ゼンゼロのキャラを曇らせたくなった時に書くやつ   作:豚足と豚骨の化身

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浅羽悠真ー桜のような貴方をー

 

私は産まれつき、病気がちな体質だった。小さい頃からその人生のほとんどを病室で過ごし、薬も沢山飲んで、すごく苦しんだ記憶がある。「苦しんだ」なんて、過去形にしているけれど今もそう。毎日治療、治療、治療、治療……もう嫌になる。

 

でも、そんな虚ろな毎日を過ごしていた時ある青年にあった。黄色いバンダナを付けた、爽やかな青年。年は私と同じくらいだったと思う。彼は、病院の廊下に大事な指輪を落とした私に手を貸してくれた。結局指輪は見つからなかったけどね。

 

彼が定期的に私を訪ねてくれるようになったのもそこからだった。よく話すのは、やっぱり私が寝ているベッドだったかな。でも、時々外のベンチでお話することもあった。

 

「それでさ〜?職場の上司が、僕が体調不良だって言ってるのに厳しいのなんのって……」

 

「ははは!それ、悠真がすぐ仕事サボろうとするからじゃないの?」

 

「ひどい……ひどいよ!まさかあんたも僕を見捨てるとか言わないよね!?」

 

「いや〜仮病っぽいしなぁ……悠真が悪いんじゃない?」

 

彼の名前は悠真と言った。悠真は、1ヶ月に1回くらいのペースで私に面白い話を持ってきてくれる。まぁ職場の上司の話も多かったけど……。それでも、病院の外へほとんど出れない私にとってはどれもとても楽しくて、キラキラしたお話だった。

 

「ねぇ…悠真って何か病気持ってるの?」

 

それに気付いたのは3回目に悠真が訪問してきた時だった元々、彼もこの病院に通っているところに私と遭遇したのだ。もしかしたら彼にも持病があるのかもしれない、そう思って私は彼に直接聞いてみることにした。

 

「ん〜……まぁちょっとした病気がねぇ。そういうあんたは何の病気?もしかして仮病とか?」

 

「も〜、悠真じゃあるまいし仮病な訳ないでしょ?えっとねぇ私は色々持ってるよ〜?白血病でしょ〜、あとなんか骨が弱くなるやつ、それと素で血吐くやつ……後は〜」

 

「えぇ……僕より酷いんじゃないの……」

 

「うん!私不健康さは世界一の自信がある!」

 

「うわぁ、絶対誇らないで欲しかったよそれ……」

 

なんだだかんだ楽しい話だった。やっぱり悠真は病気を持ってるみたい。でも正直私の方が酷いと思う。うん、それだけは確信してる。

 

「僕より先に死ぬのは辞めてほしいけどね〜」

 

「ん?なんか言った?」

 

「いいや、特に何も。」

 

「え、絶対嘘じゃん!何言ったんだ!私への文句か!?」

 

「何でバレ……ゴホン、なんで文句って決めつけるのさ!」

 

「お〜い、悠真?聞こえてるぞ〜?」

 

「ナニガダロウ〜」

 

 

 

それからしばらく経って、桜が咲く季節になった。悠真と話したのもこれで何回目だろうか。まぁいいか、楽しいことに変わりはないからね。外のベンチに座ってヒラヒラと舞い散る桜を眺めながら、私は彼に問いかける。

 

「ねぇ悠真〜。」

 

「何〜?もしかしてこの花びらが散ったら、私も死んじゃうのかなって話〜?」

 

「物騒なこと言わないでよ!」

 

「ははは……ごめんって。」

 

「ていうか、私が病気で死ぬとは限らないんだよ!?もしかしたら突然ホロウ災害が起きるかもしれないし、犯罪者が押し入ってきて私を刺殺していくかも。」

 

「可能性は低いだろうね〜」

 

「病気で死ぬくらいなら、私はそっちに賭けるよ!」

 

「なんてこった……暴論に脳みそが支配されてるよ。でも、そうだなぁ、それに関しては諦めた方がいいよ。」

 

「え?」

 

「だってそんな事態が起きた時は、僕がアンタを死ぬ気で助けてあげるから。」

 

「………………そんなこと言って恥ずかしくないの?」

 

「何その目!結構いいこと言ったつもりだったんだけど!?」

 

「いや、かっこよかったけどさぁ……。」

 

結局、この日は聞きたかったことも伝えたかったことも言えなかった。これは悠真とのお話が楽しいのが悪い。だから、この話の続きは次の機会にしよう。その時は、きっと…………

 

 

 

 

 

 

 

彼女の訃報が届いた。僕は仕事に適当なサボる理由をつけることも無く、職場を飛び出していた。病院について僕が見たのは冷たくなった彼女の姿だ。医師からは急逝だったと伝えられた。そして、一通の封筒が手渡される。

 

「悠真へ」

 

そう書かれた封筒を僕はゆっくりと開き、中から手紙を取り出して静かに読み始めた。

 

 

悠真へ

 

これを悠真が見てるってことは、多分私は言いたいことを伝えずに死ぬようなバカをしちゃったって事だと思う。

まぁね、仕方ないのよ。ていうか許して。

それで、言いたいことなんだけどね?

えっと……2つくらいあって……

まず、病院の外って私が行っても楽しいのかなって聞きたかったんだ。だって悠真が話すのって職場の話かホロウの話、後ビデオ屋の話ばっかりだったでしょ?

だからさ、もっと聞きたかったんだよね。例えばこんな美味しい料理屋さんがあるとか、こんなゲームが面白いとか……。それで、夢物語を語り合うの。私が退院できたら何をしようって話、私いっぱい考えてたんだよ?

ショッピングモールは行きたかったなぁ。あそこって色んなお店がいっぱいあるんでしょ!?

前にお話した女の子が言ってたの。そこで2人で、身体に悪いくらいのアイスを食べて、2人で味を分け合うの。だってそっちの方がいっぱい味を堪能できるもん!楽しそうだと思わない!?

まぁもう出来ないけど。いや、もし私が生きてる状態でこれを読んでるなら有り得るか?

その場合恥ずかしくてぶん殴るから覚悟しといてね。

それと悠真。ありがとう。

これが2つ目、感謝を伝えたかったんだ。

私は産まれつきゴミみたいな身体でさ、正直生きるのも辛かった。毎日薬ばっかりで虚ろな日々の中で、唯一大切にしてたお父さんの指輪も落としちゃって、もう終わろうかなって思ってた時に、悠真が来たんだよ?

悠真はね、輝いてた。もうほんと星みたいにキラキラ〜ってね。で、そんな星が私を照らしてくれたの。いつも面白い話を持ってきてくれて、不安な私を慰めてくれる……そんな悠真に私は救われた。

こんなもんかな?

私が伝えたかったのは未練と感謝。

可愛い私の死がショック過ぎて仕事放棄とかしないでよ?

いや、放棄してるのはいつものことだけど。

それと、最後に……そうだなぁ。

言うことにしようか。

これが私の正真正銘最後の遺言。

絶対、忘れないでね。

 

悠真、大好き。それと、先に死んじゃってごめん。

 

 

 

 

それは彼女から僕へと手向けられた、1種の呪いだった。ほんの十数回話した、そんな1人の女の子からの遺言は、僕の心を強く強く抉って行く。それでも涙は出なかった。自分でも薄情だと思う。誰かの死に慣れてしまったのだろうか。

 

「なんで皆……死んじゃうんだろうねぇ。」

 

そうして手紙を閉じようとした時、妙に封筒が重いことに気がつく。その筒をひっくり返してみると中からもう1つの重い紙が手の中に落ちて来た。それを開くと、そこには大きく「指輪見つけた!!」という文字と共に、セロハンテープで止められた指輪があった。

 

「ホント……あんたは綺麗だったよ。まるで、散り際の桜みたいにさ…………。」

 

帰ろう。仕事場を抜け出してきてるんだ。早く帰らなきゃ、副課長が鬼の形相になるに違いない。僕は、この場を後にした。

六課のオフィスに帰ってすぐ、案の定怖い顔の副課長が僕に鋭い視線を向けていた。

 

「浅羽隊員……?ついにサボりの報告すら入れずに仕事場を抜け出すようになったんですか……?」

 

「いや、ちょっと急用ができたと言いますかなんと言いますか……。課長〜助けてくださいよぉ……蒼角ちゃんでもいいからぁ。」

 

「はぁ……まぁ今回ばかりはいいでしょう。ちゃんと帰ってきた事ですし。それと、浅羽隊員……何故そのような指輪を?出ていった時は確かにしていなかったような……。」

 

「あぁこれですか?これはほら、あれですよ〜。オシャレ的な奴ですって!」

 

「オシャレの前に仕事をしてください。」

 

「もう、分かりました!分かりましたから、そのすごく怖い視線やめてください!」

 

 

1つ、ひとつ僕が言えることがあるとするなら、多分これだ。桜は散り、いつかは枯木になる。それは僕には止められなかった。でも決して僕はその桜を忘れることは無い。だってそれが、まだ「生きてる」僕の義務なんだからさ。

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