純粋に時間遡行への適性の問題です』

 

 まあ、それはそうか。

 

『オリジナルは、ただ、信じていたんです。貴方は手を伸ばす人だって』

 

 どこか優しく、BBが語る。

 

「――――そうか。それで、こちらのBBとしてはどうだった?」

 

 俺の問いにBBは、映像の中で破顔して答えた。

 

『それはもう! 花丸の満点です!』

 

 

 





本日二度目の投稿、お楽しみいただけたでしょうか。


さて、これにてデスマーチNo.1、実質の決着です。
後は少し別キャラの視点を挟んだりしつつ、リザルトと特異点の幕引きといったところでしょうか。

この章は、主人公が自分の理由を定めるまでの物語であり、物語の規模を拡張するとともに、主人公の本領を開示する章でもありました。

ご覧いただいたら納得いただけたとは思うのですが、まあ、こんな力は特異点の外では使えないよねという。
何なら特異点内でも結界なしに使うのは憚られます。
主人公が使っていた空間隔離兵装もあれ、言ってしまえばディ〇イディングドライバーなので、特異点外で使えるようなものじゃありません。

なので今回手に入れたわえ様謹製宝具は、今後の彼にとって非常に重宝するアイテムになるでしょう。
わえ様は(この特異点では)死して便利アイテムの残しました。


そんなこんなで、デスマーチNo.1、お楽しみいただけていれば幸いです。
あと数話で章を閉じ、次は前回より恐らく長くなると思われるインタールードです。
色々な人を巻き込む話になるかなあ。


良ければこれからも閲覧してやってください。
お気に入り登録や評価投票、感想などによる応援も、是非よろしくお願いします!

誤字報告にも本当に感謝です。
でもこれについてはもっと減らせるようにしていかないといけませんね。

それでは、あらためて、これからもよろしくお願いいたします。

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