Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制)   作:空門 志弦

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第82話   俺達と災いを祓う為の戦い

 

 敵を倒しながらホープからの報告を聞く。

 

『スプリガンとその手勢は金庫城から動いていないんだな』

 

 モースの群れからの攻撃の圧力が途切れた合間に金庫城のある方角に少しの間だけ視線を送った。

 FGO世界線の状況であればそう悪くない判断だったかもしれないが、今の妖精國の状況からすると悪手の部類だと思うんだが。

 俺としては、こちらに協力してモースを迎撃する姿勢を取られるのが一番面倒だったからありがたいけどな。

 

 まあ、スプリガン視点だとその選択肢は博打すぎるように見えるのはしょうがない。

 俺がスプリガンとの会談を拒否し続けていたというのもあるし、ある程度は誘導した面もある。

 後々を考えるといっそ俺たちの行動を妨害する動きにでも出てくれたら話が早かったんだが、流石にそこまで迂闊ではなかったか。

 

『はい。スプリガンは手勢と共に金庫城にこもったままです。でもマスター達が水際でモースの大部分を押さえてくれているおかげで避難は順調です』

 

 現状は順調、と。

 とはいえずっとこのまま、すんなりと最後までというわけには――――。

 

「ここを迂回して別の地点から上陸してる群れが出てきたわね」

 

 そうだよな、そううまくはいかないよな。

 モースの群れを焼き払って生まれた隙に周囲の状況を確認したジャンヌ・オルタが言う。

その言葉に俺はモースを切り払いながら内心で溜息をついた。

 ここが市街地じゃなければ大火力で一掃する手もあるんだが、流石に建造物ごと薙ぎ払うわけにもいかない。

 

「どうする? 私か貴方がここを離れて迎撃する?」

 

 第一波は包囲を崩して挟撃までもっていって比較的楽に排除できた。

 すぐさま追加された第二波も戦力差で押し切った。

 現状の第三波も優位に相手取れているが、敵が尽きる様子がない現状ではここの戦力は割くべきではないだろう。

 当初の想定以上に数が多いという問題もあるからな。

 

 一緒に戦っている二人の様子を見れば、キャストリアの目にはわずかな不安が見て取れる。

 ジャンヌ・オルタはやはり経験値が違うからだろうが、これくらいならどうとでもして見せるという自負が見て取れた。

 さて、どう対応しようか、と考えたところでその思考の必要がなくなった事に気が付く。

 

「――――間に合ったな」

 

 ここから離れた別の群れに向かって一条の光の矢が突き刺さり群れを一直線に切り裂いた。

 後に続いた人物によって振るわれる魔力をともなう槍の薙ぎ払いによってモースたちが吹き飛ぶ。

 群れを切り裂いた光の矢は群れを切り裂きながら突き抜けると、群れの背後で地面を削りながら急ブレーキをかけた。

 衣装の裾がひるがえって、乱れた髪を片手で背後に払いその顔が露わになる。

 

「メルトリリス! ずいぶんいいタイミングで現れるじゃない! 出待ちしてたんじゃないでしょうね!?」

 

 旗を薙ぎ払いながらだったからか結構な大声でジャンヌ・オルタが叫んだ。

 いくら大きな声であるとはいっても、本来なら流石に聞こえる距離ではないのだが、しかし返事はしっかりと返された。

 

『そんな事しないわよ。大急ぎで駆け付けたっていうのに随分な言い草じゃない?』

 

 通信機から聞こえたその声に、ジャンヌ・オルタが聞こえてたのかといった顔を一瞬見せて念のために全員が持ち歩いている通信機を睨んだ。

 その通信機から今度はBBの声が聞こえてきた。

 

『と、言うわけでリクエストの増援ですよ! なんと今回はサービスで円卓軍のリーダー、パーシヴァルさんもオマケで付けちゃいます!』

 

「スイッチも入れてないのに通信機を動かしたのはBBだったわけね。一応言っておくけど、それだけいいタイミングだったってだけで本気で言ってはいないわよっと!」

 

 台詞の途中で襲い掛かってきたモースを剣で突き刺して危なげなく倒す。

 まあ実際、絶妙のタイミングだったな。

 最悪令呪を切ることも考えたが、おかげで温存できた。

 

 しかしそうか、パーシヴァルを動かしたか。

 ライネスと司馬先生があれだけ手札があってしくじるとは思っていなかったが、予想以上に早い。

 そして、なるほどアレが妖精國のパーシヴァルというわけだ。

 

 サーヴァント達に勝るとも劣らない技の冴えと膂力で、モースを薙ぎ払っていくのが遠目に見えた。

 あのメルトリリスを相手にキルスコアで劣っていない。

 

「人域の限界者とはよく言ったものだな」

 

「感心してるのは分かるんだけど……統夜がそれを言っても嫌味になりかねないというか。あの人も強いんだけど、明らかに統夜の方がヤバいよね? 今も露骨によそ見しながら片手間で一番の速度でモースを狩ってるよね?」

 

「諦めなさいアルトリア。統夜はこういう生き物だから。生物学的に人間判定なのが不思議でならないって仲間が口を揃えるナマモノなんだから」

 

 一度の発言のうちに、人間からナマモノにまで落とすのやめてくれないかな?

 泣くぞ?

 自分でも最近はちょっと否定しきれないけども!

なんてふざけているうちに、こちらに第四波が迫ってきている事に気が付いた。

 今まででも最大の規模である。

 

「ジャンヌ・オルタ!」

 

 名を呼べばそれだけで全てを理解したジャンヌ・オルタが自分の周囲のモースを旗で一気に薙ぎ払って、地面にその旗を突き立てた。

 

「これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮……吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)!」

 

 第四波に向かって猛烈な勢いの炎が奔り、同時に無数の杭がモースたちを突き刺していく。

 市街地に近づく前に一気にジャンヌ・オルタの宝具によって殲滅させたのだ。

 港には少しばかりダメージがあるだろうが、この位なら許容範囲だろう。

 

 こちらに迎撃の手段があった以上、戦力の分散は完全に悪手だったと言って良い。

 おかげでこっちの圧力が弱まって乱戦になる前に市街地の被害が気にならない射角でジャンヌ・オルタの宝具を切れた。

 さてメルトリリスたちの方もだいぶ片付いてきているようだし、そろそろか。

 

 そして予想通りに、それが現れた。

 見上げるほどに大きな、モースに似た黒い何か。

 何かと言っているが、ようは呪いの厄災から分化して生まれた呪いの集合体みたいなもの。

 大きいだけでモースと本質は大差ない。

 

 まあ、普通であればその大きさが問題なんだが、俺にとっては逆にやりやすい。

 今の奴は海上にいて、港からもある程度の距離がある。ゆっくりとこちらに倒れ込んでその質量によって攻撃しようとしているんだが、まったくもって甘い。

 

「ここらの小物は狩りつくしたな。あのデカブツの相手は俺がするから二人は討ち漏らしと街の方で湧いているかもしれない連中の処理を頼む。そっちの二人もだ」

 

 後半は通信機に向かって言う。

 通信機からはすぐにメルトリリスの了承が返ってきた。

 

「ちょっと待って!? いくら統夜でも流石に一人であんな化け物の相手なんて――――!」

 

 軽く頷いて返してきたジャンヌ・オルタとは対照的にキャストリアは反対の意見を返そうとしてくる。

 ……いかんな、こんな真っ当に心配されるとは。

 ちょっと感動してしまったぞ。

 

 あ、ヤバい。

 そっちに気を取られてたら、ドデカモースが結構こっちに傾いてるじゃないか。

 少し本気で地面を蹴って、やばい、港に大きく放射状の亀裂が入った。

 焦って加減をミスったか。

 

 モースに砲弾みたいな速度で肉薄して人間に当てはめるなら頭に当たりそうな位置に痛烈な蹴りを食らわせた。

 ドデカモースの巨体が弾かれた様にのけぞる。

 俺の方は蹴りの勢いで一回転して、一瞬だけ唖然としているキャストリアの顔が目に入った。

 そして、宙に生み出した魔力の足場を蹴ってくるりともう一回転し姿勢を整える時に再び一瞬だけキャストリアの表情が目に入る。

 

 何かを諦めたかのような虚無顔だった。

 あの子、本当に表情豊かだなあ。

 そして残念ながらこれからきっと俺の扱いは、他のメンバーと同じような感じになるんだろうなあ。

 

『わかったでしょう? 少なくともあの程度の相手なら心配するのが馬鹿らしいくらいなわけよ』

 

 通信機から思いっきり聞こえているぞ、ジャンヌ・オルタ。

 というかBBめ、わざと聞かせたな。

 

『うん、そうだね。私も、なんか納得した……そっかあ。ナマモノかあ……』

 

 そうか、ナマモノ呼びに君も納得しちゃったか。

 キャストリアのちょっと平坦な声の返事にほんのり悲しみを覚えた。

 この悲しみ、ドデカモースに存分にぶつけてくれようではないか。

 

 襲い掛かってくるドデカモースの無数の黒い手を、ことごとく細切れにしていく。

 地上の二人には手出しをさせるつもりはない。

 そんなに気にしなくともこちらの脅威を見て取ったのか、最初からわき目もふらずに俺へと攻撃を集中している感じだったが。

 

『一応聞いておきますけど、何かバックアップは必要ですか?』

 

 通信機から聞こえたBBの言葉に軽く返答を返す。

 

「いや、不要だ。俺じゃなく街の方に行ったメンバーを頼む」

 

 宙を駆け、襲い来る無数の黒い手を一つの例外もなく切り捨てて、合間に本体へも斬撃を見舞う。

 しかし質量を持っているくせに実際は呪いの塊のようなものだからなのか、普通に切っただけでは水でも切ったかのように手ごたえが薄い。

 魔力を纏わせてみれば、こちらは効果があるようだが圧倒的な質量が厄介でいまいち致命打には遠い感じがする。

 

『ですよねぇ。祈るまでもないかもしれませんけど、ご武運を』

 

 BBは軽く笑いながら、でも、ご武運をの部分だけは気持ちがこもっていそうな声音だった。

 その信頼と祈りにはしっかりと応えるとしよう。

 

 流石に黒い手の数は減ってきた。

 地上の二人も港からは離れたようだし、そろそろ決めても良いだろう。

 いったん距離を取って、敵の全身を視界に収めた。

 息をすって、吐く。

 

 まなじりを決して鯉口を切った。

 魔力ではない、俺のチートに由来した力を刀に込めた状態で、ほんの一瞬に無数の斬撃を放つ。

 空間を越えて、斬撃の規模すら拡張し、その斬撃は敵を微塵と化してそれだけに留まらず微塵となった欠片すら消却した。

 これは言うなれば今アクティブにしているクラスであるブレイズアトレイラーの攻撃スキルのようなモノ。

 

 余波が敵の足元の海すらも微塵と変え消却し、ぽっかりとあいた空間に海水が流れ込んで渦を巻いていた。

 新たな敵の気配はない。

 今回の厄災の核ともいえる敵を倒したためだろうか。

 街のモースも順次姿を消していっているようだった。

 

 モルガンの干渉はなし、か。

 FGO世界線で使った転移魔術でうっかり俺を変な場所や時間軸に飛ばしたらどんな影響が出るか知れたものではないもんね。

 そもそも論として、俺みたいな強度と規模の存在を強引に転移できるかと言えば、まあ、無理なんだけども。

 

「ともあれこれで、ノリッジの厄災は祓った。あとはこの事実を上手く使い倒さないとな」

 

 

 





閲覧ありがとうございます。
お気に入り登録や評価、感想と誤字報告にも変わらぬ感謝を。


ちょっと咳がひどくて、気力体力が削られて、あとがきを休ませてもらっていました。
隔日の投稿ペースを維持するのが精一杯だったのです。
聞くところによると最近の熱さの所為で空調をつけっぱなしにして喉を乾燥させることで気管支炎の患者が増えているとか。
皆さんもお気を付けください。


小話

ちなみに仲間たちは統夜に対して、心や体の疲労に関しては心配しますが、こと戦闘についてはあんまり心配しなくなってきています。
あと、本当に人間なのかどうか疑惑が発生しているとかいないとか。
まあ、行いの結果というか、残念ながら当然というか。

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