Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

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第7話    新たな生活と魔術の研鑽

 ライネスと師弟として、ボディーガードとしての契約を結んでから、俺の生活は大きく変わった。

 まずそもそも住まいが変わった。

 以前のアパートは引き払ってこそいないが、管理はエルメロイ関連の伝手に任せて、俺自身はライネスの屋敷に住んでいる。

 

 扱いはかなり良い。

 ライネスの弟子であることや、出会ってからの護衛としての実績がまずあって。

 そのうえで俺のチートの一端を知っているライネスが、屋敷の人間たちに俺の扱いについて最大限の配慮を求めたからだ。

 

 俺からすればもっと反発が起こりそうに見えたんだが、ちゃんと調べた結果、俺の魔術回路がかなりヤバかったのもあって、案外すんなり受け入れられた。

 ぶっちゃけ、面倒な背景のついていない都合のいい当主の伴侶候補と目されているらしい。

 

「お前、狙って誤解させたな?」

 

「いやぁ、思わぬ副次効果だった。おかげで面倒な縁談関連、片っ端から切って捨てられるからね」

 

 悪びれすらしないときた。

 

「しかし、そこまでなのか俺の魔術回路は」

 

「質、量ともに破格だ。比較対象がロードクラスの、それも上澄みじゃないと務まらない、と言ったらわかるか? 何なら種馬で一財産稼げるレベル……いや、割と冗談抜きで争奪戦で死人が出かねないから、忘れてくれ」

 

 種馬とか、ないわー。

 というか、これで実感するのはアレだが、なんだかんだでずいぶん距離が縮まったなあ。

 エルメロイ二世とかと話していた時の距離感じゃないか、これ?

 下ネタで実感させられるのはホントどうかと思うが。

 

「その年のレディが種馬とかさらっと口にするなよ、マジで」

 

 でもそうか、そのレベルなのか。

 そんな風に内心驚きつつ、らしくなく切り返しが遅いライネスの顔をふと見ると、俺の注意に少し顔を赤くしたのに気が付く。

 この年だとまだその程度の純真さは残っているらしい。

 それを誤魔化すようにしてライネスは少し早口で言う。

 

「前から思っていたが、君はなんというか、知識がアンバランスだな。あんな明らかに宝具の域にある鎧を完全に使いこなせる君の魔術回路が、凡百のものであるはずがないだろう?」

 

 うん、それ勘違いだから。

 あの鎧はチートの産物で神秘とか魔術とか一切関係ないし。

 なので俺の認識だと、魔術回路はそのあたりとは別に突然ポップしてきた要素だから、それの質だの量だのは予想すら難しい。

 でもFate世界に限らず、魔術って似たモノには似た力が宿るっていうのは基本中の基本だから、まったく無関係ってことはないかもしれない。

 エルメロイ二世の事件簿では、たびたび照応という言葉で説明されていた概念だ。

 

「それ、俺が狙われないか?」

 

「エルメロイの庇護下にあってそれはない。特に血に関連するようなあたりは魔術家にとっては非常にナイーブな部分だからな。他家のそこに手を突っ込む真似は避けるのが作法という風潮がある。まあ、さっきの、あの話じゃないが、正式な要請として君の子供が欲しいといった話は出てくる可能性が結構あるんだが」

 

「ダメじゃねぇか」

 

 思わず突っ込む。

 

「まあ、まだ年齢が年齢だし、まずは私からだと言って突っぱねる手もある。時間を稼いだその間にエルメロイの力を取り戻していけば無理強いはされまい」

 

「ほんと頼むぞ? 場合によっては暴れるからな?」

 

 俺が眉間にしわが寄っているのを自覚しつつ重苦しい声で言うと、ライネスは少し面白そうな顔をした。

 

「男としては、そこまで悪い話でもないんじゃないか? 魔術師は血統なんかを重視してきたせいか知らないが美人が多いぞ? ……あと暴れるのは本当にやめてくれ。シャレにならない」

 

 なお、暴れる云々のあたりだけは完全に真顔だった。

 まあ、そこは流石に冗談だ。

 全力で逃げ隠れはするが。

 しかし、である。

 

「まったく興味がないとは言わないが、流石に種馬扱いはない」

 

 げんなりして吐き捨てれば、ライネスがまた少し顔を赤くした。

 

「私の口が悪かったのは認めるから、勘弁してくれないか。二度目は、ちゃんと言葉を濁しただろう?」

 

「あーうん、別にいじめるつもりとかはなかったんだが、配慮が足りなかったな。よし、とりあえずこの話は終わりにしよう。とりあえずは大丈夫なんだろう?」

 

「ああ、大丈夫。しばらくはそういった話も出てこないはずだ。これで、この話は終わりにしよう」

 

 そもそも今は、こんな話するために顔を突き合わせてるんじゃないんだよ。

 いや、まったく無関係ってわけでもないんだが。

 俺の魔術についての話なので、魔術回路についても関係はしているからな。

 

「こほん。さて、君の魔術回路について調べた結果なんだが。すでに言った通り、質、量ともに破格のものがある。そのうえで属性なんだが、わからない。たぶん、あの鎧の影響を受けての事だと思う」

 

 ああ、鎧というか、チートの影響だろうなそこは。

 こんな力を持っていて、そのあたりに影響が出ないわけがない。

 Fateシリーズの主人公の一人である衛宮士郎なんかは、最高峰のものとはいえまともに稼働していない宝具一つが体に埋め込まれていただけで属性が塗り替えられていたくらいだからな。

 

「だが適正はある程度読めた。まず強化。多分これは『担い手』としての君の性質から派生したものだ。あの鎧やそれにまつわる装備を十全に扱うための性質なんだろう。『担い手』である自身と担うべき対象の力を最大化することに君はかなり長けているはずだ」

 

 なるほど、その辺があるから、以前無意識に形にならないながらも強化の魔術が発動していたのか。

 

「もう一つは、広義の錬金術。これについては恐らくになるが、担う対象に対する把握や理解といった才能から派生した性質だろう。強化ほどではないが、何かを作るという事に君は一定の適性を持っていると思われる」

 

「何か色々やらされたけど、結構ちゃんとわかるものなんだな?」

 

「長年の蓄積からの診断だからね。大きくは外れずにある程度絞り込めるようになっているのさ」

 

 そんなわけで、一番適性が高いと思われる強化から試した。

 結果から言う。

 使えない。

 いや、魔術自体を使うことは出来た。

 むしろとてもスムーズに、使えるようになった。

 でも、ありていに言って、度が過ぎる。

 

 魔力強化していると、生身でこの前の上級死徒と固有結界抜きなら普通に優位にやり合えてしまいそう、と言えばわかってもらえるだろうか。

 イーリアスを着た時ほどじゃないが、それに近い域の強化幅である。

 強化幅を考えると、これをパワードスーツ装備時に使うとか、狂気の沙汰だ。

 

 俺自身もライネスも、ドン引きである。

 お試しの的がね、とてもスプラッタだったよ。

 結論として生身の時の切り札として基本は封印、という事になった。

 

 そして錬金術の方なんだが、こちらは苦戦した。

 なんというか、上手くいきそうな手ごたえはあるんだが、変な所でつまずく感じがある。

 何かに妨害でも受けるような、妙な感覚だ。

 

「まあ、魔術の習得はそうして詰まる方が普通だ。強化の方がスムーズ過ぎた」

 

 ライネスが当然といった様子で言う。

 だがそのライネスにしても、少し首をかしげていた。

 

「でも確かに私から見ても、途中までは上手くいきそうに見える。あまり見た事のない失敗の仕方だ」

 

 うーむ。

 何かチートが悪さをしている感じなのか?

 現状だと情報不足で何とも言えないな。

 

「まあ、回数をこなして試行錯誤するしかないだろう。焦らずにやればいいさ。私もちゃんと時間を見つけて教えるから」

 

 それしかないだろうな。

 失敗の回数を重ねてサンプルが増えれば、原因の特定もしやすいだろう。

 

「手間をかけるが、よろしく頼むよ、お師匠様」

 

「任せたまえよ、我が弟子」

 

 軽口を交わしながら、練習を続ける。

 ライネスも練習内容を変えてみたり、手本を見せてくれたりとかなり献身的に教えてくれた。

 なんだかんだで、弟子に対する面倒見がいいのは、凄くライネスらしい。

 

 しかし、その日は結局成果が出る事はなく。

 それからしばらくの間、俺の錬金術の習熟は足踏みを続けることになるのだった。

 

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