Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制) 作:空門 志弦
突発的だったキャストリアとの出会いが済んで、現在、三人で森の中を探索中である。
「そう言えば、二人って忘却の呪いは大丈夫なの?」
森の中を周囲に注意しつつ歩いていると、今思い出したといった風にキャストリアが聞いてきた。
出会ってからからずっと驚きの連続だっただろうから、そこに意識が行かなかったんだろうな。
「私も彼もそのあたりは耐性みたいなものがあるから大丈夫よ。だからこの森の探索を私たちが受け持っている面もあるから」
森に来たというか追い込まれた直接の原因は、ロンゴミニアドだけどね!
ジャンヌ・オルタがキャストリアに答えているのを聞きつつ、心中で付け足した。
口には出さないけどな。
「私を見つけるのが目的の一つだって言ってたけど、その言い方といい、今も森の探索を続けている事といい、他にも目的があるんだよね? それって聞いても良い内容かな?」
別に話してもいいような内容ではある。
単純に集落の状況を見て、可能なら少し妖精と接触して実際にどんな感じかというのを実際に確かめてみたいというのと、もう一つ。
「ちょっとした情報収集と、一方的に知っているある妖精の確保が目的ってことになるな」
今は名を失っている妖精で、本来の名前はホープ。
正直ここは完全に寄り道というか、自己満足の類なんだが。
「知り合いってわけではないんだ?」
ちょっと不思議そうにキャストリアは言う。
まあ、疑問に感じるよな。
物語の登場人物として一方的に知っているなんて知りようもないわけだし。
「一方的に精神的な借りがあるというか、ある種の心残りというか」
説明が難しいな。
ここは敢えて単純化して言う方がかえって動機としては本質に近くなるかな。
「そうだな、かつて心を動かされた事のある相手に対する、ちょっとしたお節介とでもいったところか」
ほっとくと、飯がまずくなりそうだし。
ジャンヌ・オルタが歩きながらため息を吐いて言った。
「また悪い癖を。ただでさえ厄介ごとに愛されているのに、なんでそう方々に手を差し伸べるのよ、貴方は」
多分、ホープの事をFGO世界線の主人公かマシュにでも聞いていたんだろう。
俺の動機に心当たりのあったっぽいジャンヌ・オルタは、やっぱりかといった様子で苦言を呈した。
うーん、他の面々から色々聞いているせいか、それとも短い期間でバレバレなくらいに俺がわかりやすいのか。
「そこは最早、俺の趣味のようなものだから諦めてくれ」
手が届く範囲のどうにかできてしまいそうな悲劇とか、放っておく方がキツイし。
ジャンヌ・オルタは処置無しといった顔で肩を竦める。
キャストリアは、何か凄く珍しい生き物を見たかのような顔だった。
うんまあ、妖精國では俺みたいな奴って珍しいかも?
人間として見たらそこまで珍しいわけでもないと思うんだけどなあ。
ほんと妖精ってやつは。
「そういえば、アルトリアも忘却の呪いは平気みたいだが、一応これを渡しておく」
量子ストレージからネックレス状のアイテムを取り出した。
「一種のアミュレットみたいなものだ。まあ、他にもいくつか効果はあるんだが。きっと先々、君の助けになるはずだ」
素直に受け取ってくれれば、一番助かるんだが。
「いやいやいや、こんな高そうな装飾品、会ったばかりの人から受け取れないから!?」
両手をバタバタと振って遠慮されてしまう。
案の定か。
「少しだけで良いからと使命の合間に息を吐こうとしていた君に、無粋にも現実を突きつけた詫びと言っても?」
バタバタと動いていたキャストリアの手がぴたりと止まる。
「そんな困った顔されても、私も困るというか、利害の一致があるにせよ仲間になってくれる人が見つかって嬉しかったから、そこはむしろお詫びどころかこちらがお礼を言いたいくらいというか!」
そんな分かりやすい困った顔はしてないつもりなんだが。
妖精眼で見ると、見えている感情と相まってそんな風に見えるんだろうか?
あんまり押し付けるようなことはしたくないんだが、ここは悪いがちょっと押させてもらおう。
「頼む」
なるべく、真摯に。
どうか受け取ってほしいという心からの感情をこめて言った。
キャストリアは、虚を突かれたような顔になってしばし完全に固まった。
それから少し、諦め顔に。
「それはずるいよ、統夜。……わかった。受け取る」
ほんとにちょっとずるいやり方だった。
ただ、これは先々を考えると譲れないというか。
ネックレスをキャストリアの手へと渡して。
「可能な限り、肌身離さず身に着けておいてくれ。魔除けとか、はぐれた時の居場所の探知とか、色々な効果の付いている優れものだからな」
本命の機能は、そこじゃなかったりするんだが。
まあ、今は言っても仕方あるまい。
どの程度うまく機能してくれるか読み切れない部分もあるしな。
「なんでか知らないけど統夜って、絶対に私の目の事を知っているでしょ?」
まあ、ばれるよなあ。
「ああ。確かに知ってる。そうだな、俺は一種の予知に近い形で情報を持っていると思ってくれればいい」
「なるほど。今までの言動も、色んな事を知りすぎている様な感じだったのもそのせいなんだ」
それにしても、こんな風に妖精眼を利用されるのは初めてだ、とキャストリアが笑みをこぼす。
「変なの。怖がったり、嫌がったりしないんだ」
そうはいっても妖精眼って、すっごく相手の空気を読むのが上手いみたいな能力に近いからな。
思考が完全に一言一句筒抜けとかだと困るが、そのレベルでなければキャストリアにこれと言って悪感情を持っていない俺からすると、信用が得やすくてかえって便利なんだよなあ。
「こういう言い方が適当かわからないが、正直便利というか。コミュニケーションする上でこんなに便利に利用しておいて、怖がったり嫌がったりするというのもなんか違うだろう?」
でもそうだな。
「ただ、男としては、見て見ぬふりをしてほしい強がりとかもあるから、そのあたりは見逃してもらえると助かる」
うん、お願いしたいのはしいて言えばそのくらいである。
「うーん。どうしようかな?」
おっと?
そこは素直に請け負ってほしかったんですがね?
「この男、すぐに格好つけて色々と自分で抱え込むから、怪しいと思ったら申告してもらってもいいかしら?」
ジャンヌゥ!?
なんで横入りしやがるんです!?
思わずジル・ド・レェみたいなノリで名前叫ぶところだったんだが!?
「そこは、黙って見て見ぬふりするのが好い女ってものじゃないか?」
キャストリアが、何故かうんうんと俺にじゃなくてジャンヌ・オルタの方に頷いているのが気になる。
俺の方を見てくれないかな?
「こんな風に格好をつけるわけよ。なまじ大抵の事は自分でどうにか出来るから、なお質が悪いの」
「あーなるほど。そうなんだ」
キャストリアが妙に納得した顔でジャンヌオルタに同調する。
いや、まてまて。
確かに格好つけである部分は否定はできないが。
「別に無理とかはしないぞ。出来る範囲に収める分別はある」
あくまで無理なくできる範囲でやっているはずだ。
「貴方の場合、その出来る範囲が広すぎるのよ。無理はしてないにしたって、負担がないわけじゃないでしょ」
分が悪いか。
ここは一つキャストリアに話を振って、そちらから切り崩しをと目を向けた。
笑顔だけが返答だった。
……うん、また一つ打ち解けたねって事にしておくか!
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小話
主人公は本来的には妖精眼をレジスト可能です。
しかし、相手がキャストリアで、悪意がないことを伝えるためにも読まれた方が助かると思っていることなどから普通に妖精眼が機能しています。
ちなみにジャンヌ・オルタはライネス達から統夜の事を色々頼まれているので、微妙に保護者モードです。