Fate Night Unnamed ~チート転生者はデスマーチに挑む(ほぼ強制) 作:空門 志弦
「絶対に一緒に行くから」
ぐぬう、意思が固い。
だがしかし、これはなんというか、あんまりキャストリアには見せたくないというか。
俺一人で片付けたい案件なんだけどなあ。
「俺がちょっと先行するだけで、色々片付いたあとで合流してもらう予定なんだが……」
あ、これ駄目だな。
めっちゃ目つきがきつく。
うーん、流石妖精眼。
仕方ない、少し正直に話すしかないか。
「見たくないものも、見ないであげたかったようなものも見る羽目になるぞ?」
次の目的地はオークニー。
色々なことを考えて今回はひとまずサーカス団は留守番である。
そしてその途中で、マンチェスターに立ち寄る予定だ。
そう、マンチェスターである。
治めているのは、妖精騎士ガウェイン。
本当の名前はバーゲスト。
まあ、なんと言ったらいいのか。
あの街とバーゲスト周りの事情ってものすごく業が深いというか、なまじバーゲストが人格的には非常にまともなだけに救いがないというか。
くっそ、あんなもん、キャストリアに見せたくないなあ。
キャストリアの為にもバーゲストの為にも。
両者に対して過保護だろうし、きっと傲慢なんだろうけど、アレは流石になあ。
でも、これはやっぱり無理筋か。
「それでも、一緒に行く。他のメンバーはロンディニウムの守りの方に合流してもらうんでしょう?」
助けを求めて周囲を見るが、メルトリリスもジャンヌ・オルタも肩を竦めるばかりだし、パーシヴァルは戸惑った様子である。
まあ、キャストリアやジャンヌ・オルタとはそれなりにコミュニケーションをとっていたようだが、俺は合流してからも書類仕事やらであんまり話せていないしな。
パーシヴァルは凄く俺と話したそうにしていたんだが、マジで修羅場だったから真面目な彼としては遠慮するしかなかったんだろう。
俺がいくらか余裕がある時は、逆にパーシヴァルが復興を手伝ってくれてる円卓軍の監督をしていたりで妙にタイミングが合わなかったのだ。
何とかオークニーに向けて出発する前に時間を取らないとな。
「円卓軍的にも、防衛戦の際にアルトリアがいたほうが士気が上がるんじゃないかな、と思うんだが」
俺がそんなことを言うと急に話を振られたパーシヴァルがぎょっとした顔をした。
そんなパーシヴァルにキャストリアがぐりんと首を回して顔を向ける。
うん、それちょっと怖いからな。
パーシヴァルがまた別の意味でぎょっとした顔したぞ。
「円卓軍は私がいないくらいで、どうにかなるようなヤワな人たちじゃないでしょう?」
笑顔だけど、圧が強いぞ。
だが、そこは微妙に天然が入っているパーシヴァル。
キャストリアのその問いには笑顔で胸を張って答えた。
「もちろんです。私たちは予言の子を助けるために集ったのであって、縋るために集ったのではありません」
その心意気は俺も嬉しい。
だがしかし、今は違う答えが欲しかった。
マンチェスターの問題が片付いた後で合流してもらうつもりだったんだけどなあ。
「……きっと後悔するぞ?」
最後の忠告として、ただ一言、そう告げた。
返ってきたのは俺の目をまっすぐに見つめ返す瞳と。
「統夜が何度もそんな風に言うんだから、きっとそうなんだろうね。でも、だからこそ、それを統夜だけに任せるのは違うと思うから」
そんな言葉だった。
頑固者め。
そこまで言うなら、良いだろう。
「わかった。明日には出発するから、準備をしておくように」
深く頷いてからキャストリアは足早に部屋を出ていった。
ここにサーカス団を残す事等を考えると馬車も使えないし移動は徒歩になる。
それなりに移動に日数がかかるだろうし、色々と用意も必要になるだろう。
このあたりは、俺が時間をかけて遠方に移動することで敵を誘い出す意図もあったりするんだが。
二人で移動するならぶっちゃけアロイでも使えば移動時間は思いっきり短縮できるからな。
しかし、結局こうなるか。
キャストリアの性格的にそんな気はしていたけど、思わずため息がこぼれた。
「……申し訳ありません。もう少し返答を考えるべきでした」
パーシヴァルが少し気まずそうに言ってくるが、首を横に振って答える。
「いや、君の言葉は誠実なものだった。きっとアルトリアにとっても心強い答えだっただろう」
少しばかり俺にとっては都合が悪かったが、それは完全に俺のエゴだ。
「その、そんなにマズイの、マンチェスターって?」
メルトリリスが聞いてくれば、ジャンヌ・オルタも首を傾げた。
そうだな、前周の時はほとんどこの特異点については傍観って話だったし、ジャンヌ・オルタが経験したFGO世界線においてもあの街の闇は結局ちゃんと知る機会はないんだったか。
そして、パーシヴァルも当然、知る由もない。
「そうだな、最悪の場合の話になるが……」
なるべく、その最悪は避けるように動くつもりではあるんだが、それでも状況によっては。
「妖精騎士ガウェインとマンチェスターの住民、そのすべてを殺し尽くす事になるだろう」
俺の答えを聞いた三人が三人ともに絶句した。
そうだろうな。
でもこれは、事実である。
「その結末は避けるように動くつもりではある。あるんだが……」
正直な所、マンチェスターの妖精どもはともかくバーゲストについては、妖精騎士ガウェインとして殺してやるのが本当は最大の救いなんだろうな、とも思うのだ。
あそこの妖精どもは行いを考えると、逆にむしろ楽に殺すんじゃ甘すぎないかって感じだから、殺すにせよ生かすにせよ迷う事は一つもないけどな。
ただ、じゃあ、あの妖精どもが悪いのかと言われると、連中の行いは確かに最悪だが、その原因はバーゲストにあるんだよなあ。
あの妖精どもは単にこの妖精國の妖精としてみれば、実にらしい感じに普通に当然の選択をしただけっていうか。
最悪の連鎖反応とでも言えばいいんだろうか。
「ちょっと待ちなさい。貴方がそこまで言うって、あの街の連中、一体何をやってるって言うのよ」
ジャンヌ・オルタが比較的早く立ち直ったのは、やっぱり経験値の差なのかねえ。
メルトリリスも色々と修羅場は潜り抜けているだろうけど、多分修羅場の種類が違うんだろうな。
「聞かない方が良いと思うぞ? って言っても引き下がりそうにないな」
キャストリアは同行させるわけだし、それがなくとも、そのうちどこかから漏れそうな気もする。
聞いて気分のいい話でもないんだが。
何なら話すのだって気分が悪い。
「これは念のために事前に調査も入れたから確定情報だと思っていい」
この妖精國ではコレが起こっていない可能性も無いわけじゃなかったから、一応は調べはしたのだ。
淡い期待は、結局は当然のごとくに裏切られたがな。
「あの街の妖精たちは人間を、力なき弱者を嬲り殺すことを娯楽としているんだよ」
再び三人が絶句した。
そりゃそうだろうな。
俺もこの話を知った時は割とガチ目に吐き気を覚えたからな。
そして、この妖精國でもそうだと知って改めて同じ気分になった。
「馬鹿な! あの妖精騎士ガウェインが、そんな蛮行を許しているというんですか!?」
パーシヴァルが珍しく声を荒らげたが、気持ちは良く分かる。
でも現実はもっと酷いんだよなあ。
「彼女は気付いていない。そんなことが起こっているなんて思いもしていない」
しかも、その原因が自分だなんて、少しも知らないのだ。
なまじ自分がある一点を除いて、あまりにまともだから、そもそもそんな発想が出てこない。
ジャンヌ・オルタがあんまりな話に凄く嫌そうな顔をしながら、それでもキャストリアを気遣って言った。
「それ、あの子に話したほうが良かったんじゃないの?」
残念ながら、その必要はあんまりない。
なぜなら、あの子は妖精國の妖精の醜さを、モルガンとオベロンの次くらいには知っている子だからだ。
だからこそ、見せたくなかったんだけどな。
「あの子は俺があの態度をした時点で、ある程度の最悪は想像できているだろうさ」
そうだとしても実際に知って目にすれば、怒るだろうし、悲しむのだろう。
だが、それでも、そんな事だって人任せにしたくはないと、あの子は言ってみせたのだ。
不器用だが、強く優しい子だ。
なら、俺は自分のエゴよりも、あの子の意思を優先し、彼女のその覚悟を貴ぶ事にしようと思う。
まあ、あの街の闇に決着をつける役目については譲るつもりはないけどな。
閲覧ありがとうございます。
お気に入り登録や評価、感想と誤字報告にも変わらぬ感謝を。
あと最近ちょっと投稿時間が前後していて申し訳ありません。
もうちょっと体調が落ち着いたら投稿時間も落ち着くと思うんですが、しばしご容赦いただけると幸いです。
小話
個人的にですが、あの時点の妖精國で個として最悪なのはオーロラだとして、群れとして行いが最悪なのはマンチェスターの妖精たちだと思っています。
行いが、と限定したのは、別の街に住んでいたら他の妖精と大差ない感じで暮らしていただろうなと思うからですね。
ほんとになんというか、ウルトラ求道僧にでも倣って間が悪かったとでも言うべきなんでしょうか。
バーゲストを責めるのもまた何か違うし、なんて言うかほんと救いがないんですよねあの辺の事情。
過去にさかのぼるとトネリコの排斥とかウーサー君の暗殺とか翅の氏族の族滅とか色々あるので、順位の入れ替わりが起こりそうな気配もあるんですが。
はじまりのろくにん?
アレはもう殿堂入りってことで。
嫌な殿堂もあったものですけどもね!