【地雷ジョブ】陰陽師は毎日金欠です! 〜スキルを使うためのアイテムを買うお金が足りないVRMMO〜   作:きなかぼちゃん

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4.陰陽師の戦い方

【式神召喚クエスト進行特典です。式神召喚符×10、白紙霊符×50を手に入れました】

【アイテムを使ってモンスターを倒してみましょう】

 

 さらにアナウンスが響いた。式神召喚して終わりのクエストではないらしい。

 まあ、考えてみればジョブクエストって戦い方の練習もセットなのは当たり前だよね。

 

『ええかアリス。陰陽師はカネのかかる職業や。式神を呼び出すには今貰った式神召喚符を使わなあかんのやけど、今んとこ買うしか入手法がない。式神だけやない。ええか、ただ攻撃するだけでも陰陽師はアイテムを消費するんや』

「……ん? ええっと、それってつまり、常にある程度カードのストック持ってないとまともに戦えないってこと?」

 

 聞いてるだけでも、それは結構ピーキーなジョブだと思う。

 常に道具の準備をして狩りやクエストに行かなければまともに実力を発揮することすらできないジョブだというなら、今までやってきたMMOにあったような普通のジョブよりかなり敷居が高いと言わざるをえない。

 

『せやせや。MMO経験者は話が早くてええわ。陰陽師はキャスター職やけど、MPを使うアビリティ・アクションを覚えないという特徴があるんよ。つまりMPにステータスポイントを振らなくてもいいっていう利点があるわけやな。でもそのかわりに道具や素材を消費してアクションを行使せなあかん。だからべらぼうにカネがかかるんや』

「なるほどねえ……てかさ、ヤヨイってシステム的な話もするけど、ホントにNPCなの?」

 

 ころころと饒舌に話すヤヨイに感心しながら、わたしはとてつもなく不思議だった。

 よぞらの言う通り、ほとんど人間と変わらないリアルさをもったAIがNPCとして存在しているのは弓削氏と話していてなんとなくわかるし、ヤヨイが人間っぽい挙動をしていることには驚きはない。

 

 変なのはNPCなのにその話題がメタ的なゲームシステムの話にまで及んでいること。

 

『ワイはアリスの想像力によって生まれたAIやで? 厳密にはゲーム内世界のNPCという扱いではないんや。ワイはこの世界がゲームの中であるということを知覚している。だからゲームシステムに関する話もできる。これは陰陽師を選ぶアドバンテージの1つかもわからんな』

「待って待って、わたしが想像したからあなたみたいな式神が生まれたの?」

「せやで、ワイはアリスの被造物や」

「うーん? わたしは別に自分の相棒にウサギを想像したわけじゃないんだけどなあ」

「それはアレや、無意識ってやつや」

 

 いまいち謎である。というか決められないからシステムに全部決めてもらっちゃったわけで、そこにわたしの想像力が介入する余地があるんだろうか。

 

「てか、式神ってヤヨイみたいにみんな喋れるの? 他の人たちのも」

『それは人によるんちゃうかな。例えば喋らない式神を願えばその通り辛気臭い式神が生まれるはずや。ただまあ人の想像ってモンは揺らぎが多いから、狙ってこういう式神を作る! みたいなのはなかなか上手くいかんと思うで。知らんけど』

 

 そもそも式神の見た目を指定するような選択肢はなかった気がする。ヤヨイの言うとおりならそこまでの自由度はありそうでない、ということだろう。

 

「……ヤヨイがエセ関西弁で喋るのもその揺らぎとやらのせいってことにすればいいの?」

『せやせや。アリスの心の中で無意識に誰かが喋った関西弁が印象に残ってたのかもしれんなあ』

「関西弁ねえ。特に心当たりないけど」

『記憶なんてものは不確かなものやからなあ』

 

『あ、ちなみにワイはログアウトでは消えへんけど、30分経ったら消えるからその時は式神カード使って再召喚せなあかんで。どうせ毎日唱えなアカンから例の詠唱も覚えとき』

「……召喚するたびにあの早口呪文唱えなきゃいけないわけ?」

『せやで。かっこいいやろ?』

 

 ああ、あの詠唱考えたのはこの目の前のウサギか。嫌がらせかな?

 

『スキルが追加されました』

 

《炸裂符》

属性:魔法アクション

CastTime:0s

消費MP:0

威力:80

対象に破魔属性魔法攻撃。爆破する札を投げつける。

このアクションはアイテムインベントリ内の《霊符》を1枚消費して発動する。条件を満たさない場合発動できない。(条件:《白紙霊符》以上のレアリティの《霊符》を使用する)

『基礎的な陰陽術。西京の陰陽寮では、この術を習得して初めて黒い狩衣を纏うことを許される』

 

《攻撃指令》

属性:アビリティ

RecastTime:30s

消費MP:0

式神に攻撃指示を行い、アタッカースタイルへと変化させる。

 

《防御指令》

属性:アビリティ

RecastTime:30s

消費MP:0

式神に防御指示を行い、タンクスタイルへと変化させる。

 

 わたしは空中に次々と映し出されているスキル説明を流し読みした。

 まず陰陽師がどういうふうに戦うジョブなのかを知らなきゃいけない。これチュートリアルバトルのはずだし。1番下のはフレーバーテキストかな? まあこれはあまり関係ないよね。

 

 わたしのレベルはまだ1だから、今は《攻撃指令》でヤヨイにアタッカーになってもらって戦った方が多分いい。《防御指令》はレベルが上がったらソロプレイとかで使えるかも。《炸裂符》は普通の攻撃スキルかな。でも魔法なのにキャストタイム0秒なのがなんか強そうな気がする。

 

【《石蜥蜴》が2体現れました。式神と協力して敵を倒してみましょう】

 

 考えてるうちにアナウンスが響き、道場に2体のモンスターが召喚された。見ると岩のようにごつごつした灰色のずんぐりむっくりした蜥蜴がうなり声で威嚇していた。なるほどなー、確かに岩っぽい。身体の上に浮かぶ緑色のホログラムHPバーの上にはご丁寧に《石蜥蜴》と書かれている。

 

「えっと、ヤヨイ!《攻撃指令》!」

『合点承知の助ェ!』

 

『おらおら~これがワイの体当たりや! こっちはええからアリスはもう一匹の方を相手にするんやで!』

 

「オッケー!」

 

 わたしは手をかざして《白紙霊符》を1枚虚空のインベントリから取り出した。意識するだけでインベントリが連動して、わたしの思い通りのアイテムを引き出してくれることに内心舌を巻く。どんな技術だ?

 

 薄いぺら紙を人差し指と中指で挟みスキル名を唱える。するとカードの表面に《裂》の字が浮かび上がり、発光した。わたしはそれが霊符起動の合図であることをなんとなく理解した。

 

「《炸裂符》!」

 

 スキルを詠唱し勢いよく魔物に投げつける。着弾。

 爆竹みたいな小爆発とともに、魔物の頭上に表示されている緑色のHPバーが残り6割程度になる。おぉ、リアルな爆発だ。3発撃てば倒せるといったところかな。

 

『アリス~やるやないかい。ぐえっ』

 

 よそ見をしていたヤヨイは魔物に体当たりされて吹っ飛ばされていた。ヤヨイのHPが1割くらい減った。こいつけっこう丈夫だな。『あひゃ〜』とコミカルな断末魔を上げながらごろごろと転がる小さな白いウサギを見てるとなんだか緊張感すらなくなってくる気がする……。

 

『シャアアアア』

「うおおお!?」

 

 その間にも、もう一匹の石蜥蜴は体当たりを仕掛けてくる。気を抜いてしまっていたので、思わずどてどてと慌てて倒れ込むように横にダイブして石蜥蜴の体当たりを避けた。

 

「よ、よっと《炸裂符》!《炸裂符》!」

 

 なんとか素早く立ち上がる。そして虚空から両手で霊符を抜き放ち、2枚いっしょに力任せに投げ飛ばした。

 それはそのまま石蜥蜴に直撃し炸裂する。そしてHPが0になり、石蜥蜴が光の粒子になって消えるのが見えた。

 

「……あ、やっぱキャストタイム0秒だから同時に2回攻撃できるんだ」 

 

 無我夢中でやってしまったけど、成功してよかった!

 

 ついさっき見た《炸裂符》のスキル説明欄にあったキャストタイム(詠唱時間)は0秒だった。ならば同時に多段攻撃することも可能かもしれないと思ったのだ。

 もしかすると腕を上げれば、両手の指に霊符を挟みまくって6枚くらい同時に炸裂札を投げられるようになるかもしれないね。

 でもその場合は《炸裂符》って6回一気に唱えなきゃいけないんだろうか?

 

「てか、そもそも口でスキル名言う必要あるのか……?」

 

《【炸裂符】は口頭詠唱不要スキルです》

 

「…………」

 

 ご丁寧にアナウンスが応えてくれた。少年漫画よろしく叫ばなくていいらしい。でもさあ最初にあんな詠唱あったらそういうものだと思うじゃんね。なんか恥ずかしくなるな……。

 

 まだ1回しか戦ってないからなんともいえないけど、物量に任せた手数で圧倒する、というのがこのジョブのコンセプトなのかもしれないなあ。

 

【クエストクリア! ジョブ《陰陽師》が解放されました! おめでとうございます! 石蜥蜴の討伐が完了しました。チュートリアルクリア報酬が解放されました。30000円、白紙霊符×30、陰陽師の黒狩衣一式を入手しました。レベルが3に上がりました】

 

『ハァ……ハァ……弱い敵将やったな!』

 

 声のする方に目を向けると、ドヤ顔でヤヨイは二本足で立ち上がり拳を天に突き上げて勝ち誇っていた。わたしは肩をすくめながら適当に突っ込んだ。

 

「その割にけっこうボロボロだね」

『男の良さは身体に刻んだ傷の数で決まるんや。惚れたか?』

 

 何言ってんだこいつ。今のわたしはきっとゴミを見るような目になってると思う。

 

『あぁん無視するなんてアリスのいけずぅ』

 

 すると身体をぐねぐねさせながらヤヨイが猫なで声を出す。なんか頭痛くなってきた……お前は猫じゃなくてウサギだろ! というかもうどんなキャラなのよ。

 

 ともかくヤヨイはわたしが戦っている間に、いつの間にか石蜥蜴を倒していた。でもHPは半分以上削られていて身体もボロボロである。白い毛並みは所々赤い色で濡れていた。このゲームはHP残量によって身体の傷もちゃんと再現されるようだ。

 

 まあ、初めてモンスターを倒したのだ。やることは決まっている。

 ヤヨイの近くに寄ると、わたしはしゃがみ込んで目線を合わせ手のひらを突き出した。

 ヤヨイは口角を上げて鋭い出っ歯を覗かせながらニヤリと笑う。その顔好きなの? ウサギってかわいいはずなのに人間っぽい挙動されるとやっぱキモいな……。

 

「ま、とにかくヤヨイ、お疲れ様!」

『おう! アリスもええ動きしとったで! 前途有望な陰陽師やな!』

 

 そう言って、陰陽師と式神はハイタッチをした。わたし達の初勝利に、乾杯。

 

 そしてこの時、わたしはまだはっきりと理解していなかった。

 陰陽師───それがどれほどマゾく、金欠から逃れられない、パーティーから煙たがられるジョブであるかを。

 そう、陰陽師は、まごうことなき【地雷ジョブ】だったのだと。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

《陰陽師の黒狩衣》

西京の陰陽師、その下位に位置する者が纏う黒装束。

烏の濡羽にも似た色の狩衣は、返り血を目立たせないようにするもの。

狩衣を化物の血で塗らさぬようになれば、それが真なる陰陽師の目覚めである。

 

《アリスの装備》

クラス:陰陽師

レベル:3

頭:陰陽師の黒帽子

胴:陰陽師の黒狩衣(一式装備)

腕:陰陽師の黒狩衣(一式装備)

脚:陰陽師の黒狩衣(一式装備)

足:陰陽師の黒狩衣(一式装備)

 

《ステータス》

HP:15 MP:10 TP:10

体力:5

記憶:7

持久:5

筋力:3

技量:6

知恵:10

信仰:2

幸運:2

 

《アリスのインベントリ》

・30000円

・白紙霊符×77

・式神召喚符×10

 

 




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