ゼンゼロのキャラを曇らせたくなった時に書くやつ 作:豚足と豚骨の化身
「この別れと新しい未来を祝って……乾杯!!」
「「「乾杯!!」」」
シーザーが声を上げ、大勢の人が互いに盃を交わし合う。少し前カリュドーンの子のメンバーの1人が、自身のやりたい事を見つけて都市部へ行くと言い出した。今私の目の前にあるこれは、そんなアイツの送別会のようなものである。
「あっちでも頑張れよ!」
「はい!ありがとうございます!」
「たまに会いに行くからニトロフューエルくらい用意しててよね!」
「はい、必ず!」
激励の言葉を受け、男は嬉しそうに言った。今夜はどんちゃん騒ぎになることだろう。カリュドーンの子はそういう場所。まぁあの感じを見るに私が祝うまでの無さそうだな。それじゃあ、私も私の約束を守りにいくとするか。
「お〜い、バーニス。私にも2つ貰えるかぁ?」
「パイパー!またあの子と飲みに行くの?」
「あぁ、その通りだぜい。そういう約束だからな。」
「OK!今すぐ作るからちょい待ちだよ!」
「まったく元気だねぇ若いのは。」
カウンターでひたすらにニトロフューエルを製造し続けるバーニスを見ていると、最近の若者は疲れというものが無いのかとすら思えてくる。いや、それはバーニスが例外なだけかもなぁ。そんなことを考えながら1分ほど待っていると、私の前に2つのジョッキが置かれた。
「あの子の分は右のやつね!間違えて飲まないよう気をつけて!それじゃ!」
「おぅ、ありがとよ〜。」
私は2つのジョッキを両手に受け取り、目的の場所へと向かった。だんだんと皆の騒ぐ声が遠くなり、何となくノスタルジックな雰囲気を感じる砂埃の中、私は古ぼけた十字架の前に立つ。腐りかけの木が乱雑にロープで括り付けられ、まるで人を弔うつもりもないそれは、間違いなく墓標であった。
「よう、持ってきたぜい。」
そう言って私は片手に持ったジョッキを墓の前へと置く。そして地面に座り込み、墓標に向かってもう片方のジョッキを掲げる。
「それじゃいくぜ〜?かんぱ……」
「何してるんですか?パイパーさん。」
「いぃぃ!?」
乾杯をしようとしたところで、突然背後から声を掛けられて思わず変な声が出てしまう。見ると、そこには明日この場所を離れるはずの男が立っていた。
「全く、急に後ろから話しかけられたらびっくりするぜい。」
「それはすみません。」
「こんな所で油を売ってて良いのか〜?アンタは今回の宴の主役だろう?」
「はい。ですがちょっとニトロフューエルを飲みすぎて……気持ち悪くなったので夜風に当たろうかと。皆はあんなにはしゃいで疲れないんですかね……。」
「まぁアイツらは騒ぎ慣れてるってのもあるだろうなぁ。若いってのは羨ましいもんだ。」
「パイパーさんのスタンスは相変わらずですね。それにしても、これってお墓……ですよね?」
「こいつかぁ?まぁこいつは何だ……昔の仲間みたいなもんさ。今はもう居なくなっちまったけどな〜。」
「良ければ聞かせてくれません?その人のこと。」
「ん〜?そんな面白い話でもないけど、それでもいいなら喜んで話すぜい。」
「それじゃあお願いします。」
そう言って、男は私の隣へと腰を下ろした。そこまで頼まれちゃ仕方ない……アンタへの旅の餞別として、この話を送らせてもらうとしよう。
「あいよ〜、そうだなぁ。これはこの男が荒野で死んだ話であり、同時に私がアイアンタスクと出会った話でもある。」
その日はよく日が照っていた。夏だったから、地面と直射日光の2つに板挟みにされて、身体にはサウナみたいな異様な熱気が纏わりついていた。郊外の夏はこんな感じで、毎年酷い猛暑になるから、よく道端でぶっ倒れてる奴がいる。アイツもまた例外じゃなかった。
「こんなとこに寝てると何処ぞの運び屋に引かれるぜ〜?」
「助けて……くれ……」
「あぁ、今うちのをこっちに向かわせてるぜい。」
ブレイズウッドからはかなり遠くの場所。とある荷物の運搬で道を走っていたら、バカでかいトラックの傍に砂まみれで倒れている男を発券した。トラックは前方がひしゃげ、事故を引き起こしたことがひと目でわかる。幸いコイツには傷はないが、外に放り出されて長時間放置された結果、熱中症を引き起こしたらしかった。
「全く気をつけろよなぁ。郊外で事故を起こすのは命取りだぜい。それもこんな人のいない場所で、加えてこの猛暑もあるだろ〜?」
「死……ぬ……」
「私の言葉に返事を出来てるうちは死なないよ。ほら、水飲みな。」
しばらくしてウチのトラックが1台、私たちの元へと到着する。私は男をその中に放り込み、後ろにボコボコのトラックを連結させて牽引する形でブレイズウッドまで運ぶことにした。助手席に乗り込んで、この車の運転手に目を向ける。
「まさかアンタが来てくれるとはなぁ……ビックダディ。」
「丁度、手が空いていたんでな。」
「カリュドーンの子のリーダーが暇ってのも珍しいもんだ。」
ビックダディ……カリュドーンの子の現首領。特に語ることは無いが、私らの頼れるリーダーだ。それから私たちは、郊外特有の荒い運転に身を委ねブレイズウッドまで帰った。
それから数時間後。道端で死にかけのカエルみたいになってたヤツの見舞いも兼ねて、アイツが寝かせられてるという下層区域のとあるアパートの一室に来ていた。
ここはしばらく人が使ってもいなかった場所だから、少し埃っぽい。少なくともぶっ倒れた怪我人を寝かせるような場所では無いが、ここの建物は皆こんな感じである。よく言えば味がある、悪く言えば古臭い。まぁ郊外クオリティってわけだな。
「いやぁ助かったよ。お前さんだろ?俺を見つけてくれたのって。」
今、私の目の前にはベッドの上で横たわる男がいた。医者に、「なんで死んでねぇのコイツ。」なんて言われてはいたが、結局数週間は安静にすることになったらしい。
「一体何があったんだ〜?あんなとこでぶっ倒れるなんてよ。」
「あはは……ちょっと手元が狂ってな。ハンドリングミスって道路脇にあった壁に激突してあのザマだ。」
「気を付けた方がいいぜ〜。郊外には事故ってるのをいい事に、物品を好き勝手盗んでいくような輩も割といるんだ。」
「それは百も承知さ。だからこそお前さんのおかげで、俺は救われたってわけだからな。」
そんな話をしていると、この部屋の扉が開かれる。すると扉の奥から、ビックダディが現れた。本日二回目の予想外のエンカウントである。それを見て、ベッドの上で安静にするよう言われていたはずの男は飛び上がって、目を輝かせながらビックダディの元へと駆け寄った。
「さっきの話どうなった!?」
「まぁ、概ね問題は無い。頼まれたとうり、お前の車が直るまではこの部屋を貸してやる。もちろん、その間仕事はしてもらうがな。」
「それはもちろんだ!いやぁほんとに助かるよ。あんたらには感謝してもしきれないよ!」
事故を起こして身寄りもなく、足がかりもない。だからカリュドーンの子に暫く居座らせてもらうというわけか。あれ程の破損を起こした車だ。直すのにも相当時間がかかる。これは長い付き合いになりそうだなぁ……なんてそんなことを考えていると、ビックダディが突然私を指さしてこう言った。
「それと、仕事に関してはそこにいるパイパーと一緒にやってくれ。」
「そうだぜい。私と…………え?」
これが私たちの始まりだった。陳腐な出会いから始まったほんの数ヶ月の物語。その始発点こそが、ここだったのだ。