Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制) 作:空門 志弦
第65話 俺と第二のデスマーチ
コーンウォールにて観測された時空の揺らぎは、BBによれば一種の時空の結節点であるという。
本来的にはこの時間軸に存在しえない時間軸の特異点。
その特異点が、再構築中の世界においては本来の時間軸にも安定して存在できないがために、基点となっている現在という時間に下ろした錨のようなもの。
なお、放っておくとそこを基点に現在を侵食し始める事は結局変わりがないらしい。
「ちなみに、前周で該当しそうな案件は?」
シャドウフォートの操縦室内のモニターに映る各種数値を見つつ、BBに訊ねた。
『あります。この特異点については、前回の特異点が発生した時点で連鎖して発生する可能性が高いと想定していました。各種測定数値も、発生地点も誤差範囲内。恐らくは間違いないかと』
よりによって、コーンウォールのストーンヘンジかあ。
しかも、普通のサーヴァントは侵入不可で、特にアルトリアは強く侵入を拒絶された。
アルトリアが凄い憤慨して、エクスカリバーで強引に侵入しようとしたときは焦ったぞ。
まあ、事情を知ってから初めての事件で、発生地点が地元も地元のコーンウォール。
意気揚々と俺の力になるためにやってきたら、そもそも特異点の中にすら入れなかったわけで、むきになるのもわかるんだけどね。
あれで結構負けず嫌いが凄かったり、いざとなったらパワーみたいな部分があるからな。
しかし、サーヴァントが、その中でも特にアルトリアが存在できない特異点ねえ。
……まさか、妖精円卓領域、か?
いや、しかし、あの世界線、カルデアスの存在なしにあり得るのか?
『今回は通常のサーヴァントの同行が不可能であったりと、ちょっと問題点が多いので事前に情報を共有させてもらいますね』
色々条件が悪すぎて、先入観抜きに特異点である程度情報を集めてから、なんて悠長な事を言っていられる状況じゃないからな。
前周と完全に同じ状況であるとは限らないから、そこだけは気を付けないといけないが。
なので素直にBBから情報を受け取った。
その結果なんだが、BBからの情報を考えるに、この特異点、やっぱり妖精円卓領域だこれ!?
え、どういう事だ。
この世界線は、とある妖精六人が聖剣の鍛造をサボタージュすることが第一条件。
あの妖精どもがおサボりする世界線が複数あるのは、正直わかる。
むしろ、あの妖精どもがサボった世界線が一個だけなわけがないという、嫌な信頼がある。
問題は、その先。
あの世界線が成立するためには、汎人類史のモルガンがあの世界線に出現する必要がある。
カルデアスなしに、その条件がクリアできるのか?
……できそうだなあ。
そもそもモルガンはレイシフトの概念を知れば、自力でレイシフトを再現するようなトンデモだ。
そこを抜きにしても、この世界には願望器として機能する代物がいくつも存在している。
モルガンが何らかの形で願望器を手にして、自らの支配するブリテンを望んだなら?
願望器がアーサー王が存在しない、一度まっさらになっているあの世界線を提示する可能性はゼロじゃないだろう。
「ずいぶん難しい顔をしていますが、大丈夫ですか?」
シオンが俺の顔を見て聞いてきて、我に返った。
いかん、考え込み過ぎたか。
「ああ、大丈夫だ。ちょっと気になる事が多くてな。前周ではこの特異点、どうやって解決したんだ?」
気を取り直して、ある意味一番重要ともいえる点を問う。
『端的に言ってしまうと自滅というか、自壊というか』
ああー。
そうだよな。
妖精國の末路としては、あまりにも道理だ。
話を聞くと基本的にはFGO世界線の妖精國に近しい経緯を辿って滅んでいるようだ。
相違点は、アルトリア・キャスターが聖剣鍛造の際に消滅している点。
そこから連鎖して、モルガンの崩御後にケルヌンノスの打倒に失敗している。
それなのに何故特異点が自壊したのかというと、最終的に現れた奈落の虫とケルヌンノスが相打ちになったかららしい。
特異点の外まで滅ぼしてしまいたい奈落の虫と、あくまで妖精國を罰したいだけだったケルヌンノスが争う形になったんだろう。
この両者の戦いは本当に凄まじく、最終的には特異点内のブリテン島すら跡形も残ることはなく。
最終的に特異点は、良くも悪くも何一つ現実世界には残すことなく、泡のように消える事となったらしい。
いや、何一つ残さなかったというのは語弊があるか。
アルトリア・キャスターが残した聖剣は特異点に突入した魔術師の手から現実世界へと渡り、その後の戦いにおいて大いに人類を助けたという話だからな。
「一つ疑問なんですが」
説明を受けていたシオンが言いながら挙手をした。
BBがビシリとシオンを指さして答える。
『はい、シオンさん!』
学校の授業か何かかな?
「特異点の情報と、その消滅の経緯はわかりました。それで結局、どこが消滅の鍵だったのでしょうか?」
『あー、そこ、聞いちゃいますかぁ』
前回はアルビオンという分かりやすい攻略目標があった。
では今回は?
ありえそうなのは、ある意味で特異点の存在の発端になっているモルガン。
しかし、前周で彼女は途中退場していて、その後も特異点は存在し続けている。
ならば、ケルヌンノスか?
あるいは、奈落の虫?
しかし、BBの口から語られた鍵の正体は、予想の全てから外れていた。
『あくまで結果からの推定です。この特異点において、前周の人類はほとんど傍観者だったので。ですが、情報を精査した結果なので、まず間違いのない推定であると思ってもらって大丈夫です』
そんな風に前置きをしながらも、どうにも言いにくそうにしているBBに嫌な予感を覚えた。
そして、その予感は、どうしようもなく正しかった。
『この特異点の存在の基点になっているのは、妖精國の大地、そのものです』
……は?
『始まりの六人が現存していたならば、彼らが基点になった可能性が高いのですが。彼らはすでに失われて、多くの罪と命が堆積し続けた、大地そのものが特異点の存在の基盤となったものと思われます』
つまり何か?
俺は、あの妖精國の大地そのものを砕かねばならないと?
物理的には、可能だ。
むしろ容易いと言って良い。
しかし――――。
「統夜」
俺を支えるように腕に手を添えるメルトリリス。
その手に、自分の手を重ねてから頷いてみせた。
「大丈夫だ」
心配をさせてしまったようだが、本当に大丈夫。
その証拠に俺との繋がりが魂レベルで深いメリュジーヌは自分の席から特に動いていない。
俺が固まっていたのは、自失していたからじゃないのだ。
「あの世界は、ある意味で発生時点で詰んでいるんだ。俺はそれを知っている。あの世界の滅びは、あの世界があの世界である以上は逃れられないものだと」
残酷なようだが、俺にとって妖精國とはそういう世界だ。
存在の前提があまりにも罪深すぎるのである。
しかし、あの世界の今現在を生きているすべての妖精が、それに巻き込まれるべきかというと。
うん、九分九厘の妖精については、おおむね同情すら覚えないな!
ある意味すげぇな、あの国の妖精ども。
本当は怖いメルヘンの住人というか、ホラーに片足突っ込んだ存在というか。
まあ、原典にあたるような伝承とかにおける妖精って実際、結構質の悪い怖い存在であるのはそうなんだが。
あの世界、人間も人間で大部分はちょっとアレだしなあ。
だが、だからと言って見捨てるのかというと、それはちょっと違う。
妖精たちの中にも、少ないながらに愛すべき者たちが存在しているし、それは人間についても同様だ。
愛する姉のような存在の為に戦った彼も。
歯を食いしばって冬の女王で居続けた彼女も。
誰に歓迎されるでもないのに、おのれの使命を果たしきった彼女と彼も。
俺は、あの残酷な、しかし美しい物語を知ってしまっているから。
良いだろう。
挑んでやる。
あの詰んだ世界に。
そして俺らしいやり方で、終わりを描いてやろう。
あの世界に、平凡な俺好みの陳腐なエンディングを押し付けようじゃないか。
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小話
さて、第二のデスマーチの幕開けです。
デスマ/No.2の舞台は妖精国。
ええ、あのFGO二部六章の舞台です。
前周におけるこの特異点は言うなれば、FGO以上のバッドエンドを迎えた妖精国。
滅びに向き合う自分らしいスタンスを得た主人公はこの終わりの約束された世界にどう向き合うのか、ご照覧あれ。
ちなみこの章はこの物語を考えてすぐに形になったもので、デスマーチの中では一番最初に出来た話でもあります。
そして現状のデスマーチのプロットの中でも結構なお気に入り章。
皆さんにも気にいっていただけると良いのですが。
頑張って書いていきますので、どうぞ応援よろしくお願いします。