Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

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第57話   俺と事件の終結

 

「よう、兄ちゃん、派手にやったな! ここからでも見えてたぜ!」

 

 いつぞやの街歩き以来の付き合いである果物屋のおっちゃんに声をかけられた。

 リンゴを投げ渡されて危なげなく受け取る。

 

「持っていけよ。ありがとよ、スカッとしたぜ!」

 

 マギスフェアに戻ってから、こんな風にいろんなものを渡されては歩きながら食べたり、ストレージに突っ込んだりしている。

 リンゴなら歩きながら食えるので、さっそくかじった。

 

「うん、やっぱりここの果物は旨いな」

 

 なんというか自然が豊かだからなのか、果物とか野菜とか凄く旨いんだよなこの特異点。

 

「だろう? 自慢の商品だからな!」

 

 軽く会話をかわして手を振って別れた。

 そんな風に街を歩きながら庁舎にたどり着く。

 建物に入って、職員の人たちに挨拶をしながら、ゲラフの執務室へ通された。

 あ、こいつ、酒飲んでやがる。

 

「こんな真っ昼間から、執務室で酒か?」

 

 まあ、なんとなく気持ちは分からなくはないんだが。

 

「祝い酒だ。これ位は許されるだろうよ」

 

 口ではそう言いつつも表情はしんみりとしたもので、その行為にはきっと今までにこの街で失われた命に対する追悼も含まれている事が伺われた。

 少なくとも俺が来てからこの街で大きな被害は起きていない。

 だからきっと、その追悼は、特異点の基となった滅びた世界の彼の抱く物なんだろう。

 

「そういう事なら、一つ、とっておきの酒をこちらから出そう。短い間ではあったが、この街には世話になったからな」

 

 ストレージから一本の瓶を取り出す。

 最高に旨いとフレーバーテキストに記されている、SF世界の酒である。

 封を切って、空になっていたゲラフの杯に注いだ。

 興味深そうに香りを確かめ、一口味わったゲラフの目が見開かれた。

 

「こいつは、べらぼうに旨えな!?」

 

 そうだろうなあ。

 何千年も先の技術で生み出された最高の酒なわけだから。

 俺もいつかこの酒を、二世と一緒に飲む日が楽しみなのだ。

 

「そいつは進呈しよう。存分に楽しんでくれ」

 

 その後は、俺も一杯どうかと誘われたが、最初の酒は友人との先約があるからと遠慮させてもらって、酒の代わりに茶を貰い、しばし、なんて事のない会話を楽しんだ。

 会話と、いくつかの事務的なやり取りを終えて執務室を出て、扉を閉めるその瞬間の事である。

 

「ありがとよ、ヒーロー。おかげで俺達も、良い夢が見られたぜ」

 

 彼らもまた魔術師だったからなのか、あるいはもっと別な理由か。

 もとの世界のマギスフェアから存在をコンバートされている事もおそらく無関係ではない。

 それは自分たちの真実を知らなければ出てこないであろう言葉だった。

 

 かつて滅びた世界の、かつて生きた人々。

 滅びを越えたことで世界の可能性としてこれからの俺の生きる世界に溶けていく存在からの、それはきっと、感謝とエールであるのだろう。

 

 扉は閉じられて、俺はもう振り返ることはしなかった。

 

 

 

 

 街でのあいさつを済ませてシャドウフォートに戻ると、そこには竜殺し達も含めたすべてのサーヴァントと、いつものメンバーがそろっていた。

 BB曰く、複数の案件に同時に介入しなければならない事態も考えられるのだから、可能な限り戦力は補強しておくべき、だそうで。

 シオンはしばし一時期流行ったチベットスナギツネのような顔をしていたが、状況を考えれば致し方なし、そもそも俺がいる時点で今更だし、と諦めていた。

 

 冬木の戦力も考えると、そろそろ俺抜きでも世界征服とか狙えそうな戦力である。

 まったく魅力を感じないからやらないが。

 現実世界に戻るにあたって、とりあえずはシャドウフォートの中に潜伏してもらって、その後は大聖杯の存在する冬木に移動してもらう予定である。

 

 日本はちょっと魔術師的には特殊な土地柄で、他の国の魔術師なんかの力の及び方が限定的だったりして、彼らを隠すのに都合が良いのだ。

 あとサーヴァントの維持を考えた面でも、大聖杯の存在は都合がいい。

 聞けば、前周においてのBBたちの拠点も大聖杯を中心としたものだったらしい。

 

 実は現在、俺とシオンとBBで色々と話し合って、大聖杯の存在している土地の買い取りと、その土地への拠点の構築計画が持ち上がっていたりするのだ。

 これが成立した場合、冬木にFGOにおけるカルデアベースのような場所が爆誕することになる。

 イギリスとの移動も冬木との二点間であれば、シャドウフォートの機能とメディアの協力があれば比較的容易に行える見通しである。

 

 まあ、まだしばらくは先の話だけどな。

 そもそも色々整備しないと折角戦力を集めても、全部を同時に運用することは難しい。

 FGOでなんだかんだ特異点への持ち込みサーヴァントの人数が制限されていたのも納得である。

 

 SF技術を盛り込んでアトラス院の全面協力を得たシャドウフォートでさえ、今ここにいるメンツを維持するだけでかつかつだ。

 色々と技術的なアップデートとか考えないとな。

 できればFGOのように特異点外からの観測やバックアップが行える体制も欲しい。

 

 今回だって冬木からの戦力補充や、それが無理でもメディアからの助言が得られるだけでもどれだけ助けになった事か。

 防衛戦とかずっと楽になっていたはずだ。

 まったくもって、課題が多いな。

 

「しかし、本当に全員付き合ってくれるのか? 多分あれだぞ、すごく苦労するぞ?」

 

 あれだ。

 全員で過労死枠ばりに働く羽目になるぞ、きっと。

 そんなことを思って聞くが、全員意志は固いようだった。

 

「事情を知っていて貴殿に背を向けるようでは英霊などと名乗れまい。今回の戦いで貴殿の生き様は存分に見せてもらった。貴殿は当方が剣を預けるに足る男だとも」

 

 俺のこれまでの戦いを見てか、呼び方を変えたシグルドがそんな風に言えば、ジークフリートも深く頷いた。

 

「シグルドに大体言いたいことは言われてしまったが、追加で言えば俺としても君の人生設計が実現するように微力ながら力になると約束したからな」

 

 流石に、律儀な男である。

 そんな男たちに呆れたように肩を竦めながらも、クリームヒルトは俺の方を見て言う。

 

「まあ、確かに放っておくのも気が咎める話ではあるものね」

 

 ほんとに、なんでバーサーカーなんだろうな、この人。

 いや、逸話的には納得なんだが、基本的に根の人が良すぎるというか。

 

「まあ、水臭いことは言いっこなしって事よ!」

 

 そして、このメンツの前だとほとんど猫を被らなくなったマルタさんが俺の肩を叩く。

 最後に俺がジャンヌ・オルタに目を向けると、彼女は鼻を鳴らした。

 

「この手の仕事は慣れっこなの。変な気遣いは不要よ」

 

 斜に構えてみせているが、絶対についていくからな、という圧を感じた。

 ほんと、英霊ってやつは。

 今回出会った面々が、特に面倒見のいいメンツだったってのもあるんだろうが、ありがたい話である。

 

『では、話もまとまったようですし、現実世界へと帰還するとしましょうか! ゼロセイル、スタンバイレディ!』

 

 BBがシャドウフォートの管制AIとして、ゼロセイルの起動を宣言する。

 俺は、最後にモニターに映るこの世界の姿へと目を向けた。

 ごく短い期間であったにもかかわらず色々と苦労は多かったが、学んだことも得たものも非常に多い旅だった。

 移動するときはだいたいワイバーンをシバいていた気がするが。

 

 世界の性質が性質だからな。

 流石にほかの事件でまでワイバーンをシバくようなことにはなるまい。

 

「全部を全部回収できたわけじゃないですが、今回の件で回収できた素材の数々を市場に出したら阿鼻叫喚でしょうねぇ」

 

 シオンが冗談めかして言うが、マジでやめて差し上げなさい。

 本気でシャレにならない。

 

「冗談。冗談ですよ。私が味わったものの万分の一でも他の人たちにおすそ分けしたいなんて、思ってもいませんとも」

 

 絶対、思ってるやつだよなそれ。

 やめろよ。

 俺もちょっとやりたくなってくるだろう?

 

 しまらない締めくくりではあるが、変に湿っぽいよりは俺達らしいのかもしれないな。

 俺がそんなことを考えているうちに、シャドウフォートがゼロセイルに入る。

 こうして、この特異点での物語は、幕を閉じる事となったのだった。

 

 

 





いつも閲覧ありがとうございます。

そんなわけで、デスマ/No.1 亜種特異点 世界竜アルビオン、フィナーレです!

亜種特異点・世界竜アルビオン、お楽しみいただけたでしょうか。
気に入っていただけていれば幸いです。
ちょっと熱さにやられて、本文書くのが精一杯であとがき休んでいましたが、読後感的にはむしろ正解だったかなとも思ったり。
ともあれ、何とか途中で毎日投稿を途切れさせず、書ききれました。

次回からはインタールード2となって、現実世界でのあれこれの話になるかと思います。

面白かった、先が読みたいと思っていただけたなら、お気に入りと評価、感想などいただけたら嬉しいです。

割とマジで、書きたいものを書いている喜びと、皆様の応援が毎日投稿を続けていられる原動力なので。


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