Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制) 作:空門 志弦
グレイへの説明については、二世が中心となってライネスが助ける形で行われた。
正直グレイとしても俺達が何かを隠している事は察していると思うのだが、そこにはちゃんと意味があるのだろうと、飲み込んでくれた感じだ。
建前としては、霊墓アルビオンの異常を端緒とした地脈異常の調査と、それに付随する問題の解決のために少し忙しくなりそうだ、といった形で説明したらしい。
まあその、気遣って、飲み込んでくれるのは嬉しいんだよ。
でも、そのだな。
俺の方を、「ああ、また何か厄介ごとに巻き込まれたんですね」って目で見るのはやめてくれないかな。
心がちょっと痛いぞ?
その通りなんだけど。
まあ、そんなこんなでとりあえず、イギリス方面の情報共有はひと段落付いた。
え、教室の連中?
あいつらは、ほら。
下手に巻き込むと絶対馬鹿やらかすから。
意図せず関わってきちゃったときだけ、頭ひっぱたいて手伝わせる感じでいこうと二世と決めたんだ。
ちなみに何か知らんけど教室だと俺、最古参てワケでもないのに完全にボス扱いというか。
何故かあのフラットでさえ、俺の前だと大人しくなるのだ。
いや、フラットについては、
「内なる僕が絶対に逆らうな、怒らせるなって全力で叫ぶので!」
って言っていたから、まあ納得と言えば納得。
彼、勘がよさそうだもんね。
他のメンツは、うん、なんかやらかすたびにシバいたり、困ってたら手助けしたりしていたら自然とね。
いや、待ってほしい。
二世があんまりお労しくて、俺がどうにかできる部分はどうにかしてあげようと頑張った結果なんだ。
割と二世には本気で感謝されているんだぞ?
俺が来てから教室の運営が色んな意味でだいぶ楽になったって。
まあ、とにかく。
イギリスの方は片付いたんだ。
あくまでイギリスの方はね!
うん、日本というか、冬木の方が残っているんだ。
とりあえず、マスター勢はまだ未熟だし、わざわざ説明しなくてもいいかなと思っていたりする。
ただ、イリヤだけは聖杯鋳造とかホムンクルス関連の技術とか持っているアインツベルンの現代表としてある程度説明しておく必要はありそう。
アハト翁は雑に言うと、ふてくされて隠居しちゃったんだ。
あのクソホムンクルス、イリヤに面倒ごと残しやがってからに。
今度また尻でも蹴り上げてやろうか。
はくのん?
彼女にこそ運命によって巻き込まれるまでは、こんな厄介ごとに関わらない時間を謳歌してほしい。
叶うなら死ぬまで関わらずに、とも思うが、きっとそれは難しいんだろうなあ。
はくのんだもんな。
なので主に説明する相手はサーヴァントになる訳だ。
メドゥーサは楽だった。
「貴方もなかなか厄介ごとに愛されていますね。助けが必要なときは声をかけてください。借りもありますし、桜の未来の為にも手伝いますから」
といった感じで、大分すんなりだった。
可哀そうなものを見る目では見られたけどな。
呪腕先生は基本はくのんの身辺警護があるので、そちらに専念して欲しいと伝えた。
「もしも私の力が必要な時はいつでもお声がけを」
ほんっと呪腕先生ってば人格者。
まじで、はくのんの事よろしくお願いします。
その子ほんと色々と危なっかしいんで。
ヘラクレスは、今はバーサーカークラスなのでイリヤへの説明を経由することになるだろうなあ。
とはいえ彼は現在、大聖杯の最終防衛ラインも同然なので動かす予定は今のところないけどね。
エミヤは労し気に見た後に、いつでも力になると約束してくれた。
「君のような人間と並んで戦うのは、中々に気分が良いしな」
なんて、ちょっとだけ楽しそうに言ってくれて、結構嬉しかった。
そして、メディアである。
「……はぁ。えぇ、そうね。貴方はそう言う人よね」
その発言に至るまでの雰囲気がクッソ怖かったんですけど?
「しかし、聖杯戦争というか大聖杯のシステムなんでしょうけど、ずいぶんと嫌らしいこと。これを知っていたら英霊たちが戦いなんて始めるかわからないから念入りに情報を封鎖したわね?」
まあ、抑止力による召喚じゃないってのもあるだろうけど、システムの干渉は多分あったよね。
英雄王は、どうだったんだろう。
正直あの御仁の行動原理は凡人の俺には読み切れないからな。
「貴方に何の責任もないのは分かるのよ。むしろ厄介ごとを押し付けられているだけなんでしょう。でも、結局は事態の大小はあっても、なにがしかの厄介ごととの縁は切れなかったのだろうなという、嫌な信頼があるというか」
グレイですら、あの視線だったもんな。
「まあ、世界は結局こうだったのだから、いまさら何を言っても意味のない事ね。別に私としてはやることが変わるわけでもないし」
すっかり見慣れてしまった、しょうがないなというあの顔でメディアは言う。
「聖杯戦争でそうしていたように、変わらずに貴方の事を助けるだけだものね」
――――。
「出会いはちょっとアレだったが、俺の最初のサーヴァントがメディアだったのは、本当に幸運だったと思うよ」
俺がそう言えば、メディアも少し笑って答える。
「最初は聖杯戦争に参加する気がなかったから、さっぱり乗り気じゃなかったものね」
そうなんだよなあ。
アトラムのバカの助命の為にしぶしぶ契約したのが始まりだからな。
でも今となっては、メディアの助けがないとか考えられない。
「最初の特異点の規模を見るに、特異点として現出するような案件については後方支援に徹することになるでしょうけどね」
それだけでも、というかメディアの後方支援があるとかマジで凄く助かるから。
事前準備とか大聖杯の管理とか、先々考えれば冬木の拠点の管理だって、メディアの力は絶対必要だからな。
これからも変わらぬ関係でいてくれることを、言葉と態度で示してもらえて正直なところ凄く安心した。
そして結構焦ったのが、アルトリアに事情を話した時だ。
俺と世界のこの事情は、彼女にはちょっと刺さるかなという懸念はあった。
そして案の定、説明するたびに表情が憤りから悲壮なものになって行って、内心慌てていたら、ぽつりとこう零したのである。
「――――ああ、私はつまり、私の代わりになる誰かに、これと同じことをしようとしていたわけですか」
なるほど、俺の状況を見て憤って、最終的にそこに気づいてしまったか。
うん、それもまた、君の願いが君自身に向いていない理由の一つだよな。
君でさえ心が曇るような試練を、他の人間に投げるのかっていう。
まあ、俺からはそこについては敢えて何も言うまい。
「自分自身の未来を守る意味もあるからな。最終的には俺の理由で俺らしく向き合うと決めているから、君がそんな顔をする必要はないぞ」
アルトリアは、悲しいような呆れたような、不思議な顔になった。
「王になってからの私に対する義兄の気持ちが、少しだけわかってしまった気がします」
そこまでではないと思うけどなあ?
「助けてくれる相手は結構いるし、今こうしているように、割と全力で力を借りて回っているからな?」
「それすらしていないようなら、説教をしていましたね。なんでしょう、この国風に言うなら人の振り見て我が振り直せ、とでもいうのでしょうか。貴方の行く末を見守ろうと思っていたら、こんな身につまされるような事態になるとか思わないではないですか」
そこは、俺の所為じゃないとはいえ申し訳なくは思うけどね?
アルトリアの心を抉るようなつもりは別になかったんだけどなあ。
俺は悪くない、世界が悪い、が言葉通りの意味で通じる世界とかひどいと思わない?
そんなこんなの、憐れまれたり、ちょっと嬉しかったり、絆を確認したり、心ならずも心の傷を抉ったりする、説明行脚であった。
おかしいなあ、まだイリヤへの説明とか、はくのんの時計塔への転籍とか、やることが残っているのにこの時点で濃すぎるんですけど。
俺これが全部すんだら、少し休暇取るんだ。
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無慈悲。